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政府は誰に何を与えたか

[ワーカーズ99%の経済]なぜわれわれはさらに貧しくなったのか

ホン・ソンマン(チャムセサン研究所) 2019.07.03 11:02

バラマキ政策の結果

韓国韓国保健社会研究院が発表した「2018年貧困統計年譜」によれば、 全世帯の個人の中で中位所得50%未満の人口が昨年1分期に20.9%を記録した。 全世帯の相対貧困率の発表が始まった2006年以後、20%を越えたのは初めてだ。 税金、年金保険料などを除く処分可能な所得(可処分所得)の貧困率も増加している。 中位所得50%未満の可処分所得の人口は2015年に12.8%だったが、 2016年には13.8%、2017年には14.0%、昨年2分期末には15.7%に増加傾向が続いた。 都市賃金労働者だけを対象に算出した中位所得50%未満率は、 昨年2分期に11.5%だった。 2016年の11.6%、2017年末の11.1%と大差がない。 都市低賃金労働者の所得も増えなかった。

特に老人貧困率は深刻な状況だ。 昨年2分期の市場所得基準で中位所得50%に満たない老人人口は65.4%、 可処分所得基準では46.1%に達した。 76歳以上では貧困率はさらに上がる。 76歳以上の人口の可処分所得を基準とする中位所得50%未満率は昨年2分期に57.1%だ。 65歳以上の人口の半分、76歳以上人口10人のうち6人は貧困に苦しんでいる。 世界1位の老人貧困率国家という汚名は相変わらずだ。

統計庁が発表した「2018年4分期家計動向調査(所得部門)結果」によれば、 所得1分位(下位20%)の世帯所得は123万8200ウォンで、 前年(150万4800ウォン)より17.7%減少した。 このうち勤労所得は36.8%も減った。 しかし5分位(上位20%)の世帯総所得は前年対比10.4%増加し、 このうち勤労所得は14.2%増加した。 5分位の所得が1分位の8倍にのぼる程、貧富の格差も開いた。 国家別の所得不平等度を示すジニ係数改善率順位でも、韓国は最下位水準だ。 文在寅(ムン・ジェイン)政府になっても相変らず最下位圏から抜け出せない。 6月9日、経済協力開発機構(OECD)によれば、 韓国の2016年税込・税抜ジニ係数改善率は11.7%、 2017年には12.6%で、統計が発表された27か国中26位に終わった。

政府支出を増やして所得主導成長政策を取ったのに、 貧困層はさらに貧しくなり、金持ちさらに金持ちになる、 この逆説的な状況をどう説明すればいいのだろうか?

全体的な労働所得分配率と可処分所得は多少増えている。 労働所得分配率の場合、賃金労働者の増加による被傭者報酬の上昇と 営業余剰減少の結果として現れる。 そして、家計可処分所得も多少改善されたと見られる。 また、貧困層の所得1分位の勤労所得は減ったものの、 移転所得(58万5100ウォン)は11.0%増え、所得減少を一部分相殺している。 低所得層に対する国家の移転支出が増加したということだ。

しかし、ちょうどここまでだ。 労働所得の一定の増加と政府移転支出の増加で家計所得の全体的な改善はあった。 だがその水準は2017年度に比べれば上昇しただけで、 2016年度の水準に戻ったに過ぎなかった。 この5年間の高点の2015年度水準を回復できないまま、 それこそちょっと増えたわけだ。 青年失業率に対しても文在寅大統領は 「とても下がった」と言う。 今年3月の青年(15〜29歳)失業率は10.8%で、 前年より0.8%ポイント下がったが、 相変らず10%を越える高い水準だ。

さらに深刻な問題は、 労働者家計の内部分化を深化させ、貧困世帯はさらに貧しくなったということだ。 また、資本内部の分化も深化させ、自営業と中小資本の所得は急減し、 独占大資本(財閥)と大資産家の所得独占はさらに増えた。 家計所得の増加も所得5分位(10.4%増加)と4分位(4.8%増加)で集中的に起き、 所得1分位の家計所得は17.7%、2分位は4.8%減少した。

恩着せの福祉政策

所得格差の深化、不平等の拡大は、 財閥の経済紙とオウム言論が言う、いわゆるバラマキ政策の結果だ。 文在寅政府は 所得税最高税率を上方修正するなどして高所得層に対する課税を強化する一方、 勤労奨励税制(EITC)などの庶民・中産層への税制支援拡大を骨子とする 税制改編を断行した。 基礎年金と失業給付、障害者年金を上げ、 勤労奨励金の支払い対象と金額も今年9月から拡大する。 最低賃金も2年間で30%近く引き上げた。 だがこれは見せかけ式、焼け石に水の政策でしかなく、 まさに誰に「与えたのか」の結果が正直に物語っている。

公的年金、児童手当て、失業給付などの各種の社会恩恵収入金、 基礎老齢年金のような公的移転所得は全体的に増加した。 公的な移転所得に再分配効果を持たせるには、 所得が高い5分位より所得が低い1分位世帯にさらに多く発生しなければならない。 移転所得金額はもちろん1分位がさらに多いが、ここにも落とし穴がある。 公的移転所得で1分位が17.1%増加したのに比べて、5分位は何と52.7%も増加した。 先立って1分位の勤労所得は36.8%減少したのに反し、 5分位の勤労所得は14.2%が増加しており、 1分位の事業所得が8.6%が減少したのに反し、 5分位の事業所得は1.2%増加した。 支出でも非消費支出部門の租税が大幅に増えたのに、利子費用も24.1%も増加した。 家計所得のうち国庫に入る金だけでなく、 利子費用として銀行などの資産家に支払う費用も増えたということだ。

結局、勤労所得、事業所得、公的移転所得、利子などが、 裕福な階層にはさらに多くの所得となって戻り、 貧しい階層には例外ない所得減少につながっている。 現在、政府は税金を一部調整したものの、 相変らず金融世界化システムを維持して金の流れが金融資産家に集中することを助長している。 資本は株式市場で大株主の株価上昇のために数十兆ウォンの現金で自社株を買い取って燃やし、株式の価値を上げている。 社内留保金は現金ではなく、未来の経営危機に備えるものであり 手を付けることができないというマスコミは、 大株主と総帥一家への株主配当を増やして社内留保金の利益余剰金を与えていることには口を閉じている。

政府の日常的な輸出大企業支援だけでなく、 各種の規制緩和と民営化で、財閥は特典を享受している。 韓国銀行は輸出大企業の支援のために新規貨幣発行額と同じ程度に毎年外貨資産を買い取り、外貨準備高を増やす。 その金額は2019年4月末現在4040.3億ドル(約500兆ウォン)だ。 韓国銀行は毎年15兆ウォン内外で、 新規通貨を供給して毎年その金額と同じぐらいの130億〜150億ドルの外貨資産を買い取り、外国為替保有額を上げた。 最近のように為替レートが不安定になる時は、 迅速に外国為替市場に介入して為替レートの安定に努める。 住宅価格が跳ね上がっても韓国銀行は住宅市場に介入することもせず、 することもできないのに、 外国為替市場には輸出大企業のためにどんな方法であれ影響を及ぼす。

こうしたバラマキ結果、 現在の所得不平等は統計作成以後、 最大の貧富の格差(ジニ係数)になっている。

企業対策が貧困対策?

右派は最低賃金引き上げと所得主導成長政策により、 むしろ貧困層の所得が減ったと力説する。 しかし彼らが直接、貧困対策と政策を注文するわけでもない。 いったい最低賃金以外のどんな方法で貧困層の所得を上げようと言うのか? 企業の雇用を拡大できるように、企業に対する政府支援を拡大し、 各種の規制を緩和しようということだ。 一言で、低所得層の支援ではなく企業支援、 それも財閥への支援をさらに拡大しろという主張だ。 彼らは100大財閥企業の雇用拡大率が60%にもなると騒ぎ、 財閥を支援すれば雇用が増え、最低賃金労働者の所得も増えると主張する。 だが低賃金・長時間の低質の雇用が作られるだけの現実はどう見るのだろうか? この5年間、財閥大企業の新規雇用の創出よりも、 構造調整と整理解雇で消えた雇用の方が多いということは、 またどう説明するのだろうか? 投資率も沈滞を繰り返しているのに、 これまで政府が企業にきちんと支援をせず、 投資率と雇用寄与率が下がっているという言葉なのか?

青年の貧困はもちろん、老人の貧困はさらに深刻だ。 そこで出てくる話が定年延長だ。 しかし、政府は企業負担を減らすという理由で定年延長の議論を 職務給制度の導入などの賃金体系改編とディールしようとしている。 政府は先の「2019年経済政策方向」に、初めて「公共機関職務給制度導入」を入れた。 特に政府はこれを上半期中に必ず達成する16大重点課題の一つに選んだ。 初めは青年雇用の創出に年配の労働者が邪魔になるとし、 賃金ピーク制を導入するといっていたが、 今では定年延長の条件として既存の労働者の賃金体系改悪を押し通している。 固定した賃金総額をめぐり、高齢の労働者の賃金を削り青年労働者に与えると言っていたが、 今度は定年を延長しようと言って削られた賃金まで薄く長く伸ばそうということだ。 青年と老人貧困の責任を労働者に転嫁するこれらの政策こそ、 下の石を抜いて上の石に乗せるような政府の所得主導成長政策の現実を見せるものだ。

最低賃金の引き上げを否定してビジネスフレンドリーを主張するのは、 全労働者の賃金を下げたり、少なくともこれ以上賃金を上げないことに目的がある。 また、資本はこれを通じて収益率を反転させる意図を表わしている。 投資先も金になるような事業がないような状況で、 彼らが利益を増やす方法は負債を大きくして利子遊びで収奪を増やしたり、 労働者の賃金を削ることだけだ。 それが難しければ、現政権と手を握り市場競争力を持つ高所得階層が、 さらに多く持っていけるような政策を維持することだろう。

政府、余裕のある財政にも予算を増やせず

韓国はノルウェーとともに10年以上、 経常収支と財政収支黒字を記録している世界唯一の双子黒字国だ。 だが政府は収入が残っているのに基本予算は上げず、 ちびちびと追加経費を編成することで「穴埋め」している。 本予算に編成されれば硬直的で固定的な予算になり、 今後も似たような水準の予算を追加で編成しなければならないという。 追加経費は一時的で臨時的な性格が強く、 翌年に該当の部分を考慮しなくても良い。 だが、短くとも2015年から5年間、ずっと追加経費というのはおかしくないか? [1]

政府予算は拡大するほど良い。 特に韓国はOECD国家の中で公共支出が低いことで有名だ。 GDP対比公共支出の割合は、2018年末には11.1%でOECD平均の20.1%の半分に過ぎない。 OECD 35か国のうち後から四番目に低い。 10年以上、固定収入が超過で入り、使おうとした金より貯まっているのに、 毎年追加経費を作るというのは政府が基本予算を上げることにさえ 負担を感じているということを傍証する。 このように、素朴な財政政策で貧困脱出どころか上位所得階層に対する支援だけをさらに拡大した。 [2]

また、民間資本は収益性の問題において雇用と働き口で限界を示している。 もうこれ以上の生産性の向上もないばかりか、 まだある雇用も自動化やロボットなどに変えて減らし続けている。 最低賃金引き上げの問題ではなく、 競争や地価上昇による費用負担の増加と自動化による雇用縮小が問題として現れている。 したがって、現在必要な雇用接近方式は、 独占と所得格差だけ拡大する企業親和政策ではない。 結果として国家が直接雇用を創出する戦略を取ることで、 今の雇用問題が少しでも解決することができる。 [3]

資本主義世界経済は、相変らず不況のトンネルの中に閉じ込められている。 特に今年の韓国経済は、OECDやIMFの警告のように現在の展望値より さらに墜落する可能性もある。 このままなら韓国社会は貧富の格差と貧困層の拡大、所得の縮小で、 危機と不安の時間を送らなければならない。 こうした時に一番重要なことは国家の役割だ。 その役割は、その日暮らしの費用を助けるのではなく、 財政政策を画期的に転換することだ。 国家が雇用を保障し、生産手段を社会的に所有することにより、 社会的な富を共有できる基盤を用意することでなければならない。 今、政府が持つべきものは魚ではなく、 魚を捕まえる方法と、魚を捉える船だ。[ワーカーズ56号]

[脚注]

[1] 「双子黒字国、国民の悲哀」、ホン・ソンマン、ワーカーズ 51号

[2] 「文在寅政府の緊縮財政、恐れ多き者よ、ここへ」、ホン・ソンマン、ワーカーズ 50号

[3] 「文在寅政府の雇用政策、そして国家雇用保障の意味」、ホン・ソンマン、ワーカーズ 45号

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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