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反グローバリズムの波(2002年キャンペーン)



【特集リンク】

日韓投資協定の国会批准NO日韓投資協定全文
■北米自由貿易協定(NAFTA)は何をもたらしたか(工事中)
世界社会フォーラム2002レポート
4・20ワシントン平和行進世界のメーデー2000


【概説】


「グローバリズム」とは何か

 「グローバリズム」「グローバリゼーション」というのは、1990年代末に「反グローバリズム」運動が台頭するとともに意識された概念であり、単なる国際化や世界化ではない。それは、世界展開する資本、とりわけ多国籍企業を中心とする大国の企業が、より安いコスト(賃金・税金・環境規制など)とより大きな市場(投資や販売の機会)、そして世界的な経済活動の安全保障を求めて、ここ20年ほどIMFやGATT(現在のWTO)や各国政府への圧力を通じて推進してきた、経済・政治全般にわたる再編成・構造改革のことである。それは生産性を低下させる社会的規制を撤廃し、競争力のない市場における弱者を淘汰し、同時にほとんどの人の予想に反して冷戦後の世界をむしろますます軍事化してきた。主体や中身を表すために、「企業グローバリゼーション(corporate globalization)」あるいは「新自由主義的グローバリゼーション(neoliberal globalization)」と呼ばれることもある。


日本の政治経済の変化

 日本においては、1980年代後半からの円高不況と90年代バブル崩壊後の構造不況の裏で、多くの企業が海外投資を行い、膨大な日本資本が世界展開を始めた。それに伴い日本の経済と政治に起こってきた変化は劇的なものである。
 そのひとつは、国内生産をベースに考えられてきた、終身雇用・年功賃金・企業内福祉を柱とする「日本的経営」が崩壊したことだ。企業戦士だった団塊の世代の男性の多くはリストラされ、コース別人事管理や業績給の導入によって多くの人々が日経連のいう「第二・第三類型」(非長期安定型雇用)の労働者にされてきた。大企業の多国籍化で行き詰まった下請け中小企業は相次いで倒産し、地域の商店にも深刻な不況をもたらした(金融市場自由化がそれに拍車をかけた)。失業率は5%を越え、パート・臨時雇用・バイト・派遣など非正規労働者の割合は3割に達しようとしている。そんな中で、学級崩壊・不登校・引きこもり・少年犯罪といった青年層の「問題」に社会が対応できなくなった。
 他方で政治的には、財界の要求するいわゆる「構造改革」と軍事大国化が急速に進められてきた。「構造改革」は、世界的には「新自由主義改革」といわれているものと同じで、民営化(公共から企業へ)、社会的規制の緩和(労働法・大店法などで守られてきた部分をなくす)、農産物自由化、金融市場の自由化、社会保障(医療・年金・保育・住宅などへの公的負担)削減、法人税・所得税減税(累進性緩和)と消費税増税、エリートと柔順な国民を育成するための教育改革(大学改革)、などを中身とする。また時期を同じくして、社会的矛盾に「迅速」に対処するための少年法改正や司法改革、そして自衛隊の海外派兵体制(国歌国旗法や有事法制も)の確立など、軍事大国化が着々と進行してきた。総評も社会党もなくなり有力なカウンター勢力が不在のなかで、マスコミが企業の立場に純化したため、これらの改革が当然視されてきた。


「グローバリズム」の影響・帰結

 以上のような日本の政治経済の変化は、「グローバリズム」のもとで世界中で起こっている変化のひとつである。韓国でも1998年経済危機以降、IMFの指導のもとに構造調整がおこなわれ、大規模なリストラと、非正規雇用化(現在は5割を越えている)が進められてきた。米国でも、ハイテク産業のエリートたちと末端サービス労働者の格差は劇的に拡大し、民間のセキュリティ産業を潤わせた。端的に言えば「グローバリズム」は、社会を大きく分裂させてきたといえる。
 それは国際的な格差という点でもあてはまる。「グローバリズム」は一部の途上国に投資を産み出したものの、地域経済・環境破壊を通じてそれ以上に多くの貧困を産み出した。IMFは、世界経済の不平等構造を是正しないまま、グローバリズムの中で債務危機に陥った途上国に、融資とひきかえに「新自由主義改革」を押しつけてきた(アルゼンチン経済危機でそれは破綻した)。多国籍企業やその経営幹部は、第三世界のGDPを上回る財力を手にしている(例えばビル・ゲイツなどの金持ちトップ200名は、世界の約半分の人々の年収と同じ資産をもっている)。世界の貧困人口は増加を続け、絶望と憎悪をもった人々が「テロリズム」をも産み出すまでに至った。2001年9月ニューヨークで起きた「同時テロ事件」は、「グローバリズム」の頂点に君臨し、その矛盾を力で抑えつけようとする米国の経済的・軍事的中枢を狙ったものであった。


「ビジネスの予見性を高めるために」

 「グローバリズム」は最初は多国籍資本やIMFなどの投資・融資の圧力で進められてきたが、1990年代後半からはそれに加え、より安定的で高度な自由化を実現・維持するために、WTOなどの多国間条約、あるいは二国間投資協定(Bilateral Investment Treaty: BIT)や地域的な自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)、およびFTAの拡大という形で、各国の政策に枠をはめる形で完成がめざされている。政変や社会的圧力によって簡単に投資・通商環境が変えられては困る、というわけである。ちなみにBITは投資に関わるあらゆる障壁をなくすことを規定し、その規定に実行力を持たせるための手続きを含むもので、FTAはBITを含むより包括的な自由化協定として考えられているようだ。
 日本政府もGATT(WTO)に積極的に加担してきたが、1990年代末に財界と通産省はFTA・BITをも追求するようになる。日本資本にとって、米国市場を含むNAFTA(その拡大構想である米州自由貿易協定FTAA)への現地生産拠点を通じた参加と、主な進出先であるアジア諸国とのBITや、中国市場を含む東・東南アジア地域のFTAがめざされている(メキシコ・シンガポール・韓国との協定はその第一歩としてめざされる)。また日本の政財界エリートは、グローバルなWTOとローカルなFTAの推進とともに、国連常任理事国入りと日米軍事同盟拡大強化、有事法制と憲法改正を同時追求してきた。このことは米国がグローバルな経済・軍事戦略を展開すると同時に、NAFTAの米州全体への拡大であるFTAAと、中南米地域のさらなる軍事支配の足がかりであるコロンビア計画を同時追求しているのと同じである。社会の不安定化をもたらす経済協定は、最終的には政治的・軍事的なパワーによってしか担保されない。


「反グローバリズム」運動の台頭

 1999年米国シアトルで、WTOの会議に抗議して、大規模な「反グローバリズム」のデモンストレーションが行われた。このとき、AFL-CIOの労働組合と環境NGOなどの市民運動が合流したと報じられた。米国の労働組合員の多くは、自らの雇用喪失の心配から中国などとの自由貿易に抗議した。国際的な公正といった論点は、まだこの時点では未熟だった。2001年には、ふたつの出来事が新世紀の新しい国際運動の台頭の契機となった。ブラジル・ポルトアレグレの世界社会フォーラムでは、既存の「グローバリズム」を告発しそのオルタナティヴを討議するための国際的な場がはじめてつくられた。イタリア・ジェノバG8サミットへの抗議デモには、20万人が世界中から結集した。これらを契機に、「反グローバリズム」運動は世界的なネットワークを形成しながら量質ともに奥深いものとなりはじめた。
 2002年2月の第二回世界社会フォーラムには、「もうひとつの世界は可能だ(Another World Is Possible)」というスローガンのもとに、8万人が参加した(ATTACジャパンの報告)。ブラジルのCUT(労働組合)・フランスのATTAC(国際金融取引への課税 CTTを求める団体)・南アフリカのCOSATU(労働組合)・タイの「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」(NGO)・「ビア・カンペシーナ」(農民団体)など、第三世界とフランスの社会運動がイニシアティヴを握った。とりわけ重要なのは、このフォーラムを契機に「反グローバリズム」は、テロを産み出す構造やそれを口実とした「戦争」への闘いと結合したということである。アフガニスタンやパレスチナ自治区への軍事侵攻の問題は、アルゼンチンや韓国の民衆が受けている痛みと全く無縁ではないという意識が広がった。


日本における「反グローバリズム」と新しい労働運動の課題

 こうした世界的な潮流に反して、日本ではリストラにも非正規労働者の無権利状態にも「構造改革」や自衛隊派兵を進める小泉政権にも、大きな反撃がなされてこなかった。日本的経営と古い自民党政治からの脱却だけが論点になり、肝心の労働・生活・平和を守るという視点よりも市場で勝ち組になることが優先され、市場自体を社会的に規制することを軸としたオルタナティヴがあるということを知らされてこなかった。そのため政治の争点も見えにくくなった。
 日本の「反グローバリズム」にはこのような大きな課題があるが、他の国のように、ATTACなど「反グローバリズム」の旗を積極的に掲げる運動と、個々の職場でリストラと闘ってきた労組や非正規労働者を組織する新しい労働運動、そして構造改革と闘ってきた地域の社会運動、既存の平和運動などがつながることができれば、今後重要なインパクトをもちうる。
 日韓投資協定は、東・東南アジア地域のFTAへの第一歩である。米国でも労働組合はNAFTA批判を通じて反グローバリズムに接近したように、こうした協定との闘いは日本において「反グローバリズム」の波を起こす出発点になりうる。国際的視野をもった新しい労働運動は、多国籍企業や国際金融取引への無関心・無規制が、結局のところ「底にむけた競争」を引き起こし、将来のさらなるリストラ・不安定雇用・構造改革をもたらす、したがって組合員の生活を守るということがもはや狭い意味での経済主義では達成できないことを見抜かなければならない。


文責:JNK


Created byStaff. Created on 2002-04-07 08:23:05 / Last modified on 2005-09-06 04:51:02 Copyright: Default

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