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10年の労組破壊に対抗した弁護士たち

[イシュー(3)]ユソン企業労働者10年闘争の勝利、依然残された宿題

ユン・ジヨン記者 2021.01.27 08:11

2020年最終日。 10年にわたるユソン企業労働者の闘争が勝利で終わったというニュースが伝えられた。 そして例がない長い闘争の末に労組は何と10年分の賃金団体協上暫定合意を引き出した。 合意には監視カメラ撤去と不当労働行為責任者処罰、 労組間差別禁止と民事刑事上の告訴告発取り下げ、損害賠償取り下げ、 組合員トラウマ心理治癒事業支援といった内容が含まれていた。 労組破壊の過程で死亡したハン・グァンホ烈士の葬儀関連の合意もされた。 山川も変わるという歳月を粘り、やっと10年前の場所に戻ってきたのだった。

李明博(イ・ミョンバク)政権の時に始まった闘争は、 政権が二回の変わって一段落した。 それもそのはず、ユソン企業は政府と公権力、大企業が共謀した 労組破壊シナリオの接線地区だった。 攻撃的職場閉鎖と用役暴力、懲戒および解雇、監視、懐柔、差別などの労組瓦解作業は、 政府の庇護と黙認がなければ不可能だった。 労組破壊専門労務法人と大型ローファームを動員した各種訴訟戦も続いた。 数十億ウォンの損害賠償請求と業務妨害などの告訴告発は、労組破壊の強力な武器だった。

そしてこれに対抗したユソン企業労働者の闘争に、 法的支援や連帯を惜しまない弁護士たちがいる。 10年間、ユソン企業支会の法律代理人を担当した セナル法律事務所のキム・サンウン、キム・チャゴン弁護士だ。 「ワーカーズ」が彼らと会った。

▲セナル法律事務所キム・チャゴン(左)、キム・サンウン(右)弁護士

国家と資本が結託した労組破壊、依然として残された宿題

10年の歳月、彼らの年齢の10の桁も変わった。 40代の初めに飛び込んだユソン企業の戦いは、齢五十を越して終わった。 うんざりする戦いが終わってほっとする一方、名残惜しくもあるが、 それよりも相変らず釈然としない疑問が解けず、気持ちは楽ではないようだ。 戦いを終えた感想を聞くと、二人の弁護士は淡々とこれまで積もった怒りと惜しみを打ち明けた。

「すでに3〜4年前に終わっていたはずの事件です。 2017年の初めに柳時英(ユ・シヨン)会長が拘束された時に 事件も終結していなければいけなかった。 さらに労組破壊の時点から警察と検察、労働部がもっと積極的に捜査をしていれば、 10年前に終わったかもしれません。 やっと事態が一段落したということに腹が立ちます。」 (キム・サンウン弁護士)

「ユソン企業事件は財閥と国家権力まで加担した 全国的次元の労組破壊事件の一部分でした。 こうした流れ中で、ユソン企業の労働者とともにある程度、 労組破壊を防ぐことががてたのは光栄だと思います。 ただ残念な点は、ユソン企業の背後で労組破壊を指示し加担した 現代自動車と国家権力の問題をすべて明らかできなかったことです。」 (キム・チャゴン弁護士)

ユソン企業労組破壊の背後には現代自動車と青瓦台、国家情報院、 そして労務法人創造コンサルティングがあった。 現代車の役職員はユソン企業、創造コンサルティングと会議を開き、労組破壊を指示した。 第2労組の拡大を勧め、労組破壊現況の細かい報告を受けた。 こうした事実は裁判所の判決でも確認されたが、 現代車関連の役職員4人が執行猶予宣告を受けたことで事件はもみ消された。 創造コンサルティングは国家情報院とも労組破壊文書を共有し、 ユソン企業労働者を非難する李明博元大統領の演説文を作成した。

「創造コンサルティングと現代車資本、ユソン企業が労組破壊を共謀した事実は 裁判所の判決で確認されました。 雇用労働部傘下の雇用労働行政改革委員会が調査した結果、 労組破壊の初期に創造コンサルティングが青瓦台関係者に関連のEメールを送り、 李明博の演説文を作成して渡した事実も明らかになりました。 では、当時李明博政権がユソン企業などの労組破壊にどれほど直接介入したのか、 捜査されなければなりません。 ところが相当な疑惑にもかかわらず、捜査は進みませんでした。」 (キム・サンウン弁護士)

事実、立法から司法制度まで、 法の制度は労働者にとっては傾いた運動場だ。 法の制定・改定で労働者の要求を入れるのが難しく、 訴訟でも裁判所の指向によって判決がひっくり返るのが常だ。 ユソン企業だけでも検察の権限乱用で事件捜査がきちんと行われず、 事業主と労働者に宣告された量刑も不公正だった。 労働者の方に立つ弁護士も、いつも法の不公正さを感じる。 キム・サンウン弁護士は 「柳時英会長と 現代車事件で検事が起訴そのものをしなかった。 事件の序盤に捜査機関が十分な証拠を持っていても起訴しなかったことが最大の壁だった」とし 「柳時英会長の場合、 検察の求刑よりも裁判所の量刑のほうが高かった。異例だ。 これさえ裁判所が新しく起訴された内容は反映せずに低い刑量を決めた」と説明した。

御用労組設立無効事件、労組破壊の犯罪を防ぐ初の判例

今回の合意には、会社が労働者に提起した損害賠償をはじめ、 民事・刑事上の告訴・告発を取り下げる内容も含まれている。 だが、すべての法的な戦いが終わったのではない。 労組破壊の一環として設立された御用労組に対する「労組設立無効事件」が残っている。 すでに1、2審ですべて勝訴して、大法院判決だけを残している。 この訴訟が特に重要な理由は、 複数労組を活用した労組破壊犯罪を防ぐ初の判例として記録されなければならないからだ。

これまで労組破壊事業場では、会社主導で御用労組が設立され、 民主労組の力を弱めてきた。 彼らは多数労組の地位を占有して会社と交渉をし、 既存の民主労組は少数労組に転落して各種の差別に苦しんだ。 会社主導の御用労組設立は労組破壊の共通シナリオだが、 これが不当労働行為と認定され、労組設立が無効化されたケースはない。 会社主導の企業労組設立が無効だという判決を出したのは、ユソン企業の事例が唯一だ。 2016年4月ソウル中央地方法院と2017年10月ソウル高等法院は、 企業別労組が会社主導で設立され自主性と独立性を確保していなかったとし、 設立無効と判定した。 事件は現在大法院に係留中で、今年上半期には判決が出るものと予想している。

「一番記憶に残る訴訟はどうしても労組設立無効訴訟ですね。 率直に勝てるかどうか、確信が強くない事件でした。 ほぼ3年かけて勝つことになりましたよ。 2016年3月18日にハン・グァンホ烈士がなくなり、すぐ宣告が出たのでさらに記憶に残ります。 過去にヴァレオマンドで企業別労組での組織形態変更関連訴訟がありましたが、 1審と2審では無効判決を受けたのに大法院でひっくり返されました。 順天郷大学病院でも企業別労組無効訴訟がありましたが結果は良くなかったのです。 労組設立無効に関して勝訴した事件はユソン企業が初めてです。」 (キム・サンウン弁護士)

2010年前後に発生した企画的労組破壊は 「攻撃的職場閉鎖-団体協上解約-複数労組設立-損賠仮差押え」という公式を作った。 労組破壊を専門に担当する専門労務法人が、法律を使って既存の民主労組を圧迫する方式だった。 解雇と懲戒ほどに組合員を苦しめたのは数十億ウォンにのぼる損害賠償請求だった。 昨年11月基準、23の事業場で労働者と労働組合に対して58件の損害賠償請求訴訟が続いている。 これらの累積請求金額は658億1千万余ウォンにのぼる。 ユソン企業の場合、労組破壊の過程で総額40億ウォンの金額を労組と組合員に請求した。 これについて、2013年に1審裁判所は12億ウォン、 2015年の2審裁判所は10億ウォンの損害賠償金額を認めた。 遅延利子は年20%に達し、毎日30万ウォン以上の利子を払わなければならなかった。 現在この事件も大法院に係留中だ。

[出処:金属労組ユソン企業支会]

「損害賠償でとても大きな金額を請求されるので、 組合員が受ける圧迫と苦痛もとても大きいです。 会社の損賠請求は、労組の交渉と闘争で邪魔になったりもします。 損害賠償請求を御用労組組織化に利用したりもします。 ユソン企業の場合も金属労組から脱退すれば損賠から除外するという方式で組合員を圧迫して懐柔しました。」 (キム・チャゴン弁護士)

数十億ウォン台の損賠請求と懲戒・解雇にもかかわらず、 10年の闘争を勝利に導けたのは、 ユソン企業支会が絶えず現場闘争を展開してきたためだ。 どの弁護士も、組合員が頑張ってくれずに現場闘争が展開できなければ、 法律闘争もできないと話す。 組合員が自ら戦う限り、敗訴の確率も低くなるということだ。 だから彼らはいつも戦う組合員に「勝てる」と話す。

「序盤に損害賠償請求で一般の組合員が苦しむかもしれないという話を聞きました。 重要な問題だと考えて、組合員ははっきり話しました。 損賠仮差押えは十分に防ぐことができ、問題にならないと。 事実、ユソン企業の組合員が動揺する姿はあまり見たことがありません。 ユソン企業の場合、常執幹部や拡大幹部、代議員などの役員が損賠の対象になり、 御用労組に行くと対象から除かれました。 労組破壊序盤だった2011年に御用労組に行った人以外に、 損賠が負担で労組から脱退した人はたった一人もいません。
90年代以後の労組破壊の様相は、 職場閉鎖や損賠仮差押えなどの公式化された制度を活用する面が強くなりました。 だから労組は防御的な側面で、やむをえず法律的闘争を展開するほかはありません。 しかし法律の現場で粘って防御することも、労働者の現場での闘争がなければ不可能です。 法律的に防御したくても、現場で闘争しなければ訴訟自体が成立しませんから。 労働組合の組織力と現場闘争があってこそ、 その後の攻勢的な闘争も可能です。 私は常に組合員たちに苦しくても頑張れば必ず勝つと話しました。 組合員が放棄しない限り、ユソン企業も、現代車も勝てますと。」 (キム・サンウン弁護士)

10年の労組破壊に対抗した弁護士ら

キム・サンウン、キム・チャゴン二人の弁護士が働くセナル法律事務所は、 ネットの地図でも検索にかからない。 建物にありふれた看板さえないのだからウェブサイトもあるはずがない。 どうしてポータルに連絡先どころか住所さえ公開しないのかと聞くと、 「二人ともそんな考えはあまりしていなかった」と答える。 あれば良いと思うことはあっても、自分たちがそれほど不便を感じることがなく、 ポータルに登録するつもりもなかったという。 最近、弁護士マーケティングだけを専門にする広告会社もできているのに、 すごく毅然としている。 だがそれもそのはず、セナル法律事務所はあふれる労組破壊事件だけでも1年365日が戦争のようだ。

セナル法律事務所は主に民主労組運動が行われている現場を法律的に支援する。 それこそ労働・人権を専門とする弁護士事務室だ。 人権弁護士も時には生計型弁護士になったりもするが、 彼らはただ労働事件だけを引き受ける。 キム・チャゴン弁護士は 「最近ではユソン企業事件がとても少なくなり余裕ができたが、 これまでは労働事件だけでも時間がなかった」とし 「現在引き受けている事件も100%が労働事件」と説明した。

大学同期のキム・サンウン、キム・チャゴン弁護士は、 金属労組法律院で初めて弁護士生活を始めた。 大学時期に顔を知っていただけの二人は司法研修院でまた会い、 2008年に金属労組法律院で同僚になった。 そしてその年、金属労組法律院運営規定の議論で共に法律院を出た後、 意気投合してセナル法律事務所を開所した。 初めから二人がかたい約束をしたわけでもないが、 自然に民主労組弾圧事業場を中心として事件を引き受けるようになった。

彼らが引き受けた事業場は、ほとんどが深刻な労組破壊が行われている所だ。 彼らは双竜車整理解雇事件の共同弁護団を始め、 甲乙オートテック労組破壊事件、ユソン企業労組破壊事件など、 それこそ激烈な闘争現場で法律支援をした。 労組破壊事業場は会社が不当解雇と懲戒をはじめ、 業務妨害、損害賠償などで労働者を圧迫するので、 ひとつの事業場だけで数百件の訴訟戦が行われたりもする。 2017年の朴槿恵(パク・クネ)退陣闘争の当時には、 「朴槿恵政権退陣非常国民行動(退陣行動)」の法律チームでも活動した。 労働事件とともに退陣闘争支援もしていた2017年は、 セナル法律事務所が一番忙しかった時期だった。

そして2011年に始まったユソン企業労組破壊は、 弁護士として最も多くの日を注ぎ込んだ事件だった。 まだするべき仕事が残っているからなのか、 10年の戦いを終える彼らの所感は淡々としている。 淡々としていなければ10年間、頑張れなかったのだろう。 今回のユソン企業の労使合意で戦争のようだった日常が少し静かになれば、 弁護士として民主労組運動に参加することをいろいろ考えていく予定だ。 もちろん残業も減らして、初めて一か月の休暇も取る計画だ。

「働いていて、一番残念なのは、韓国社会の労働に対する歪んだ視点です。 さまざまな制度的な問題を含み、マスコミの影響も大きいのでしょう。 こうした不公平な社会から労働組合と労働者に対する歪曲された時間が消え、 労働者が正当な待遇を受けられるようになればうれしい。」 (キム・チャゴン弁護士)

「現場で労働者は本当に熱心に戦っています。 しかし残念なことは、会社の攻撃を防ぐことだけでもとても重い過程と闘争を体験しなければならないということです。 もう労組破壊で労働組合を守る戦い、労働者の席を守る戦いが、 社会的な力で発展したらいいと思います。 だから労働組合の影響力と労働者の力が強くなればと期待します。」 (キム・サンウン弁護士)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2021-02-02 16:46:19 / Last modified on 2021-02-02 16:46:21 Copyright: Default

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