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KBSで災害放送がスペイン語で流れたら?

[ワーカーズ メディアタック]

クォン・スンテク(言論改革市民連帯活動家) 2019.05.09 09:39

深夜、家で休んでいたA氏。 テーブルの上のコーヒーカップが弱く揺れる。 びっくりしてTVをつけると地上波では何事もないかのように芸能番組の真っ最中だ。 A氏は「大変なことではないらしいな」と一息つく。 しかし少し後に振動が強くなり、窓ガラスが割れ始める。 A氏は再びTVをつける。 TVは特別放送に転換された状態だった。 画面を見ると状況は深刻だった。 住宅郊外の周辺が崩落し、待避所の姿も見えた。 A氏も急いで待避所に行こうと耳を傾ける。 ところがどうしたことなのか。 特別放送はスペイン語だけで放送されていた。

過度な妄想だろうか? 江原の山火事が発生した時刻、 被害地域と近くの聴覚障害者はどんな気持ちだったか? TV画面では強い風が吹き、それによって山火事が散発的に広がる場面が繰り返されたが、 聴覚障害者は詳細な情報を知る方法がなかった。 その当時に聴覚障害者が感じた恐怖は察することも容易ではない。

災害放送主管社KBS、今回も報道惨事

江原の山火事が広がっていた時間、 SNSでは「固城で山火事が起きたが、もう束草まで広がって消すことができない状態だ」、 「ところが、放送は特別放送どころか芸能をしている」、 「山火事が大きくなっているのにちょっと報道しろ」という抗議文があふれた。 それでも平気で芸能を放映していた放送局。 江原山火事災害放送は総体的不良として記録された。

災害放送は今回も遅れた。 問題はそれで終わらなかった。 放送が江原山火事関連の特別放送体系に転換された時も、問題は如実にあらわれた。 手話放送が提供されなかった。 全国障害者差別撤廃連帯が緊急にSNSを通して 「二つの地上波放送局は災難速報に手話通訳を支援してください」と要請した。 だが手話放送は4月5日の午前になって始まった。 「字幕を読めば良いのではないか?」と反問する人もいる。 だが多くの聴覚障害者にとって、ハングルは第2の外国語に違わない。 彼らにとっての「国語」は手話だからだ。

民衆党のキム・ジョンフン議員室によれば、 4月5日、TV朝鮮6時57分、JTBC 6時59分、MBN 7時、KBS 8時、MBC 8時30分、チャンネルA 9時20分、SBS 9時50分、YTN・聯合ニュースTV 11時に手話放送が提供された。 江原山火事で人命被害が発生した急迫していた瞬間、 聴覚障害者にはまともに災害放送が提供されなかったのだ。

何よりも放送通信発展基本法により、 災害放送主管放送局に指定されたKBSの動きはさらに惨憺たるものだった。

第40条(災害放送など)
(3)未来創造科学副長官と放送通信委員会は 放送法により設立された韓国放送公社を災害放送および民間防衛警報放送の 主管機関として指定できる。

第40条の2(災害放送などの主管放送局)
(1)未来創造科学副長官および放送通信委員会は 放送法第43条による韓国放送公社を災害放送などの主管放送局に指定する。

KBS、セウォル号報道惨事で災害放送主管社になったが

KBSが災害放送主管社に指定されたのは、5年前のセウォル号惨事のためだった。 当時、マスコミは「マスゴミ」と呼ばれた。 「全員救助」という誤報、「海軍、搭乗客全員船舶離脱、救命装備投擲救助中」、 「陸・海・空総動員立替捜索」など、事実と異なる内容がKBSを通じて報道された。 惨事に対する政府の責任を転嫁するために 「兪炳彦(ユ・ビョンオン)探し」を始めた捜査機関。 KBSをはじめとする多くの報道機関もそれに歩調を合わせた。 セウォル号沈没事故真相究明のための国会国政調査調査の対象にKBSが含められた理由だ。

セウォル号惨事は韓国社会に「安全」という話題を投げかけた。 そしてセウォル号惨事に対する国政調査が進められ 「災害放送主管放送局」の重要性が台頭した。 韓国社会に災難が発生した時、国民の生命と財産を保護するために 正確な情報を迅速に提供する必要があったためだ。 そうしてKBSは「災害放送主管放送局」に指定された。 社会公共財の伝播を使いながら、 政府が出資した国家基幹放送局、 そして準租税のようにかき集めている受信料のほとんどを持っていくKBSである。

そしてセウォル号惨事5周期が過ぎた。 だが残念なことに、ほぼ同時期に江原山火事が発生したが、 障害者には「もうひとつの名の報道惨事」でしかなかった。 特に、災害放送主管放送局のKBSに対しては、さらに苛酷な評価をするほかはない。 迅速な報道は行われなかった。 被害地域に居住する聴覚障害者に対する正確な情報(=手話)も提供されなかった。 「災難脆弱階層を考慮した災難情報伝達システムの構築」という措置を取るべきだったが、 KBSはそれができなかった。 「フェイク・ニュース」という皮肉を聞くTV朝鮮よりも手話提供が遅れたという事実が、 その全てを物語る。

残念なことは、KBSにも機会があったという事実だ。 障害人権団体はすでにかなり前からKBSメイン総合ニュースの「ニュース9」で手話を提供するよう要求してきた。 3月14日にも関連記者会見があった。 もし、KBSが前向きに手話提供を検討し、障害者と対話をしていたなら、 少なくとも報道惨事は防げたのではないだろうか。 これも一歩遅れた推定だが。 しかしKBSは当時「ニュース9は聴覚障害者の放送接近権と非障害者の視聴権を調和させるために努力しているが、 TV画面の制約性により手話放送を実施できずにいる」と明らかにしただけだった。 そしてこういった。 スマート手話放送が具現される有料放送を申請するか、 UHD超高画質放送が落ち着くまで待てと。 ハングル字幕が読めない聴覚障害者には、 公営放送KBSのメインニュースさえアクセスしにくいのが現在の韓国放送の水準だ。

放送法第6条(放送の公正性と公益性)第5項は 「放送は相対的に少数や、利益追求の実現に不利な集団や階層の利益を忠実に反映するように努力しなければならない」と規定する。 権力を持つ人は自らを保護して代弁できるが、そうではない人々がいる。 メディアの接近権も同じだ。 彼らのために必要なことが、まさに「放送」だ。 KBSは「非障害者の視聴権」という盾の後に隠れているが、 今回の江原山火事災害放送で手話提供が遅れたことに対する非障害者の怒りは、 それとは異なることを語っている。 人々はKBSが必要な理由が何かと質問している。[ワーカーズ54号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-05-18 19:45:06 / Last modified on 2019-05-18 19:49:35 Copyright: Default

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