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News Item 20060114m2
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 私たち「失業と野宿を考える実行委員会」は、大阪で活動する野 宿者運動団体・支援団体でつくる実行委です。

 このたび、大阪市が西区の靱(うつぼ)公園、中央区の大阪城公 園に居住する野宿者約30名に対し、強制排除を行うための行政代 執行手続きに着手しました。手続きのスピードが異例に速く、1月 20〜23日ごろには強制排除が行われる見込みです。

 私たちとしましては、この件を大阪市による重大な人権侵害であ ると捉え、すでに弁護団・原告団(テントに住む野宿者約17名に よる)を結成し、1月11日に大阪市を被告として代執行の中止を もとめる訴訟を提起し、同時に仮差止めの申立てを行いました。今 後予想される強制排除についても、これを阻止するために可能なか ぎり努力していく所存です。

 つきましては、この問題について多くの方々に関心を寄せていた だきたいと思い、ご連絡させていただきました。

 ぜひとも、この件について取材していただければ幸いです。

失業と野宿を考える実行委員会

(釜ヶ崎医療連絡会議、釜ヶ崎炊き出しの会、釜ヶ崎パトロールの 会、長居公園仲間の会、高齢者特別就労組合準備会、大阪城公園よ ろず相談所、西成公園よろず相談所)

連絡先:090−9700−0296(金津)     06−6647−8278(釜ヶ崎医療連絡会議)

(以下、詳しい経緯と支援の呼びかけです)

<みなさんの支援が必要です!>  靱公園のすべてのテント(約20軒)、大阪城公園の一部テント (約5軒)に住む人々が、大阪市によって強制排除の危機にさらさ れています。失業によって野宿を余儀なくされたかれらは、生きん がために公園や路上にテントを建て、アルミ缶や雑誌・廃品回収な どの仕事で生計を立てながら、隣近所で助け合いつつ自分たちの力 で生き抜いてきました。そのかれらに対し大阪市は支援の手を差し 伸べるどころか、「不法占有」の名のもとに、その生活の場である テントすらも奪い、この寒空のもと路上へと叩き出そうとしている のです。大阪市では例年、すくなくとも200人以上の野宿者が路 上死を余儀なくされています。これらの死者は、野宿者排除政策= 殺人行政によって生み出された犠牲者なのです。大阪市の非道な人 権侵害行為を止めるため、私たちはいま、多くの方々の協力を必要 としています。

<これまでの経緯>  数十名の野宿者が暮らす靱公園では、数年前から大阪市により今 年行われる「世界バラ会議大阪大会(2006年5月11〜17日)」 のための公園整備が進められてきました。これまで工事にさいして は、2年半前に結成されたテント村自治会が西部方面公園事務所と 交渉を持ち、テント移転を含めて話し合いで協力してきました。

 しかし昨年より大阪市は態度を変え、10月4日に「11月30 日までに退去せよ」という内容の文書を配布し、自治会との話し合 いを拒否して追い出しのためのテント個別訪問を開始しました。

 数次にわたり話し合いを求める抗議行動が行われましたが、市の 姿勢はかわらず、ついに行政代執行による強制排除手続きが開始さ れたのです。

 大阪城公園についても、以前より今年開かれる「全国都市緑化お おさかフェア(2006年3月25日〜5月28日)」のための整 備工事と、これを理由とした追い出しが行われてきました。東部方 面公園事務所はテント移設の提案も拒否し、いっさい話し合いに応 じないばかりか、訪問した際も入り口を封鎖して当事者・支援者を 事務所の中に入れず、申し入れ書の受け取りすら拒否する、という 市職員として考えられない対応を続けてきました。

 追い出しのための個別訪問のなかで、2002年11月11日に はテントを新築した仲間に対し職員がカッターナイフを取り出して 「撤去しろ」と脅した事件(公園事務所は事実を認めたにもかかわ らず、市による正式な処分も、本人の謝罪もありませんでした)を 引き起こし、また2004年10月27日には、テントを建てよう とした車イスの仲間を職員らが取り囲み、「死にぞこない」などと 暴言を浴びせかけ挑発し「傷害事件」を引き起こさせ、逮捕・実刑 に追い込むといったことも行ってきました。

 昨年から、公園事務所職員による巡回・説得はさらに強化され、 2005年1月24日にはテント2軒の周りをフェンスでほぼ完全 に囲むという嫌がらせ・生活妨害を行いました。そして靱公園と同 様、11月末までの退去を求める文書が配られ、現在にいたります。

<行政代執行手続きの開始>  両公園で1月5日に公園事務所職員が『弁明機会付与の通知書』 を各テントに配布しました。1月11日の弁明期限後、1月13日 に『除却命令』が出されました。1月17日13時の除却期限後、 おそらくすぐ『戒告処分』が出され、ごく短い期限後に『行政代執 行令書』の発行→強制排除、という流れになるものと思われます。

 野宿者への行政代執行は全国的には昨年1月24日の名古屋・白 川公園のテントに対するもの以来です(600名以上の職員・ガー ドマンを動員)。大阪においては、テントに関しては2003年1 2月の天王寺カラオケ屋台村撤去、多くの野宿者が居住するテント ・荷物に対するものとしては1998年12月の今宮中学前歩道で の強制排除以来、はじめての代執行になることが予想されます。

 手続きが開始されてすぐ、靱公園の4名、大阪城公園の2名が原 告となり、11日に行政代執行手続きの中止を求める訴訟を大阪市 を相手取って起こしました。同時に、裁判所に仮差止を求める申立 も行いました。しかし大阪市は翌日に反論書を提出し、13日に裁 判所は仮差止の申請を却下しました。市はすかさず、同日中に除却 命令を出しました。

 14日以降、さらに多くの仲間が原告団に加わるとともに(靱公 園9名、大阪城2名が追加予定)、仮差止却下に対する抗告を行い、 除却命令に対する執行停止も求めていく予定ですが、このままでは 裁判を待たずに強制排除が行われてしまうおそれがあります。

 大阪市は、およそ考えられないスピードで手続きを進めており (弁護士の話によると、一般の住居に対する代執行の場合などは、 数ヶ月は猶予があるとのことです)、私たちに時間は、ほとんどあ りません。

<シェルターはテントの代わりにはならない>  これまで大阪市は、両公園の野宿の仲間がテントを出て行く代わ りの支援策として、大阪城公園シェルター(仮設一時避難所)と自 立支援センターという「選択肢」を提示しています。

 しかし、これらは到底、選択肢などではありません。

 大阪城公園シェルターは3年前に設置された施設です。もともと 大阪城公園の「適正化」=テント一掃のために構想されたもので、 同公園にテントを張っている人のみが対象とされました(テントを 持たない、より厳しい状況に置かれている野宿者は、いくら希望し ても入所できないという矛盾)。

 しかし、シェルターの居住環境はきわめて劣悪なもので、個人ス ペースは1人2畳にも満たず、薄い間仕切りでプライバシーは皆無、 持ち込める荷物はダンボール数個に制限され、きわめつけは1日たっ た白飯1食の食事しか提供されません。結局、アルミ缶集めなどを しなければ食っていけず、テントより生活状況が悪化した人も多い のです。入所と同時にそれまで住んでいたテントは公園事務所によっ てすぐに潰され、入所後に「やっぱり嫌だ」と退所を余儀なくされ た人はテントもなく、路上へと文字通り叩き出されることになりま す。結局、公園事務所職員の執拗な「説得」にもかかわらず、大阪 城からの入所者数は全テントの1/3程度に過ぎません。説得に耐 えかね、公園からの自主退去を余儀なくされた仲間も数知れません。

 今回、西部方面公園事務所は、もともと昨年末で閉鎖される予定 だった大阪城シェルターの期限を延長して、靱公園の仲間を入所さ せようとしています(すでに入所を余儀なくされた仲間も数名いま す)。しかし、シェルターの本質的な問題性はなんらかわっていな いし、そもそも期限の延長も数ヶ月にすぎないということです。よっ て、シェルターへの入所を積極的に望む仲間は、皆無です(大阪城 も同様です)。

 もうひとつの「選択肢」である自立支援センターも、同じような ものです。1日3食は出るものの、相部屋生活でプライバシーはな く、最長6ヶ月の期限後には退所しなければなりません。自力で仕 事を見つけることができなければ、野宿に逆戻りです。

 これらの施設は、行政が文字通り「排除の受け皿」として用意し たものです。入所後の生活に何らの展望もなく、退所後の保障もな にもないシェルターは、仲間たちが自分たちの力で築き上げたテン ト(仲間同士の相互扶助関係も含めて)の代替策にはなりえないの です。

<野宿者に仕事を!生活保護の無差別適用を!>  失業こそが野宿の最大の原因です。首切り・リストラの進行、非 正規雇用の増大といった流れのなかで、仕事を失い野宿にまで追い やられる人々は今後も増えつづけます。政府・行政がきっちり責任 を取り、抜本的な失業対策を行わないかぎりは野宿者問題は絶対に 解決しません。リストラ・非正規化の進行による「雇用なき景気回 復」という状況のなかで、失業者に「自助努力」を強いることだけ では問題は解決しません。野宿者も含めた失業者にたいし、国や地 方行政が責任を持って仕事を保障することが必要です。

 現在、野宿・日雇労働者の反失業のたたかいの成果として開始さ れた「高齢者特別就労事業」が釜ヶ崎で行われ、市内約3000人 の野宿者が登録しています(55歳以上が登録できる輪番制で、月 3回程度軽作業の仕事が回ってくる)。その重要性にもかかわらず、 国は2005年度からこの予算を打ち切り、大阪市も縮小・廃止の 方向を打ち出しています。

 私たちはむしろ、特別就労事業の大幅な拡大こそが必要であると 訴えます。

 生活保護の差別的運用も野宿の原因のひとつです。福祉事務所に 野宿者が相談に行っても「住所がない」ことで門前払いされる例は いまだにすくなくありません。「居宅(アパート)での保護を原則 とする」という生活保護法の条文にもかかわらず、テントや路上か ら生活保護を申請しても、病院や施設への入所を経由させられるこ とがほとんどです。いっぽうで、病院や施設での保護では人件費な ど莫大な経費がかかり、その金は行政から病院・施設の経営団体へ と流れている構造があるのです。

 私たちは、施設収容主義ではなく、テントや路上から直接アパー トでの生活保護適用を求めます。

<居住権は生きるための権利>  靱公園・大阪城公園の問題は、けっしていまそこに住んでいる数 十人の仲間だけの問題ではありません。棄民化政策ともいうべきこ の国の流れが止まらないかぎり、失業し路上へと叩きだされる人々 は増えつづけるばかりです。そうした人々にとって、路上や公園に 荷物を置いたり、テントを張ったりすることは、生きるための当然 の権利として認められるべきではないでしょうか(公園は、もとも と「避難場所」としての役割もあるのですから)。強制排除が行わ れれば、おそらくフェンスの設置と24時間のガードマン巡回が行 われ、野宿者がそこで生活することは不可能になるでしょう(すで に、新築は執拗に妨害されています)。このことは、いま住んでい る仲間のみならず、これから野宿に追いやられていくであろう無数 の人々の生きる権利を奪うことにもなります。

 私たちは、野宿を余儀なくされた仲間がテントや路上で生活する ことの権利は、憲法25条の生存権、国際人権規約社会権規約の居 住権として保障されなければならないと考えます。

<そもそも何のための工事なのか>  「工事をやるからどいてくれ」というのが大阪市の変わらぬ態度 ですが、はたしていったい、何のための、誰のための工事なのでしょ うか。

 今年の大阪城公園の「緑化フェア」予算9億2300万円、大阪 城シェルターの運営経費年間2億円(大半が人件費・建物リース費)、 自立支援センターの年間予算10億円(これも多くは人件費です) という数字を目にし、その横で1個1円のアルミ缶を集めてしのい でいる野宿の仲間たちの姿を見るとき、何かがおかしいと思わざる をえません。

 1月11日、公園事務所の所属部局である大阪市ゆとりとみどり 振興局の課長と課長代理が造園業者との談合に関与した疑いで逮捕 されました。汚職や癒着をあらゆる部局で繰り返しておきながら、 金にまみれた手で野宿の仲間を叩きだそうとする大阪市に、改めて 怒りがつのります。

 野宿者追い出しに成功すれば、ゆとりとみどり振興局内では業績 として評価され、昇進への道が開けるようです(実際、そのような 人事になっていることが確認されています)。

 私たちはもういちど彼らに、「何のための工事なのか?」と問い かけたい。

 野宿の仲間から生きるための権利と手段を奪い、路上死に追い込 んでいくことと、「業績」や「カネ」のどちらが大事なのか、と。

 あなたたちが、自分自身の家と家族に対して同じことをされたら、 どのような気持ちがするのか、と。

<靱公園・大阪城公園の仲間を支えてください!>  このような厳しい状況にもかかわらず、靱・大阪城の仲間たちは くじけず、むしろ団結を強めつつあります。5日の代執行手続き開 始を受け、7日の靱公園での団結もちつき後に緊急寄り合いを持ち、 11日には梅田や扇町、長居公園や西成公園、釜ヶ崎などから集まっ た仲間たちとともに、西部・東部方面公園事務所への連続抗議行動 をやり抜きました。法律面で強力に支えてくれる弁護団や、各地か ら大阪市へすでに抗議の声を寄せてくださった方々も多くいます。

 私たちは、この危機を危機のままにおわらせず、むしろ好機とし て仲間同士の結びつきをより強めながら、ともに未来を切りひらい ていくべく、最後までたたかっていくことでしょう。

 どうか、ご支援を!

<大阪市へ抗議の集中を!> 簡単なものでかまいません。「強制排除をやめろ!」と以下へ抗議 の声を送ってください。 写しをkamapat@infoseek.jpもしくは06-6374-2233(FAX)まで送って いただけると幸いです。

西部方面公園事務所 TEL:06-6441-6748 FAX:06-6441-6797 〒550-0004 西区靱本町2-1-4

東部方面公園事務所 TEL:06-6941-1144 FAX:06-6943-6877 〒540-0002 中央区大阪城3-11

ゆとりとみどり振興局総務部管理課 TEL:06-6615-0643 

ゆとりとみどり振興局への意見フォーム http://www.city.osaka.jp/yutoritomidori/request/index.html

<1月17日監視行動へ結集を!> この日13時の除却期限後、「戒告書」が出される可能性がありま す。 靱・大阪城の仲間たちを支えるために、現地への結集を呼びかけま す。

<代執行当日、現地へ結集を!> おそらく20〜23日(土日を除く)以降、代執行が行われる恐れ があります。 テントを守るためにできうるかぎりのことをしたいと考えています。 当日までに現地への結集を呼びかけます。

失業と野宿を考える実行委員会
06−6647−8278(TEL/FAX)
090−9700−0296
kamapat@infoseek.jp (釜ヶ崎パトロールの会アドレス)

大阪市西成区太子2−1−2
釜ヶ崎医療連絡会議気付

(以上)

-- 金津 まさのり


Created by staff01. Last modified on 2006-01-14 15:12:23 Copyright: Default

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