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韓日対立の本質、帝国主義覇権の闘い

[ワーカーズ]朝鮮半島

ペ・ソンイン(聖公会大) 2019.08.26 12:45

今、東北アジアは巨大な地殻変動中だ。 2019年の国際情勢は、まるで100年ほど前の朝鮮半島の状況と似ているという分析が多いが、 その時とは状況がかなり違う。 朝鮮半島は分断状況で、周辺国家はさらに強く、 北朝鮮は核を保有する国家になった。 いつよりもさらに情勢は激烈で激しく展開している。 すべての国が一寸前を予測するのも難しいほど重要な岐路に立っている。

安倍により触発された日韓の対立は、 貿易戦争、経済戦争、歴史戦争であるのは明らかだが、 単なる戦争ではなく帝国主義の戦争だ。 これは2008年の大恐慌以来、資本主義衰退が加速して激しくなるほかはない 帝国主義列強間の覇権争いだ。

米帝国主義の覇権弱化

今回の事態はトランプの米帝国主義の覇権弱化が根本的な動機として作動している。 現在、米中両帝国主義強大国の貿易戦争が、関税から為替レートに拡大し、 全面戦争の様相に駆け上がっている。 これによって世界資本主義経済の不確実性がさらに高まり、 いわゆる「R(Recession・景気低迷)の恐怖」が世界に広がっている。 英国、ドイツ、日本、ロシアなど主要列強の経済が景気低迷崖に追い込まれた。

その上、イラン、北朝鮮、ベネズエラなどの主要拠点に対する米国の覇権戦略が 同時多発的に乱脈の様相を示し、自ら危機を招いている。 これはトランプの政治スタイルに起因することだが、 政策目標と手段に対する十分な内部調整なく一方的に同時に推進したことで 対立と緊張だけ高めるという限界を見せる。

トランプの政治スタイルは、即興的な面と戦略的な面が混ざっていて、 分析や予測はかなり難しい。 したがって、政策は互いに矛盾するほかはない。 北朝鮮の非核化のためには中国側の協力が必要条件だが、 米中貿易戦争はこのような協力の意志を弱める。 イランとの軍事的緊張はロシアの領域内の影響力を高める逆説的な結果を作り、 周辺国の同意も得るのが難しい状況だ。 ポムペイオ国務長官とジョン・ボルトン国家安保補佐官の意見を受け入れたが、 ベネズエラのマドゥロ政権を簡単に屈服させることができなかった。 このような問題は、トランプがオバマの政策をひっくり返すことに執着し、 過去と違う政策を優先順位なく同時多発で進めたためだ。 どれ一つ思い通りにならず、焦燥感から無理を強いるようになる。

日本の本格的な戦争国家化

このように米国の覇権が弱まっているのに、じっとしている国家はない。 米国の覇権弱化は日米同盟と駐日米軍を根幹とするサンフランシスコ体制に全的に依存してきた日本の安保戦略を根本から揺さぶった。 アジアでの米国の覇権が弱まったり米中が協力関係に進めば、 中国の勢力圏に編入されかねないという日本の恐れが大きくなったのだ。 サンフランシスコ体制によって日本の国力が数十年間停滞したのも不満だった。 そのために米中関係が対立局面になる時、 米国の大衆封鎖を助けるという名目で再武装を急速に推進することにより、 日本を戦争ができる正常国家にしようとしているのだ。

こうした日本の立場は新しいものではない。 こうした意図はオバマ在任8年間の「アジア再均衡政策」と共に、 日米安保ガイドラインを修正してすでに本格化している。 しかしトランプの登場が測定不可能性を再点火し、 そこに韓半島の平和プロセスが安倍をいらだたせている。

トランプのアジア政策も一役買った。 彼のアジア政策はインド・太平洋戦略で、オバマのアジア再均衡政策とは全く違う概念の接近法だ。 インド・太平洋戦略の基本構造は安倍総理が提案した内容なので、 トランプ行政府のアジア戦略において韓国・日本の協調は必須要素ではない。

インド・太平洋戦略は中国牽制のための安倍のアイデアだ。 安倍が総理に就任する直前の2006年末から 「自由で開かれたインド・太平洋(free and open Indo-Pacific)」の重要性を強調し、 この地域を一つの戦略空間と見なした。 安倍の主張は国際社会の関心を引かなかったが、 日本はこの戦略を自国の大戦略(Grand Strategy)として採択した。 そして米国のトランプ行政府はこれを受け入れて米国の対アジア政策として確定した。 たとえ日本のアイデアを受け入れたとしても、この戦略は極めてアメリカ的だ。

安倍の挑発はこの時から本格化した。 安倍は2006年に執権1期を始め、 サンフランシスコ条約で形成された「戦後体制からの脱皮」を公言した。 太平洋戦争の日本人A級戦犯を断罪した東京裁判に対しても強く批判する歴史挑発を行った。 その後、靖国神社を参拝し、村山談話と河野談話も否定した。 原子力大国として潜在的核保有国の野望まで表わし、 解釈改憲で平和憲法まで無力化するなど、安倍の動きはよどみなかった。

このような立場は安倍が再執権した2012年から現在まで変わらない。 ただし、対北朝鮮強硬論だけを叫び「米国のプードル」の役割をした 李明博(イ・ミョンバク)-朴槿恵(パク・クネ)政権とオバマ政権の戦略的忍耐心は、 安倍に特別な行動を要求しなかった。

だが状況は変わった。 北朝鮮が核保有国家になったのだ。 それと共に、日本は日米新蜜月を標榜して「トランプのプードル」を自任して、 自衛隊の地位変更と戦力強化、そして防衛力強化のために具体的な行動に突入した。 まさに最先端の米国産兵器の購買を拡大したのだ。

その上最近の北米交渉の過程で日本が持続的に排除されたことで、神経が鋭くなった。 今はトランプに一方的に依存するのは難しいと考えたのだ。 安倍が米国の仲裁まで拒否して韓国をホワイトリストから除外して、 ホルムズへの自衛隊派遣さえ拒否したことが直接の証票だ。 朝鮮半島平和プロセスから排除されれば、 東アジアでの役割はさらに縮小され、安倍が望む普通の国家への道はさらに遠ざかるようになる。

そのような意味で安部政権の輸出規制は一種の報復措置だ。 おそらく事前にトランプに了解を求めただろう。 これまで安部政権は朝鮮半島平和プロセスの過程で妨害と対立を続けた。 現在、日本による韓国への圧迫と米国の中国への圧迫は、 政治・外交的目的達成のために経済力を武器としているという共通点がある。 したがって、当分、米国は彼らの戦略と構造的に類似した形態の措置を取る日本を阻止しないだろう。

文在寅政府の選択は?

安部政権は極右ポピュリズムと軍国主義勢力の典型だ。 最悪のシナリオは、北朝鮮が日米に対抗する中・ロの最前線基地になり、 韓国が中・ロに対抗する日米の最前線基地になり、 韓国、北朝鮮が軍備競争にしがみついて朝鮮半島の軍事的対決の構図が激しくなることだ。

だが今回の日韓対立は、逆説的に東アジアが新しい平和体制に進む出発点にならなければならない。 日本は韓国を敵対国にして東アジア覇権競争で優位を先行獲得しようと焦燥している。 これを契機として米国が韓国の役割についてあらためて考えさせ、 朝鮮半島平和プロセスを一段階進展させなければならない。

したがってサンフランシスコ体制を解体して新しい東アジア平和体制を建設するには、 何よりも米国の対北経済制裁緩和が先行しなければならない。 そうすることで北朝鮮は中国に対する経済依存度を下げ、 韓国は米国に対する安保依存度を下げ、 朝鮮半島が日ましに激化する米中対決においても、 または日米対中ロ間の軍事的対決構図を緩和する緩衝地帯として、平和地帯になることができるだろう。

だが文在寅政府の前には 朝鮮半島平和体制、韓日関係、INF廃棄以の後遺症、 防衛費分担などの争点が同時に置かれており、 限られた時間内に判断しなければならないという困難がある。 それでも今回の選択がいつよりも重要だということを認識しなければならない。

進歩-左派の役割が重要だ

文在寅政府によって触発された「反日民族主義大同団結」は、 それ自体で時代錯誤的な命題だが、これが彼らの本質だ。 過去の帝国主義支配に対しては謝罪と賠償を要求し、 大々的に民族感情を扇動して、 現在の帝国主義支配に対しては深刻な事大主義の姿を見せる。

今は1894年でもなく、1919年でもないが、 一般大衆は日帝強制支配期と植民統治の歴史的な再現と民族的な感性に動員されている。 冷徹な理性と韓日労働者・市民の連帯の構築、 東北アジア平和と善隣、互恵に立脚した新しい韓日関係の定立が強調されるが、 現実はそれほど容易ではない。

進歩-左派は不買運動に対する市民の自発的行動と排他的な民族主義をきちんと説明できない。 これを制御したり統制する力も、名分もない。 大衆は日本によって強要された選択に合理的に対応するだけだ。 自分たちだけの共同体を守るために積極的に参加していてるが、 それが共同体一員としての義務と思考しているからだ。

進歩-左派は労働者国際主義と韓日民衆連帯のための持続的な努力に邁進しなければならない。 韓国の市民社会が反安倍戦線から反日本戦線へと拡大しないように、 内部の闘争を通して堅持し、大衆の同意を獲得しなければならない。 特に、経済戦争を名分として労働者搾取を強化しようとする韓国の独占資本との闘争を宣言し、 大衆を説得して参加させなければならない。 今は大衆を教えるエリート主義の時代ではない。 決して一般大衆よりも進歩的知識人のほうが良いとは言えないからだ。

レーニンは帝国主義論でカウツキーを批判し、 日本の朝鮮合併を例にあげて帝国主義の本性を告発した。

「ある日本人が米国のフィリピン併合を非難したと仮定してみよう。 この場合の問題はこうだ。 その日本人の非難に対して、人々は果たして彼がフィリピン併合の欲求を持っているからではなく、 併合そのものに本当に反対しているからだと信じることができるだろうか? 結局、われわれはただその日本人が日本の朝鮮併合に反対して戦い、 日本から朝鮮が分離する自由を要求する場合にのみ、 彼が本当に誠実に、また政治的に正直に併合に反対し、 闘争するのだと認めることができるのではないだろうか?」[ワーカーズ58号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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