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醜く愚かで楽しいサムスンとの戦い

ワーカーズ9号 チャムセサンの話 - 200日を迎えたパノルリム座込場

ソン・ジフン記者/写真ホン・ジノン 2016.05.11 09:08

醜いやつらだと顔を見るだけでも楽しいのか

江南駅真前のパノルリム(半導体労働者の健康と権利を守る会)座込場はまるで島のようだ。 江南の高層ビルに出勤する会社員の忙しい人生の間で、この座込場だけは時間がゆっくりと流れる。 座込場を取り囲む宣伝物にはみじめで悲しい話でいっぱいだが、その中に座っている当事者たちはむしろ笑っている。 彼らは毎晩、何度も何度も聞いたお互いの話を聞き、毎日歌う歌をまた歌った。 座込場でパノルリム活動家が開いた「防塵服が光る夜に(防夜)」という名前の文化祭は、座込場の代表ブランドになった。 「防夜」のDJは防夜が開かれている間、活動家ではなく本当のDJに変身する。 毎日毎日続いたリレートークには、各界の人々が参加し、自分の話をして、サムスンの話をした。 人々の無関心と誤解、サムスンの変わることのない態度、言論の無関心にもかかわらず、話は絶えなかった。 彼らはそうして200日を過ごした。 いや、9年の歳月を過ごした。

4月22日に開かれた座り込み200日文化祭でも、ずっと歌声が聞こえていた。 春雨がしとしとと降り、人々は湿った冷たい道端に互いに身を寄せあって座り、歌を歌った。 防夜のDJがつまらない冗談を言って司会者にしかられても、人々は喜んで(?) 笑ってくれた。 毎週金曜には座込場で夜を過ごすという大学生もいたし、初めて勇気を出して座込場に来たという人もいた。 彼らは相変らずサムスンに心からの謝罪と再発防止対策を要求する。

9年間、飽きるほど繰り返された話。 もう嫌になるほど長い時間が過ぎた。 戦いが長びくほど生活苦は激しくなる。 そして何よりも変わらないサムスン。 しかしその長くつらい時間に耐え抜きながらも、彼らは相変らず笑う。 サムスンの威圧的な建物の前で歌を歌い、道を通る無関心な顔の人々に話しかける。 しかもまた明日の戦いを準備する。 ビニールの切れ端を重ねてつぎあわせて作った小さな座り込みテントを「五星級ホテル」と呼ぶ。 週末の晩にどこに行くのかという友人に「江南駅の道路で夜を過ごす」と話せばうらやましさ混じりの視線を受けられると冗談を言う。 世の中とサムスンは彼らを無視し、排除し続けるが、彼らはずっと世の中とサムスンに話しかけ、言葉を続ける。 それも楽しく、笑いながら。 ダメなやつは本当に顔を合わせるだけでも楽しいものだという。

また元通りに

事実、サムスン半導体職業病事態は解決局面に入るかと思われた。 パノルリムは昨年7月「サムスン電子半導体など事業場での白血病などの疾患発病に関する問題解決のための調停委員会(調停委)」の調整勧告案を大きな枠組みで受け入れられるという立場を出した。 調停委は公益法人を設立し、職業病被害の補償と再発防止対策を総括することにして、 そのための費用1000億ウォンをサムスンが負担しろと勧告した。 問題は、サムスンにとってこの勧告案は気に入らないものだったところから発生した。 勧告案が出され、調停委の勧告案に無条件に従うというサムスンが立場を突然旋回した。 サムスンは、調停委勧告案が出てから一か月ほど後に自主的な補償委員会を構成し、 この補償委を通じて被害者に「直接」補償をすると言い出した。 パノルリムがサムスン電子本館前に座込場を作ったのは2015年10月7日、 サムスン側と「サムスン職業病家族対策委員会(家対委)」が調停委に調整保留を要請した直後だ。

調停委を通じた事態解決は、そもそもサムスンが提案した。 サムスンとパノルリムの立場の違いで職業病被害補償に対する交渉が遅れているとし、 第三者の仲裁で交渉を進展するという主張だった。 しかしまさに勧告案が出されると言葉を翻した。 サムスンの補償委員会は、職業病被害家族を尋ねまわって「緘口」を条件に金入り封筒を差し出した。 9年前にファン・ユミ氏にしたように。 10年経てば山川も変わるというが、9年以上経った今、事態はまた原点に戻ったように見える。 あるいはパノルリムとのこの9年の戦いは無駄だったのではないか。 人生はますます苦しくなるが、彼らは本当にダメなやつだから顔を見るだけでも楽しくなることがあるのだろうか。

私たちの将棋は長期戦

しかし彼らは9年が過ぎる間、 200日の座り込みの間にも多くのことが変わったと言う。

「小さなスピーカーから出る小さな声だったとはいえ、決して消えることなく続いたので 『半導体、電子産業で発生した病気と死』という問題は今や韓国社会では決して 『ないふりをして無視することができない問題』になりました」。 サムスン電機で10年間働いたある労働者は、座り込み200日の文化祭でマイクを持ってこう話した。 彼は現場で生産に没頭する労働者に安全と危険を知らせる唯一の声だったと話を続けた。 ファン・ユミ氏が亡くなった後、パノルリムの戦いが始まってから、サムスンは半導体工程から危険要素を一つずつ除去した。 証拠を隠す意図だと批判することもできるが、それとは無関係に今、半導体工程で働く労働者たちは、ファン・ユミ氏より少しは安全に働けるようになった。 戦いは着実に小さな声につながった。 小さいけれど、成果も着実に積み重ねられた。 長かった9年の戦いで、パノルリムは少しずつ勝ってきた。 あるいはこの戦いを続けて声をあげること自体が、小さな勝利が続くことだ。 だからパノルリムは「望む時に望むだけに勝つことはできなかったが、 止まらなければ結局は未来を変えられる」と話す。

解決の糸口が見られた事態はまた原点に戻った。 一緒に戦ってきた人々が少しずつ離れ、世の中の関心も少しずつ遠ざかっている。 人は疲れ、生活は困窮する。 わがままをいう強情屋だという悪意が一杯な視線も嬉しくはない。 この渦中に相変らずビニールテントの中に座って、寒い時はさらに寒く、暑い時はさらに暑く暮らす彼らは、本当に本当にダメで愚かだ。 だが振り返ってみれば、このダメな人々の愚かなリレートークが、サムスンとサムスンが代弁するこの世を少しずつ変えてきた。 あるいはダメで愚かだったから、長く続く労力のいる戦いにも耐えられたのだろうか。 それでパノルリムは200日座込場で、また愚かなシュプレヒコールをあげた。 「私たちの将棋は長期戦です」。 やはりダメなやつらは顔を見るだけでも楽しい。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2016-05-18 01:58:28 / Last modified on 2016-05-18 01:58:29 Copyright: Default

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