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「医療はすべて政治である」〜レイバーネットTVで「医療崩壊」の現実に迫る

笠原眞弓


*大島看護師(左)・本田医師(右)

アーカイブ録画(80分)スタッフの感想

●レイバーネットTV 第148号放送 4月15日
<新型コロナ「医療崩壊」の瀬戸際!〜現場医師・看護師は訴える>

 この報告を書くために、3回ほど通して見た。そして、わかったことは、「日本には、医療行政がない」ということ。政府は日本に住む人々の「いのち」を尊重していないし責任ももっていないということ。地球規模で猛威を振るう新型コロナウイルス(以下コロナ)の蔓延の中で、病院の実情も知らず、ただソロバンだけで医療行政をいじろうとしていること。

 それゆえに、それぞれがそれぞれの立場で不安を抱えてることになり、それにも疲れて、自分勝手な行動をとるようになるということ。「検査をすれば、医療崩壊する」と脅されてきた私たち。検査すらウイルスの蔓延状態と医療態勢を天秤にかけなければならない不幸の中にいるのだ。

 出席していただいた本田宏さん(医師)は、最後にドイツの医師、ルードルフ・ルードヴィヒ・カール・フィルヒョウ(ドイツの白血病発見者1821−1902)の言葉をおしえてくれた。「医療はすべて政治であり、政治とは大規模な医療にほかならない」

 やはり、私たちは、物言わぬ羊ではいけない。こんな時でも、いやこんな時だからこそ、政府に物申さねばならないと強く思った。 医療崩壊寸前の日本で、さらに崩壊を促進する病院の経営を地方独立行政法人化しようとしているとんでもない人たち。そうでなくても、この新型コロナが収まった時、どれだけの病院が倒産せずに残っていられるかの瀬戸際と語る看護師の大島やえこさんの言葉から日本の現状を実感した。

 というのが私の感想だが、一応、いつものように一体病院はどうなっているのか、医療現場の方々に、現状などを伺った内容の報告をする。

 司会は労働問題に詳しい北健一さんと北穂さゆりさん。動画ニュースの後、特集。その途中に、ジョニーHさんの替え歌『ロックダウンは故意にだろう(ロックタウンは恋の街)』が入りましたが、全編通して死ぬか生きるかの現場の様子が語られた。

<動画ニュース>

 なんだかんだとコロナの陰で、注目のニュースが盛りだくさんだった今月。司法では2つのうれしい勝訴判決を勝ち取った。最後のニュースは、コロナ緊急アクションで、ネットカフェ難民の具体的な救済活動の報告。困っている方はぜひ相談をということだった。 下記目次を列記する。〃が代処分逆転判決 ▲織シー残業代請求裁判勝訴 6杁淹態宣言異議あり!官邸前行動 ぅリエンタルランドは非正規に10割保障を ゥ蹈ぅ筌襯螢爛献600人全員 Ε優奪肇フェ難民の救出。

<特集>

 今回は下記の方に話していただいた。
大島やえこさん(東京民医労ほくと医療支部執行委員長、王子生協病院看護師)一般内科の看護師で、医労連などでも活躍。看護師等の働きやすさが、患者さんたちの安心安全につながるとか。
 本田宏さん(NPO法人医療制度研究会副理事長、元埼玉済生会栗橋病院院長補佐、外科医)5年前に『本当の医療崩壊はこれからやってくる!』を著わす。今度のことで、的中して残念だ。「正しい診断がなければ正しい治療はできない」をキーワードにしたいという。
 大利英昭さん(都庁職病院支部書記長、都立駒込病院看護師)当直が入り、ビデオ参加。小松康則さん(大阪府職労書記長)電話での参加 

◆新型コロナを受け入れる病院の実態は大利さんは、医療崩壊寸前だという

・コロナの場合、ICUで働いた経験者を各病棟から集めるので元の病棟は手薄となり、十分な医療が難しくなる。
・重点重症病棟でも、人員のキャパを越えて患者さんが集まった時に医療崩壊が起きる。
・仕事の危険性が高まり、資材不足が追い打ちをかける。
働くことで、いのちを失う危険性が高まっている。例えば、マスクや消毒液が不足しているなど、安全の根源的なことがおろそかにされていると訴える。

 大島さん、本田さんも、
・感染症の指定病院でも患者さんを全員受け入れられていない。
・すべての患者さんを感染者として対応しているが、感染防止資材が不足している。
・医療崩壊直前まで来ているときに、コロナが始まった。
・病院の院内感染で、病院封鎖というところもある。

〇大利さんの医療崩壊を防ぐ提案


*ビデオ出演した大利さん

1、医療崩壊を防ぐために⇒1部の病院がコロナ感染者を受け入れ、他の病院が一般診療を引き受ける棲み分けを。長期戦を闘うために、それぞれの病院に財政支援も必要。
2、都立病院の地方独立行政法人化(3月31日、このコロナの騒ぎの中で、2020年度中に14の都立病院、公社病院の地方独立行政法人変えていくと発表した)を取りやめ、都立病院に戻す。

今回のことで明らかになったのは、災害時と同様、感染症は公的病院が担わなければならず、一般病院は、それを補完するもの。 この2点を、共に声を上げてほしいということだ。

〇日本の医療報酬制度を見ても、病院経営の苦しさが分かる

 他国と比べて医療報酬は低く、医療者がいのちを懸けているのに減収になるトリックがある。
 G7の中で、日本は人口当たりの医師数が一番少ないのだが、1998年ころから医療事故の報道が激増し02年から医師不足報道も増えて、わずかずつ日本の医療現場の実態が人々の知るところになってきたという。
 医療費は安く、薬剤・医療機器価格は世界一高い。仕入れは高くて売値は安いということになる。つまり、他国に比べ薄利なのだ。
 大島さんは、慢性的な人手不足で、これまでも看護師たちは微熱でも休めなかったが、今はコロナが心配で休むものの、同僚たちへの負担を考えてしまう。一般患者は現在減少しているし、コロナが終焉した時、この病院は残っているのか心配とも。

◆地方独立行政法人化の政府の真の狙いは何か

 地方独立行政法人化と現在424の病院の再編・統合化という動きがある。どちらも医療にかかわる保険料負担を軽減したいということ。都立病院の場合、病院名も変えず都が100%出資だから何も変わらないというが、それは、大きなウソで、行きつく先は、民営化ではないか。

 一番の目的は、労働者を安く使うこと。この制度の中には、人件費を収益の50%に抑えていくことが決められている。そのために人件費単価を下げてくる可能性がある。今回のようなことが起きて、採算を度外視して治療に取り組めば、収益は下がるので、自動的に職員の人件費を下げざるを得ないことになる。

 地方独立行政法人化をはじめて施行したのは、大阪府だった。独法化に成功したといわれているが、実情はどうなのか。大阪府職労書記長の小松さんに電話で聞く。

 現場は東京都と同じような状況。変化は「経営」という言葉を誰もが使うようになったという。経営を考えるから、診療報酬の稼げるところに人も物も厚く、稼げないところは薄くなる。看護師は、ベッドの回転率を上げろといわれたり…。府からは負担金が入るが、その額も減らされる一方とか。また、非正規労働者が当初は20%だったのが、今は30%越えている。これも人件費の削減のためといえるだろう。大阪府の直営でなくなったので、今回のような事態のときに、行政の力を借りなければならないとき、決定が遅くなる。などの弊害があるという。

 大島さんは、時間と労力がかかる不採算部分、例えば今回のコロナや難病などは民間では対応できない部分があり、公的な病院がそこを支えてみんなのいのちを護ってほしいという。本田さんは、医療は国民のいのちを護るものなのに、人件費が不足するのはおかしいといい、同じいのちを護る警察や消防が赤字というのを聞いたことがないと指摘する。

〇質問に答えて

・検査は必要な方にするべき。
検査をするべき人をしないと、感染が拡大する可能性があるから。 ・コロナの感染拡大を防ぐには。
ウイルスは一人で動かない。だから感染を防ぐには人間が「出歩かない」に尽きると。いま発令されている緊急事態宣言は、中途半端で補償もないのでかえって感染を広げることになる。家に居てもらうためには、生活の補償が欠かせない。損害を受けるのはすぐに休めたりできる人ではなく、働かなければ生きていけない、あるいは家のない層の人たちだ。

◆今後も必ず別なウイルスが蔓延する

 必ずまた新型が来ることを忘れてはいけない。その時、このままお金がかかるからと、ベッド数を減らしたり、医療関係者を削減して技術者の養成を怠っていると、今よりひどい医療崩壊が起こるだろうと心配する。

◆最後に

 そして本田さんは、先にも上げたように、ドイツの医師ルードルフ・ルードヴィヒ・カール・フィルヒョウの言葉を引用した。 「医療はすべて政治」すべてのこと、「生活は政治」「教育も政治」ということを訴えたいと。
 大島さんは、政策の提案、例えば「こうすれば生活保障ができるのではないか」などを、首相官邸にメールで提案している。民主主義の国なので、そういうことをしていいと。お二人とも、政治を日常にしようとの提案で締めくくった。
 一線で新型コロナと向き合い、日々さまざまな思い出で患者さんと向き合っていただいている皆さんに、感謝の気持ちがあふれた。一市民として、自分が罹患しないという最低の協力をしたい。

*写真=小林未来


Created by staff01. Last modified on 2020-04-18 13:06:01 Copyright: Default

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