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記者も最低賃金を受けたら

[ワーカーズ] 『真心混じり』の冗談

クォン・スンテク(言論改革市民連帯) 2019.08.01 10:25

「対国民約束を守れなくなったことを非常に残念で申し訳なく思う」文在寅(ムン・ジェイン)大統領
「対立管理の模範的事例ではないかと考える」キム・サンジョ青瓦台政策室長
「引き上げ額を見れば過去より低い金額ではない」李載甲(イ・ジェガプ)雇用労働部長官
「経済安定的な側面がさらに多く考慮された」イム・スンスン最低賃金委員会常任委員(公益委員)

彼らの共通点を探してみよう。 すべて活発な経済活動をしている男性だという点が真っ先に思い浮かぶ。 その次によぎる考え。 「最低賃金を受け取っていない」。 では、上の発言は社会高位層の「言いたい放題祭り」程度か。 約束を守れなくて申し訳ないと言う。 対立管理の模範的事例だと褒めそやした。 引き上げの「額」は低くないと強調した。 経済安定を考慮した決定だと言った。 第三者的な立場でしかない。 あるいは第三者だから可能だった言葉だろう。 最低賃金を受け取る労働者たちは、あの発言を聞いてどんなことを考えたのだろうか。

今年の経済成長率展望値は2.5%、そして物価上昇率は1.1%。 その合計よりも低い2.87%上げられた時給8590ウォン。 それが来年度の時給だという。 では、政治・行政をする彼らの口から出る言葉は 「申し訳ない」で終わらせてはいけない。 経済環境、雇用状況、市場受容性などを考慮するとやむを得なかったという「弁解」はなく、 実質賃金が削られることになった労働者たちの安定した暮らしのための「対策」が出てくるべきだった。 それが最低賃金算入範囲がさらに広がる2020年の最低賃金で働く労働者にとって最低の道理だ。

報道機関・記者の意図が込められた記事

第三者的立場、マスコミの報道は違うだろうか。2.87%値上げ、8590ウォンの採決が出てきた翌日、 保守メディアは努めて表情を管理しながら、さらに多くの要求を吐き出した。 朝鮮日報は7月13日、 「すでに井戸に毒が広がったのに、 毒が少ないと感じたとしても何の意味があるのか」という社説を掲載して 「週52時間勤務制」と「非正規職の正規職化」、「脱原発」、 「文在寅(ムン・ジェイン)ケア」、「4大河川堰撤去」の再検討を要求した。

同日、東亜日報は 「現実を考慮した最低賃金2.9%引上げ…速度調節すべき政策は多い」という社説で 「業種別・地域別・企業規模別に使用者の支払い能力が異なり、 必要な生活費が異なるが、賃金を画一的に適用するのは合理的ではない」と主張した。 「最低賃金の差別適用」を持ち出したのだ。 中央日報のクォン・ヒョクジュ論説委員も 「これは心配なのか、言い訳なのか」のコラム(15日)で 「最低賃金、手も付けられない部分が残っている。 業種・地域・規模別の差別適用と決定構造の改善」と、 話を合わせたかのように調子を合わせた。

経済紙はさらに一歩踏み込んだ。 韓国経済は「最低賃金『拙速・猛スピード』を認めるなら差別化も受け入れろ」 の社説(13日)で「最低賃金の地域・業種・企業規模別の差別化」を越え、 最低賃金算入範囲の調整を要求した。 韓国経済は最近、移住労働者に提供されている宿泊費が 最低賃金を算定した時に除外されているとし、 逆差別になるという世論集めをしている。 毎日経済も「議論が多い週休手当て、最低賃金算入範囲の合理化を急げ」 の社説(16日)で、最低賃金の算定に 「週休手当て」、「現物が支払われる宿泊費」を入れるようにと声を高めた。 先立って自由韓国党の黄教安(ファン・ギョアン)代表による 「外国人勤労者に同じ賃金は不公正だ」という発言がナビ効果を起こしているのか。

アジアトゥデイの「2.87%引上げられた時給8590ウォン」について尋ねる アンケート調査(16日)の結果についての記事も、 むなしい笑いが出るのは同じだ。 質問した結果、「適切だ」が29.7%、 「引き下げされなければならない」が25.6%、 「凍結しなければならない」が25.2%、 「さらに上げなければならない」が15.4%と集計されたという。 それでアジアトゥデイは冒頭で、 「適切だという意見が最も高かったが、 『凍結』や『引き下げ』という応答を合わせれば半分を越える50.8%であった」 と修飾した。記事の意図がわかるポイントだ。

質問の結果をめぐり、異なる修飾も可能だった。 アジアトゥデイ編集局が 「時給8590ウォン」と決定した最低賃金が「適切」だと判断したらどうだっただろうか。 「適切だという意見が一番高かった」と書いただろう。 正反対の論調の記事を生産することも不可能ではない。 「さらに引き上げ」るべきだと判断すれば、 「『さらに引き上げ』という意見も15.4%もあった」と付け加えただろう。 「凍結」と「引き下げ」の値をまとめて、 「適切」と「引き上げ」をまとめる方法もある。50.8% VS 45.1%という数値になる。 おもしろいのは、該当アンケート調査の標本誤差が3.1%pだったという点だ。 誤差範囲内だったため、有意な差がないという結論が出てくる。

「記者がそこにいない」

これらのメディアの記者たちも 「最低賃金から逃げている人々」だ。 何が悪いのだろうか。 「観察する位置が間違っていれば、目を伏せた目に空は見えない」 と叱った言論学者がいた。 延世大コミュニケーション大学院のユン・テジン教授は6月、京郷新聞に 「記者はどこで世の中を見るのか」というコラムをのせた。 主題は「ニュースの信頼度」だったが、 最低賃金だけでなく、 全般的な労働・社会福祉・政治・文化など多様な分野にわたって適用が可能なコラムだ。

「最近ソウル市は、4本のバス路線で朝の時間帯に配車を増やした。 朝、労働者たちを一杯に乗せて運行する路線だ。 数人の記者がまるで新しい事件が起きたかのように朝のバスに乗り、 乗客の哀歓と事情を取材した。 数十年間、そこにいたのに記者の目には見えなかった人たちだ。 しかし、かなり以前には記者もほとんど毎日、 彼らと同じ満員バスに乗った記者が、苦しみながら出退勤をしていた時期には、 バス路線の問題、運転手の乱暴運転、バス会社の不正などがたまに社会面を飾っていた。 記者の月給が著しく上昇して生活水準が上がり、 乗用車の性能、交通渋滞、ガソリン価格といった主題が満員バスの話に取って代わり始めたのだ」。 2019年6月23日京郷新聞コラムより

ユン・テジン教授は、韓国社会の主流メディアの中堅記者が ほとんど類似の経済的、文化的背景を持っているという点に注目した。 そのような理由で 「大企業と労働者が対立すれば、企業の方に簡単に感情移入する準備ができている」と話す。 記者の周辺には工場労働者よりも企業役員の方が多いから。 首都圏外の人と会うのが難しい位置に立っているから。 一連の状況は、サムスン解雇者のキム・ヨンヒ氏の生存をかけた高空籠城ハンスト闘争に対する パノルリムのイ・ジョンナン労務士の個人SNSを思い浮ばせる。 キム・ヨンヒ氏の高空籠城場を訪れた消防署員が 「この程度ならずいぶんマスコミに出るはずなのに、 なぜこれがちゃんと出てこないのでしょう?」と質問したというメッセージ。 それに対する明快な答でもある。 「記者がそこにいないからです。」

時々、知人と話した冗談を思い出す今日この頃だ。 「この世の中には本当に最低賃金だけで働かなければいけない職業がありそうだ。 それはまさに国会議員と記者」。 もちろん、理性的に反対する。 だが感性はしばしば異なる言葉を言う。[ワーカーズ57号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-07-26 16:43:28 / Last modified on 2019-08-06 13:58:44 Copyright: Default

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