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看護師、英雄ではなく人間扱いされたい

[イシュー(2)] 1年に1人の割合で自殺、半分は医療現場を離れる看護師の現実

パク・タソル記者 2020.09.29 09:37

「おかげさまチャレンジ」は、コロナ19の最前線にいる医療関係者の士気を高めるために 中央災害安全対策本部(中対本)が提案した国民参加型キャンペーンだった。 中対本部長は国務総理、1次長は保健福祉部長官、2次長は行政安全部長官だ。 医療政策を主導する政府部処のこの提案に対し、医療関係者は頭を振った。 政府が少しでも現場を理解しているのかという疑いを持ち始めた。

最近、看護師はまた苦しい状況にある。 専門医のストライキによる医療空白を埋めて、 また国民英雄扱いされるようになったのだ。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は9月2日、自分のSNSに 「コロナ19と長時間の死闘を行い、つらく苦しかったろうに、 長時間ストライキをする医者の荷物まで一手に引き受ける状況なので 本当につらく苦しんでいるのではないでしょうか?」とし、看護師らを褒め称えた。 文大統領は、これからは政府が看護師を助けるとし、 看護人員拡充、勤務環境改善、処遇改善などを支援すると約束した。

しかし、現場の反応は冷たかった。 看護師たちは政府が医師ストライキを貶めるために看護師を利用していると反発した。 看護師の労働条件改善などのために活動する 「健康権実現のための行動する看護師会(行看)」は9月2日に即刻声明を出して 「言葉だけの看護師処遇改善はもうやめろ」とし 「具体的な実行計画と財政を用意しろ」と要求した。 彼らはまた「新規人員をいくら補充しても、 現場の過重な業務強度が改善されなければ、底の抜けた瓶に水を注ぐようなもの」とし 「今この瞬間にも経歴看護師が現場から離れていて、 未熟練看護師が多数を占める現場はすべての人に危険だ」と警告した。 実際に看護師免許者の半分は現場から離れた。 保健福祉部によれば、2016年基準、看護師免許所持者35万人のうち 活動している看護師の数は18万人に過ぎなかった。

コロナ時代、薄氷の上を歩く看護師

事実、看護師はコロナ19の拡散が始まってから毎日毎日薄氷の上を歩いている。 大韓看護協会が5月27日に発表した「コロナ19対応現場の看護師勤務実態調査」 [1] の結果を見れば、 こうした状況が如実にわかる。 「体調がすぐれなければ休まなければならない」という政府の指針があったが、 看護師は体調がすぐれなくても休めず、 過度な業務によって疲労が累積し、 何よりも保護装備の不足で感染への不安が強かった。

該当の質問で看護師の半分以上(55.7%)が健康状態が良くないと認識していても2日以上出勤しており、 このうち27.3%はほとんど毎日体調に異常を感じながらも正常勤務をしたと答えた。 回答者4人のうち3人(76.5%)は感染の恐れを訴えた。 過度な業務による疲労累積(52.6%)、 長時間勤務による集中力低下(31.7%)等を感染危険の主な要因に選んだ。

看護師の憂慮は取越苦労だけではない。 実際に看護師のコロナ19の感染率は、 直接患者を相手にする保健医療労働者の中で最も高い。 疾病管理本部によれば7月基準コロナ19で感染した医療関連従事者は 看護師、看護補助者、医師の順に多かった。

看護師は充電される余暇もなく消耗している。 公共運輸労組医療連帯本部ソウル地域支部ソウル大病院分会によれば、 ポラメ病院の場合、コロナの初期には看護師1人が4〜5人を看護したが、 患者数がますます増えて現在は10人まで増加した。 その上、重症患者が増え、業務の強度がさらに高まった。 815集会の参席者や首都圏確診者に老人が多かったからだ。 ソウル大病院分会のイ・スンア労働安全部長は 「最近、ソウル大病院の看護師からの手紙が増えた」が、 「職場内いじめで苦しんでいたり、業務過多に辞表を書きたいとか、 病院で頑張るのはとてもつらいという内容」と明らかにした。

看護労働者は最近の政府の国立大病院看護人員拡充計画にも憂慮を示している。 9月17日に教育部が発表した国立大学病院人員増員計画によれば、 ソウル大病院は今後、看護師96人、看護補助者14人を補充する。 イ・スンア労働安全部長は教育部計画について 「まだ具体的な時点は出てきていないが、 病院でこの人員をコロナ専門担当人員に配置しようとしていて問題になっている」と話した。 彼は「一般患者を世話する看護師業務が増え、 ナイト勤務中の看護師が17〜18人も見ている状況で言えるような言葉ではない」と指摘した。

コロナ19防疫のために医療人員、予算などの支援を公言した政府だが、 現場の看護師は疑問を持っている。 首都圏のコロナ専門担当病院看護師D氏は 「元から病院の経営状況は良くなかった状況で、コロナ専門担当病院と指定された。 賃金未払いを心配していたが政府はコロナを診療すれば苦労しただけ補償するかのように話したが、 政府が支援する月給は病院より少なかった」と明らかにした。 似たようなことが大邱でもあった。 現在は一部合意したが、看護師を含む大邱医療関係者に手当てを支払う問題についても 政府が難色を示し、差別の議論を呼んだ。

本質を避ける看護人員対策

コロナが荒れ狂う前から看護師の労働条件は劣悪で有名だった。 そしてその劣悪な労働環境で苦み、生を放棄する看護師もいた。 最近5年間で4件以上の看護師自殺事件があった。

結局、昨年1月5日にソウル市が運営する公共病院のソウル医療院でソ・ジユン看護師が死んでいるのが発見され、 看護労働者の労働環境をこれ以上は放置できないという反響が起きた。 ソウル市次元の真相対策委員会が組まれ、いくつかの方案が提出れさて期待も集めた。 しかし職場内いじめ防止条項などが法制化されたが、病院は以前と同じだ。 人が死んでも変わらない病院を見て、看護師は前よりさらに無力感を感じている。

医療現場が全く改善されないという事実は新規看護師の離職率で計れる。 病院看護師会によれば、新規看護師の離職率は2014年28.7%、 2015年35.4%、2016年35.3%、2017年38.2%、2018年42.7%と、 毎年急速に上昇している。 医療法には看護師の最低配置基準があるが、 実際に患者ケア業務を遂行しない管理者がこの基準を充足するために使われている。 病院間の過度な競争で現場の業務の強度も高まっている。

看護師は「看護師1人当りの患者数を法制化すること」が本質的な解決策だと見る。 しかし、政府はこの単純で明確な解決策の代わりにピントがぼけた対策を発表し、怨みの声も買っている。 行看のイ・ミンファ活動家は 「政府の政策は現事態に対する後始末がほとんどで、 根本的な原因を解決する対策は殆どない。 現在働いている看護師の処遇を改善することだけが唯一の解決方案」と強調した。 イ活動家は「現場看護師の話に耳を傾けて聞いていないから現場から遊離した政策が出てくる」とし 「行看と医療連帯本部が7月に青瓦台に行った時も、 青瓦台は既存の制度があるという発言を繰り返しただけ」と批判した。

2018年3月に保健福祉部は「看護師勤務環境および処遇改善対策」で、 医療機関が看護サービスに対する健康保険点数(看護管理料)を 看護師の処遇改善に使うようにするガイドラインを用意すると明らかにした。 看護管理料の加算による追加収入分を看護師の追加雇用と勤務条件改善に使うということだ。 しかし、こうした改善事項も推奨事項に終わる。 看護師の採用を促進するための看護管理料差別制を2000年から施行しているが、 機関の自発的な協力に基づいており、その実効性が着実に問題になっている。 また、看護管理料があまりに低く策定されているため 病院の人員の大多数を占める看護師の人件費の半分も補填できないという問題提起もあがる。

政府は看護師不足の問題は深刻だとし、 2007年から看護大学の定員を大きく増やした。 その結果、「全国看護大学および看護学科入学定員」は 2007年の1万1000人から2014年には1万8000人と、 7年間で7千人(62.7%)以上増加した。 だが2016年の看護師に対する医療機関勤務看護師数の割合は50.80%で、 効率的な人員活用は相変らずできていない。 さらに看護師人員が首都圏および大型病院に集中しており、 地方・中小病院の看護師労働力難が深刻だ。

研究共同体健康と代案のイ・サンユン責任研究委員は 「看護師の雇用には地域別、病院規模別の雇用賃金格差の問題がある」とし 「看護師労働市場の二重構造を改善するためには、 政府が看護師人員規模と最低賃金ガイドラインを設定し、 地域の公共病院を中心に公共財政を投与する根拠を用意しなければならない」と指摘した。 イ責任研究委員はまた 「いまの社会を健康に支えるためにぜひ医療が必要だというのなら、 看護師の人員水準は患者の安全と医療サービスの質を決める一番重要な要因」だと強調した。

禁じられた名前

昨年1月5日、ソウル市が運営する公共病院であるソウル医療院で、 ソ・ジユン看護師が死んでいるのが発見された。 「私を発見したらうちの病院には行かないで。 弔問もうちの病院の人たちからは受けないでほしい」 という言葉を自筆の遺書の最後に残したままだった。
ソウル市次元の真相対策委員会が組まれ、7か月間の調査が進められた。 昨年9月に調査報告書を発表した真相対策委は、 この事件を「職場内いじめによる死亡」で 「公共医療機関で行われた重大事件」と規定した。

真相対策委は該当報告書で 「ソウル医療院の経営方針は外形的な事業拡大だけに集中したため 看護師の業務量と労働強度は強まったが、 これと比べて適正人員配置と合理的運営、実質的労働条件改善には続かなかった」 と指摘した。 また「忙しい看護業務と交代勤務などは閉鎖的な組織文化につながって、 職場内いじめが発生した場合も内部には隠しやすく、外部には認識しにくい」 と強調した。これは看護師全般にわたる問題でもあった。

真相対策委は調査報告書を終えるにあたり、再発防止のための20ケ領域、 34項目の課題を勧告した。 △経営陣懲戒および交代、 △看護管理者懲戒、 △看護婦院長制導入、 △適正人員配置、 △苦情処理専門担当組織用意が主な課題だった。 しかし1年経った今もきちんと履行されていない。

まず経営陣の交代の事項は、キム・ミンギ医院長が1月に辞め、 一部責任を取るかのように見えたが、 これを「刷新」と見るのは難しそうだ。 6月に就任した某医院長は、2018年までソウル医療院で義務副院長などの要職を経た人物で、 事件の前からソウル医療院の政策に深く関与した経営陣だ。 交代勧告を受けた(医務)副院長もそのままだ。 ソ看護師の死に責任がある3人の看護管理者も警告懲戒で終わった。

真相調査委に参加した民主労総公共運輸労組医療連帯本部新ソウル医療分会のキム・ギョンヒ分会長は 「死亡事件の責任が警告懲戒で終わったので、 もう病院は何をしても恐ろしいことはない。 職場内いじめの認識が強化されているが、 うちの病院ではまだこの問題を深刻に思っていない」と苦しさを吐露した。

政策提案と共に、病院人員の核心の看護師問題を解決する方案として議論された看護婦院長の席も用意されなかった。 ソウル医療院は9月に組織を改編したが、看護婦院長は新設せず、 既存の医務副院長の下に公共医療本部長(看護本部長)を置くに終わった。

ソ看護師とともに働いていた同僚のB氏は 「ソ・ジユンという名前は病棟で『禁止』された」とし 「管理者はソ看護師の死そのものを望ましくないと考えているようだ。 ソ看護師の1周忌イベントを病院内でしたが、 看護師は見もせず、集会はガードに囲まれて区分されたまま進められた」 と苦々しく話した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-10-12 02:41:21 / Last modified on 2020-10-12 02:45:56 Copyright: Default

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