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News Item 20170511
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放射能に被曝する労働者

[ワーカーズ]緑は赤

ヨン・ソンノク(客員記者) 2017.05.12 14:57

最近、ハンビット1・2号機、ハヌル1号機、古里3号機の核発電所格納容器の鉄板に329か所も穴が発見された。 腐食による現象だ。 3月27日には古里4号機で冷却水が漏れる事故が起きた。 核発電所の稼動による具体的な危険要素を探し、2008年に原子力安全技術院が作成した原発事故故障調査報告書を読んだ。

調査報告書は2008年6月6日、古里3号機の蒸気発生器のバルブ溶接部から冷却剤が漏洩した事故の内容が含まれている。 核発電所にどんな欠陥があるのかを調べる目的だったのだが、とんでもないところで視線が止まった。

「放射線作業管理のために特殊放射線作業許可書を発行し、保健物理要員により該当区域の出入を統制したことを確認した。 また同事件により、現場確認および保守などのために50人ほど(推定)が現場に出入し、 これによって個人の最大被曝線量は6.68ミリシーベルト(mSv)であると確認された。 これは原子力法施行令に明示された法的線量限度値(年間50mSv)以内であり、作業者は適切に保護されるものと判断される。」

読んだ瞬間、一発頭を殴られた感じだった。 核発電所で事故が起きればいかに危険なのかについての関心だけは高かったが、 日常的に放射能に被曝して働く労働者についてはよくしらなかった。

▲3月23日脱核エネルギー転換国会議員の会と環境運動連合が「原発を越えて安全で持続可能なエネルギー社会のための大統領選候補共同政策」を発表している。[出処:環境運動連合]

報告書を確認した時期に、知人が本を一冊送ってきた。 その本は偶然にも被曝労働者に関する本だった。 堀江邦夫が書いた「原発ジプシー〜被曝下請け労働者の記録」(無名人)だ。 この本はフリーランサー記者で記録作家の堀江邦夫が直接下請労働者として日本の原発で働いた内容を含んでいる。 彼は原発の中で鉄板のサビを除去したり固体廃棄物処理建物の清掃作業、海水管の清掃、 使用済核燃料ピット除去工事などに投入された。 クリーンアップ室の調整バルブ設置作業には5人が一組になって働いた。 ひとりが被曝線量許容値まで被曝して個人放射線警報機が鳴れば他の人が投入される調子で働く。 本には「一人で作業すればすぐにパンクする。 それで人海戦術を使わなければならない」という内容がある。

堀江邦夫と一緒に働いた同僚は、核発電所で働く前の白血球の数値が7千だったが、 核発電所の中で働いてから3千にまで下がった。 彼はこれ以上放射線管理区域の中で働くことができなかった。 如何に多くの下請労働者がどれほどの放射能に被曝したのか、 その後の健康状態はどうなのかは分からない。 書いた人は「定期点検を無視した原発設計」について、 「蓋を開けなければならないのに、そのような設備になっていない」と指摘する。 彼はからだをよじってタンクの中に入る劣悪な労働条件、 原始的で非効率的な方法で検査する現実を写実的に描写した。 定期点検を義務化したのは国家だが、労働者が働く条件を考慮しない核発電所の設計をそのまま承認したのだ。

著者は1978年9月28日から1979年4月19日までの約7か月間、 美浜原発、福島第1原発、敦賀原発で下請労働者として働いた。 著者が原発で働くことにした動機は「苦しさ」だった。 原発の実体が見えないので、その現場で働いて、目と耳で苦しさを解消したかった。 放送、言論、雑誌、ポスターなどは核発電所の「安全性」や「必要性」を主張する。 反対に、核発電所の「危険性」と「不必要性」も語られるが、 危険性を暗示するのは「うわさ」として聞こえてきたし、原子力界は反論した。 作家は事実を知るため、電力会社や官公庁、原発労働者と会ったが 「資料がない」、「そんな事実はない」、「よくわからない」という返事が戻るだけだった。 彼は情報という間接話法よりも「直接話法」を望んだ。

現在の韓国における被曝労働者の実態を調べてみた。 労働者に蓄積する放射能被曝の問題は、国内でもあまり違わなかった。 特に下請労働者の被曝量が目立った。 国内の核発電所における外注・下請労働者の1人当りの被曝量は、韓水原の正規職労働者と比べて最大で18.9倍という内容が出てきた。 崔載千(チェ・ジェチョン)議員とエネルギー正義行動が2013年10月に発表した資料によれば、 「月城1号機の圧力管交換工事の労働者の被曝量は正規職の18.9倍」だった。 2012年一年間で韓水原出入放射線従事者1万4715人のうち正規職労働者5250人の1人当りの被曝線量は0.14ミリシーベルトだったが、 月城1号機の圧力管交換工事を遂行した労働者(4人)の数値は2.65ミリシーベルトだった。 1970年代末の日本の原発で働いた労働環境と現在の国内の原発で働く作業環境は大きく違わない。

2014年に崔元植(チェ・ウォンシク)議員室が発表した資料によれば、 2014年7月基準で4か所の核発電所(蔚珍、霊光、古里、月城本部)の労働者は1万9693人だ。 このうち韓水原の正規職は6771人(全体の34%)、 非正規職は1114人(6%直接雇用81人、間接雇用1033人)、 社内協力業者(下請企業)の労働者は1万1808人(60%)だ。

「脱核(脱原発)政策」は、19代大統領選挙での重要な話題になった。 昨年起きた5.8規模の地震の後、福島原発と同じような事故が韓国でも起きるという警戒心が、環境団体だけでなく多くの市民に生まれたためだ。 脱核を宣言するとしても、その時期は2040年になるのか、2060年になるのか分からない。 重要なことは、核発電所の廃炉を宣言するとしても、日常的に放射能に被曝して働く労働者がいるという事実だ。 またその労働者たちのうち、下請労働者が危険な仕事を担当しているということだ。 政治家、環境団体、市民社会が「脱核」と共に放射能に露出して働く被曝労働に対しても対策を用意しなければならない。[ワーカーズ30号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-05-14 10:22:33 / Last modified on 2017-05-14 10:22:35 Copyright: Default

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