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監獄にいる会長と交渉をするのですか?

[ルポ]『夜は眠らせろ』の要求で始まった10年の闘争、ユソン企業支会の話

ヨンジョン(ルポ作家) 2020.02.07 11:19

[出処:キム・ハンジュ記者]

金属労組ユソン企業支会闘争が今年で10年目になる。 ユソン企業はピストルリン、シリンダーやインナーなどの 自動車のエンジン部品を生産する会社で、忠南道牙山と忠北道嶺東に工場がある。

ユソン企業の問題は、労働組合が2011年労使が合意した昼間連続2交代制と、 これによる月給制を実行するための交渉を要求したことから始まった。 11回の交渉で使用者側が一度も案を提示せず、 労働組合は正当な争議行為手順を踏んで2時間の部分ストに入った。 すると使用者側は待っていたとばかりに直ちに職場閉鎖をして、 工場に用役ならず者を投入した。 その用役の故意的な車両の突進で13人の労働者が大怪我をした。 その後、ユソン企業支会の組合員たちは、 10年近く用役の暴力と職場内いじめ、日常的な監視と暴力、賃金カット、 128人の懲戒と解雇、昇進差別、告訴告発・損害賠償請求などに苦しんだ。 その過程でハン・グァンホ氏など3人の労働者が亡くなった。

これらすべてはユソン企業が創造コンサルティングの諮問を受けて行った 「労組破壊シナリオ」によるものであったことがわかり、 創造コンサルティングの代表と専務は 労働組合および労働関係調整法違反で懲役1年2月を宣告された。 ユソン企業の柳時英(ユ・シヨン)会長も懲役1年2月を宣告され、 実刑を受けて出所した。 2019年にはユソン企業に労組破壊を指示した現代車の役員が 弱かったが有罪宣告を受けた。

2019年9月、柳時英会長は 背任(特定経済犯罪加重処罰などに関する法律違反)と業務上横領で 1審(大田地方法院天安支院)の宣告で1年10月の実刑を宣告され、また法廷拘束された。 労組破壊のために創造コンサルティングに13億ウォンを支払い、 個人の刑事裁判の弁護士費用を会社の金で払った容疑が有罪と認定された。 (イ・ギボン・チェ・ソンオク工場長は各々懲役1年4月、1年2月と執行猶予宣告)

その後、ユソン企業労使は交渉で暫定合意したが、 収監中のである柳時英会長の反対で暫定合意案まで破棄された。 ユソン企業支会の労働者たちは、相変らず9年前の要求だった 2011年団体協約原状回復と昼間連続2交代・月給制交渉再開、 労組破壊責任者処罰と不払い賃金支払いなどを要求して闘争している。 ユソン企業支会の闘争状況を1月10日にあった ユソン企業の柳時英会長と イ・ギボン、チェ・ソンオク工場長の控訴審裁判の過程を通して読者と分けようと思う。

〈筆者注〉

労働者たちに許してくれと言うべき裁判所はなぜ?

1月10日午後12時30分。 大田高等法院の前に到着すると チョン・インス氏(仮名、ユソン企業嶺東工場勤務、 全国金属労組ユソン企業支会所属)が一人デモをしている。 柳時英(ユ・シヨン)会長とイ・ギボン、チェ・ソンオク工場長の 背任(特定経済犯罪加重処罰などに関する法律違反)と 業務上横領控訴審宣告がある日だ。 インス氏の後にかけられている大型横断幕には次のような文句が書かれている。

会社は人的・物的手段で労組破壊および背任行為。 一度も謝罪反省せず。 2013年から100人以上の労組員への懲戒。 1年10月はユソンの労働者が流した血の汗と比べて短すぎる。 法定最高刑を宣告しろ。

「原審を破棄して3年6か月きっちり出ればいいですね。 厳重に処罰するべきです。」

この日の午後、ストライキをして裁判を傍聴しにきたというインス氏は、 検事や判事が政府と資本に手を差し出すのではなく、 きちんと法の定規で求刑と宣告をしてほしいといった。 ユソン企業で25年間働いたというインス氏は、 会長の誤った判断が事態をここまで引っ張ってきたとし、残念がった。

「会社の正常化のために早く終わらせなければならないのに、 無駄なクソ意地で労組破壊するために何百億をなくして 会社の金で弁護士費を使って... これが結局労組破壊だめだったというのではないですか。 監獄に入って自分は助かろうとして善処してくれと言うのはおかしくありませんか? 労働者たちに許してくれと言うべきであって、裁判所に言えば良いのですか? だめでしょう。」

1時30分。 裁判所の前に止まったバス2台から労働者たちがおりる。 ユソン企業牙山と嶺東工場で働く百人ほどの労働者は、 この日の午後2時に予定された柳時英会長の裁判を傍聴するためにストライキをしてきたといった。 労働者の表情は暗く見え、無言の緊張感も感じられた。 ある労働者が裁判所に入ってきながら話す。

柳時英会長が今日 出てくるのではないか、わかりません。 向うにたくさん警官が来ています。」

二日前に使用者側の役員に暴行した容疑で起訴された5人の組合員たちが 控訴審で1審よりも高い刑量の実刑を宣告され法廷拘束された。 ユソン企業支会と市民社会団体は前日、大田地方法院の前で 「特別な資料や内容が追加されない状態で、 控訴審裁判所は刑量を大幅にあげて起訴されたすべての労働者に実刑を宣告したのは あまりにも異例だ。 特別な例外的事由がない場合、控訴審は第1審の量刑判断を維持するのが望ましいということが大法院の判例だという点を考慮すれば、 ユソン企業の労働者5人に対する控訴審裁判はさらに納得し難い」 という内容の記者会見をした。

「私は仲間たち5人が一度に入ったことがとても理解できません。 周辺の環境のためだという気がします。 今日はそうでなかったらいいですね。 それではだめです。原則の通りにしてほしいですね。」

ユソン企業牙山工場で32年間自動車のシリンダーのライナーを生産してきた キム・ギソク氏はこれほど多い労働者が現場で働けずに 裁判所に来ている状況がとても残念だといった。 ギソク氏は2011年以前には労使間で話が通じていたのに、 今は中間の役割を果たす人がまったくないのでここまできたようだといった。

「会社では柳時英会長が 今日出てくると期待しているかも知れませんが、 正義を考えれば絶対それではいけません。 何も解決していないでしょう。 多くの過程を経てやっと暫定合意をしたのに、 監獄にいる柳時英会長が みんなひっくり返してしまいました。」

暫定合意に安心した組合員たち表情を忘れません

昨年9月、柳時英会長が法廷拘束された後、 交渉を続けていたユソン企業労使は10月31日、9年目に暫定合意を引き出した。 柳時英会長から すべての権限を委任された労務担当代表理事が参加した交渉で、 労使は2010年の団体協約復元と労組破壊責任者処罰、 使用者側労組の組合員との差別によって支払われていない賃金支払いなどに合意した。 訴訟もすべて取り下げ、会社正常化のために相互に努力しようといった。 ユソン企業支会も労組破壊の先頭に立った御用労組組合員の懲戒要求を取り下げるなど、 大きな譲歩をした。 しかし6日後の11月6日、交渉仕上げのために集まった場で、 使用者側が暫定合意を破棄した。 労働組合は暫定合意後に組合員総会を開き、組合員報告大会まで終えた状態であった。

[出処:キム・ハンジュ記者]

「私たちが要求したのは13項目でした。 10年戦って13項目なら多くはありません。 13項目のうち8つの項目を破棄しました。 100を合意したとすれば、破棄したのは70以上なんです。 こんな合意はできないでしょう? この暫定合意を監獄にいるらっしゃった柳時英会長がすべて破棄してしまいました。 私たちが監獄に行って会長と交渉をすることもできず、 私たちは誰と交渉をすればいいのか分かりません。」 (ト・ソンデ ユソン企業牙山支会長)

ユソン企業は暫定合意を破棄するために 「第三者が仲裁する交渉をまたしよう」という小細工を使ったといった。 会社は労働部に行って第三者になってくれと言い、 労働組合は暫定合意を無効にすることはできないのでこれを拒否した。

「それができないので宗教界に行って『第三者になってください』と言ったのですが、 宗教界も昨年、会社にひどく籠絡され、 また見方することはできないと言うのです。 すると今度は会社が中労委調停委員会に調整申請を出しました。 そこの勤労監督官が今まで会社が調整申請したのは初めて見たといいました。」

ト・ソンデ支会長は暫定合意をした案は、 労働組合も大きな譲歩をした案なので必ず守られるべきだと話した。

「『暫定合意しました』と報告大会をしたのですが、 その時、組合員たちの安心したその表情を忘れません。」

会長は6億供託で減刑、労働者は供託させずに拘束

「二日前に5人の仲間が拘束されました。 裁判所が今回、柳時英会長と イ・ギボン、チェ・ソンオク工場長をどう罰するのか、 組合員たちは両目を見開いていなければならないと思います。 力強くスローガンをあげて裁判を傍聴できるようにします。」

「背任 横領 労組破壊 柳時英を厳罰しろ!」

シュプレヒコールをあげるユソン企業嶺東支会のキム・ソンミン教育部長は、 まさに自分は震えていて法廷に入れそうもないと言う。 彼は柳時英会長はもちろん イ・ギボン、チェ・ソンオク工場長の責任も大きいので、 全員が厳重処罰を受ければ良いと話した。

[出処:キム・ハンジュ記者]

裁判所の中で長い列をつくった労働者たちが一人ずつ検索台を通り、法廷に移動する。 短くない時間を待ったが、裁判所側は座席数だけ入場を認めるとし、 立って傍聴するという労働者の入場を防ぐ。

「裁判の円滑な過程のために裁判長が進行をするので、 とにかく出て行っていてください。」

「関係者なのに 見なければならないのではないですか。」

「組合員たちが傍聴するためにストライキしてきた。 そうでなければなぜここにくる? 通路で充分だ。」

結局、多くの労働者が入れず、外で裁判結果を待たなければならなかった。 すでに法廷に入った人も追い出された。 法廷に入ると使用者側の関係者はすでに前に座っている。

2時20分、柳時英会長と イ・ギボン、チェ・ソンオク工場長が被告人席に座る。 法廷に緊張感が漂う。 イ・ジュンミョン裁判長は裁判を始める前、 10年間労使間・労労間の深い対立で犠牲と損失があったという冒頭発言を始めた。 そして今回の判決が公訴事実の証拠を基礎として、 法と原則により苦心して決めたという話も付け加える。

判決文には 「被告人が労働組合の運営に支配・介入する不当労働行為をするために 創造コンサルティングと契約を締結し、 会社の資金でコンサルティング費用として合計13億ウォンを越える金額を支払った 犯行の動機は不良で、 それによる被害者の損害も相当で、その罪質は良くない」という内容が含まれていた。 また「被告人たちは上のような不当労働行為などで 本人や職員が刑事事件で起訴されて裁判を受けることになり、 会社の費用でその弁護士選任料を支払い、会社の資金を横領した」とし、 被告人らにそれに相応する厳重な責任を問う必要があるとも述べた。 だが裁判長は主文を朗読して原審判決破棄を宣告した。

「原審判決を破棄する。 被告人柳時英を懲役1年4月、 罰金5百万ウォンに処する。 被告人が上の罰金を納入しない場合、10万ウォンを1日に換算して 被告人を労役場に留置する。」

柳時英会長の懲役刑が6月減刑され、 イ・ギボン、チェ・ソンオク工場長も懲役刑と執行猶予期間が減った。 控訴審判決では被告人3人が使った弁護士費用を 本人のための選任費用とユソン企業という法人のために使った費用に区分した。 そして1審で宣告した全体横領有罪判決を翻し、 該当費用の一部に対してのみ横領と認定した。 また、被告人が控訴審で背任犯行と一部の横領の犯行を認め、 反省する態度を見せているといった。 柳時英会長が 6億6千万ウォンほどの金額を供託し、 被害者のユソン企業の財産上の損害は今後回復するという理由だった。 この裁判で被害者は「ユソン企業」と明示された。 ユソン企業側の労組破壊シナリオでこの9年間、 最も多くの物的・人的・心的被害をこうむったユソン企業支会の労働者たちは、 この裁判では被害者として考慮さえされなかった。

6ケ月刑量が減って幸せですか?

裁判が終わって法廷の外でユソン企業の労働者たちが イ・ギボン、チェ・ソンオク工場長を含む会社の管理者に抗議をする。

「いつまで引っ張っていくのですか? 監獄に行けば終わりですか? 被害者がこれほど多い? ちょっと何か言ってください。 無罪ではないでしょう。 判事が労組破壊をしたと話したでしょう。 刑量がちょっと減っただけでしょう。 私たちにに謝罪一言でもしましたか? 反省文は誰に送るのですか? なぜ裁判所に反省文を送るのですか? 私たちには謝罪一言もないのに。 6か月減って、うれしいですか? 会長が拘束されたのに? 一昨日、われわれ組合員5人が拘束されました。」 (ユソン企業嶺東支会キム・ソンミン教育部長)

▲裁判が終わって状況を共有しているユソン企業支会組合員たち[出処:民主労総世宗忠南地域本部]

「誰のためにこんなに人を困らせるのですか? もうやめれば良かったのではありませんか。 暫定合意したら少なくとも約束をしたら守るべきです。 何のためにひっくり返すのですか? 会長が出てくると考えたのでしょうか? 6ケ月短くなって幸せですか? 監獄にいる人があらゆる事をひっくり返するなら、 誰と会議をして誰と話せばいいのですか。 監獄にいる人は会おうともせず。」 (ト・ソンデ ユソン企業牙山支会長)

ト・ソンデ牙山支会長は1月8日の組合員に対する宣告と較べて、 この日の判決は量刑の公平性に合わないという。 当時、裁判所は加重される量刑事由がなかったのに、 ユソン企業支会の組合員に1審より2倍以上重い量刑を宣告した。

「今日、柳時英背任横領事件では、 供託したという理由で刑量が6か月減刑されました。 私たちも十匙集めて一食でお金を集め、 治療費の供託をかけるために数回努力したのに、 (裁判所は)住所を教えず、私たちが住所を調べれば不法だといって供託させませんでした。 私たちも供託すればはるかに低い刑を受けられたはずなのに、 それさえ偏向的に出来ないように妨害し、刑量を高めました。」

労働者たちが怒りと当惑混じりの表情で裁判所を出る。 インタビュー要請をしたが、容易ではなかった。 昨年9月の1審宣告の時とはずいぶん違う雰囲気だった。 牙山工場で働き定年退職したある組合員は、 後輩のためにきたのに、とても腹が立つと言う。

「くやしいです。 仲間たちの再拘束の知らせ聞いて、酒一杯飲んでとても腹が立って泣きました。 今まで10年間戦ってきたのに、 ユソン資本が手をあげるまで、 仲間たちが頑張って熱心に戦ってほしい。」

10年戦った会社に対する労働者たちの気持ちはどうか。 それでも愛情が残っているのか。 チョン・インス(仮名)氏は 「(愛情は)何もない」と言った。 ただ飢えを凌ぐために粘っていると言う。

「しかしなぜ 闘争を放棄しなかったのですか?」

「1か所で共に付き合い、汗を流して、互いに汗の臭いをかいだ仲間たちがいるから、 しれでも捨てられずにこうして一緒にくるんです。 義理。」

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-02-14 08:06:24 / Last modified on 2020-02-14 08:11:52 Copyright: Default

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