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文在寅式「非正規職の正規職化」公式の秘密

[ワーカーズ イシュー]子会社設立と職務給制度導入、本当の正規職はない

キム・ハンジュ・ユン・ジヨン記者 2017.06.20 10:38

「文在寅(ムン・ジェイン)印・非正規職の正規職化」が動き出す。 文在寅大統領が就任直後に訪問した仁川空港が初の信号弾だ。 これを始点として、公共機関、民間企業を問わず正規職化計画を出した。 公共部門では未来創造科学部の政府出資機関、韓国電力と韓国水力原子力、預金保険公社が非正規職の正規職化推進を発表した。 民間部門も機敏に動いている。 ロッテグループと現代デパートグループは、会長が直接出てきて非正規職の正規職化計画を発表した。 SKブロードバンドはすでに実行に入った。 マスコミが伝えた非正規職の正規職化の規模は7万人にのぼる。 まるで「非正規職ゼロ時代」が到来するような雰囲気だ。

[出処:資料写真]

子会社「正規職」はない

だが、これらすべての正規職化の過程におかしな公式が割り込む。 文在寅印の正規職化を象徴する仁川空港公社からそうだ。 公社の関係者は多数のマスコミとのインタビューで「子会社設立による正規職化を議論している」と明らかにした。 公社の正規職として直接雇用するつもりはないという言葉だ。 国策研究機関の韓国労働研究院もここに力をかけている。 韓国労働研究院のペ・ギュシク常任研究委員はマスコミを通じて 「仁川空港非正規職の雇用安定と所属感を改善するために、子会社の正規職化は考える価値がある」とし 「仁川公社の非正規職年俸は低い水準ではない。 このような現実を考慮せずに一括正規職として直接雇用すると、 政権末期には人件費の増加が負担になりかねない」と説明した。

民間企業もこうした流れに歩調を合わせている。 SKブロードバンドはすでに子会社設立を推進し始めた。 SKブロードバンドは6月中に5200人に達する非正規職技師を子会社設立により直接採用すると明らかにした。 希望連帯労組SKブロードバンド非正規職支部の組合員は、6月1日に投票で子会社設立に賛成した。 この日、SKブロードバンドは103社の協力業者のうち80余社との委託契約を解約した。

#事例1.タサン・コールセンター

マスコミが子会社正規職転換の「良い例」にあげるのは、ソウル市の120タサン・コールセンターだ。 当初、タサン・コールセンターの非正規職労働者はソウル市に対して直接雇用を要求して戦いを繰り広げた。 2013年と2014年にはストライキもした。 結局ソウル市は2014年12月に研究用役を依頼して正規職化方式を模索すると発表した。 結果は財団(子会社)の設立による正規職転換だった。 タサン・コールセンターの非正規職430余人は5月1日付で財団の正規職に転換された。

ソウル市が財団設立方式を選んだ最大の理由は、人件費総額の上昇を防ぐためであった。 政府は各機関の定員と人件費予算を基準人件費(総額人件費)制度という名前で統制している。 もしソウル市が彼らを直接雇用すると、人件費の上昇が不可避になる。 子会社を設立して正規職に転換すれば、雇用安定は保障しつつ、既存の賃金水準は維持できるようになる。

では正規職になったタサン・コールセンター相談労働者の労働環境はどう変わったのだろうか。 タサン・コールセンター労働者の最大のストレスは評価だった。 民間委託当時、相談員は業務テストと相談品質(QA)、コール数等により評価等級が決められた。 S〜D等級までの成果給も差別支給された。

財団の正規職になった今、労組の問題提起により、1か月に1回の割合で行われた業務テストは実施しなくなったが、 相談品質(QA)とコール数などの評価制は消えなかった。 7月以後に評価制が消えるのか、あるいは別の評価項目が追加されるのかは誰にもわからない。

今は正規職だが、また非正規職身分に転落するかも知れないという不安もある。 現在、財団の理事長は市長が任命する。 予算も市長が執行する。 財団の実質的な業務権限は市が持っている。 市長が変わればまた財団がどう変わるかわからない。 財団が区庁、交通民願などの一部の部署をまた外注化する可能性も排除できない。 A氏は「公共機関の傘下にある会社が用役に出した事例は一回や二回ではない」とし 「社会情報部員も保健福祉部傘下機関なのに、やはり用役に出した」と話した。

#事例2.都市鉄道ENG

都市鉄道ENGも子会社正規職転換の成功モデルに選ばれる事業場だ。 だがソウル市が子会社を設立した本当の狙いは別にある。 子会社の都市鉄道ENGはソウル市の人件費節減による「経営効率化」と構造調整の一環として設立されたと労組は主張している。 実際にソウル市は2008年3月、 「経営革新推進による両公社(ソウル・メトロ、ソウル都市鉄道公社)人員運用効率化方案」に続いて9月には 「ソウル市公企業改革案」を発表して構造調整計画を樹立した。 当時、都市鉄道公社の定員6920人のうち10%の削減を骨子とする内容だった。 結局、公社は都鉄ENGを2008年12月30日付で設立し、外注用役業務を統合した。

子会社には用役業者で働いていた非正規職労働者と公社を退職した移籍者などが混在している。 用役業者出身の労働者は経歴を認められず、公社に転籍した労働者は職級と号俸を維持した。 低賃金構造もしっかりしている。 労組によればENGに入社した新入7級社員の場合、月給総額が200万ウォンに満たない。 入社満6年になる5級社員の賃金は、休日手当てなどを入れてやっと200万ウォンを越える水準だ。

昨年5月の九宜駅惨事以後、ソウル市は安全業務の大々的な直営化を約束した。 だがソウル市は消防設備、電気、冷房、換気などの業務だけを直接雇用転換対象者として分けた。 直接雇用転換も「安全業務職」という職群を新設し、正規職と差別的処遇を試みた。 都市鉄道ENG労組は現在もソウル市に対してすべての安全業務について、職群分離のない正規職化を要求している。

2006年のKTX乗務員解雇闘争も、鉄道公社が子会社KTX観光レジャー(現コレイル観光開発)に乗務業務を委託する過程で発生した。 東洋セメント労働者19人は現在も 「子会社に就職させるから訴えを取り下げなさい」という使用者側の懐柔に反対し、長期闘争を続けている。 去る1月、実績圧迫と低賃金で現場実習生を死に追いやったLBヒューネットも、LG U+の子会社だ。

[出処:資料写真]

永遠の差別、職務給制度

文在寅政府は公共部門の成果年俸制を廃棄する代わりに職務給制度を導入する可能性が高い。 文大統領は候補時期賃金体系を「産業単位標準職務給中心」に改編すると公約した。 去る5月には企画財政部が公共部門職務給制度導入関連研究用役を韓国労働研究院に委託した。

職務給制度は職務を分離して、賃金、昇進体系、雇用構造などを変える賃金体系だ。 職務の価値、重要度、難易度などにより分離され、他の職務と差別を味わう構造だ。 職務の差が差別として固定されるわけだ。

#事例1.イーマート

共に民主党は職務給制度が 「同一価値労働・同一賃金」を実現する賃金体系だと主張している。 だがそもそも職務給制度の導入は財界の切実な要求であった。

真っ先に職務給制度の導入を要求したところは金融機関だ。 2006年12月、当時の黄ヨンギ ウリ銀行長は 「職務給制度は任期中にできなければ『遺言』でも残して行かなければならない人事制度の未来」だと訴えた。 当時、監査院は国策金融機関の監査で運転手、司法警察の平均年俸が6700万ウォン、6300万ウォンになると明らかにした。 職務とは無関係に単純業務労働者の賃金が高すぎるという世論が起きた。 非正規職保護法の通過で人件費の負担が大きくなるという主張も続いた。 財界は単純業務労働者に対する賃金統制が必要だった。

翌年、財界は非正規職を正規職に転換するのに人件費負担が重いとして職務給制度導入を要求した。 新世界イーマートは2007年の非正規職法施行に先立ち、 非正規職キャッシャー5千人を正規職に転換すると明らかにした。 だが彼らは職務給制度の適用を受け、既存の正規職とは異なる賃金を受けた。 5千人にのぼるキャッシャー労働者の賃金は、最低賃金が上がるだけしか上がらなかった。 2017年3月基準で最低賃金水準の賃金を受け取る正規職は2万人に達する。

イーマートは2015年に新人事制度を導入し、職務給制度を固めた。 正規職管理社員は「共通職」に、キャッシャーと店舗陳列労働者は「専門職」に統合した。 イーマート労組のキム・ソンフン事務局長は 「唯一昇進でしか賃上げを期待できないが、 職務給制度は職務から抜けない限り賃金が上がらない」とし 「専門職は時給約6900ウォン、短時間勤労者は6700ウォン程度に決まっている。 昨年、労組の要求で勤続手当が導入されたが、相変らず昇進経路は職務給の中に閉じ込められている」と話した。

#事例2.ソウル大非学生助手

去る5月28日、雇用安定をかけて闘争してきたソウル大学校非学生助手が学校と定年保障に合意した。 大学労組は無期契約職転換で雇用安定を保障される代わりに、 法人職8級賃金の88%水準に賃金を削減する案に合意した。 現賃金条件から最低18%、最高42%が削減される。 非学生助手を一種の職務にまとめ、他の正規職と賃金差異をおく方式だ。

大学労組ソウル大支部のソン・ホヒョン事務局長は 「雇用安定が重要なので合意したが、 職務給制度の形式になるのではないかと心配している」とし 「延世大は過去に大学理事会が正規職人件費の80%だけ払う、 いわゆる『行政非正規職群』を作り、全体の賃金が下降平準化された」と伝えた。

続いて彼は「学校の行政業務は今も正規職と無期契約職業務に大差がないので、 特定の業務に優先順位を付けることはできない」とし 「今でも大学本部職員は業務加算点がついて退職金、成果給、年金が高い。 職務給制度ができるとこうした差別がさらに強化され、 皆が学部行政室を辞めて本部に行こうとするだろう」と説明した。

全国不安定労働撤廃連帯のキム・ヘジン常任活動家はこうした職務給制度が新自由主義的な階級構造を完成させる試みだと説明した。 キム活動家は「学校で教える人、行政職、その他の業務を分離しようということは、 『教育』が相互に連結して一つの完成を成し遂げるという原則を壊すもの」だとし 「また各業務が『必要な業務』だという事実を意図的に削除しようとする試み」だと指摘した。[ワーカーズ32号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-06-23 20:31:40 / Last modified on 2017-06-23 20:32:27 Copyright: Default

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