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女性運動賞を受けた第1世代市民運動家の朴元淳、その裏面の記録

[イシュー] 2006年市民社会性暴力事件、沈黙した民主化世代

ユン・ジヨン記者 2020.07.29 07:41

[出処:キム・ヨンウク]

職場内セクハラの苦痛を誰よりもよく知っていた人権弁護士

秘書性暴力疑惑で自ら命を絶った朴元淳(パク・ウォンスン)前市長は、 90年代に「女性運動家」として名前を馳せた。 人権弁護士として活動しながら1986年の富川警察署性拷問事件、 1993年のソウル大ウ助教セクハラ事件などの弁論をした。 特に、ソウル大ウ助教事件は国内で最初に提起された職場内セクハラ訴訟だった。 彼は外国の職場内セクハラ概念を初めて国内に導入した弁護士であり、 そのために誰よりもこの問題について相当な知識と経験を持つ専門家だった。 また、女性人権問題において先進的で進歩的な立場を表明してきた市民運動家でもあった。

彼は職場内セクハラ被害者の苦痛を誰よりもよく知っている人だった。 1994年のソウル大ウ助教セクハラ事件の弁論当時、 彼は「セクハラを受けた大部分の女性が対人嫌悪症状を見せるなどの疾患にまで発展し、 正常な社会生活が難しい状態」とし、 「見えない傷が見える傷よりも深刻で長引く」と主張した [1] 。 職場内セクハラを「業務上の威力をもって勤務条件を担保に望まない 性的、攻撃的行為を持続すること」と定義し [2] 、 男性たちに「性に対して分別を失うことは男としてありえることではなく、 致命的な人格的欠陥だという認識の転換が必要だ [3] 」と忠告した。

何よりも彼は加害者だけでなく、雇用主にも職場内セクハラの責任を問うた。 ソウル大のウ助教セクハラ事件裁判は、 加害者に対する500万ウォンの罰金刑で勝訴したが、 朴前市長はこれを「中途半端な勝利」と評価した。 加害者の誤りの認定だけで終わり、 加害者を雇用した雇用主の責任が問われなかったという批判だった。 これと共に「訴訟は最後の極端な救済方法であり、 男女雇用平等法に雇用主がセクハラ防止策を講じる義務規定をおいて、 雇用主は『セクハラに対する社規』を制定しなければならない」と主張した。

女性の人権に関心が多かった彼は、女性団体とともに各種の女性関連訴訟の弁護士として活動し、 女性の地方議会参加のための市民社会活動を繰り広げた。 「韓国女性の電話」で理事を歴任し、女性民友会雇用平等本部共同代表としても活動した。 このような功労を認められ、彼は1998年に韓国女性団体連合が主催した 「今年の女性運動賞」を受賞した。 当時の女性運動賞受賞者は、ソウル大ウ助教セクハラ事件共同弁護団の 朴元淳(パク・ウォンスン)、李鍾杰(イ・ジョンゴル)、チェ・ウンスン弁護士だった。

1998年に「今年の女性運動賞」を受賞した朴元淳と李鍾杰

市民運動で大型の歴史を書いていった朴元淳前市長は 2011年、ソウル市長に当選した。 そして2020年7月まで、国内最長期のソウル市長として在任していた。 彼の名はしばしば民主党の次期大統領選挙候補として言及された。 次の彼の行動は「大統領選挙への挑戦」になるはずだった。 だが彼は7月10日の未明に亡くなっているのが発見された。 朴元淳前市長の秘書だったA氏が 彼を職場内セクハラ・性暴力容疑で告訴した直後だった。 A氏の弁護人は、パク氏が執務室で被害者の身体に密着させ、 セルフィーを撮り、膝に唇を当てて、淫らな携帯メッセージと下着姿の写真を送るなど、 被害者を性的にいやがらせたと暴露した。 市長と秘書という階層の中で、威力による職場内性暴力は延々4年間続いた。

彼とともに「女性運動賞」を受賞した李鍾杰前共に民主党議員は朴市長の死後、 あるラジオのインタビューで 「ソウル市という巨大な団体をバランスよく運営するために心的なご苦労が多かったのだろう」とし 「そのような状態で、もしその被害者、被害告訴人が主張することが事実ならば、 非正常的な緊張状態が続く状況で内的な平正心がちょっと均衡を失ったのではないかと考える」と述べた。 合わせて「そのように考えても、人権問題、国家保安法を事実上廃止させた最大の功労者も 朴元淳市長だと思う」とし、 これまでの功労と唯一の財産だったという100億ウォン代の建物を寄贈した話などを打ち明けた。

李鍾杰前議員は2012年、 自分のツイッターに朴槿恵(パク・クネ)当時議員を「彼女は(クニョン)」と呼んで議論を起こした。 該当の表現が問題になると「彼女は(クニョン)」は「彼女は(クニョヌン)」の縮語だとか 「彼女は(クニョヌン)」の打ち間違いだったと主張した。 だが民主党最高委員会では「表現が弱い、もっと強める、 李鍾杰は軟弱すぎると話した人もいた」と発言し、 某言論とのインタビューでは 「ミスはしたが、その言葉をそのままにしておきたかいという考え」とも述べた [4] 。 昨年末には自分のFaceBookに羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)前未来統合党院内代表の心とし 黄教安(ファン・ギョアン)前代表を「教安兄さん」と呼び議論を起こした。

MeToo運動を支持した朴元淳、彼が迎え入れた参謀

朴前市長はソウル市長になった後にも、 女性問題においては以前と変わらない声を上げた。 MeToo運動を支持し、性平等政策の必要性を強調した。 小説「82年生まれキム・ジヨン」を読んで涙を流したとし、 「82年生まれキム・ジヨンの悲しみをソウルから無くす」とも述べた。 2018年、ある日刊紙とのインタビューでは「ウ助教事件」と称する記者に 「ウ助教事件でなくシン教授事件」だと面と向かって責めたという逸話もある。 あるマスコミは「朴市長の言葉は徹底的に被害者中心に事件を見なければならないという意味」とし、この逸話を紹介した [5]

一方で朴前市長は安熙正(アン・ヒジョン)前知事の側近で、 安熙正性暴力事件で被害者に不利な陳述をした人物を自分の前参謀として迎え入れた。 4月、朴前市長は政務職人事交替の当時、疎通戦略室長としてチャン・フン前忠清南道メディアセンター長を任命した。 チャン・フン前室長は安熙正前忠南知事メッセージチーム長と 安熙正キャンプ広報企画などを歴任した人物だ。

彼は2018年3月、安熙正性暴力事件が起きると、 安前知事とともに辞表を出した。 そして該当性暴力事件の1審裁判で「被害者がとても知事が好きで、仕事をさらによくやった」、 「だから(被害者の役職が変更された時)傷心はより大きかったのだろう」[6]、 「安前知事は民主的な信念を持った人」、 「ついこの前も気楽に話していた人(キム・ジウン氏)が、 なぜ突然私たちを『疎通できない集団』といえるのか、理解できなかった」 [7] など被害者に不利な陳述をした。

朴前市長が死亡した後では政務職の人々の責任論も出てきている。 別名「6階の人々」と呼ばれる彼らが被害者の訴えを無視し、 性暴力を隠したという疑惑だった。 一部の言論は性暴力で拘束された安熙正前知事と、 性暴力容疑を受けて死亡した朴元淳前市長を続いて補佐した チャン・フン前室長を「悲運の参謀」と命名すした。

2006年の市民社会性暴力事件の記録、沈黙した民主化世代

朴元淳前市長は、 2006年に発生した「市民の新聞」性暴力事件の中心にもいた。 その年、市民団体の希望フォーラムの女性幹事は「市民の新聞」の イ・ヒョンモ社長からセクハラを受けたと告発した。 被害者はイ社長の辞任を要求し、数日後にイ社長は辞任の意思を表明した。 だが翌日開かれた臨時理事会は、イ社長の辞任処理を延期した。 その後に開かれた理事会でも 「辞表を受理するほどの事案ではないという意見が出てきて、辞表を返す」と決め、 すぐまた理事会を開き 「本人の辞退の意志が強く、代表理事と理事職の辞表を受理する」と決定した。

そして二日後に理事会はイ社長が借入れた負債と市民の新聞が所有していた在外同胞新聞の株式を計上処理して、 イ社長の負債を整理した [8] 。 これで在外同胞新聞は市民の新聞から分社し、 イ・ヒョンモ社長は現在も在外同胞新聞発行人として活動している。 しかし市民の新聞は翌年、サーバーと事務室が一方的に閉鎖されて職員は整理解雇になった。

[出処:キム・ヨンウク]

朴元淳市長は性暴力事件の当時、 市民の新聞の理事として活動していた。 「市民の新聞」は市民社会の政論紙で、市民団体共同新聞を標榜して1993年に創刊したメディアだ。 朴元淳前市長をはじめとする市民運動陣営の代表的人物が 理事あるいは編集委員に名前を連ねた [9] 。 当時の理事陣は、チョン・ヒョンベク前女性家族部長官(当時女性連合共同代表)、 李学永(イ・ハギョン)共に民主党議員(当時YMCA全国連盟事務総長|書記局長)、 チェ・ヨル環境財団理事長、ソン・ポギョン消費者リポート代表などだった。 そして朴元淳とチョン・ヒョンベク、 李学永、チェ・ヨル、ソン・ポギョンなどは、 性暴力被害者が働いていた団体の「希望フォーラム」の常任運営委員でもあった。 イ・ヒョンモ社長は希望フォーラムの運営委員長だった。

この事件は、イ・ヒョンモ社長がセクハラの事実を否定し、 市民の新聞の職員に対する刑事告訴と1億8千万ウォンの損害賠償を提起して対立が増幅された。 だが朴元淳前市長はイ社長の性暴力事件に関して始終一貫沈黙を守った。 当時、性暴力共対委活動をしたチョハン・ジニ活動家は 「イ・ヒョンモ社長は市民社会団体における職位と人脈が相当多かった。 朴元淳前市長は、 イ・ヒョンモと市民の新聞、希望フォーラムなどで一緒だった」とし 「性暴力事件に関する理事会の席で朴元淳市長が沈黙したという話もあり、 間接的に加害者を保護したという話もあった」と説明した。

いわゆる市民運動の名望家たちが布陣した団体だけに、 性暴力事件に対する市民社会陣営の支持と連帯も容易ではなかった。 事件を揉み消そうとした理事陣もあった。 文在寅(ムン・ジェイン)政府の発足後、 女性家族部長官をしたチョン・ヒョンベク前長官は、 2007年に言論とのインタビューで該当性暴力事件について 「今年は大統領選挙まである年なのに、 この事件が繰り返し争点化されれば、 その部分(市民運動)の役に立たないと判断した」と話して問題になった。

当時、共対委は声明を通じて 「イ・ヒョンモをはじめとする理事会の人々はほとんどが いわゆる市民運動1世代グループだ。 そのような人たちが市民の新聞のイ・ヒョンモ前社長のセクハラ事件と市民の新聞事態で見せた処身と行動は、 今日の市民運動の現実を生き生き見せている」とし 「市民運動第1世代が内部の不道徳と身内庇護などで崩れている」と批判した [10] 。 一方、朴元淳前市長は2014年、 イ・ヒョンモ在外同胞新聞代表との対談で 「ソウル市が対外同胞のためにできることなら何でも積極的に助ける」 と語っている。

「性ヌリ党」を批判した民主党、「権力型性暴力」の反復

李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権当時に執権与党だったセヌリ党(現未来統合党)は、 各種の性暴力事件で「性ヌリ党」というニックネームを得た。 当時、民主党をはじめとする野党は、保守与党の低い性認知感受性と不十分な再発防止対策を批判した。 そして「フェミニスト大統領」を自任するした文在寅政権が発足して3年半。 今では執権与党になった共に民主党は、引き続く性暴力事件に包まれながら 「共に触る党」、「触る民主党」等の汚名を得た。 以前、保守党に向けた「低い性認知感受性」と「不十分な再発防止対策」に対する批判は、 残念にも民主党の役割になった。

安熙正知事と呉巨敦(オ・ゴドン)市長、鄭鳳柱(チョン・ボンジュ)議員をはじめ、 李在賢(イ・ジェヒョン)区庁長、ミン・ブギ区議員、ユ・スンヒョン前議長、 そして朴元淳市長まで。 権力に上がった政界の人物の「権力型性暴力」は例外なく繰り返された。 事件が発生するたびに党は「何も聞きも調べもしない」除名で揉み消してきた。 安熙正前知事は、 性暴力暴露当日、党から除名され、 呉巨敦前釜山市長は 党倫理審判員会議で20分で除名された。 引き続く性犯罪事件だったが、真相調査や再発防止対策もきちんと作られなかった。 被害者のための活動や2次加害に対する保護措置もなかった。 [11]

一方、共に民主党は最近効率化を理由として 国会女性家族委員会廃止を推進しているという。 女性家族委を文化体育観光委員会に統廃合させるということだ。 また去る7月14日には党代表の動きの幅が制限されるとし、 党最高委員の構成に30%女性割当制を導入しないことを決定した。

〈脚注〉

[1] 「禹助手セクハラ事件」無料弁論バン・ウォンスン弁護士 「男性の意識から変わらなければ」、ハンギョレ、1994.10.11

[2] 「男性もセクハラの標的」、京郷新聞、1994.4.20

[3] 人格欠陥の産物「セクハラ」、ハンギョレ1996.2.29

[4] 国会倫理審査諮問委員会、国会議員李鍾杰懲戒案(議案番号第1122号)、2012.10.12.

[5] 「ウ助教でなくシン教授」朴元淳の理由ある「けんつく」、〈OhmyNews〉、2018.3.20.

[6] 「キムジウンは道知事が好きだった」という安熙正の側近、ノーカットニュース、2018.7.11.

[7] キム・ジウン、安熙正、もうひとつの証言...もうひとつの反転?、〈Eニュースデイリー〉、2018.7.11

[8] イ・ヒョンモない市民社会のための共同行動、 市民の新聞闘争経過(2006.9.5.〜2007.4.29.)

[9] 〈市民の新聞〉をめぐるいくつかの気がかりなこと、 キム・ヒョンジュン、〈月刊サラム〉、2007.7.9

[10] イ・ヒョンモの刑事告訴と市民の新聞理事会のインチキ株主総会強行を糾弾する!、 市民の新聞事態解決のための共同対策委員会、2007.2.23

[11] 民主党の性暴力事件対応...「とにかく」除名は正しいのか?、チャムセサン、2020.4.30

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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