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アシアナ売却、また財閥バラマキか?

[99%の経済]落下傘と財閥議論の中で国有企業を探す

ホン・ソンマン(チャムセサン研究所) 2019.05.08 10:56

「助けてはやるよ?」

アシアナ航空が10年ぶりにまた売り出された。 錦湖アシアナグループの朴三求(パク・サムグ)前会長は、 10兆ウォンを越える資金を動員して2006年と2008年、当時は国有企業だった 大宇建設と大韓通運をそれぞれ買収し、グループ全体の財務構造が脆弱になった。 その上、2008年に世界金融危機が起きて事業が悪化し、財務構造はさらに危なくなった。 錦湖アシアナグループは結局2009年に産業銀行と財務構造改善約定を締結し、 朴三求会長は 経営悪化の責任を取って退き、 持株会社格の錦湖産業をはじめ錦湖タイヤはウォークアウトに入った。

産業銀行は朴三求前会長がグループの図体をふくらませるために、 いわゆる「黒幕」の役割を果たした。 大宇建設の買収に6兆4000億ウォンかかったが、 当時朴三求会長はどこから現金を流通したのだろうか? ケムコ(韓国資産管理公社)が所有していた政府の株式買収のために、 国策銀行である産業銀行は朴三求会長に金を貸した。 4兆1000億ウォンをかけた大韓通運の買収も似ている。 大韓通運の買収資金を大宇建設から引っぱってきて使ったので、 金を回して防いだわけだ。 結局、買う人に金がなく、売る人から金を借りた格好だ。 そうして錦湖グループが危機に処すると、 また2009年に大宇建設と大韓通運が売りに出てきたのだが、 大宇建設は産業銀行が再買収した。 ケムコから産業銀行に、右側のポケットから左側のポケットへと政府の持分が移ったわけだ。 産業銀行は大宇建設の再買収だけで3兆2000億ウォンほどかかった、 当初6兆4000億ウォンで売り、3兆2000億ウォンでまた買ったので、 それだけ利益をあげたのではないかと思うかもしれないが、そうでもない。 錦湖グループの大宇建設買収資金6兆4000億ウォンのうち4兆ウォン程度を産業銀行などが貸したため、互いに赤字を抱え込んだだけだ。 産業銀行が大宇建設を買い戻してやり、朴三求の借金の一部を返した形になった。

朴三求はグループ全体を危機に陥れた責任で退いたが、 2010年に専門経営者として経営に復帰する。 グループを潰した張本人をまた専門経営者の席につけるとは、まったくすごいとしか言えなかった。 その上、債権団が朴三求に若干の私財出資で優先買収権まで与え、 2015年末に朴三求は7228億ウォンでグループの持株会社の錦湖産業をまた買収する。 悲劇はこの時にまた始まった。 グループを取り戻すことに血眼になった朴三求は、 錦湖タイヤまで買収しようとして無理に資金を使い、アシアナ航空で問題が出てきた。 朴三求は再び会長職から降りて 産業銀行を主軸とする債権団とアシアナ航空を売り物に出すことを協議した。 産業銀行の最後の言葉が「助けてはやるよ(訳注:映画のセリフ)」だったかどうかはわからないが。

産業銀行のジレンマ

産業銀行は企業構造調整を推進する役割を果たす。 それと共に構造調整企業を対象として 流動性支援や負債比率調整などの構造調整に財務的に関与してきた。 これはもう産業銀行にとって毒になった。 産業銀行は現在、構造調整に関して2種類のジレンマに陥っている。 まず財務的な構造調整に偏ったため、 企業に対する実質的な統制や管理が全くできない。 ただ財務諸表さえ良ければ実質的な経営には関心もなく関与することもできなかった。 大宇造船の事例で見るように、国有企業の社長は自分の椅子を守るために粉飾会計に没頭し、 産業銀行の退職官僚と政官界の人々の落下傘で人事が誤用されてきた。 なにしろ昨年の国会ではイ・ドンゴル産業銀行頭取に対し、 落下傘の椅子を作るためにわざわざ(国有企業を)売却をしなかったのではないかという質問が多くなされた。

もうひとつの問題は、もうアシアナ航空のような不良大企業が売り物になる時、 これを買える企業は明らかだという点だ。 買収価格が高くて数兆ウォン単位なので、海外の大きな手や国内のもうひとつの財閥が買いとるしかない。 特に造船、機械、航空などの基幹産業の場合、国富流出の憂慮などの問題で、 海外売却は国民的な抵抗を受けることになるため、ほとんどが国内の売却を好む。 明らかに主人がいる国有企業を「主人探し」という名目でまた他の財閥が買っていく式だ。 財閥の独占と経済力の集中がなされる過程でもある。 結局、産業銀行が構造調整ですることは、財閥大企業が不良に陥り、 売り物に出てくれば大金で買いとり、不良を叩き落して適当な機会にその財閥、 あるいは他の財閥に安値でまた売るのだ。 代表的な事例がまさに直ちに朴三求前会長と錦湖グループに対して行ったことだ。 別の事例もある。 政府は12兆8000億ウォンをかけた国有企業大宇造船の経営権を2兆7000億ウォンで現代重工と総帥一家にすべて渡そうとしている。 事実上、韓国の造船産業を現代重工総帥一家に集めてやることが、まさに現代重工と大宇造船海洋の合併だ。

それでもこうして売れた企業がしっかり維持されるわけでもない。 特に生産過剰の市場では、企業を殺すために買収合併に行くこともある。 民間企業の買収合併には必ず人員構造調整が伴い、 手足をすべて切った後には必要な部分だけを取る。 買収過程での争点は、不良を誰がどれだけ抱え込むのかだ。 結局、合意に至れば、銀行は既存の不良の相当数を抱え、これはそのまま国民の負担として残ることになる。 財閥はこうして不良をはたき落とし、人を切って減らした核心だけを買収するので国民経済の次元から見ればあまり役に立たない。 ただし、財閥の経済集中だけがさらに大きくなるだけだ。

監督される国有企業にすべき

企画財政部が指定したすべての公企業は、政府の監督を受ける。 その監督により、公企業の役員の人事不正が明らかになったり、 粉飾会計などで実績を膨らませたり隠してきた不良が摘発されることもあった。 公企業の不正問題は絶えることなくニュースの源泉だ。 また政府の性格によって、公企業の運営を公益と公的生産ではなく、 営利を目的にしたりもして、 収益や人員、費用削減などを公企業の社長の遂行評価収益基準としたりもする。

公企業はこうしてあらわれる問題が多い。 だが見方を変えれば公企業だからこうした問題が明らかにできる。 私企業は問題が少ないから、何もあらわれないのだろうか? 全くそうではない。 財閥総師一家に関する会社に組織的に仕事を集め、 子供たちの超高速昇進はもちろん、 個人の着服と横領、暴力などで拘束され、 監獄生活を終えて出てきても、また会長の椅子につく。 私企業内部の位階的な構造と、公開される場合に発生する経済的な不利益により、 多くの問題が隠蔽される。 公企業はむしろ日常的に監督されるのでこれらの問題が表に出て、 社会問題になって、またそれを直すために努力することができる。

産業銀行などが所有する国有企業がこれ以上落下傘の餌だという汚名を被らないためには、 企画財政部が決める公企業に転換し、 それに準じた監査と監督を実施しなければならない。 現在のように収益型の国有企業に分類され、何の監督も受けずにただ会計帳簿だけで評価される国有企業は私企業と違わない。 財務諸表だけを見て評価する産業銀行の統制方式では、国有企業はただ金やバックがある者の黒いこづかいに過ぎない。

大韓航空まで買収して航空産業の国有化を

持っていれば落下傘守りになって、売れば財閥特典になるこの問題をどうするべきか? 答は実質的な国有化にある。 国有企業として政府の管理と監督を受け、公的生産の目的によって 社会的、国家的所有になる時、上のようなジレンマは消える。 また個別企業の所有構造だけでなく、産業全体を国家計画の中で解いていくべき時なので、 核心的な企業の国有化はさらに切実だ。 低価格航空社を中心として供給が需要を凌駕して、 石油価格に敏感な航空業の特性上、営業利益率が急落している。 大韓航空の昨年の営業利益は6402億ウォンで、前年から31%減少した。 アシアナ航空の昨年の営業利益も前年から88.5%急減した282億ウォンだ。 8つの国籍航空社の設立ですでに市場は過剰競争状態なのに、 ここに財閥リスクまで拡大している。 大韓航空総帥一家の各種のカプチル議論と犯罪の事実があらわれて、 グループ次元の危機が続いている。

このような状況で、政府は産業政策の一環として国有企業を積極的に活用することができる。 特に観光客輸送のような小売業に押し込むことがなければ、 政府の主導的で積極的な介入が必要だ。 財閥総師のカプチル議論と無能、腐敗で二大国籍機の危機が拡大再生産されているので、 さらにそうだ。 チョ・ヒョンミンが大韓航空を相続しても、やはりカプチルや経営能力も確認されない財閥総師一家の一員でしかない。 なぜ彼らに航空産業の未来を任せらることができるだろうか? 大韓航空とアシアナ航空は総帥一家の個人の所有物でなく、 航空産業を率いていく社会的任務を持っている。

ではどうすればアシアナ航空と大韓航空を国有化できるだろうか? そのままにしておけば良い。 特典と違わない債権団の1兆ウォン支援方案を撤回して静かにしているだけでも アシアナ航空はまた産業銀行が買収するようになる。 債権団の実物的支援なしで買収できる企業がないからだ。 大韓航空も総帥一家の脆弱な持分構造と相続問題で、 いつでも政府が意志さえあれば航空産業全体を6か月以内に国有化することができる。

国有化が万病の薬ではないが、 少なくとも社会資産で財閥を支援する矛盾を解決することができる。 また、さらに透明な運営と巨視的産業政策との調和の中で、 民間企業はあえて意欲を出せない投資と発展を引き出すことができる。 資本主義の構造的な不況の中でもエネルギー国有企業中心に経済を運営しているノルウェーや、 中央政府の巨大国有企業である歯磨き中心の中国を見ても、 彼らの条件は他の資本主義国家より多少有利だ。 ここに各産業の特性と過程を誰よりもよく知っている労働者の集団的統制こそ、 21世紀が要求する集団知性の社会を作り出す過程だ。 労働者たちは総帥一家の専横とカプチルの最大の被害者だが、 またこの問題を解決できる唯一の主体だ。 彼らが立ち上がり問題が解決されているという点にも注目しなければならない。 産業銀行はもう後に退いて、二大国籍機会社を国有化して実質的に統制し、 航空産業の発展の礎石を磨く絶好の機会だ。(ワーカーズ54号)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-05-18 19:45:06 / Last modified on 2019-05-18 19:46:49 Copyright: Default

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