本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:ジョージ・フロイドのデモをどう理解するか?
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 202006003
Status: published
View


ジョージ・フロイドのデモをどう理解するか?

[INTERNATIONAL2]

パク・ヒョンジュ(歴史研究者) 2020.06.30 10:40

米国で黒人がくやしく命を失う事件はあまり特別ではない。 そして不幸にも大部分の死は広く知られる前に、すぐ他の死で覆われてしまう。 今年だけでも2月23日にジョージア州のある住宅街で 25歳の黒人男性、アフマド・アーベリーがジョギングの途中に白人の父と息子の銃で撃たれて死亡した。 アーベリーの死亡場面は映像に撮影されたが、2か月が過ぎても加害者は逮捕されなかった。 3月13日にはケンタッキー州で麻薬犯人を追っていた警官が、とんでもない家庭に押しかけて22発の銃弾を発射し、 26歳の黒人女性、ブレオナ・テイラーを殺害した。 今回もテーラーを殺害した警官は逮捕されなかった。

しかし、それから発生したひとりの黒人の死は、誰もが予想できない結果を生んだ。 5月25日、ミネソタ州のミネアポリスでニセ札の使用が疑がわれた46歳の男性、 ジョージ・フロイドが8分46秒の間、警官の膝で首を押さえつけられて死亡した。 フロイドが「息ができない」と話す映像が公開され、 彼の首を押した警官は逮捕されなかったという事実を知った多くの人々が通りに出た。 そしてフロイド死亡抗議デモが終わらない6月13日、 ジョージア州のアトランタで逮捕に抵抗した27歳の男性、 レイシャード・ブルックスが銃撃で死亡した。 今回は驚くべきことに数日で彼を撃った警官が解雇され、起訴された。

2020年のデモは驚くべきほど2014年のファーガソンのデモと似ている。 2012年2月26日、フロリダ州で17歳の黒人少年トレイボン・マーティンが非武装状態で銃で撃たれて死亡した。 彼を撃った犯人は翌年、正当防衛を認められて釈放され、こ の結果を受け入れられかい活動家たちは「黒人の生命も貴重だ」というスローガンを作って抗議した。 2014年7月17日にはニューヨーク市でタバコを売っていた43際の黒人男性エリック・ガーナーが警官に首を締められて死んだ。 ガーナーは意識を失うまで「息ができない」という繰り返したが、 裁判所は彼を殺害した景観を起訴しないことにした。 8月9日ミズーリ州ファーガソンでは18歳の男性マイケル・ブラウンが非武装状態で真昼に景観の銃で殺された。 市民はもう我慢できず追慕と抗議のために街に出て、数か月後にブラウンを殺害した警官がガーナーの時と同じように起訴されなかったため、また飛び出した。

[出処:https://en.wikipedia.org/wiki/GeorgeFloyd_protests]

不正な免責とその余波

人々はなぜフロイドの死以後に通りに出たのだろうか? それはフロイドの最後の姿を映した映像が特に恐ろしかったからではなく、 彼の死で米国の警察と司法制度が黒人の生命を保護することが期待できなくなったからだ。 1992年にロサンゼルスでデモが発生した時は、 黒人男性ロドニーキングが警官に殴打された時ではなかった。 事件を撮影したビデオは1991年3月3日の事件発生直後に公開されて多くの人が怒ったが、 道路に集まることはなかった。 事件が発生してから1年1か月経った1992年4月29日、 キングを殴打した容疑で起訴された白人警官4人が陪審員によって無罪の評決を受けた。 この知らせを聞いた黒人は真昼から通りに飛び出して約5日間、 放火と略奪を伴う大規模デモが発生した。

マイケル・ブラウンの死に触発された2014年のファーガソンのデモは、 トレイボン・マーティンとエリック・ガーナーを殺した人が適切な法的処罰を受けていれば起きなかっただろう。 2020年にもアフマド・アーベリーを撃った白人の親子が適時に逮捕されていれば、 ブレオナ・テイラーを殺害した警官が起訴されていればどうだっただろうか? フロイドを殺害した警官が在職中に18件の問題を起こす間、 譴責1回以上の懲戒が行われていればどうだっただろうか? フロイドの映像が公開された直後にも警察当局が彼を殺害した警官を調査して処罰すると発表していればどうだっただろうか? 大規模デモは発生しなかったかも知れない。 米国社会は大規模な人種差別反対デモを防ぐ多くの機会を持っていたが、 そのすべての機会をのがした。

フロイド死の後に発生したデモの規模と波及力を予想した人は殆どいなかった。 今回のデモは米国全域でデモが発生したという点で、 特定の地域で起きた2014年のファーガソンのデモと1992年ロサンゼルスのデモ、 1980年マイアミのデモの規模を越える。 そして1968年にマーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺された後の全国的デモと比較される。 コロナ19の大流行で多くの人々が生命の安全と経済的状況に不安感を感じていたという点がデモ拡散のある背景になったのは明らかだ。 米国の人種問題に対して全世界で大小の連帯デモが発生したのも異例だ。 韓国でも連帯集会が開かれ、その上未来統合党議員も国会でひざまずいて 「すべての差別に反対する」というプラカードを持った。

また注目する点は、今回のデモがフロイドの死に対する抗議を越え、 人種主義的な歴史に対する問題提起に進んだ点だ。 米国では主に奴隷制と結びついた南部の遺産が代表的な攻撃対象になった。 探検家クリストファー・コロンブス、南部軍司令官ロバート・リー、 奴隷の所有主だった米国の初代大統領ジョージ・ワシントンなど、 あちこちでさまざまな人物の銅像が壊されたり撤去された。 南北戦争の時期の米国南部を描いた映画「風と共に去りぬ」は HBOマックスでのオンラインサービスが中断され、 人種差別の象徴としてよく使われてきた南部連合旗は 駐韓米軍をはじめあちこちで使用が禁止された。

ヨーロッパでは英国の奴隷商だったエドワード・コルストン、 コンゴに対する残酷な統治で悪名高かったベルギー国王レオポルド2世、 インド収奪の先頭に立った英国首相ウィンストン・チャーチル、 19世紀末、南アフリカの植民化を主導したセシル・ローズなどの銅像が 代表的な攻撃対象になった。 ここで言及された人種主義的遺産のうち今回新しく明らかになったり知らされたものは何もない。 重要な点は長い間、撤去を要求されてきた銅像がいよいよ引き下ろされることになったという事実だ。

[出処:https://en.wikipedia.org/wiki/GeorgeFloyd_protests]

デモをめぐる争点

フロイドのデモに関して韓国人は人種差別を根絶すべきだという当為に同意しつつも、 ある部分では疑問を提起する。 代表的な疑問の一つはフロイドが無実の市民ではなく重い犯罪を犯した前科者だから 同情するだけでは難しいという主張だ。 実際に彼は麻薬所持、窃盗、武装強盗など、 さまざまな容疑で九回収監された前歴があり、 彼の犯罪行為を擁護する理由は全くない。 しかし彼を死なせたのは彼の前科やニセ札使用の容疑ではなく、 一般人のほとんどが理解できない警察の過剰鎮圧だ。 過剰鎮圧は黒人を潜在的な犯罪者と見なす米国警察の人種的プロファイリングの産物であり、 人種的プロファイリングに内在する人種主義がこの事件の核心であることも明らかだ。

だが、この疑問にはもう一度考える点がある。 ジョージ・フロイドはどんな人だったのか? 彼は前科者で、ささいな問題で警察の検問を受けて死亡し、 そのためにあまりにも平凡な米国の黒人男性を代表した。 米国の司法制度は1980年代にレーガン行政府が打ち出した 「麻薬との戦争」が代表するように、 ますます多くの収監者を発生させる方向に発展した。 米国の司法統計局(BJS)によれば、 1970年には35万人だった米国の収監者数は2014年には230万人へと急増した。 麻薬所持容疑で何回も収監された黒人男性のフロイドは、 増えた刑務所を埋める典型的な収監者だった。

こうした状況で、米国の活動家はさらに多くの人を閉じこめ、 矯正施設を運営する民間企業がさらに多くの利益をあげる 監獄産業複合体(prison-industrial complex)構造を廃止すべきだという問題意識を発展させた。 今回のデモで広く知られた「警察予算を削減しろ(defund the police)」というスローガンは、このような問題意識から出た。 大量拘禁そのものが構造的な人種差別だという問題意識は特に韓国人には理解し難い。 米国警察の強硬な現場対応は、銃器所有国家の避けられない方針と知りつつも、 米国司法府の高い刑量は正義具現のために必要なもので韓国でも見習すべき慣習と見なされる。 その上、韓国では進歩的な政治勢力ほど、さらに声を高めてさまざまな犯罪に対する厳重な処置を要求する傾向がある。 しかし米国には前科者を量産する司法構造が存在し、 それが特に少数人種に不利に適用されてきたという事実は、 今回のデモを理解するために非常に重要だ。

また、フロイドは前科者であると同時に五人の子供の父であり、 トラックの運転手と安全要員として働いてきた労働者であり、 コロナ19で雇用を失った失業者だった。 彼の遺体からはコロナ19ウイルスが検出された。 フロイドの人生に起きたさまざまなでき事は、 他の黒人男性にも起きるかもしれないことで、黒人たちは彼の死にさらに怒った。

デモ隊が平和なデモではなく放火と略奪を続ける暴徒だから彼らを支持できないという主張もしばしば提起される。 ロサンゼルス暴動当時、韓国人商店の被害を記憶する韓国人がこの問題に敏感なのも理解するに値する。 今回のデモでもさまざまな韓国人商店が略奪被害を受けたので特にそうだ。 その上、韓国の集会文化では放火や略奪はいかなる場合にも容認されない。 だが今回のデモに積極的に参加した地域団体や活動家が略奪行為を扇動したという証言は見つからない。 公権力の強い対応を誘発するという点で、 彼らがそのようにしなければならない理由もない。 略奪は公権力が統制できないほどデモが激しくなったことを示す兆候であるだけで、 決して今回のデモの本質ではない。

[出処:https://en.wikipedia.org/wiki/GeorgeFloyd_protests]

米国の社会で暴力デモを防ぐ機会が何回もあったという点も注目しなければならない。 2016年に人種差別に反対して競技場で国民儀礼を拒否してひざまずいたアメリカンフットボール選手のコリン・キャパニックに何が起きたのか? 彼は途方もない非難と同時に多くの人の支持と尊敬を得たが、 彼の選手としての経歴はその事件で終わった。 今回のデモとしばしば比較される1968年の暴力的デモは、 誰よりも非暴力的な抵抗を強調したキング牧師の暗殺以後に発生した。 その時もボクシングのチャンピオン、モハメド・アリはベトナム戦徴集を拒否して 3年6か月の間リングに上がれず、 メキシコシティオリンピックの授賞台で人種差別に抗議して拳をあげた陸上選手のトミー・スミスとジョン、カルロスは、 これ以上選手として活動できなかった。 暴力デモはこうしたすべての非暴力デモが挫折した後に発生した。

人種差別の被害者だと主張するアフリカ系米国人が他の少数人種のアジア系米国人を差別するという主張もある。 これは一定部分事実であり、特に米国の韓国人はロサンゼルス暴動当時、 黒人コミュニティと直接的な対立を生じさせたことがあるので、 こうした認識は自然であるばかりか必要だ。 アジア人に対する差別は黒人に対する差別と同じように、 米国社会の古くからの問題だ。 その事例は19世紀後半の中国人排斥と第二次世界大戦当時の日系米国人の強制隔離、 コロナ19状況で現れるアジア人に対する暴力に至るまで多様だ。 黒人がアジア人を差別する事例は実際に存在するが、 同時にアジア人が黒人に持つ偏見もともに指摘されなければならない。 そしてどれかの少数人種が別の少数人種を攻撃する方式では、 米国社会の人種主義を決して終わらせることはできない。

フロイドの死が米国と世界にどのような変化を呼び起こすのかはまだ予想は難しい。 フロイドを殺害した警官の処罰を要求した大衆は、 今はブレオナ・テイラーを殺害した警官を処罰しろと主張している。 連日続くデモでは「黒人トランスジェンダーの生命が重要だ」というスローガンも登場した。 パレスチナでは当然にも「パレスチナ人の生命が貴重だ」というスローガンが登場した。

「黒人の生命が貴重だ」というスローガンを作った三人の黒人女性活動家のひとりであるパトリス・カラーズは Podcast「ピープルズパーティー」で、 自分が韓国の独立運動を勉強して影響を受けたと明らかにした。 では韓国人はフロイドの死から何を学ぶのだろうか? 韓国人は不当な公権力によって人々が命を失った時、 民衆が団結して抗議すれば大きな政治的変化をもたらすことができるという事実をすでによく知っている。 世界的な人種差別反対の動きが韓国で包括的な差別禁止法の必要性を喚起できれば良いだろう。 親日反民族行為者と指定された朝鮮戦争の英雄にどんな優遇を認めるのかについて、 もう一度考えることもできるだろう。 韓国の慢性的な労災犠牲を絶対に防がなければならないという主張も可能だろう。 この非常に韓国的な問題の解決は、 フロイドの死に連帯する最も望ましい方法だろう。 ますます多くの移住労働者が韓国の最も危険な職場に向かっているではないか?

[出処:https://en.wikipedia.org/wiki/GeorgeFloyd_protests]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-06-19 08:41:07 / Last modified on 2020-07-04 02:56:07 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について