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アシアナ航空、財閥ではなく社会主義と出会ったら?

[ワーカーズ]社会主義探求領域

カンフ(社会運動に関心が多い) 2019.05.14 10:11

#1.国の金で財閥を食わせる

大韓航空と共に韓国航空産業を両分するアシアナ航空が結局錦湖グループから離れ、 売却手順に入ることになりました。 途方もない借金を抱えていたのでもうすぐ満期が来る数百億ウォン台の債務を返せなくなり、 錦湖グループは債権団に緊急資金支援を要請する代価としてアシアナ航空を他の企業に渡すということでしょう。

言論指向とは無関係に誰もが錦湖アシアナグループの朴三求(パク・サムグ)会長の経営の失敗が原因だと目星をつけています。 ひとまず経営権世襲の過程でグループを分ける紛争をしました。 余談ですが、時々財閥の経営継承「原則」を見ていると、 果たして21世紀を生きているのかと思うほどです。 たとえば「優しい企業」というLGは、 その名前さえ古色蒼然とした「長男継承原則」によって経営権を世襲しています。 もし初孫がいなかったら? 養子をとっても初孫でやります。 そうして経営権を継承したのがまさに今のLGグループ4代会長、ク・グァンモでしょう。 これと違って錦湖グループは特別に「兄弟世襲」が原則でした。 一定の年齢になれば退いて、弟に総帥職を譲るのです。 朴三求会長も、 そのように次男から経営権を譲り受けました。 しかし弟に譲る年齢になると、この「原則」を拒否して自分が会長職を維持し、 息子に経営権を世襲させることを試みています。 すると弟の朴賛求(パク・チャング)が反発し、 化学業種の系列会社を分離して錦湖石油化学という別途のグループに離れました。

このように経営権紛争を繰り広げる一方、 朴三求会長は無理な事業拡張に走りました。 2006年の大宇建設、2008年には大韓通運を買収すると言って10兆ウォン以上の資金を投入しました。 この金が突然生まれたはずもありません。 アシアナ航空をはじめとする系列会社の資金をかき集め、 この過程で莫大な負債を抱えることになります。 しかし2008年に世界経済危機が起き、こうしてかき集めた借金が錦湖グループを押さえ付け、 結局、大宇建設と大韓通運をすべて買収してからわずか3年後に 各々産業銀行とCJグループにまた売りました。 もちろん買収する時よりはるかに低い価格でした。 残ったのは赤字と負債だけでした。 大宇建設の買収に資金を出した錦湖タイヤは2009年にウォークアウトを申請して産業銀行の管理体制に入り、 結局、産業銀行と文在寅(ムン・ジェイン)政府は2018年に労働者の反発とストライキ闘争にもかかわらず、 中国タイヤ業者であるトブルスタへの売却を強行しました。 大韓通運の買収に動員されたアシアナ航空もばく大な借金を抱え、 メインバンクの産業銀行はアシアナ航空の第三者売却を強行しているのです。

こうして見ると、ある巨大財閥グループがどのようにして経営の失敗で没落するのかを見せる叙事のようですが、 事態はそれほど単純ではありません。 ひとまず1万人に達するアシアナ航空の労働者の生存が関わっていて、 さらに売却の過程で兆単位の国の金が入ります。 最近、政府はアシアナ航空に1兆6千億ウォンもの緊急資金を投入すると明らかにしましたが。 錦湖グループの経営失敗でアシアナ航空が抱えている負債が多いので、 この資金投入で財務構造を健全に変えて「魅力的な売り物」にし、 第三者が買収する時は、負担を減らしてやるということです。 現在、アシアナ航空を買収する有力な候補としては、 CJ、ロッテ、ハンファなど他の財閥グループが議論されていますが。 結局は財閥グループの買収を助けるために1兆ウォン越える国の金を使うということです。

#2. 皆のための「公共の飛行機」

それなら、こう考えることもできるのではないでしょうか? 「それほど莫大な国の金を使って最も重要な航空会社を他の財閥に譲り渡すより、 いっそ華やかな国営航空会社に転換してはいけないだろうか?」 これまで大韓航空とアシアナ航空の二大航空財閥は、 空の道を掌握して莫大な利益を享受してきました。 たとえば、錦湖グループ売り上げ全体の60〜70%をアシアナ航空が儲いだ程ですからね。 航空交通がこれ以上「贅沢」なものでもありません。 航空旅客輸送統計を見れば、2017年基準で国内線旅客3千万人、 国際線旅客は7千万人を越え、 10年前の2007年の2倍を記録しています。 もちろんこの中には外国人観光客の増加が占める割合もかなりになりますが、 連休のたびに空港が大変な混雑をする風景はもうおなじみです。

社会主義で航空交通は公共大衆交通の地位を占めます。 鉄道・地下鉄と同じように、国営航空会社が運営する公共部門になるでしょう。 こうなれば3種類の長所が生まれます。

最初に浪費が消えます。 財閥が掌握した航空産業は、ただ毎日毎日利益を奪う機械でしかありません。 まさにアシアナ航空だけを見ても、 朴三求会長の破滅的な経営行為に資金を動員する主要通路に転落しました。 大韓航空も同じです。 趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長は昨年、大韓航空だけで27億ウォンの給与を受け取り、 その息子の趙源泰(チョ・ウォンテ)社長も6億ウォンを受け取りました。 その上「水掛け」事件の当事者であるチョ・ヒョンミン前大韓航空専務は 退職金の名目で大韓航空とジンエアーから何と13億ウォンを得ました。 犯罪をして追い出されても、持っていくものはしっかり持っていくのです。 配当金を持って行って、高額給与に退職金まで、 総帥一家に支払う莫大な金は社会的な浪費です。

社会主義では、航空会社は特定集団の私有物ではありません。 共同体が所有して運営するので、 今のように総帥一家や少数経営陣に高額の報酬を用意したり、 利益を引き出す行為を源泉封鎖します。

二番目に、このように浪費を防いだ金で利用客の便宜をいくらでも増進できます。 飛行機を相対的によく利用する周辺の人に聞いてみると、 飛行機代を節約するために安い座席を購入すると、足を開くのも難しい狭い空間に我慢しなければならないといいます。 ファーストクラスに一度乗るために、ただでさえ少ない月給を1年間毎月貯めることもあります。 もちろん物理的な問題を考慮すれば、すべての座席を全部今のような一等席にすることはできないかもしれません。 しかし公共交通として機能する「社会主義飛行機」では、 少なくともすべての利用客が高い値段を払わなくても狭い座席で筋骨格系の痛みを感じることがないように、 収益が出なくても便宜拡充に積極的に投資する任務を与えられるようになります。 公的財源で運営するので、飛行機を利用する市民の便宜を保障するのは 「サービス商品」ではなく「公共財の義務で市民の権利」になることでしょう。

三つ目、航空労働者たちの処遇を画期的に改善できます。 1年前にもどってみましょう。 大韓航空とアシアナ航空の両方で会長退陣を要求する労働者の闘争が行われました。 航空労働者たちは、ほとんど家の使用人の境遇でした。 大韓航空総帥一家の放言と暴行はもちろん、 アシアナ航空では朴三求会長のためイベントに乗務員を動員し、セクハラされることもありました。 労働環境も劣悪です。 航空労働者たちは持続的に人員補充を要求してきました。 乗務員の中には過労に苦しんで失神したり、死亡する事件もあり、 女性労働者の場合は不妊や流産の苦痛をあじわったという事実が分かりました。

安定した公共サービス供給の次元で接近すれば、 人員を拡充して労働条件を改善することは最も基本的な義務です。 しかも社会主義では企業を運営する核心主体がまさにこれらの労働者です。 もちろん利用客を代弁する消費者代表も公共交通産業の運営に参加するでしょう。 これ以上利益を奪うために苛酷な労働環境の強要は存在しません。 カプチル(パワハラ)と暴力を行使する総帥や社主の存在もありません。 社会主義の航空会社では、安全な公共飛行サービスのために 航空会社の労働者と消費者代表が共に議論して、 労働者自身の権益と労働条件を決めて統制できるようになります。

#3. 社会主義はすべてタダで与えるのか

こんな質問が出てくるかも知れません。 「では社会主義では飛行機値段をタダにするのか? その費用はどうするのか? 君も私も飛行機に乗ると押し寄せたらどうするの?」

社会主義では飛行機の料金は確かに下がって行くでしょう。 総帥一家や経営陣、株主が享受する利益を奪う必要がありませんから。 その恩恵は労働者や利用客である市民に戻らなければなりません。 だが社会主義でも変わらないことは、 物でもサービスでも、それを生産するには労働と資源が必要だという事実です。 その代価も払わなければなりません。 個人的には、飛行機の料金をタダにすることは難しいだろうと考えています。 ただし最低限の利用料金を受け取ることになるでしょう。 重要なことは、それ自体を社会の構成員が決定できるということです。 公共の航空会社ですから、運営費用は公的財源で賄われることになるでしょう。 飛行機の料金が無料なら、運営費用一切を税金で充当しなければなりません。 つまり、共同体は全的に税金で航空会社を運営するのか、 でなければ公的財源で補助し、一定の利用料金を受け取るのかを自分たちで決めることになります。 利益の論理を排除すれば、 「公共財として航空交通が担保すべき公益」と 「その財源を消費者からいくら取るのか」の間で いくらでも自ら調整して選択できるのです。

社会主義でも労働と資源は限定的です。 ただし、それを配分する原理が資本主義とは違います。 社会主義と訳もなく何でもタダにするのではありません。 需要が急増して非効率的に多すぎる資源を配分したり、 まったく供給できずに果てしなく列を作って人民を待つことで疲れさせるのは、 本当に官僚的な統制の産物でしょう。 民主的な社会主義社会なら問題が起きた時、 共同体の必要を満たすために何をすべきかを構成員が直接決めて、 資源の非効率的配分を正すことができます。 航空産業も同じです。 料金がないか、とても低くて需要が極度に増えることが発生するからといって、 訳もなく航空会社にむやみに多くの資源を投入して飛行機を増やすことはできません。 自分の権利により集団的決定を下す大衆は愚昧ではありません。 自分の自身の必要を確かめてみると、 一定水準以上に航空産業の拡張に資源を投入することが適切ではないと判断するのなら、 多少自らの負担を背負っても飛行機の料金を上げる代わりに社会的資源を別のところに投入する決定ができます。

ここで重要なことは、市民の自由な移動権の一環として航空交通を提供するということです。 航空交通は前述のように、今では多くの人が利用する大衆交通の地位を占めていて、 もはや「贅沢材」と扱われることはありませんが、 明らかに飛行機代が負担として作用するのも事実です。 しかしこの国から海外に出て行こうとすると飛行機の他には手段がありません。 鉄道は休戦ラインの向こうで切れていて、 たとえ大陸鉄道を連結してもとても時間がかかります。 船に乗って行くことは、さらに言うまでもありません。 結局、高い飛行機料金に耐えられなければ、海外に出て行く意欲も出すのが難しいのです。

社会主義だとしても、あなたが飛行機に乗りたいだけ存分に乗れるのではありません。 しかし少なくともお金がないという理由で行きたかった海外旅行に行けないことはあってはならないのです。 社会主義は食べて、寝て、働くことだけが権利の世の中ではありません。 自分が望む時に出かけることができ、 自分の幸福のために旅行もして生活の質を高めることができる世の中、 今の憲法で「幸福追及権」と抽象的に書かれている権利を実質的に保障することがまさに社会主義の目標です。 資本主義でこの実質的な幸福追求は、ただ個人の責任でしかありません。 「一生懸命働いたあなた、出かけよう」という文句が代弁するように、 一生懸命働いて金を稼ぎ、その金で自分の判断で行くということです (もちろん一生懸命働けば金を稼げるわけでもなく、 まして余裕もって旅行に出発できるわけではないのが現実ですけど、ね)。 「個人が旅行に行くことまで補助しなければならないのか」ですか? 質問をちょっと変えて答えます。 個人が旅行にも行けないことがないように、 社会がどの程度まで各個人と責任を分けるのかを考えること。 これが社会主義です。(ワーカーズ54号)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-05-18 19:45:06 / Last modified on 2019-05-20 14:36:42 Copyright: Default

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