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デリバリーヒーローのオーストラリア「食い逃げ」事件

[イシュー(1)|私たちを貧しくする革命]ニセ自営業契約、不当解雇訴訟の後に撤収

チョン・ウニ、ユン・ジヨン、ウン・ヘジン記者 2020.02.04 09:37

オーストラリアは超国籍配達アプリ企業、デリバリーヒーロー(DH)の問題が最も克明にあらわれる所だ。 今年で29歳のオーストラリアの配達労働者、ジョセ・クルーガー氏の話を聞いてみよう。 彼は2016年11月にDHの親会社の配達アプリ、フードラ(Foodora)でペダルを踏み始めた。 仕事を始めるにあたり、勤労契約書ではない「独立事業者契約書」に署名した。 この文書には自分を「社長」と明示する内容が入っていた。 だが彼はフードラマークのピンク色のユニフォームと食品カバンを着用して働いた。

賃金は時間当り14オーストラリアドル(約1万1200ウォン)で、 当時の最低賃金17.70ドル(約1万4100ウォン)よりはるかに少なかった。 業務に必須の自転車とスマートフォン修理費、通信料なども受け取れなかった。 それでも彼は配達手当5ドルを稼げるので満足だった。 クルーガー氏が仕事を始めてさほど経過せず、 経営陣はクルーガー氏を高く評価して管理業務も任せた。 フードラは彼に「立派な配達員で企業家的な洞察力がある」と祝賀した。

だがクルーガー氏はフードラが新入ライダーに時間当りの契約金をますます下げている事実を知ることになった。 ライダーの勤務条件が互いに違うことも知った。 平日の夜や週末に長く配達したライダーは真っ先に配置時間を選択することができた。 そうでなければ交代時間の選択権や補償が大幅に減った。 ペナルティを受けて2日間仕事が出来ない場合もあった。 時間当りの契約金はますます減り、結局これは2年もたたずにまったくなくなった。 フードラは皆に配達1件当たり7ドルの手当てだけを支給した。 ガーディアンの報道によれば、 概してライダーは時間当り6ドルも稼げなかった。 ライダーたちは抑圧的な政策の中で適者生存競争に追いやられた。

クルーガー氏は憤りが爆発した。 働けば働くほど生活はギリギリになった。 彼は走るほど貧しくなる仕事をしていた。 だが相変らずフードラはクールなイメージのピンクの広告で広報した。 そんなある日、クルーガー氏はニュース・トークショーの番組に パネルとして参加する機会を得た。 彼はフードラの労働条件に不満を吐露した。 また周辺のライダーとワッツアップにチャット室を作り、 賃金と労働条件に対して気安く話し始めた。 参加者はすぐ250人に増えた。

テレビ番組に出演してから何日か後にクルーガー氏は フードラの経営陣が送ったEメールを受け取った。 会社は彼の行為は 「機密と知的財産権を侵害する可能性がある」と主張した。 またワッツアップのチャット室のアクセス権を越えるとも言った。 クルーガー氏がこれを断ると、会社は直ちに彼と結んだ契約を破棄した。 2018年3月に起きたことだった。

一日で雇用を失ったクルーガー氏は不当だと考えた。 彼は悩んだ末にオーストラリアの運送労働者連合(TWU)の扉を叩き、 労組の助けを受けてその年の7月、当局にフードラを不当解雇で告訴した。 結局、2018年11月にオーストラリア労使関係裁判所の 公正勤労委員会(Fair Work Commission)は、 フードラが「苛酷、不当で不合理な」方式でクルーガー氏の契約を終了させたと判決した。 またフードラがライダーの業務を徹底的に統制していることを根拠として、 ライダーがフードラの職員と判断した。 また裁判所はフードラがクルーガー氏を不当解雇したとし、 1万5559ドル(約1240万ウォン)を支払うよう命令した。

「配達アプリは賃金の着服に基盤するモデル」

だがフードラはオーストラリアのライダーに対する責任を全うするのではなく、撤収を決定した。 これ以外にもフードラのオーストラリア当局は、別の訴訟にまきこまれた状態だった。 そのため現地のマスコミはフードラ経営陣がこの訴訟を避け、撤収を選んだと分析した。

もうひとつの訴訟は2018年6月に フードラがオーストラリア公正勤労オンブズマン(FWO)から ニセの自営業契約を理由として起訴された事件だ。 オーストラリアの政府機関であるFWOは、 労働関連の情報提供と不当勤労の申告受付や摘発業務を遂行する。 FWOはフードラで最低3人が正規職労働者として雇用されていなければならないとし、 連邦裁判所にフードラを告訴した。 当時、FWOの委員だったナタリー・ジェームズ氏は、 この会社が高い水準の統制力を発揮したと話した。 フードラが配達するときに自社ブランドのユニフォームを着せ、 業務を特定地域に制限したなどの理由だった。

フードラは訴訟を受けてから1〜2か月後の2018年8月4日 「成長の潜在力がさらに高い他の市場に焦点を移す」という理由で撤収の立場を明らかにした。 オーストラリアの公営放送ABCによれば、 フードラは当時、職員に事業撤収するまでの賃金を支払うというEメールを送った。 だが何日も経たずにフードラは突然、 本社のデリバリーヒーローに2800万ドルを借りているとし、背水の陣を敷いた。

当時、フードラが発表した負債内訳によれば、 約800万ドル(約63億8千万ウォン)の未払い賃金(労働者請求額)を含み、 オーストラリア租税庁に税金210万ドル、ニューサウスウェールズに55万ドル、 ビクトリアとクイーンズランドに40万ドルを借りていた。 合計1100万ドルを越える金額だ。 しかしフードラのオーストラリア当局は本社への負債を理由として 債権者に300万ドルを提示しただけだ。

賃金未払い労働者、オーストラリア租税庁、ニューサウスウェールズ、ビクトリア、クイーンズランドの租税当局はその後に債権団を構成して対策を議論した。 債権団は昨年5月、1700人ほどの配達員に227万ドルを支払うことに合意した。 だがライダーに対する不払い金が約800万ドルという点を考慮するととんでもない金額だった。 しかもフードラで働いていたライダー5500人のうち、未払いの賃金を請求した人は1700人に過ぎなかった。 オーストラリア運送労組(TWU)は多数の労働者が請求書を提出しなかったことを考慮すれば、 賃金を着服した程度ははるかに大きいと推定した。

DH子会社、オーストラリアでは労働者性を認定

オーストラリアではDHの子会社が未払い賃金と公共負債を払わず いわゆる「食い逃げ」をしたが、労働関係では多少前向きな立場を取った。

フードラのオーストラリア当局は2018年11月 「配達ライダーの多数が少なくとも非正規職員に分類されるべきだった」と認めた。 また、「配達員の20%が少なくとも1回は正規職として(週38時間労働)働き、5%は4週以上週38時間以上働いた」と付け加えた。 ガーディアンはこれについて 「この(フードラ使用者側の)認定は世界で初めてで、 ウーバー、ウーバーイーツ、デリバルーなど世界の『ギグ・エコノミー』に重要な影響を与えるかもしれない」と報道した。[1]

TWUのコーディネイター、トニー・シェルドン(Tony Sheldon)氏はこの配達アプリについて 「賃金着服に基盤する事業モデル」とし、 「労働者の権利が保障されない根本原因は、政府が責任を放棄してきたためだ。 政府はプラットフォーム産業に対するすべての段階で失敗した」と指摘した。 彼はまた「ライダーの70%は海外から来たビザ所持者で、平均年齢は23歳」とし 「文字通り、この会社を世界の果まで追及しなければならない」と強調した。 続いて「オーストラリアのライダーは互いに連帯して、 世界最大の技術企業を相手にすれば勝てるということを見せた」とし 「これが第一歩」だと付け加えた。 オーストラリアのTWUは現在DH本社を相手に未払い賃金訴訟を準備している。

DHは数百万ドルの不払い負債を後にしてオーストラリアから離れたが、 相変らず世界4大配達アプリ企業だ。 現在、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカと中東など40か国に子会社を所有しており、 25万軒以上の食品業者と契約を結んでいる。 2018年のDH年間報告書によれば、 DHは注文、飲食店と活動的な消費者部門でグローバル リーダーとして記録された。 また2018年だけでも世界で3億690万件の注文を達成した。 オーストラリアから撤収したフードラは、ほぼ同時期にカナダの首都オタワに事業を拡張するにあたり 「交代は柔軟で、時間当り25ドルまで稼ぐことができ、 追加で医療保険やチームイベントなどの恩恵を受けられる」と広報した。 オーストラリアから撤収した直後には、 DHの収益は2億6700万ユーロから94%(2019年1分期)も増えた。 ナスパーズの時価総額は昨年末基準で713億ドル(約83兆ウォン)に達した。

脚注

[1] https://www.theguardian.com/business/2018/nov/10/foodora-australia-admits-riders-owed-5m-were-more-likely-than-not-employees

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-02-17 16:38:11 / Last modified on 2020-02-17 16:41:44 Copyright: Default

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