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韓国:「女性の住居はフェミニズムの問題」
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「女性の住居はフェミニズムの問題」

[ワーカーズ・イシュー]住居権から女性主義的都市デザインまで

ユン・ジヨン、ウン・ヘジン、チョン・ウニ記者 2019.10.10 09:16

女性1人世帯を対象とする犯罪が続き、政府も関連対策に腐心してきた。 女性安心の村や女性安心区域、女性安心帰宅サービスなどの名前も多様だ。 代表的に、ソウル市は2013年に「女性安心特別市」という政策を掲げた。 ソウル市はこれを通じて安心帰宅スカウト、女性安心宅配、女性安心保安官、 女性安心守る家などの多様な事業を施行しているが、 女性安心宅配を除くすべての事業が女性だけを対象にしている。

新林洞で犯罪が相次いで発生した6月からは、 冠岳区と陽川区を中心として「女性安心ホーム4種セット」を支援している。 女性の1人世帯250世帯にデジタルビデオ窓、ドア開放センサー、 携帯用非常ベル、玄関補助鍵などを支援する事業だ。 これ以外にもいくつかの区庁と警察署が「女性安心の村」を造成したり 造成する計画を推進している。 ソウル市の他にも光州広域市など、 さまざまな地方自治体が類似の女性安全対策を導入してきた。

だが政府の女性安全対策は的外れだという批判は絶えない。 政府の対策をあざ笑うかのように、女性に対する犯罪も続いている。 実際に、政府や地方自治体が施行した女性安全対策の実効性はあまり大きくない。 チャン・ジニの「1人世帯と犯罪発生に関する研究」によれば、 CCTVの設置数は1%増加したが、5大犯罪の減少率は0.08%にすぎなかった。 治安施設費の項目も減少率は0.03%に過ぎなかった。 ソウル市の女性犯罪予防政策のうち、 女性安心帰宅スカウトは統計的に有意味ではなく、 女性安心宅配は利用者が1%増えたが5大犯罪率は0.007%減っただけだった。[1]

むしろ女性1人世帯に対する犯罪率は増加し続けている。 最近、女性1人世帯への関心が高まっているが、 これの相関関係や増減を確認できる統計資料はあまり見ない。 しかし多様な関連資料から、これを推測することはできる。

まず、統計庁が7月に発表した「2019統計で見る女性の暮らし」によれば、 昨年、女性たちは「社会の主な不安要因」の1順位として犯罪発生(26.1%)を指定した。 これは2016年に江南駅女性嫌悪殺人事件が発生した時の37.3%から大幅に減っているが、 調査が始まった2008年と較べると4.0%ポイント上昇した。 男性の場合は2008年の14.4%から2018年15.0%へと、0.6%ポイント増加しただけだ。 女性の性暴力被害は2007年の1万780件から2017年には2万9272件へと3倍近く増えた。 また2017年にカン・ジヒョン蔚山大警察学科教授が発表した 「1人世帯の犯罪被害に関する研究」 [2] によれば、33歳以下の女性1人世帯は男性よりも住居侵入被害にあう可能性が 何と11.2倍高いと分析された。 これ以外にも保健福祉部と韓国韓国保健社会研究院が2016年に発表した 「1人脆弱世帯の危険分析および連携型政策支援方案研究」報告書によれば、 1人世帯地域ほど周辺の防犯状態が脆弱であることが明らかになった。

そのために女性安全対策が実効性をあげるためには、 治安対策を越えて住居条件と環境など根本的な問題を解決しなければならないという声が高まっている。 昨年7月に「一人世帯の犯罪危険認識に影響を及ぼす要因」 [3] を研究した韓国刑事政策研究院犯罪調査研究室のハン・ミンギョン副研究委員も 「住居不平等の問題から女性世帯に対する犯罪を引き起こす多くの問題が始まる」 と指摘した。 彼は「インタビューした女性たちは、政府の安全対策に非常に批判的だった」とし 「特に、女性1人世帯の不安感がとても高い。 そのため女性たちは負担になっても、安全のために住居費をたくさんかける」と説明した。

彼によれば、 就職前の20代の女性は劣悪な月貰部屋を選択せざるを得ず、 犯罪に脆弱だ。 また、職場女性は月貰部屋から脱出して、駅前に安全な住宅を借りる場合が多いが、 高い住居費を払い続けられないので、 住居不安定の問題を解決しない限り、 女性の安全問題は続かざるを得ないいう。 特に、政府の対策に対する懐疑感のために、 女性たちは民間の安全サービスなどから自ら安全を購入している。 これは女性の住居費負担を加重させるため、住居不平等という悪循環が続く。

女性の安全は生存権...住居不平等の解決を

それでも女性の安全対策に住居権問題が含まれる場合は少ない。 2年前に韓国土地住宅公社(LH)は、 中央政府としては初めて蚕室に「女性安心住宅」事業を推進し、 逆差別論議によって尻ごみした。 1月に再推進計画を明らかにしたが、造成規模は250世帯に過ぎないという。 ソウル市も2014年に初めて「女性安心住宅」入居者を募集したが、 やっと96世帯だけだった。

では海外ではどうか? 代表的に、OECD加入国のうち住宅費に公共支出を最も多く支援する 英国(1.4%、2015年) [4] でも、 女性の住居安全問題が関心を受けたのは最近のことだ。 昨年末に創立した英国の「女性住居フォーラム(WHF)」は、 「住居は疑いなくフェミニズムの問題」だとし、 女性の住居福祉について話し始めた。 このフォーラムは、暴力と虐待から自由な生活を送るための女性の能力は、 ほぼ自分の家を持つ能力にかかっていると見る。 それと共に、安く適切な家がないため、 多くの女性が虐待にあうと告発した。 彼らによれば、特に安全ではない住宅や臨時居住地で暮らす賃借人の多数は 女性1人世帯だった。

英国の女性住居フォーラムの視角のように、 女性の住居環境は男性より大きく遅れている。 昨年発表された「英国住居調査統計」によれば、 女性は賃貸住宅賃借人の55%、民間賃貸者の40%、自家住宅所有者の38%を構成する程、 男性より住居環境が悪かった。 また英国で女性が住宅を購入するためには、12年分の年俸が必要だが、 男性の年俸は8年に終わった。 イングランドの平均賃貸料は女性の中間所得の43%、男性の28%に該当する。

韓国でも女性住居問題に対する関心は低い。 韓国女性民友会が2014年に「非婚女性賃借人リレーインタビュー」を行うなど、 少数の女性団体が女性住居権問題を提起しているだけだ。 しかし女性をターゲットとする犯罪が増えており、 住居問題に対する女性の切迫感も高まっている。 韓国性暴力相談所性文化運動チームのカミ活動家は 「2017年2月にツイッターで『ここが女性の下宿だ』というハッシュタグ運動があった」とし 「1人世帯女性を性的対象化したあるtumblbugプロジェクトへの反発だったが、 当時、自炊する女性たちは特に安全のためのヒントをたくさん共有した。 女性の1人世帯の安全は生存権の問題だからだ」と指摘した。

[脚注]

.. [1} 《ソウル都市研究》第19巻第4号2018.12

.. [2} 《刑事政策研究》第28巻第2号2017.夏

[3] 《被害者学縁区》第26巻第2号2018.8

.. [4} 韓国はやっと0.1%を越える。

女性主義都市デザイン運動集団、「コレクティブ ポイント6」

安全な住宅で暮らす権利は女性の生命に必須だが、 安全な都市環境の重要性もそれに劣らない。 しかし昨年12月、英国の日刊ガーディアンの報道のように、 女性主義的な観点から設計された都市はめったに見ない。 そのような面で、スペインのバルセロナで活動する 「コレクティブ ポイント6」の女性主義都市デザイン運動は注目に値する。

この女性主義集団は、フェミニスト建築家と社会学者、都市設計者が結成したの会で、 この10年間、バルセロナに性平等を建設するために活動してきた。 彼らが女性主義的都市デザインに関心を持ったのは、バルセロナの経験だ。 バルセロナでは1960-70年代に再開発ブームが起き、 商業的に目立つデザインが流行したが、 その後、女性たちはむしろこれらの空間を忌避した事実が伝えられた。 それと共に、地域の女性たちは女性主義的な再開発方式を議論し始め、 こうした努力の末に今は女性にとってさらに安全な開放的な空間になった。

こうした経験の中で、コレクティブ ポイント6はいくつかの原則を作った。 まず、彼らが最も重要だと思うのは都市における「可視性」だ。 目で見えるということは、そのまま安全に感じられるということを意味するためだ。 しかし現代の都市は、商業的な空間の可視性は高いが、 パブリックスペースはこれに較べると大きく遅れているというのが彼らの見方だ。

この集団がまた重要だと思うのは、道の配置だ。 女性に対する暴力は閉じられた空間で発生するので、 曲がり角、階段、路地、玄関などの施設をすべて考慮しなければならないという。 たとえば、高い垣根とトンネルのような道の富裕地帯は むしろ最悪の犯罪現場になるという。 また、道に配置された植物は1メートルを越えてはならず、 木は照明を遮断しないように維持しなければならないと言う。 実際に彼らの努力により、スペインのバスク地方ギプスコアの州都、 サン・セバスティアンでは、 地方法で新築建物のすべての入口の高さを道の水準に合わせるようにして、 深く入り込んだ空間を最大限減らすようにした。

これ以外にもコレクティブ ポイント6は 「女性たちが道路でどのように再現されるのか」が重要だと見る。 例えば、スペインの女性団体は、 こうした都市環境の問題を解決するために、 全国的に女性または女性関連の名士の名前を道路名にするキャンペーンを進めている。 また、壁画や公共芸術、特に女性たちの寄与を喚起するフェミニズム作業を支援する運動も活発だ。 コレクティブ ポイント6で活動するサラ・オルティスは 「(これらの事業により)バルセロナは パブリックスペースで発生するジェンダー暴力に反対するキャンペーンを進めている」と強調した。[ワーカーズ59号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-10-03 11:48:42 / Last modified on 2019-10-17 03:18:56 Copyright: Default

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