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コルテックの「縁戚経営」が切った労働者のギターの弦

[ワーカーズ ルポ]キム・ギョンボン、イム・ジェチュン、イ・イングン、今日も復職の夢を

キム・ハンジュ記者 2019.03.05 10:43

サムスンに劣らず縁戚経営をする会社がある。 (株)コルテックの朴栄浩(パク・ヨンホ)一家だ。 朴栄浩は1973年にコルト楽器(株)を設立した。 1987年の労働者大闘争を経て、コルト楽器に労組ができた。 すると朴栄浩は1988年に法人コルテックを設立してギターを生産した。 コルト楽器の経営は継続的に削減していった。 労働者たちは朴栄浩が労組のない会社を夢見ているのではないかという 長い間の疑いを拭えなかった。 コルト楽器は現在「セミョンDNI」の名前で不動産賃貸業だけを営んでいる。 セミョンDNIの主な取り引き対象者はコルテックだ。

コルテックは2007年に労働者250人を整理解雇した後、 会社を分割して(株)ギターネットと(株)コルテックMICを設立したが、 朴栄浩の二人の兄弟が各会社の代表を受け持っている。 朴栄浩の夫人チョン某氏は現在コルテックの監査だ。 朴栄浩の息子もコルテックの社内理事を歴任している。 これ以外にもコルテックはPTコルトインドネシア、 コルテック大連有限公社の株式を100%所有している。 朴栄浩は一時は韓国金持ち順位120位(資産1200億ウォン台)に名前を連ねた人物だ。 昨年、コルテックは売上額1378億ウォン、当期純利益74億ウォンを記録した。 コルテックは今も同じ業界1位だ。

だがコルテックは長い間、解雇者の復職を拒否している。 コルテックの労働者たちは2007年4月に整理解雇された。 当時、コルテックの純利益は76億ウォンだった。 同業界の負債比率は168%にのぼるが、コルテックは30.4%で財務がしっかりしていた。 1996年から2007年までの累積黒字だけで878億ウォンにのぼる。 労働者たちは勤労基準法上の整理解雇要件がみたされないとし、解雇無効訴訟を提起した。 裁判所はコルテックの経営状況の鑑定を直接専門家に依頼した。 「(株)コルテックの財務構造は堅実でギター事業の収益性が良好なので、 大田工場の営業損失状況が経営上の緊迫した事由に該当するとは見られない」という結果が出てきた。

しかしソウル高等法院は2012年12月、破棄差戻し審理で 「将来の経営危機に対処するための整理解雇は有効だ」と判決した。 大法院は上告を棄却し、労働者敗訴の判決を確定した。 その年、民主弁護士会(民主社会のための弁護士の会)の「最悪の判決」に選ばれたこの事件の背景には、 朴槿恵(パク・クネ)と梁承泰(ヤン・スンテ)の裁判取り引きがあった。 2015年、梁承泰(ヤン・スンテ)大法院長時期法院行政処が作成した文書には、 コルテックの整理解雇有効判決が言及されていた。 裁判取り引き事件で梁承泰は拘束されたが、 コルテックの解雇者は相変らずソウル市江西区のコルテック本社前で座り込みをしている。 年数にして13年目だ。

▲2月18日コルテック解雇者らがコルテック本社に入り朴栄浩社長と会った。[出処:キム・ハンジュ記者]

朴栄浩社長室に入る

2月18日。 コルテックの解雇者たちは社長に会うことにした。 昨年末から解雇者復職のための交渉を四回続けたが進展がなかった。 社長は交渉に出てこなかった。 社長の委任を受けたイ・ヒヨン常務は自分には解決することができないといった。 解雇者は社長に直接交渉を要求することにした。 解雇者はこの日、職員が扉をあけたすきに本社に進入した。 すぐ社長室がある3階に上がった。 社長室には朴栄浩が座っていた。 2009年にミュージックメッセが開かれたドイツで会った後、 10年ぶりの再会だった。 解雇者たちはほとばしる鬱憤を抑えられなかった。

「われわれは何年も社長の解決を望みました。 社長が年末になると言っていたでしょう。 皆さんは家族だと。会社は皆さんのものだと。 社長は息子や娘を路上に追い出しました。 これが家族にすることですか? 社長なしでイ・ヒヨン常務と交渉をしましたが何も出てきませんでした。 われわれは社長との直接交渉を要求します。 返事を聞くまでここから出て行きません。」 (イ・イングン金属労組コルテック支会長)

「社長、胸に手をおいて考えれば恥かしくありませんか? いったい労働者がどんな罪を犯しましたか。 私たちもこんなこと(本社進入)をしたくてしますか? 子供たちが大きくなってお金がかかる時期に社長がそんな問題を起こしました。 利益のためなら死んでも関係ないと思いますか? 裁判取り引き文書までみんな出てきたのに、本当に正当な解雇だと思いますか? 世界中のブランド・ギター作るといわれました。 一生ギターだけ作ってきた労働者を解雇して、どんな名品を、名誉が得られますか?」 (キム・ギョンボン コルテック支会組合員)

朴社長は目をとじたまま言をつぐんだ。 使用者側管理者が朴社長の前で解雇者の言葉をはね返した。 管理者は梁承泰裁判取り引きについて 「どうして司法壟断だという結論を出すのか」、 「(裁判取り引き)文書が出てきても正確な内容ではないのではないか」と対抗した。 朴社長は「この状況では話せない」と断言した。 朴社長が労働者に対する態度は相変わらずだった。 朴社長は2008年の男女雇用平等法違反訴訟で 「労働部で馬鹿な法を作っていじめる」と話した。 2011年の国政監査では 「裁判所が不当解雇という判決を出しても解雇者復職はできない」とし、 司法体系を否定する発言までした人物だ。 朴栄浩社長は10年ぶりに会った解雇者を再び門前払いした。

▲2月18日コルテック本社に進入した市民[出処:キム・ハンジュ記者]

コルテック本社前座込場、3人の解雇者

解雇者たちはまた座込場に戻った。 朴栄浩が次の交渉に直接参加して前向きな案を提示するという約束を受けた後だった。 イ・イングン支会長は10年ぶりに会った社長について 「歳を取るにしても、なんであんな歳の取り方をしたのか」という短い所感を明らかにした。 13年の闘争の歳月、朴栄浩は73歳の老人になっていた。 解雇者も頭が白くなりシワが深くなった。 朴栄浩資本と戦う解雇者の中で一番年上の組合員はキム・ギョンボンだ。 彼は今年定年をむかえた。 定年になる前に復職してコルテック社員として名誉退職するのが現在の目標だ。

キム・ギョンボンは数字「7」との悪縁が深い。 彼は2000年にコルテックに入社する前、大田のある皮革会社で働いていた。 しかし皮革会社の近くにアパートができて、大田市から工場を移せと言われて7年で門を閉めた。 他の皮革会社に就職したのに7年後に不渡りを出した。 そしてきたのがコルテック。 コルテックの整理解雇以後、大法院判決までやはり7年かかった。 もう一つ。 彼はコルテック闘争でやめたタバコを7年目にまた吸い始めた。 彼が望むことははやく家族のもとに戻ることだ。 2月4日、息子が除隊した。 彼はひとりで座込場で二人の娘と息子、妻が家で踊りながら歌を歌う動画をしきりに再生する。

「家族にとても申し訳ない。 子供たちが中学校に通っている時、整理解雇にあいました。 私が金を稼いでくることができないので長女は大学2年の時に休学しました。 学資ローンを受けて復学するということを繰り返しました。 二番目も同じだったんです。 妻も妻で働いているのでとても胸が痛いです。 その時は子供たちは私への不満が多かったと理解しています。 今はこの闘争を終わらせなければなりません。 この年齢なので私の健康の心配ばかりする子供たちのためにも。」 (キム・ギョンボン)

▲金属労組コルテック支会キム・ギョンボン組合員[出処:キム・ハンジュ記者]

イム・ジェチュンは他のことはともかくギターの工程だけは絶対忘れなかったという。 座込場でギターを取り出して、記者にしばらく説明してくれた。 合板をギターの形に切った後、内側に十字状の木と音の高低を担当する補助上木を付け、 側板を曲げた後に厚板と結び付ける過程まで。 1400に達するギターの工程はほとんどの人の手で行われると自慢げに話した。 彼は22歳の時からソンウン楽器、サミク楽器、トギョン楽器でギターを作った。 コルテックが1980年代後半にトギョン楽器を買収したことでコルテック労働者になった。 彼は韓国にあるほとんどの楽器会社を経て、 アコースティック・ギターからエレキギターまで、 すべての技術を習得した。 30年間、ギターだけ作ってきたそれこそ技能工だ。

イ・イングン支会長は1998年にコルテックに入社した。 イ・イングンは2006年4月の労組設立の初期から支会長を引き受けてきた。 コルテック闘争を率いた張本人だ。 労組がなかった時、コルテックの労働者たちは低賃金に苦しんできた。 10年以上働いても日給は2万5千ウォン。 当時はすべての労働者の賃金が秘密だった。 会社に気に入られた人には賃金を多く払い、そうではない人は少なく払った。 実際に号俸表はなく、年次は無用だった。 特に女性労働者差別が深刻だった。 大田工場には女性労働者がかなり多かったが、賃金は男性より著しく低かった。 また管理者のセクハラ、性暴力も一二度ではなかった。 これに抗議すると賃金が凍結された。 イ・イングンは問題を提起して会社と戦った。 コルテック大田工場の労働者67人全てが労組に加入して志を同じくした。 労組は2006年12月、労働部に朴栄浩社長を男女雇用平等法違反で告訴した。 2011年、朴栄浩社長はこの事件で1000万ウォンの罰金刑を受けた。 同僚の前ではめったなことでは難しい表情をしない彼がこう話した。

「事実、4〜5年前が一番大変でした。 私が一番役割を果たせないので近くの人が私から離れました。 解雇が家庭を壊しました。 整理解雇の後に金属労組から最低賃金水準で1年間の生計費を支援してもらいましたが、 1か月90万ウォン程度でした。 生計を維持するのが難しかったです。 今、子供たちはお母さんと一緒に暮らしています。 娘は忠南大病院で看護師をしていて、息子は清州で製造業に従事しています。 時々、支部の運営委員会に参加するために清州に行くと、息子に会います。 このようにしてしか会えないことが… 組合員たちも戦いが長くなると、活動を続けられず生計闘争に出て行きました。 今は私を含み3人だけが残って復職闘争をしている状況です。 今は本当に最後を見届けなければなりません。」

[出処:キム・ハンジュ記者]

13年の解雇期間、1億5千万ウォンで決着させようとする会社

イ・イングン、イム・ジェチュン、キム・ギョンボンは、復職を条件として会社と交渉している。 13年の復職闘争の末に昨年12月26日、初めての交渉が開かれた。 使用者側は「交渉に出てくる理由がない」が 「道義的次元から出てきた」と明らかにした。 労組は解雇者たちが梁承泰裁判取り引きで犠牲になり、 これによる名誉回復も必要だと主張した。 さらに解雇者が定年をむかえたので、復職後6か月後に退社するという案を出した。 座込者3人を含む組合員のごく少数だけが復職を要求していると伝えた。 だが使用者側はこれも受け入れなかった。 使用者側は「当日復職・当日退職案」を出したが法理的に難しいと言って自ら撤回した。

13年間の解雇期間補償金をめぐっても意見が分かれた。 現在、コルテック支会の全組合員25人の闘争期間は3年、5年、13年に分れている。 労組は平均年俸2千万ウォンに、物価上昇率と該当闘争期間を反映した金額を要求した。 だが使用者側は5億以上の補償はできないと明らかにした。 使用者側は整理解雇当時の団体協約で規定している退職慰労金以上は払わないと言う。 これを基準にすれば、組合員25人の退職慰労金は1億5千万ウォンだ。 これに社会的雇用方式の基金を2億5千万ウォン規模で出資するという。 退職慰労金と基金の出資を合わせて5億未満を設定したのだ。

使用者側は整理解雇の謝罪要求についても 「謝罪という表現を使うことはできないが、合意に至った時には合意に準じる表現を使うように考慮する」とだけ話した。 立場の差を確認しただけで、2月14日に交渉が決裂した。 現在、使用者側の交渉委員を担当するイ・ヒヨン常務理事はインドネシアに出張中だ。 イ常務が3月初めに帰国すると、朴栄浩社長と共にまた交渉に出てくるものと見られる。 労組によれば、朴社長は2月18日の労組との非公開面談で、 自分が交渉に直接参加して前向きな案を提示すると明らかにした。 ただし労組もまた前向きな提案を提出してくれという条件を付けた。 イ・イングン支会長は 「われわれは初めから丸裸で交渉に出た」とし 「労組の要求はこれ以上下げられない。 今は社長の決断が必要な時期」と話した。

[出処:キム・ハンジュ記者]

悪循環を防ぐために戦ってきた歳月

労組によれば朴栄浩社長は2011年の大法院判決以後、 知人に次のような携帯メールを送った。 「これまでの労組の主張が誤っていたのは明白だった。 労組は在野労働勢力と共に会社ビルの夜間奇襲占拠、 漢江鉄塔デモ、工場長期占拠、コルト・ギター不買運動、 数十回の不法暴力デモで市民に迷惑をかけて会社を困らせた。 結局、会社が最後の選択として工場閉鎖を決めた。」

イ・イングン支会長はこのメールのために13年の間闘争を止めることができなかったと話した。 イ支会長は「労組が諦めれば携帯メッセージの内容のように、 すべての責任を労組になすりつけることを繰り返すだろう。 悪循環を防がなければならない。 たとえこの国の法が朴栄浩に正当性を付与したとしても、 われわれは正当性を付与したくなかった。 しかもわれわれの闘争に正当性を付与した多くの市民がいる。 最後まで朴栄浩の謝罪を受ける」と話した。(ワーカーズ52号)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-14 20:38:12 / Last modified on 2019-03-14 20:43:03 Copyright: Default

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