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1970年代、「性差別」に対抗した女性労働者たち

[イシュー:女性は労組委員長してはいけませんか?]ユ・オクスン コントロールデータ支部前副支部長インタビュー

ユン・ジヨン、ウン・ヘジン記者 2019.12.31 09:39

1995年11月11日、民主労総は創立に先立ち 「男女平等の実現のために熱く闘争する」という宣言文を発表した。 それから25年経った現在。 民主労総は本当に熱い闘争で性平等を実現したのだろうか? いや、少なくとも組織内部の性平等程度は実現したのだろうか? しかし妙だ。 性平等を実現して女性労働者を代弁する労組女性幹部が見えない。 歴代11人の民主労総委員長のうち、女性は1人もいない。 16の地域本部の歴代本部長の中にも女性はいない。 15の産別労組歴代委員長の女性割合も6%に過ぎない。 いったいなぜこうなのか? 本当に気になって尋ねた。「女性は労組委員長してはいけないのですか?」

▲1980年コントロールデータ闘争現場[出処:ネイバーニュース ライブラリー、京郷新聞1989年12月23日付]

1973年12月20日。 8人の女性労働者が九老工業団地にあるコンピュータ部品メーカーの コントロールデータに労働組合を設立した。 労組設立から3日で組合員が600人ほどに増えた。 米国に本社をおく100%外資企業のコントロールデータは、 他の工場より勤労条件が良い方だった。 その上、職員の95%が女性の工場で、 女性労働者中心の労組結成はそれほどよくあることではなかった。 労働組合というものがよく知られていない時で、 当然、女性たちは結婚と同時に職場を辞めていた時期だった。

労組設立を主導した人物の1人であるユ・オクスン氏も、 入社初期までは「労働組合」というものを知らなかった。 その上、労組は会社が作ってくれるものだと思っていた。 ある時、会社の管理者に「うちの会社にはいつ労組ができるのか」と聞くと、 「千人職員がいれば労組を作れる」という返事が戻ってきた。 その時も悪くないものだと思っていた。

「性差別」に反発して労働組合を結成

そんな人々が、名前もよく知らない「労働組合」を結成した理由は、 まさに「性差別」のためだった。 労組が結成されたその年の12月、会社は性別によって賃金を差別的に上げた。 女性生産職労働者より男性管理者の賃金ほうが高い状況で、 差別的な賃上げは賃金格差をさらに拡大した。 それでなくてもユ氏は入社後からずっと女性労働者の権利がないという感じを受けてきた。 会社は1か月に1日、やっと保障された生理休暇制度を順次無力化させた。 生理休暇を受けるには養護室に行って生理中だということを証明しなければならず、 それさえも管理者の許諾がなければ無用だった。 会社の中では5%の男性管理者が95%の女性労働者を管理した。 女性労働者の昇進はいつも「班長」で終わった。 監督と管理、行政職はすべて男性が占めた。

新生労組の金属労組コントロールデータ分会は、 女性労働者の賃上げと労働時間短縮を主導した。 ユ・オクスン氏をはじめ労組の幹部は女性労働者の適正賃金と基礎生計費を算出するために直接飛び回った。 1か月間で九老市場や永登浦市場などの地を回り、 太刀魚と白菜、ホウレンソウなどの食材料と生活必需品の物価を調査して、 1日に煉炭がいくつ必要なのか、水道料金はいくらかかるのかなどを調査して、 1人の生計費を算出した。 さらに組合員の扶養家族が平均2.7人という統計を基盤として基礎生計費を算定した。 労組が提示する賃金要求は、いつも最低賃金を大きく上回った。

ユ・オクスン氏は今でもその時期がただ不思議に思うばかりだ。 女性学は普遍的でもなく、女性人権や労働権が話される時代でもなかった。 その上、高校の就職班でも賢母良妻になれという教育だけを長々と受けた。 そんな社会的な雰囲気の中で、女性労働者がジェンダー問題で先導的な闘争をするのは 容易ではないことだった。 だがコントロールデータ労組の要求と闘争は、いつもジェンダー問題と相対していた。 彼女らはさらに大きな女性の権利について考え、実際にそれを争奪するために闘争した。

結婚退職制をなくす

1974年のある日、満員の通勤バスで事件が起きた。 通勤バスの前座席はいつも男性管理者が座っていた。 その日によって体調が良くなかったある女性組合員がバスの前座席に座り、 男性管理者から「礼儀をわきまえない」、「運が悪い」という暴言を聞いた。 被害者は労組事務室に来てくやしさで涙を流した。 労組は公式に対応することにした。 労組が加害者の謝罪と処罰を要求すると、男性たちが反発し始めた。 女性労働者たちは怠業をして対抗した。 通勤バスでわざわざ前の席に座ったりもした。 生産量が下がり、結局会社は両手をあげた。 会社は加害者の謝罪と1か月の懲戒処分をした。 そしてこの事件を契機として会社の中では女性労働者に敬語を使う文化が定着した。

当時、蔓延していた結婚退職制に反対する闘争もした。 当時は公務員、銀行員を問わず、女性労働者は結婚と同時に退職しなければならなかった。 生産職労働者は言うまでもなかった。 勤労基準法に60日の出産休暇制度が明示されていたが無用の物だった。 男性管理者は結婚後も退社しない女性労働者たちを圧迫した。 「夫がそんなに金を稼げないのか」、「夫がそんなに貧しいのか」という調子で皮肉り、恥をかかせた。 当時までは、女性が結婚後に職場に通うのは恥ずかしいことだと考えられていた。 組合員たちはその恥ずかしさに我慢できないといった。

それで労組代議員1人が立ち上がった。結婚後も工場に出勤した。 管理者が夫について是非をつけると「夫はお金を稼げない」と応酬した。 労組運営委員だったある組合員は、初めて出産休暇を使った。 これ見よがしに臨月の体で出勤し、管理者の皮肉を鼻でせせら笑った。 その時から組合員たちの雰囲気が変わった。 既婚の女性が多くなり始め、勤続年数が延びた。

ある日は労使協議会で使用者側が 「女子トイレでタバコの吸殻から火事になった。 なぜ女子がタバコを吸うか」と大騒ぎした。 労組は「私たちも男子トイレにある砂壷を設置してくれれば良いのではないか」と問い詰めた。 結局、少し後で女子トイレにも大きな砂壷が設置された。 生理休暇の使用を団体協約に明示し、 組合員たちを追いかけて生理休暇の使用を促した。 交渉では家族手当の支払いと会社内託児所の運営を要求した。 事務職は男の子を出産した時に5万ウォン、女の子を出産した時は2万ウォン、 生産職は無条件2万ウォンを支払っていた会社の出産祝儀金方針を、 職種と子供の性別とは無関係に5万ウォンに統一させたのも労働組合だった。 賃上げだけでなく、労働時間短縮による雇用創出を実現した。 労組設立後に週48時間、70年代末には週42時間を争奪し、新しい雇用を創り出した。

厳酷だった全斗煥政権の時期、9日間の工場占拠ストライキ

彼女らの労働組合運動が下り坂をたどり始めたのは1980年、 全斗煥(チョン・ドゥファン)政権になってからだ。 労組の幹部は合同捜査本部に連行されたり、社会浄化の対象になって幹部の席から追い出された。 会社の態度も変わり、労組の賃金・団体協約交渉を拒否した。 その上、労組がサボタージュをすると、ユ・オクスン当時副支部長を含む支部長や幹部6人を解雇した。

最も厳酷だった時期、コントロールデータ労組は最も輝かしい闘争を行うことにした。 1981年3月15日、数百人の組合員が解雇された幹部を取り囲んで工場に入った。 マイクを持った当時のハン・ミョンヒ職務代行は全面ストライキを宣言した。 これを皮切りに組合員全員が工場を占拠して9日間のストライキを始めた。 座り込み中の組合員たちに対して悪口を言ったり、 その上座込場で性器を露出して放尿する男性管理者もいた。 会社が工場の中にエアコンを稼動させ、妊娠した組合員が下血することもあった。 ストライキ座り込み二日が経つと、会社は食事の搬入も認めなかった。

9日間のストライキ座り込みが終る時まで、 組合員たちは労組幹部の解雇が工場廃業の前哨戦だったという事実までは知らなかった。 翌年6月、米国本社は韓国工場の閉鎖を決定し、1か月ほど後に会社は工場の廃業を発表した。 労組は廃業反対闘争に立ち上がった。 その過程で男性管理者は廃業が労働組合のためだとし、 労組幹部に暴行をした。 労組は撤収反対闘争を展開したが廃業を防ぐには力不足だった。

ユ・オクスン氏は今でもその時期が昨日のように生々しい。 変わったようで変わらず、変わったように変わらない昨日のような今日を生きているためだろう。 当時としては画期的で進取的な闘争を行ったが、 今考えてみると何がそんなに変わったのかと思うような疑問が相次ぐ。 現場は小規模事業場に散り、非正規職、特殊雇用に追いやられる女性労働者に会うたびに、 まだ遠いという気がしたりする。 「女性労働者の処遇は時代の変化について行けないようです」。 ユ・オクスン氏が残念そうに話した。

原文(チャムセサン/ワーカーズ)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-01-06 16:27:04 / Last modified on 2020-01-10 06:38:48 Copyright: Default

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