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中年の生活を送る22歳の民主労総

[ワーカーズ・イシュー(1)]文在寅の反労働攻勢と革新の間

キム・ハンジュ記者 2017.11.27 12:00

民主労総に対する非難があがっている。 民主労総が青瓦台の懇談会に参加しなかったことで、非難は絶頂に駆け上がった。 民主労総は文在寅(ムン・ジェイン)大統領の情熱的な支持者の「主敵」になった。 それだけではない。 民主労総が政府の「経済社会発展労使政委員会(労使政委)」への復帰要求を拒否すると、 民主労総は「労働積弊」の烙印を押された。

親労働政策を展開する大統領の動きに、なぜちょっかいをかけるのかということだ。 一時、民衆総決起とキャンドル広場で勢い良くはためいていた民主労総の旗は忘れられて久しい。 いったいどんな理由で「大衆組織」の民主労総は、大衆から悪口を浴びながらも「我が道」を行くのだろうか。 果たして多数の大衆が民主労総を支持して連帯する日がくるのだろうか。

[出処:キム・ハンジュ記者]

ある人の「親労働」が別のある人には「反労働」

文在寅政府の「親労働」と民主労総の「親労働」は、 水準と方向性についてかなり間隙が大きい。 文在寅政府が力を入れる 「非正規職の正規職化」の政策だけでもそうだ。 民主労総は10年以上の歳月、「非正規職撤廃」を要求してきた。 いわゆる進歩陣営の内部で、非正規職問題について最も妥協的な声は「非正規職差別撤廃」だった。 だが文在寅政府の「非正規職対策」は、 進歩陣営内部の最も妥協的な声にさえ追いつけない。

文大統領が国政第1課題として進める「公共部門非正規職の正規職化」と、 これによる仁川空港非正規職問題の解決の過程は、 こうした間隙をかなりはっきり見せる。 文大統領が仁川空港の非正規職労働者たちを奇襲訪問した後、6か月経った今。 政府の対策は、非正規職撤廃も、それどころか「差別撤廃」にさえ近付けなかった。 11月15日、韓国能率協会コンサルティング(KMAC)は仁川空港公社の研究用役を受けて 「仁川国際空港公社の良い雇用創出戦略および実行方案樹立用役中間報告書説明資料」を発表した。 報告書によれば、正規職転換対象者のうち854人(9%)だけを生命・安全密接業務と判断して直接雇用し、 残る8984人は別途独立法人(子会社)に転換するという計画だ。 公社に直接雇用されるのではない以上、以前と違わない間接雇用の身分。 その上、公社の正規職との賃金差別もそのままだ。 ただ小幅な「勤労条件の改善」だ。 当然、労働界はこれを「正規職転換」として受け入れるはずもない。

用役報告書では成功的な子会社モデルとして(株)釜山港保安公社(釜山港湾公社子会社)をあげる。 だがこれを「成功モデル」とするのは心苦しい部分がある。 公共機関経営情報公開システム・アリオによれば、(株)釜山港保安公社の職員370人の19%(70人)が非正規職だ。 無期契約職は21人、期間制は49人が存在する。 公社は新入社員を期間制で採用し、1年後に試験の成績によって正規職と無期契約職に分離する。 正規職と無期契約職は同一の業務を遂行する。 だが無期契約職の年間基本給は1951万ウォン、正規職の年間基本給は3140万ウォンだ。

その上、文在寅印の「正規職化」の始まりは壮大だったが、 終わりはますます微弱になって行った。 去る9月、政府はかなり長い間、問題になっていた 期間制教員、英会話専門講師、初等スポーツ講師などの非正規職教師を正規職転換の対象から外す方案を発表した。 これで終わりではない。 さらに政府は「最低賃金引き上げ」で予算の負担になるとし、 来年度の月賃金算定時間を243時間から209時間に減らした。 事実上、最低賃金の引き上げ効果を無力化する「小細工」だった。

対話の技術

「民主労総」のイメージは、まだ「強硬闘争」や武装闘争に近い「暴力集会」に留まっているようだ。 保守政党と保守言論、保守政権の飽くなき宣伝戦が作り出した作品だ。 だが知る人は皆が知っている。 民主労総の闘争がいかに穏健になってきたのか、 内部で対話と妥協を要求する声がいかに高いのか。 そして民主労総がいかに大衆の世論に敏感に反応するのかも。

ほとんどのメディアでは、民主労総が文在寅政府の対話の要求を仮借なく蹴飛ばしたと描写されたりする。 実はこれもまた語弊がある。 民主労総はずっと文在寅政府に(その上、朴槿恵政権の時も)対話を要求してきた。 ここで重要なことは「何をめぐって、どんな対話をするか」ということだ。 親睦会ではない以上、労働界と政府が会ってするべきことは政策的な「交渉」だ。 交渉とは遠い昔から、それぞれの利害集団が相互に満足できるような水準の結果を導き出す行為だ。 相互に満足するための前提は、平等なテーブルだ。 事実、民主労総は文在寅政権の発足直後から「労政対話」を絶えず要求してきた。 これに対する回答を出さず、事実上「拒否」したのはむしろ政府だ。 その代わりに政府は民主労総が極度のアレルギー反応を示す「労使政委」を再稼働し始めた。 整理解雇制、派遣制などの悪法を誕生させ、 労働界に絶対的に不利な合意テーブルに、 民主労総が自分の足で歩いて入るのは難しい。

それでも民主労総の新指導部選出を控えた現在、 民主労総内部の最も熱い論争の種は「社会的対話」だ。 その上、選挙に立候補した4つの候補組のうち、3つが労使政対話に肯定的な立場を出している。 各候補の差は「対話の形式」としてあらわれる。 まず記号3番のユン・ヘモ候補組は最も鮮明でシンプルだ。 ただ政府が要求する労使政委に入ろうということだ。 記号1番のキム・ミョンファン候補組は「新8人会議」を主張している。 労働界2人、使用者側2人、政府から2人、大統領、国会代表者で構成されたテーブルだ。 単純に言えば現労使政委に国会代表者を追加しようということだ。 記号4番のチョ・サンス候補組の対話法は一番複雑だ。 まず事案別労使政対話を開始するが、新しい形態の社会的対話機構の構成を議論すること、 産別交渉と労政交渉を定例化するという公約だ。 記号2番のイ・ホドン候補組の公約も比較的鮮明だ。 今まで民主労総が要求してきた「労政交渉」のテーブルを固守するという立場だ。

多様で複雑だが、またあまり珍しくもない形式だ。 先立って去る2014年には「新8人会議」と似た形式で国会の傘下に労使政小委(労+使+政+国会)が稼動した。 当時、民主労総は内部的な論議の末に不参加を宣言した。 労使政委のように「多数意見」や「検討意見」のような決定方式では、 民主労総の意見が黙殺される可能性が高いということ、 合意されない争点を労使政委に移管する問題などが障害になった。 憂慮は現実になった。 労使政小委が至急な懸案問題の大多数を労使政小委に移管しようとして対立が高まった。 実際に労使政小委は「休日勤労を延長勤労に含める」という違法に免罪符を与え、活動を終えた。

2003年には鉄道民営化をめぐり、政府と労組、鉄道庁(現鉄道公社)の3者が受け入れた合意が妥結した。 当時の文在寅民情主席が公式・非公式の対話を用意したことが伝えられている。 だが政府は結局、合意を破って鉄道民営化の基本工事の鉄道上下分離を立法化した。 2015年には社会的争点だった公務員年金改革関連で社会的合意がなされた。 結果は公務員年金の削減案と「国民年金名目所得代替率を50%に上げるための社会的機構構成案」についてのパッケージ合意だった。 結局、現在残っているのは公務員年金削減案であり、 消えたのは国民年金名目所得代替率50%のための社会的機構だった。 事実、対話と交渉の重要性を知らない人は多くない。 問題は、何について、どんな要求案をめぐり、どれほど同等な交渉テーブルにつくのかということだ。 だが現在、候補者が出した対話技法は「形式」でしかなく、 どんな争点を、どんな要求条件で交渉するのかについての中身は見つけるのが難しい。

[出処:キム・ハンジュ記者]

青年民主労総はどこに

民主労総に対するもうひとつのイメージは、 「大工場、正規職、男性、高年俸、おじさん」等と表現されたりする。 一種の「正規職中年おじさん」程度のイメージというべきか。 特定の年齢、性別、職群を代弁する利益集団であるかのように描写されたりもする。 事実、さまざまな資料によれば、こうしたイメージはある程度事実を基盤としている。 2000年基準、民主労総組合員の平均年齢は34.8歳だった。 10年後の2010年には平均年齢が41.4歳と上がった。 そして今年の組合員平均年齢は約45歳だ。 17年間にに平均年齢が10歳上がった。 17万人の組合員が加入する金属労組は、43〜46歳が79.4%で圧倒的だ。

雇用形態においては80万人の組合員のうち非正規職は約20万人だ。 労働者2人のうち1人が非正規職の時代に、とても薄情な数値だ。 女性組合員の規模は昨年約18万人だ。 韓国女性政策研究員によれば、2015年の女性労働者組織率は8%程度で、 男性労働者の組織率15.7%の半分水準だ。 だが民主労総の女性の割合は、男性の半分程度にも至らないようだ。

民主労総も危機感を感じている。 未組織非正規職の組織化のために多くの計画もたててきた。 民主労総は2005年と2009年にわたり、1、2次戦略組織化事業に飛び込んだ。 2014年には200億ウォンの基金を作って全組織的な組織化という3期戦略組織化事業を推進した。 だが自発性に基づく200億の基金事業は結局失敗した。 結局、民主労総は2014年から現在まで、事業予算の30%を未組織・非正規事業費に策定している。

先月には民主労総と市民社会団体が「労組しやすい世の中運動本部」を結成した。 今年上半期に「1万ウォン行動」に動いた連帯団体が、下半期の労組加入闘争につながったのだ。 だが運動本部の発足記者会見以後、彼らの活動を見つけるのはなかなか難しい。 民主労総の関係者A氏は 「運動本部が計画した具体的な組織化方式はない」とし 「労組法改正を宣伝して、闘争する事業場を支援するという程度だ。 ひとまず来月中旬までは運営するが、 執行部が変わった後も続けることができるかどうかは分からない」と明らかにした。

新指導部選挙を前にした今。 民主労総組織化の未来はどうだろうか。 記号1番のキム・ミョンファン候補組の組織化公約は、 △全組織的な戦略的集中組織化事業、 △労組しやすい国、労働組合作り汎国民運動程度と、ざっとまとめている。 ランニングメイトのペク・ソックン事務総長候補は11月20日に遊説現場で 「非正規職組織化のために民主労総予算の30%を配分する」と明らかにした。 だがすでに民主労総は3期戦略組織化基金の失敗で予算の30%を組織化に配分してきている。

記号2番のイ・ホドン候補組は、 未組織組織化事業に人員と予算を拡充し、 民主労総の核心事業として地位を強化するという公約を出した。 大部分の候補が共通に前提にしそうな原則的な内容だ。 記号3番のユン・ヘモ候補組は、政策資料集から未組織非正規対策がまったく抜けている。 記号4番のチョ・サンス候補組は、戦略組織化センター 「2020委員会(2020年までに組合員200万人を組織)」を構成すると公約した。 一種の組織専門家と広報集団を養成する所だ。 だがこれもなぜか新しいものには思えない。 民主労総はすでに2005年から、できるかどうかはともかく組織活動家養成体系を構築してきた。 今年の下半期には組織活動家を養成するためのモデル学校も計画した。

民主労総の関係者B氏は 「今まで民主労総の組織事業は基金募金、組織専門家採用が全てだった」とし 「似た方式で10年以上話してきた。 今は担当部署ではなく、全ての人員が組織化に死活をかけなければならない時だ。 基金造成、活動家養成を越える多様な実験が必要だ。 直接現場の組合員たちが同僚、友人、未組織労働者と会って組織を誘導する現場密着型の組織化も必要だ」と強調した。[ワーカーズ37号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-12-05 04:28:32 / Last modified on 2017-12-05 04:28:33 Copyright: Default

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