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資本だけに革命的な「第4次産業革命」

[イシュー(1)]われわれを貧しくする革命

チョン・ウニ、ユン・ジヨン、ウン・ヘジン記者 2020.02.05 13:02

「政府が既得権を国内市場の枠組みであちこち調整しようと時間を消耗している間、 強大な資金力と競争力を前面に出した海外新生企業が突然出現し、 市場を寡占しかねない。」

「企業家精神を持つ少数の創業者は新しい会社と雇用を作り出す源泉であり、 自ら探求する各分野の職人は産業のグローバル競争力を高める要諦だ。」

―大統領直属第4次産業革命委員会対政府勧告案より

大統領直属第4次産業革命委員会(4次位)は昨年10月、対政府勧告案を発表した。 ここには政府の市場規制が国内企業のグローバル競争力を削ぎ、 海外資本の独占・寡占が続くいう憂慮が込められている。 海外企業が競争力を持つ間、国内企業は淘汰されて倒産し、 これにより雇用が失なわれるという危機感も示した。 4次産業革命時代には伝統的生産要素が崩れ、 少数の創業者が新しい会社と雇用を作り、 グローバル競争力を強めていくという、それなりの予言も入れられた。

結果として勧告案の核心は、 海外資本に受け入れないようにするには規制を解除し、 4次産業革命時代にふさわしい国内企業を支援しなければならないということだ。 実際に4次委は2017年末から「規制・制度革新ハッカーソン」会議を開き、 規制緩和に対するさまざまな議論を続けてきた。 では彼らが要求する「規制緩和」はどんな新産業と少数の創業者を支援するのだろうか。 果たして規制を緩和すれば独占寡占は消えるのだろうか。 「ワーカーズ」が4次産業革命時代を迎えた政府の規制緩和の動きを探った。

サムスンの4次産業革命-デジタル・サイネージ

対政府勧告案発表から17日後の昨年11月11日。 4次委は「第6次規制・制度革新ハッカーソン」会議を開催した。 ハッカーソン会議は4次委が主導する規制改革関連社会的合意機構だ。 民間と政府関係者が参加して、規制緩和に対する合意を導き出す所だ。 この日のハッカーソン会議の議題の一つは 「デジタル・サイネージ活性化のための屋外広告物関連制度改善方案」だった。 この日の会議で参加者は、 デジタル広告物活性化のためにネガティブ規制を導入する方案に合意した。 中心商業地域と観光特区地域は最低の運営ガイドラインだけを提示して、 規制を緩和しようという内容だった。 中小事業者の進入を柔軟にし、デジタル広告物の発展支援を拡大する方案にも意見を集約した。

「デジタル・サイネージ」とはICT(情報通信技術)と広告を接続し、 動画などを提供する屋外動画広告物だ。 4次委はこうしたデジタル広告物が4次産業革命の核心技術である 「テストベッド」の役割になる産業だとして議題選定理由を明らかにした。 ではデジタル広告物規制緩和はどんな企業にとって「機会」になるのだろうか。 現在のデジタル広告物市場でそれこそ激戦をしている企業はサムスン電子とLG電子だ。 技術力と占有率はこの二大企業に続く者はいない。 サムスン電子は2009年から延々10年以上、グローバル市場占有率1位を記録している。 サムスン電子は2018年に商業用ディスプレー市場占有率25.8%を占めた。 2位はLG電子だ。2018年占有率12.5%を記録した。 その年、サムスンとLGが占めるグローバル市場占有率は全体の3分の1だ。

デジタル広告物規制の緩和で恩恵を受けるもうひとつの企業は、 デジタル広告コンテンツと代行サービスを提供する広告代理店だ。 現在、国内第1の広告代理店はサムスングループ系列会社の第一企画だ。 第一企画は昨年、自社のホームページで、 2018年のデジタル広告費が前年比14.4%成長し、 初めて放送広告費を逆転したと明らかにした。 成長の可能性がある広告分野として「デジタル屋外メディア」を選んだ。 第一企画はすでに2009年の後半からデジタル屋外広告物事業をもの欲しげに見てきた。 2009年に呉世勲(オ・セフン)前ソウル市長は40億ウォンをかけて 江南駅通りにデジタル・サイネージ形態の横施設を設置している。 まさに江南区がこれを第一企画に3年間無償で賃貸する委託運営を締結し、 特典疑惑が起きた。

事実、デジタル・サイネージ活性化は2013年に朴槿恵(パク・クネ)政権の 「創造経済-文化隆盛事業」の一環として推進されてきた。 当時、朴槿恵政権は 「創造経済時代の放送産業発展総合計画」を通じ、 デジタル・サイネージ産業育成を政策課題に選んだ。 2014年には未来創造科学部が第一企画、イノーションなどの広告業界関係者と 「スマート広告発展協議会」を発足させた。 2016年7月には行政自治部が規制緩和によりデジタル・サイネージを合法化し、 建物と壁、屋上、通り、柱、公共施設物、窓などに デジタル広告を認める法案を立法予告した。

サムスンの4次産業革命-ヘルスケア

医療産業も重要な規制緩和対象に選ばれる。 4次委は2017年12月、「ヘルスケア特別委員会」を別に構成し、 さまざまな規制緩和に関する議論を進めてきた。 ヘルスケア特別委はこれまで政府に対し、 医療ビッグデータの規制緩和と遠隔医療など医療民営化に関連する政策を着実に要求してきた。 体外診断医療機器の「先進入・後評価」制度を貫徹し、 国内市場に発表ができなかった融複合医療機器の許認可や流通も引き出した。 2018年12月にはヘルスケア特別委と関係部署が合同で 「4次産業革命基盤ヘルスケア発展戦略」を発表した。 ここには保健医療ビッグデータとバイオ医薬品 および融複合医療機器支援と規制緩和などの計画が入れられた。

現在、政府が推進する4次産業革命基盤である「ヘルスケア発展戦略」は、 これまで問題になった「医療民営化」のコピーだ。 そして医療産業の規制緩和と民営化を最も望んできた企業もサムスンだ。 サムスンはすでに2010年から医療産業の「4次産業革命」を主導してきた。 当時、サムスンはバイオ製薬と医療機器分野などを今後10年の基本事業に選んだ。 そしてその年、サムスン経済研究所が李明博政権に提出した 「保健医療産業先進化方案」報告書には、 バイオ医薬品と医療機器、医療サービスなどを商業化して、 遠隔診療、保健医療ビッグデータの個人医療情報DB化を推進する方案などが含まれていた。 そして翌年、サムスンはバイオ医薬品開発業者の サムスンバイオロジックスとサムソンバイオエピスを設立した。

2018年8月にはサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が 当時金東ヨン(キム・ドンヨン)企画財政相にバイオ製薬を 「第2の半導体」に育てるとし、 薬の価格が市場の自律で策定されるようにしてくれと要請した。 3日後、金東ヨン元長官は 規制革新リストに医療関連規制が優先順位にあるという意を強調した。 ほぼ同時期に文在寅(ムン・ジェイン)大統領は 「過度に医療民営化に行かずに順機能を発揮できる状況で遠隔診療も可能にしなければならない」と明らかにした。 文在寅政府は今年、 バイオ ヘルス技術開発および事業化支援などに1兆3000億ウォンを支援する方針をたてた。 サムスンは系列会社との協業でヘルスケア産業のシナジーを極大化する絵を描いている。 医療サービスを提供するサムスン医療院を中心として、 サムスンSDSが遠隔医療プラットフォームを、 サムスン電子がモノのインターネットと各種電子チップ技術を、 サムスンバイオロジックスが医薬品生産を、 サムスン生命が保険を担当することになる。 特に政府の「保健医療ビッグデータ」の推進は、 サムスン生命がこれを収益創出に活用する基盤になる。

もちろん、ヘルスケア事業に飛び込んだのはサムスンだけではない。 世界最大のプラットフォーム企業であるGoogleも、 バイオおよびヘルスケア分野への投資を増やし、全力を注いでいる。 昨年9月、Googleは汎現代家グループが設立した峨山ナヌム財団と共に 「スタートアップ コリア」報告書を発表し、 遠隔医療、遺伝子検査などのヘルスケア分野での規制緩和を要求した。 彼らは報告書で 「韓国のデジタル ヘルスケア関連産業は米国、中国より遅れている現状況を克服するためには、 もっと積極的な変化が要求される」とし 「規制の延期ではなく関連法令改正による根本的な規制解消を施行しなければ ヘルスケアのスタートアップに対する活発な投資を誘導できない」と強調した。

労働者を消す4次産業革命

「人材は伝統的な労働者と違い、 時間ではなく(ただ)成果だけで評価され、自分の価値を高める。..(中略)... 企業だけでなく、人材も雇用を選択する。解雇と離職は日常だ。」

「週52時間制の一律適用に個別企業、労働者が主導的・自主的に対応するのが難しく、 人材成長の障害になったり企業競争力の低下につながる憂慮も提起されている。」

「技術の発展により自動化される領域が拡張されて離職・転職が日常化すれば、 特定分野の専門知識だけでは一生雇用を維持するのが不可能になる。」

現在の4次産業革命の議論は企業に対する規制緩和と政府支援などに限定される。 ここでの労働者の役割は、不安定な労働条件の中でも労働者性を表わさないまま 成果をあげることに限定される。 実際に4次委は対政府勧告案で4次産業革命での労働者は 「伝統的労働者」ではない「人材」であり、 彼らは「時間ではなくただ成果だけで評価され、解雇と離職は日常」と説明した。 また、伝統的な雇用-被雇用関係から抜け出した柔軟な雇用形態は、 ワークライフ・バランスを保障するとも予想した。

だが実状を見ると、 プラットフォーム産業に従事する労働者は相変らず資本に従属したままで管理と統制を受け、 長時間労働を続けている。 全国不安定労働撤廃連帯付設労働権研究所が国家人権委員会の依頼で作成した 「プラットフォーム労働従事者人権状況実態調査」の研究報告書によれば、 プラットフォーム労働者たちは労働権から排除されたまま、 通常の賃金労働者と同じような専業労働をしていることが明らかになった。

実際に国家人権委員会が8つのプラットフォーム職種の労働者821人を対象として オンライン・電話アンケート調査を行った結果、 彼らは一週間平均5.2日、一日平均8.22時間働いていた。 プラットフォーム職種従事者の労働時間が賃金労働者の法定勤労時間より決して短くないのだ。 その上「仕事を待つ時間」や「仕事に気を遣う時間」などの無給労働時間も存在した。

しばしばプラットフォーム労働は副業の性格を持っていると言われる。 だが実態調査によれば、プラットフォーム労働を専業とする割合は64.0%に達する。 個人総所得においてプラットフォーム労働所得が占める割合は何と74.0%だ。 世帯総所得においてプラットフォーム労働者所得が占める割合も78.9%だった。 プラットフォーム労働が専業の役割を果たしているのに、 彼らの月所得は平均152.7万ウォンに終わった。

プラットフォームは形式的に使用者ではないが、 プラットフォーム労働者を統制できる。 プラットフォーム労働者は 「プラットフォームで技術的に不利益を与えられる手段の有無」に53.2%が「ある」と答えた。 仕事を拒否すれば不利益を受けることあるかという質問にも半分(50.7%)が「そうだ」と答えた。 「働きたくない日に働けないことがある」という質問項目の尺度は3.47点(5点標準)だったが、 仕事を拒否すれば不利益を受けかねないという点で事実上、従属した労働をしているのだ。

1月16日に開かれた「技術と労働の変化、そして労働権」討論会で 不安定労働撤廃連帯のキム・チョルシク執行委員は 「現在進められる技術の変化と未来の社会に対する議論は、 労働者の接近を基本的に排除した中で企業(主に財閥大企業)主導、政府主導で進んでいる」とし 「韓国では労働の参加が排除された状態で『4次産業革命』が議論される傾向がある」と指摘した。

ライダーユニオンのパク・チョンフン委員長も 「韓国のプラットフォーム産業の現実は、 企業や一部の学者が話していることとはかけ離れている。 実際に指揮監督が強力で、さまざまな複雑な構造の中間搾取がある」とし 「プラットフォーム産業では労働者は事業主と委託契約をするが、 事業主は彼らを労働者として働かせている。 労働者中心の産業を語るには、まず偽装されたプラットフォーム産業を正すことが必要だ」と強調した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-02-14 08:02:41 / Last modified on 2020-02-14 08:02:42 Copyright: Default

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