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嫌悪の政治経済的構造

女性嫌悪とトランスジェンダー嫌悪は家父長体制という同じ根から出る

コジョン・ガビ(地球地域行動ネットワーク執行委員長) 2020.03.17 08:17

2011年から関心が高まり始めた「嫌悪」は2020年現在、一つの社会的キーワードになった。 特に最近ではトランスジェンダー嫌悪が浮き彫りになっている。 ある女性が淑明女子大の入学を放棄する過程でトランスジェンダーをめぐる社会的対立が発生し、 これは女性とフェミニズムに対するさらに多くの考えが必要だということを見せた。 この文はこうした脈絡で女性嫌悪とトランスジェンダー嫌悪を中心として 嫌悪の構造と政治経済に関して話したい。 この話を通じてフェミニズム経済と嫌悪の関係、 そして女性運動とフェミニズム運動が嫌悪の加害者にならないようにすることを考えてみたい。 また、嫌悪の構造を作る社会体制に対する共同の戦いと、性的闘争の方式を話したい。

嫌悪は社会的、政治的効果がある感情で、同時に経済的効果がある感情だ。 空気のように存在し、何かのきっかけで社会的に浮上する嫌悪は感情であり、 同時に感情構造だ。 こうした嫌悪の性格を「嫌悪の政治経済」という言葉で接近してみよう。 嫌悪が政治経済の体系の中にあるということは、構造的な性格を帯びているということだ。 嫌悪はそれ自身で連結構造を持つ。 嫌悪は差別と排除に、時には暴力と殺害に、時には搾取と収奪につながる。 嫌悪は差別-排除-暴力-殺害-搾取という輪を形成する。 この輪の一部が現れたり全体があらわれる場合もある。 社会的少数者が嫌悪の対象になりやすいのも、嫌悪が構造的に動いているからだ。 すでに存在する社会的偏見と烙印が全面化されてあらわれる。

家父長的社会は歴史的に多様な嫌悪を内蔵してきた。 中でも強力な嫌悪は「女性嫌悪」だ。 これまでの家父長体制は、女性を「第2の性」と見なして、差別して排除してきた。 そして、この差別と排除は相変らず現在進行形だ。 女性嫌悪は社会-政治-経済-文化的女性排除を生み、女性に対する暴力を生み、 時には殺害の形態で現れる。 江南駅の「女性殺害」はフェミニズムの声が高まり、 これまで隠されていた女性の死を「女性殺害」と命名させた事件だった。 女性たちは家父長体制でひそかに殺され、 嫌悪-差別-排除-暴力-殺害-搾取の連結構造を経験してきた。

3月8日が国際女性デーであるように、11月20日はトランスジェンダー追慕の日だ。 トランスジェンダーに対する嫌悪暴力で命を落とした人々を賛える日だ。 女性嫌悪と同じようにトランスジェンダー嫌悪も 家父長的差別-排除-暴力-殺害-搾取の構造を持つ。 女性嫌悪がそうであるように、トランスジェンダー嫌悪も差別と排除を越え、 暴力と殺害につながる。 望む大学の入学を放棄させたケースも嫌悪・排除の性格を帯びる。 そして最近、性転換手術後にトランスジェンダーであることを明らかにして 女性軍服務を望んだピョン下士が自分の職場である軍隊を離れて転役しなければならない状況、 つまりそれに対する「強制解雇」はトランスジェンダー嫌悪と相対している。

この追放は、政治経済的な排除の性格を帯びる。 韓国社会はこの事件をおいて国家が労働者を解雇したケースとは見ない。 女性たちがそうだったように、政治経済的な排除を経験するトランスジェンダーらは、 労働市場で脆弱にならざるをえない。 この脆弱性は見える搾取ではなく見えない搾取につながる可能性が高い。 韓国社会は公的な空間のどこでも住民登録証を要求する。 住民登録証の番号と自分のアイデンティティが一致しない場合に直面するトランスジェンダーらは、 労働市場での搾取が容易な状態に処する。 女性とトランスジェンダー嫌悪-排除には家父長的男/女性別二分法が敷かれている。

最近、女性とトランスジェンダーをめぐる対立は家父長的国家との対立様相ではなく、 女性とフェミニストらの間の対立に展開している。 このような点でフェミニズムとフェミニズム運動、 そして女性運動を振り返る部分ができる。 この対立は「ターフ(Transgender Exclusionary Radical Feminism、TERF、トランスジェンダー排除ラジカルフェミニズム)」と通称されたりもする ラジカルを標榜する立場で明確にあらわれる。 この立場は「女性空間を死守」するために 「クィアー政治に対するフェミニズム反撃」をするという意思と、 自分たちのイベント参加資格をラジカルフェミニストに置くという意志を表明する。 トランスジェンダリズムが女性空間を破壊すると見て、 クィアー政治を男性支配戦略の様相と見る。 そしてトランスジェンダーの医療的転換に対しても非倫理的と見て 法的な性別変更も根拠がないという立場だ。 この立場に対して筆者が指摘したい点は多いが、紙面の限界で簡単に言及する。

フェミニズムの名でトランスジェンダー嫌悪が正当化される現実には問題がある。 今までフェミニズムは女性運動に影響しつつ、 集団的-個別的な女性たちが家父長体制的嫌悪構造から解放される政治経済的方案を提示してきた。 そしてこれは現在進行形だ。 女性解放の方法論として多様なフェミニズム的な思考が提示され、 その出発点にラジカルフェミニズムが存在する (ラジカルフェミニズムの内容と「トランスジェンダー排除ラジカルフェミニズム」に対しては他の紙面が必要だ)。 だがフェミニズムはラジカルフェミニズムに留まらず、方法論について悩み続け、 クィアー運動、トランスジェンダー運動との接点を探しながら クィアーフェミニズム、トランスジェンダーフェミニズムまでを フェミニズムの領域に連結した。 その理由は女性解放が既存の「女性」を越えなければならないためだった。 また既存の「女性」を共に変わるべき主体と考慮したためであり、 女性解放は家父長体制という構造的矛盾を解決してこそ可能だと考えたためだ。 構造的矛盾を解決するための同志は「女性」だけでなく、 女性を含む多様なフェミニスト、そしてフェミニズム思想を悩む人々だと考えたためだ。 女性運動とフェミニズム運動は既存の嫌悪に力を貸すのではなく、 嫌悪を打破することに力を貸す運動でなければなるまい。 嫌悪の政治経済的構造を変えるために包括的差別禁止法制定、 そしてそれを越えて、新しいパラダイムに立脚した構造変革を悩むのが フェミニズム運動だと筆者は考える。

そしてトランスジェンダーを女性空間の侵害者と見る視線が持つ問題は、 女性運動が打破しようとした家父長制、あるいは家父長体制を何と見るのかと関連がある。 紙面上、簡単に話せば、家父長体制の性体系は男性中心体系であり、 同時に異性愛中心体系だ。 この体系は性別二分法を基礎として男性と女性の間の階層を作り、 この階層は異性愛的関係だけを正常だとする構造を通じて維持されてきた。 クィアーとトランスジェンダーの政治はこの「正常性」に挑戦し、 固定された性別二分法と異性愛中心性を批判して、 持って生まれたものと見なされる「男性」と「女性」の性別化と異性愛的性的な指向自体に挑戦してきた。 こうした点で、女性とトランスジェンダー嫌悪構造を形成してきた家父長体制に対抗した戦いは、 「女性」と「トランスジェンダー」の共同戦にならざるをえない。 現在、性的嫌悪を生産する男性-異性愛-資本中心家父長体制に対する 「性闘争」は、韓国で、そして地球地域的に全面化されている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-04-04 13:52:56 / Last modified on 2020-04-04 13:52:58 Copyright: Default

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