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韓米、虚空を疾走するのはミサイルだけでない

[ワーカーズ朝鮮半島]戦略的変化の朝鮮半島情勢、どう理解するか

ペ・ソンイン(韓神大) 2019.06.05 14:34

[出処:ウィキペディア]

ハノイの2次北米首脳会談決裂後朝鮮半島情勢が新しい局面に入った。 北朝鮮は初期の米国の非核化要求に対抗して提示した経済制裁解除を引っ込め、 その代わり体制安全保障問題を本格的に持ち出した。 今年の下半期に新しい転機ができなければ、 朝鮮半島は2年前の厳しい状況に戻る局面を迎えかねない。

北米双方の判断錯誤と戦略修正

北朝鮮が東海(日本海)で短距離ミサイルを発射した5月4日、 彼らは韓米軍事演習を猛非難して南北間合意を徹底的に履行しろと強調した。 北朝鮮の宣伝媒体「ウリ民族キリ」は 「今、朝鮮半島には南北関係改善の雰囲気が続くか、 さもなくば破局に駆け上がった過去に戻るのかという厳しい情勢になっている」と批判し、 板門店宣言と平壌共同宣言を徹底的に履行しろと力説した。

また彼らは5月9日に短距離ミサイルを追加で発射し、 金正恩(キム・ジョンウン)委員長の指導の下で 長距離打撃手段を使った火力打撃訓練をしたと報道した。 続いて朝鮮中央通信は金正恩委員長の 「国の本当の平和と安全は、自らの自主権を守れる強力な物理力によってのみ担保される」という言葉を伝えた。 特に駐韓米軍のTHAAD訓練を非難して自衛的軍事力強化を強調した。

もちろん、当時のこのような報道は、 米国が異例にも5月1日と9日に続けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)の ミニッツマン3(LGM-30)を試験発射したことと無関係ではない。 米国はいつものように自らの核抑制力を名分にしているが、 イランや北朝鮮との状況が悪化していることで武力の誇示を行ったのだ。

1年5か月ぶりの北朝鮮の弾道ミサイル発射再開は、 韓米が今のような形態の連合訓練を続ける場合、 ミサイル延期を撤回するかもしれないというメッセージを含んでいる。 この日の発射は韓米軍事演習に対する対応次元の措置だという点で 「双方の中断維持」状態が危険な段階まできたことを示している。

5月16日には米国が北朝鮮貨物船ワイズ・オネスト(Wise Honest)号を 対北朝鮮制裁違反の容疑で抑留したことについて、 北朝鮮の外務省が国際社会の対北朝鮮制裁を 「踏みつぶす」と反発した。

このように朝鮮半島情勢が急変した背景は、 米国と北朝鮮双方の戦略的判断の錯誤にある。 当初、北朝鮮の公式の非核化条件は体制安全保障だった。 しかし国際社会の高強度北朝鮮制裁で人民経済の向上と経済発展戦略に支障をきたし、 米国の経済制裁緩和に戦略を変更した。 だが米国はむしろ先非核化を強く圧迫してハノイ会談を決裂させた。 米国の先非核化戦略を北朝鮮が誤認したのだ。

だが米国も戦略的な判断錯誤をした。 北朝鮮を強力に制裁すれば結局苦痛に耐えられず屈服するという誤った判断だ。 だが米国のこうした誤った判断は、むしろ非核化交渉を難航させるだけだ。 北朝鮮は米国の経済制裁に決して屈服しないだろう。

このように北米双方は、政治的関係と信頼形成過程で誤った判断したことにより、 事態を悪化させて相互不信を招いてしまった。 トランプの即時的な処理方式は金正恩に信頼の根拠を提示したが、 彼の政治的判断と計算は決して即時的な方式ではなく戦略的だった。 典型的な帝国主義的な態度から抜け出していない。

金正恩の立場としては、 文在寅(ムン・ジェイン)大統領を媒介として信頼を形成したため ナイーブな態度と姿勢で判断錯誤をするようになった。 これまで金正恩文在寅の朝鮮半島平和体制建設の努力を高く評価して、 多少の希望を持っていたと見られる。 しかし金正恩は、 北米交渉と南北関係が同時に進む中で現れた 文在寅政府の非自主的な態度に強く失望した。 そのため北朝鮮は文在寅政府にたびたび前向きな態度を要求したが、 文在寅政府がこれに相応できず、 米朝関係も意図する方向に進まないため、 結局トランプの罠にかかったと一歩遅れて判断したようだ。

5月に入っても文在寅政府に対する批判の声は続いた。 北朝鮮の対南批判は文在寅政府が対北朝鮮政策でもって 独自の声をあげ、自主的に行動することを要求するものだった。

では北朝鮮はいつまで粘れるのか

金正恩国務委員長が 4月12日の最高人民会議施政演説で米朝対話期間を年末とした。 これは少なくとも年末までは北朝鮮が制裁に耐えられるということだ。 北朝鮮の経済が制裁により影響を受けているのは事実だが、 根幹が揺らいだり崩壊する水準の危機ではない。

[出処:ウィキペディア]

国連食料農業機構(FAO)と世界食糧計画(WFP)の報告書が北朝鮮の食料事情を最近10年で最低の水準と評価しているが、 現在の北朝鮮は経済改革と市場化により最低限の内部発展動力を確保している。 市場物価や民間為替レートを見れば、過去のように大きく動揺することはない。 4月に金正恩が 元山・葛麻地区と三池淵の工事現場に現地指導を行ってきたのは、 まだ経済制裁は粘れるという傍証だ。

また北朝鮮政府の予算が減少したという兆候もない。 工場稼動率は供給能力が向上したという点から見ると、 消費財次元の供給は国営企業、企業所で正常に運営されていると判断される。 最近、停電したという知らせもない。 新義州などの北中境界地域の都市では夜も安定して電力が供給されている。

北朝鮮当局は人民経済の向上のために経済成長と開発に速度をつけたいが、 経済制裁がそれを遮っている局面だ。 この30年ほどの間、かなり進んだ開放改革が北朝鮮経済の非効率性を改善しているが、 外部資本の流入が安定して拡大しなければ経済活路と住民の不平等緩和に寄与できない。 今は90年代の「苦難の行軍」の時期と比較してはならず、 そのような困難もないということを認識しなければならない。

そのため北朝鮮は経済制裁緩和を対米交渉の優先課題に提示した戦略的判断の失敗を認め、 体制安全保障へと戦略を修正した。 金正恩は4月12日の施政演説で 「制裁解除問題などにはもうこれ以上執着せず、 われわれの力で復興の前途を開く」と宣言した。 これは自力更正で制裁を突破するが、 経済的な理由で政治的な意思決定をするほどではないというメッセージだ。

可能な解決法は

それでも人道主義的食糧支援を通して、北朝鮮を動かそうとする韓国、米国、 そして国際社会の努力は妥当ではない。 これはむしろ北朝鮮を刺激するだけだ。 北朝鮮が戦略を修正し、米国にも戦略修正を要求したが、 韓国と米国は北朝鮮に対してせいぜい食糧支援で不満を沈めようとした。 そのため北朝鮮は明らかな態度が必要で、それがミサイル発射につながったのだ。

[出処:ウィキペディア]

結局、韓米両国は食糧支援により米朝対話を再開しようとする試みの狙いが外れたことを理解し、進退極まった。 文在寅政府はひとまず対北朝鮮制裁の枠組み内で、 開城工業団地を再開するための環境造成と事前準備に集中するという立場だ。 そしてこの2年間で執行できなかった800万ドル相当の対北朝鮮支援金も執行することにした。 南北交流と人道的支援を着実にすれば、信頼が形成されるというロマンチックな認識だ。

当分、韓米両国には妙手がない。 現在の核問題と南北関係は、北朝鮮に圧力をかけて解決できる問題ではないためだ。 北朝鮮の核放棄が体制の安全保障につながるという確信を与えなければならない。 その確信が提供されない限り、 北朝鮮は対話を放棄したりミサイル発射につながる次善、または次悪を選択するだろう。 南北関係の改善が米朝の対話に寄与するという認識は、 米国帝国主義の本質を知らない無知が招いた結果だ。 それでは、南北米の首脳が 「朝鮮半島非核化と平和協定」の同時的・段階的な実現に積極的に動くことが 次善ではないか? [ワーカーズ55号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-06-11 17:48:55 / Last modified on 2019-06-11 17:50:44 Copyright: Default

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