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権力型性暴力と向き合った時

[イシュー]追慕の方式

ウン・ヘジン記者 2020.07.27 10:16

秘書性暴力容疑で訴えられた直後に自ら命を絶った朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長。 彼の死をめぐり追慕と哀悼の方式が交錯した。 ある人は彼を「市民運動の歴史」で膾炙し、 ある人は彼を「権力型性暴力」の加害者として記録した。 常に権力型性暴力の被害者になる20〜30代の女性たちは、 彼をどのように記憶するのだろうか。「ワーカーズ」が彼らの話を聞いてみた。

[出処:キム・ヨンウク]

#1.追慕の方式

「事件初期に加害者が死亡したため、十分な省察が不足していました。 みんな、勝手な言葉、勝手な立場を吐き出して。 『死者に対する礼儀を守らなければならない』という慣行がむしろ武器になって、 被害者に対する怒号になったのです。」 ― オ・スンウン(36)民主労総公共運輸労組政策局長

「朴元淳(パク・ウォンスン)市長も、生前に被害者中心主義立場を堅持しました。 故人を賛える方式は、性暴力問題を解決して被害者を保護することであるべきだと思います。 彼の業績と功績を賛えることは、あるいは被害を縮小して揉み消そうとするかのように見なされます。 そのために性暴力事件を認知して、問題解決を要求する方式で追慕されるべきだと思います。 また、朴元淳市長が公務中に死亡したのでもなく、 該当事件の公訴権まで消えたのだから、 ソウル市葬で葬儀をすることは正しくないことだったと考えます。」 ― イ・ミンジ(仮名)(34)正義党党員

「最初のソウル特別市葬というタイトルを付けました、 『人が死んだのだから、まず弔問しよう』という考えは、 被害者の苦痛を加重させられると思います。 被害者に対する人格冒涜、身上公開の圧迫なども、とても暴力的に行われました。 事実、ソウル市や共に民主党次元で一定部分、そうした雰囲気を作ったと思います。」 ― カン・ハンニム(24)参加と革新記者

「学校という空間の特徴のためなのか、 教師どうしでは政治的な話はほとんどしません。 個人的に性暴力事件が加害者の死で埋もれてしまうことが苦しいです。 被害者に加えられる2次加害もとても深刻でした。 朴元淳という人が とても貴重だとか、 今まで何も言わずになぜ今になって話すのかと言いますが、 それが事件で重要な問題ではないでしょう。」 ― チェ・ユリム(仮名)(31)中学校教師

「性犯罪者と決めつけることはできなくても、 疑惑がある状況で、一方では職務遺棄だったと考えます。 死亡したという報道を見て無責任な人だと思いました。 それでも葬儀は盛大に行われました。」 ― キム・チェリン(25)社会福祉士

#2. 性暴力と向き合った時

「事実、女超集団の学校でも、性暴力事件を告発するのは容易ではありません。 私が経験した学校という空間は、 そんなことを告発しても簡単に黙殺される構造でした。 会食の場で酒に酔って年上の男性部長が私の足に手を上げていたという事実を後で聞きました。 周辺の教師が睨んだのに、またそうしたといいました。 セクハラ発言は日常的です。 もし私が被害を公論化すると決心した時、誰にどう知らせるかも悩みです。」 ― チェ・ユリム

「権力型性暴力だったと決めつけるのは難しくても、 私もやはりささいな事を体験しています。 以前は事件が起きた時、ただ個人的に考えてやりすごすことが多かったのです。 しかし今はそうでないと思います。 すでに多くの女性たちが互いに連帯していて、 性暴力は社会的な問題だと合意したのではないですか。 ですから似たような事件が発生すれば対応すべきなのか、 するべきでないのかを悩むことはないと思います。」 ― オ・スンウン

「性暴力を体験したら二律背反的な気がしそうです。 証拠を集めて告訴したいという気持ちと、 我慢して迂回的に解決したいという気持ち。 2次加害という恐れが事件に対する公論化をためらわせるのが腹立たしい。 多分、告訴すればここで仕事を辞めなければならないかもしれません。 あるいはまた立ち上がることができないかもしれません。」 ― カン・ハンニム

#3. 私が信頼して尊敬した人が加害者なら

「加害者が罰せられるように被害者が努力しなければなりません。 一連の権力型性暴力事件を見て、やはり進歩、公人男性に支持表明をしなければならないのかと考えました。 したこともありませんが。 男性なら、とにかく警戒しようという気がしました」 ― カン・ハンニム

「加害者が尊敬を得る過程で被害者が多かったと考えそうです。 どう告発して、被害者に対する連帯を育てていくのかを考えるべきです。 極端な反応があふれるので、気持ちの覚悟はするべきだと思います。」 ― オ・スンウン

「挫折感、虚脱感が大きいでしょう。 この問題をどう処理して解決するのかによって、 加害者に対する考えも変わりそうです。 加害者が反省して責任を取る姿勢を見せれば、 まず反省から本人の位置に復帰できるように助けたいです。」 ― イ・ミンジ

#4. 386世代は知りながら、なぜ。

「最近『一世代が行って、新しい世代がきた』とよく言われます。 民主化世代は彼らが学習した時とは違う時代がきたことに付いてこれません。 そして彼らは今、既得権になって全てを享受しています。 386世代が不動産政策で保守的立場を取るように、 彼らが既得権になったことで発生する問題でないでしょうか。」 ― イ・ミンジ

「そもそも性平等と性認知感受性は、 386世代が社会運動で見のがした部分だと思います。 私はこれ以上、386世代に特別なことを期待するのは難しいと思います。 それでも私たちの世代の男性に問題がないということではありませんが。」 ― カン・ハンニム

「386世代の民主党の男性たちは、 正義党の張恵英(チャン・ヘヨン)、柳好貞(リュ・ホジョン)議員の弔問拒否を 世の中が崩れたように受け止めているようです。 彼らにとって朴元淳(パク・ウォンスン)は個人的な因縁や政治的な負債感が入り乱れた存在なのでしょう。 しかし私たちの世代は共感できません。 朴元淳はただの政治家の1人でしかありません。 張恵英柳好貞議員の反応は、 われわれの世代の自然な反応でした。 今までは368世代が言えば若い女性もうんうんとうなずいたでしょう。 しかし時代も変わり、世代も変わりました。 もう386世代の男性も共に暮らすための方法を考える時だと思います。」 ― オ・スンウン

「386世代の性暴力加害者をグループとして考えてみたことはありません。 しかし、人権を叫んだ人々がどうして人権蹂躙の性暴力をするのか 理解できなかったんです。 ふと彼らが最初から自分の利益のために人権運動をしたのかもしれないとさえ思いました。」 ― キム・チェリン

[出処:キム・ヨンウク]

性暴力3件に1件は職場で発生

2018年に「MeToo(#MeToo)運動」が触発された後、 社会高位層の性暴力加害の事実が相次いで暴露された。 当時、安熙正前知事の性暴力事件などは 「集団内部権力関係による被害者に対する無形の支配力」という点で 「権力型性暴力」と命名された。

「巨大な権力の前で、無力で弱い私自身を守るために 公正で平等な法の保護を受けたかったです。 安全な法廷でその人に向かって、そんなことをするなと大声をあげたかったです。 苦しいと泣き叫びたかったです。 許したかったです。 法治国家、大韓民国で法の審判を受けて、人間的な謝罪を受けたかったです。」 ― 朴元淳前ソウル市長の性暴力を告発した被害者の文より [1]

朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長の秘書だった被害者は、 彼が死亡する前日にパク市長を性暴力容疑で告訴した。 7月13日に開かれた被害者側記者会見で韓国性暴力相談所のイ・ミギョン所長は 「朴市長は業務時間だけでなく、退勤後にも私生活への言及、 身体接触、写真転送をするなど典型的な権力と威力によって被害が発生した」と説明した。 続いて「これは4年間続き、 被害者は長い間悩んだ末に去る7月8日、ソウル地方警察庁に告訴した」と伝えた。 被害者も、被害者側も「権力」により被害が発生したと話す。 では職場内の権力関係による性暴力被害規模はどれほどだろうか。 なぜ被害者は4年間、被害事実を表わすことができなかったのだろうか。

安熙正(アン・ヒジョン)前知事性暴力事件以後、 「業務上威力による姦淫および醜行」は代表的な権力型性暴力犯罪と言われる。 警察庁の犯罪統計によれば、最近5年間の威力による姦淫・醜行は 2014年に240件、2015年に298件、2016年に309件、2017年に355件、2018年に325件で、 2018年を除けば増加傾向だ。 警察庁は業務上威力による性暴力事件が統計で確認されているよりはるかに多いと見ている。 刑事法情報システム運営掛担当者はワーカーズとの通話で 「捜査官がシステムに事件を入力する過程で二つ以上の犯罪に該当する場合、 最も深刻な罪名で登録することになっているため」と説明した。 女性家族部も捜査機関に到達できない事件が統計から除外され、 現行法で処罰できる事件だけを含んでいるという限界を指摘している。

2018年、韓国性暴力相談所の1189件の相談件数のうち、 職場内性暴力件数は353件で29.7%を占める。 最近3年間の統計を見ると、性暴力事件の3分の1が職場内で発生している。 また被害者との関係を調べると、加害者が上司のケースが154件(43.62%)で最も多い。 同僚は66件(18.7%)、雇用主は64件(18.13%)の順だ。 つまり職場内性暴力の60%以上が地位が高い加害者によって発生する。

大部分の職場内性暴力事件の被害者は、被害事実をひとりで耐えることが多い。 社内・外部の機関に対する低い信頼度と2次加害に対する憂慮のためだ。 2015年に女性家族部が実施したセクハラ実態調査によれば、 セクハラ被害者の78.4%は被害に対処しなかった。 そのうち50.6%は「問題を提起しても解決できそうもないから」対処しなかったと答えた。 だが社内機構や外部機関等を通じて公式に事件を処理した回答者は0.9%に終わった。 この他にも6.8%は個人的に処理したと答え、4.7%は上級者・同僚との面談などの方式で対処したと答えた。

会社内の苦情処理機構に被害を告発したが調査が行われないという問題もあった。 1年間(2018年3月〜2019年3月)に雇用労働部の「職場内セクハラ匿名申告センター」に申告された被害事例を調べると、 「会社に知らせたが調査が行われない場合」が16.0%を占めた。4.3%は形式的な調査に終わったと答えた。 会社で独自に調査をしたケースは17.5%だった。 セクハラの類型では、身体接触などの醜行が48.5%で最も高く、 わい談で被害者に不快感・屈辱感を与えたケースは42.0%だった。

そればかりか、加害者に対する懲戒が行われなかったり、 申告以後に被害者に不利な措置が取られる事例もあった。 実際に、加害者が懲戒を受けたケースは8.8%に終わり、 懲戒措置なく事件がもみ消されたケースは24.5%に達した。 事件と比べて軽い懲戒で終わったケースも7.4%だった。 その上、被害者が加害者と同じ部署に配置されたケース(6.7%)もあり、 解雇(6.3%)、辞職推奨(5.5%)などで申告者が被害を受けるケースもあった。 セクハラ申告者に対し、 △被害者に対する不利なうわさ、 △被害者の責任にする非難、 △同僚の露骨的・隠密な除け者などの2次加害も存在した。

雇用労働部は受付られた申告に対して、 △行政指導305件、 △過怠金賦課処分25件(事業主加害者6件、被害者保護措置義務違反3件)、 △検察送検(起訴意見)1件の措置を取った状態だ。 受け付けられた申告717件のうち、被害者が申告を取り下げた事例も146件にもなった。

「権力型性暴力は決して私的には起きない」

[インタビュー]安熙正事件の被害者側証人、チョン・ヨンシル氏

安熙正(アン・ヒジョン)前知事と、朴元淳(パク・ウォンスン)前市長は、 どちらも自分の業務を補佐する秘書に性暴力を加えた。 この二つの事件はどちらも有名政治家の「権力型性暴力」で、 階層関係による「職場内性暴力」だった。 大統領選挙候補と議論されてきた人物だけに、深刻な2次加害も続いた。 安熙正性暴力事件の時に キム・ジウン氏の横で被害事実を証言してきたチョン・ヨンシル氏から 「権力型性暴力」がどのような方式で行われるのか話を聞いた。

故朴元淳前ソウル市長の性暴力事件をどう見たか。

腹が立って虚しかった。 失望する余力も残らなかったが、被害者がとても心配になった。 一人でする戦いではないと知らせたくて、ツイッターに文を掲示した。

*「安熙正前知事の権力型性犯罪は絶対、私的には起きない」という文を書いた。具体的などんな意味か。*

朴元淳前市長の事件を見て感じたことは、 人々が性暴力事件を「私生活の領域」と言って縮小しようとするということだ。 だが秘書の業務を「私生活を含む機関長の気持ちの管理」と決めつければ、 機関長が秘書を私的に応対しても、秘書は機関長を公的に応対するしかない構造になる。 言い換えれば、暴力が起きるほかはないということだ。 2次加害者は機関長・加害者の側に立って「私生活は口にするものではない」と 被害者の口を閉じさせる。

*安熙正の権力はどのようにあらわれたか。*

今考えれば「知事」がいやがるかと思って、言うべきことを言えずに戦々恐々として一日が経ち、1か月経つこともあった。 当時、正しいことを言う人はみんな閑職に行ったり、解雇されたので、 安前知事の横には奸臣だけが残ったという裏話もした。 残った人は安熙正の両腕だった シン・ヒョンチョル前秘書室長、チャン・フン前メディアセンター長、 その他、政務会議に入るチーム長級程度だった。 だから性暴力事件疑惑を聞いても「知事」の呼称を捨てられず、 安熙正が悪いと考えることさえできなかったのだ。 それが威力ではなかったようだ。

*安熙正前知事の性暴力事件が公論化されるまでは安前知事の支持者だった。いつからそんな考えが消えたのか。*

性暴力事件が暴露されると、安熙正は自分のFaceBookに 「合意による関係という秘書室の立場は間違っている。すべて私の誤り」という内容の掲示物を上げた。 「そんなことがあった」と加害者が認めるほどなら、 元に戻せないというのが私の最初の結論だった。 衝撃から抜け出す期間を別としても、人の顔を見るのに一週間かかった。 その時までは安前知事が謝罪して終わらせるのではないだろうかと考えながら 「知事」と呼んだ。 そのように純真に考えていたが、共に証言をした友人(ク氏)に 安熙正側が 「被害者を攻撃する準備をしている」という話を聞いて空が崩れるようで 本当に恐ろしかった。

朴前市長も安前知事も進歩政治家と呼ばれる。彼らの性暴力事件をどう思うか。

386世代は口では民主化、進歩を語りながら、 女性を率いたいという欲望を絶対に放棄できないようだ。 私は2013〜2015年に大学院にいた当時、講師から持続的に性暴力を受けた。 それでも先輩たちは「それでもあの人は『保守』ではない」と話した。 彼らが今になって性暴力をするとは思わない。 彼らがしたことが今になって「性暴力」と命名されただけだ。

[脚注]

[1] 韓国女性政策研究員他6団体、第20次ジェンダーと立法フォーラム『#MeToo立法課題』、チャンイム・ダヘ提案発表文

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-07-28 09:18:25 / Last modified on 2020-07-28 09:18:26 Copyright: Default

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