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「北方領土」はだれのもの?

―ロシア大統領の「国後島」訪問をめぐる叔父と姪の会話―

●さ お り◎オッチャン、ロシア大統領の「国後島」訪問で「尖閣諸島」事件と似たような民族主義ヒステリーが日本中で巻きおこっていて、怖いなあ。日本だけでなしに、世界中をナショナリズムという妖怪が歩きまわってるような気がするんや。

★オッチャン◇中国もロシアも今回の領土問題では、大国ナショナリズムを前面にだした感じだったな。それにたいする日本のジャーナリズムの反応もひどかった。「なめられたらアカン」くらいならまだしも、「目には目を歯には歯を」的な報復主義を訴えるジャーナリストたちが登場してきたし、軍事的な紛争になってもそれは相手が悪いからだ、といった強硬派も出てきているし、彼らが多数派になったら、ほんとに怖いことになるな。

●さ お り◎アメリカはティーパーティなどの超保守団体の力が大きくなって、オバマさんも苦労しているようだし、EUの中核的な国では移民労働者への排外主義をあおっている右翼政党が躍進してるし、やな感じやなあ。世界的な大不況で、政治経済がどこの国でもうまくいっていないことに原因があるよな気がするな。

★オッチャン◇世界政治のなかで、領土問題の解決ほど困難なものはないだろな。でもその困難を克服したのが、皮肉なことに中ロ国境問題だった。2004年の最終決着は、「フィフティ・フィフティ」の原則という方式で、紛争中の領土を半々に分け合ったんや。1960年代には武力衝突もあったけど、この方式で両国はナショナリズムを抑えて、平和を獲得した。日本政府の「四島返還」では永遠に解決しないと思うな。

●さ お り◎2008年に「僕たちのアイヌ宣言」というNHKのテレビをみて考えたことを思い出した。もともと北海道も千島列島もアイヌ民族の土地だったのに、日本とロシアがかってに占領したからいまのような状態になったのだ、と考えたんや。この番組のなかで、「アイヌレブルス」という20代30代の16人の男女のグループが、ラップを歌っていたけど、こんな歌詞やった。「滅びゆく民族アイヌ ざけんな 俺らは今もここにいるぜ 今こそ立ち上がれウタリ……すべてを解き放てアイヌ……」。日本もロシアもアイヌの人たちといっしょに領土問題を考えるべきや。

★オッチャン◇1991年に「千島・樺太アイヌ協議会」が、当時の海部首相とゴルバチョフ大統領に次のような書簡を送っているのや。「1855年に日露通好条約が締結されて以来、アイヌは筆舌で表せない苦難の道を歩まされてきた。アイヌ民族の視点に立てば、日本とロシアは共に侵略者だ」。それから、当時の同協会の豊岡理事長はこんな訴えをしていた。「北方四島を含む千島列島のうち何島かをアイヌ民族の手に取り戻し、アイヌだけの独立国を建設する。……国際社会に向けて、自然と人間の共生の道を発信したい」とね。

●さ お り◎さっきの番組の「アイヌレブルス」というのは、民族音楽や舞踊を現代風にアレンジして公園などで演奏したり踊っている東京周辺のグループだけど、その若者たちが大阪で在日コリアンたちと共演するということも紹介されていた。マイノリティどうしの共闘かな。

★オッチャン◇それを聞いて、1946年に「民主臨時政府促進人民大会」というのを当時の「在日朝鮮人連盟北海道本部」が札幌で開催したときに、アイヌ民族の解放を主張していた『アイヌ新聞』の主幹・高橋真が参加して激励演説をしたという歴史を思い出したわ。ところでさおりくん、北海道の語源を知ってるかい?

●さ お り◎いや、教えて。

★オッチャン◇明治政府が1869年(明治2年)に蝦夷地を北海道と改称したとき、最初は「北加伊道」だった。語源は、アイヌ民族が互いに自分たちを呼ぶのに「カイノー」という言葉を使っていたからなんだ。千島列島の地名のほとんどがアイヌ語だ。メドベージェフさんが行った国後島はアイヌ語で「黒い島」っていう意味なんだって。

【2010.11.07・通算5回目】 イラスト=壱花花

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以下は、これまでに発表したものです。

■尖閣諸島問題(2010/10/11)
■ノーベル平和賞(2010/10/19)
■お葬式とお墓(2010/10/22)
■名古屋議定書(2010/11/1)


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