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年俸9千5百万ウォンの秘密

[ヨンジョンのバカな愛](89)安否2:2016年夏、甲乙オートテック支会闘争(1)

ヨンジョン (ルポ作家) 2016.08.25 11:03

[筆者注] 8月24日は甲乙オートテックが職場閉鎖に入って30日になる日です。 民主労総金属労組甲乙オートテック支会(以下『支会』) 400余人の組合員が労組破壊の『傭兵』の採用取り消しと団体協上改悪案撤回などを要求して始めた工場内での座り込みは50日を越えました。 会社側は交渉に出てこず、労働組合の争議期間に不法な代替生産をして労働者の座り込みを鎮圧するための公権力投入を要求しています。 また、生産現場に復帰したら職場閉鎖を撤回すると主張して、座り込み労働者を孤立させるために、断電・断水を試みています。 長期化している甲乙オートテック闘争に関する関心と支援をお願いし、甲乙オートテック労働者がこの闘争をする理由と甲乙オートテック闘争が持つ意味を二回にわたり、読者と分けようと思います。

予測していたことがすべて事実になった

「先鋒隊員が食事しに行きます。 20分までに戻ります。 今日は陪食が遅くまでありません。 全体で食事するようにします。」

8月5日午後4時、忠南道牙山の甲乙オートテック工場に到着すると 「民主労組死守」、「団結闘争」と書かれたチョッキと鉢巻きをした人々があわただしく動いている。

「甲乙オートテック闘争に連帯するために 全国から多くの同志が駆け付けました。」

「ワ〜」

「不法職場閉鎖撤回! 労組破壊粉砕! 甲乙闘争勝利! 民主労総決議大会」に参加するために、 休暇期間なのに工場の前には多くの労働者と市民、組合員家族が参加し、組合員が喚声と拍手で歓迎する。 金属労組浦項支部と慶南支部の旗も見える。 警察が防いだため、集会は工場の前で開かれ、組合員たちは工場の中に設置されたスクリーンを一緒に見る。 スクリーンに家族の姿が見えるたびに組合員たちの顔に安らかな微笑が浮かぶ。 プラント建設労働組合からの米や水などの支援物品を甲乙オートテック支会に伝える。 警察はこれさえ止めようとし、もめごとが行われたりもする。

「開け。 開け。」

警察の統制ですべての参席者が集会場所に集まれないため、 警察への抗議スローガンも聞こえる。

「予想し、予測していたことがすべて事実になりました。 会社はすでに2014年3月から労働組合を破壊するために準備をしてきて、 傭兵を募集して暴力と内部分裂で現場を掌握しようとしました。 そして労働組合のストライキを誘導し、職場閉鎖して用役を投入し、公権力を投入した後、 選別復帰させる労組破壊シナリオを始めました。」

イ・ジェホン支会長が舞台に上がって元警察と特戦司令部出身者などの「傭兵」の投入による、いわゆる「新種労組破壊」に関する話をする。 甲乙オートテックは2014年12月、元警察と特戦司令部出身者など60人を新入社員に採用し、 支会の組合員たちに暴力を行使した。 彼らは多くの支会組合員を扇風機で殴りつけ、脳出血と顔骨陥没などの傷害を負わせ、 企業労組を設立して加入するなどして労働組合を破壊した。 支会の闘争で昨年6月23日と8月10日の二回にわたり、労組破壊の目的で入社した新入社員52人の採用取り消しなどに合意したが、 使用者側はこれを履行しなかった。 会社は彼らを牙山にある他の系列会社に配転措置した。

▲8月5日、「不法職場閉鎖撤回! 労組破壊粉砕! 甲乙闘争勝利! 民主労総決議大会」

労組破壊後に廃業するという会社、私たちが生きる道はこの工場を守ること

「会社はしばらく息を整えて、10月からこれ以上労働組合とそのどんな妥協もしないと宣言し、すぐに準備していたことを実行し始めました。 代替人員を投入し始めました。 そして非正規職のない工場を作るために、今まで労働組合が守ってきた正規職社員を一方的に強制転換配置して、外部の警備員を投入しました。 すでに犯罪行為で代表理事が拘束されたのに、会社はすぐに職場閉鎖に突入し、 今現在、ここまで来ています。 会社は廃業する、清算して出て行くと言って協力業者まで動員して脅迫しています。 だがわれわれ400余の組合員たちは、すでにすべて覚悟をしています。 一緒に暮らすか、さもなくば一緒に死ぬ。 私たちが生きる道は、この工場を守ることです。 また、その道はこの工場を生かす道でもあります。」

裁判所さえ労組法上の不当労働行為容疑で起訴された朴孝祥(パク・ヒョサン)前代表に対し、 会社側の罪質は非常に悪いとして検察が求刑した8か月より刑量が高い懲役10か月を宣告した。 だが、会社は相変らず既存の労使合意内容を履行せず、交渉懈怠を続けたため、 労組が手順を追って争議行為に入ると、7月26日に職場閉鎖を断行した。 そして8月1日、委託警備業者のジョブマスターを通じて用役を正門前に投入し、 用役に続いて警察まで投入された甲乙オートテック工場は、 暑さの中で超緊張状態が続いている。

1部集会が終わり食事時間だ。 警察との小競り合いの末に支会の食事チームが準備したワカメのクッパが出て行く。 今日、支援にきた人々の食事も含み、1500人分の食事を準備したという。 正門の近所にテントを設置して運営する食堂で働いている組合員たちは、 汁が足りないと言ってご飯が出ていっても汁を煮続け、 大きな洗面器で吸水させた米で休むことなくずっと食事の仕度をする。 食事時間が終わると2部闘争文化祭が始まる。

▲忠南、牙山にある甲乙オートテック工場

「今皆さんが座っているこの場所、戦闘警察が配置されたこの場がどんな場所なのかご存知ですか? 98年に公権力に侵奪されて血まみれになった闘争の場です。 そして2008年にはモディンコリアの名ばかり社長が用役チンピラ30人を連れてきて、 労組破壊をしようとした時に、闘争した場所です。」

パク・ジョングク副支会長が舞台に上がり、甲乙オートテック闘争の歴史について話す。 熱交換器などの自動車用空調製品を生産する甲乙オートテックの前身は、漢拏グループ系列会社のマンド機械だ。 マンド機械牙山工場は1998年、漢拏グループの不渡りにより翌年、スイスのUBSキャピタル社が主導する投資コンソーシアムが買収し、マンド空調と名前が変わった。 マンド空調は、2003年にウィニアマンド(株)へと社名を変更する。 その間、CVCキャピタルが大株主になり、2004年には米国のモディン社がウィニアマンド(株)第1工場車両協調事業本部を買収し、 モディンコリアと会社の名前が変わる。 そして2009年、甲乙商社グループがモディンコリアの株式を100%取得して今の甲乙オートテックに名前を変更した後、今に至る。

工場の中で会ったある組合員は 「会社が私たちを団結させた」と言い、 20年間で経営主が5回変わる過程で、生死苦楽を共にした組合員たちの間に職場を守らなければならないという共感が強く形成されていると話した。

殴られれば殴られろという奇異な労働組合

「会社が一日に使う用役費用が2500万ウォンだそうです。 労組破壊コンサルティングの費用を含む労組破壊シナリオの全予算は数十億です。 企業は利益に目がくらむのが正常だが、甲乙オートテックはそれが重要ではないようです。」

「労組破壊シナリオ」で知らされた甲乙オートテックの「Q-P戦略シナリオ」を入手した正義党の李貞美(イ・ジョンミ)議員は、 労組破壊と労働者に対する復讐心の狂気だけが残った企業でなければ、 こんなことをすることはできないと嘆く。

「甲乙オートテックは労働組合も奇異です。 支会長が発表した闘争指針を見てかっとしました。 殴られれば殴られろといいました。 ここにいる人はみんな家族がいるのに、支会長はなぜこんな屈辱的な指針を出したのでしょうか? 数十年間で企業主が5回変わるのを見守りながら、一度も現場を離れず主人意識を持ってこの会社を守ってきたのが甲乙オートテックの労働者たちです。」

李貞美議員は甲乙オートテック支会は誰よりも会社と産業平和を愛しているので、 殴られればそのまま殴られる覚悟で平和にこの問題を解決しようとする奇異な労働組合だと話した。

正門を死守していた勤続35年というある組合員は、 昨年用役が入ってきて多くの組合員が傷ついたことを家族が知っていて、 今年も外に用役がいる状況なので怪我をするかとずいぶん心配しているという話を聞かせてくれる。

「組合員たちが怒って衝突になれば、労働組合が崩壊しかねないので我慢しろといったのだが…。 その話をする支会長の気持ちはどれほどだったでしょう。 小さかった時、父母も他人を殴らないでくれと言ったのではないでしょうか。 他人は分からない…。」

彼は会社が研究開発に投資するべきなのに、M&Aで利益を残そうとして、 労働組合破壊だけに金を使っていると嘆いた。

「何人かの経営者のために途方もない金が浪費されています。 これが人がすることなのかと思います。 これが企業ですか? 私たちは大きなことを望んでいるのではありません。 会社が約束したこと守れと言っているのです。 労組破壊傭兵の採用取り消しの約束をしたことを守り、 団体協約改悪案を撤回して団体協約を履行しろというのが全部でした。 会社はわざわざ労組を破壊しようと60回も交渉したのに、 不誠実な態度で70項目の改悪案を持ち出したのではないですか。 今からでも職場閉鎖撤回して誠実に交渉テーブルに出てこなければなりません。 それが会社を生かすところで、一緒に暮らすところです。」

23年目労働者の基本給が200万ウォン、時給9千ウォン

組合員たちは、会社側が自分たちの年俸に関して言論プレイする内容にも多くの不満を吐露した。 甲乙オートテック使用者側は、この会社の生産職労働者の平均年俸が8400万ウォンで、 福利厚生費を入れれば9500万ウォンだという内容を一部の報道機関に情報提供し、報道させた。 また、使用者側は2014年に60億ウォン、2015年に110億ウォンの赤字が出たのに、 労働組合が基本給を月15万ウォンほど上げてくれと言って工場占拠座り込みをしていると主張している。 これについて電話で意見を聞くと、ハン・ジョンウ支会代議員(前副支会長)は「貴族労働者9500万ウォン」は、 会社が悪意的に「言論プレー」した内容だと強い語調で問題を提起した。 労働組合が要求した賃金要求額15万ウォンは実際に受け取っておらず、最近妥結した金額は5〜6万ウォン程度だと言う。

「労組が15万ウォン要求すれば、その金をすべて受け取っているかのように思わせるように会社が言論プレーをしているのです。 私は今年で入社23年目ですが、会社の平均勤続より高いです。 月給与総額が税金を入れて500万ウォン程度で、四大保険と各種税金を控除すれば380〜400万ウォン程度です。 税金控除前の金額で計算すれば年俸6千万ウォンでしょう。 この金額は賞与金と延長手当てなどの各種手当てがすべて含まれている金額ですよ。 23年目の私の月々の基本給は200万ウォンです。」

ハン氏は23年間勤めた自分の基本給が月200万ウォンで時給は9千ウォン程度とし、 会社側の主張にくやしいといった。

▲甲乙オートテック工場の中にあるプラカード

「会社が話した9500万ウォンの年俸は2014年度基準ですが、 その時に通常賃金判決により一時的に年俸が上がったのです。」

2013年12月、大法院全員合議体は、甲乙オートテック労働者たちが提起した賃金および退職金請求訴訟で、通常賃金について定期賞与金が通常賃金に該当すると判決した。 だが、追加賃金の遡及請求は労使が既に合意した賃金水準慣行を越えるので「信義誠実の原則」により認めなかった。 甲乙オートテックの労働者たちは、この判決のとおりに賃金遡及分は請求しなかった。 したがって、支会は既存の団体協約が終了する2014年4月1日から発生する時間外勤務時間への通常賃金拡大適用を要求したが、使用者側はこれさえ受け入れなかった。 支会が労働部に賃金未払いについて陳情して、賃金未払いが確認されたその年の夏から適用され、 4月〜12月の超過勤務手当てには拡大した通常賃金が適用された手当てを受け取った。

ハン・ジョンウ代議員は、使用者側が主張する高額年俸は通常賃金訴訟の結果であり、 2014年に追加で支払われた超過労働上昇分40億ウォンが反映されたものだと主張して、 苦しい心を抑えて話を続けた。

「2014年の赤字分は使用者側が通常賃金訴訟の結果、一時的に発生した超過労働上昇分40億と退職給与引当金60億等総100億ウォンを製造原価に反映したことによる部分です。 退職給与引当金60億は実際に支出された金ではなく、通常賃金の拡大により予想される退職給与金額です。 2015年にも追加訴訟充当負債、中国法の清算損失、労組破壊傭兵採用取り消しによる充当負債など80億が赤字に反映されているのです。 会社がまともな新規採用をせずに労組破壊傭兵を採用したため、 既存の労働者たちの超過勤務が増加したことも超過労働費用の発生要因になりました。」

ハン氏は甲乙オートテック2016年1分期の経営実績が約21億程度で黒字に戻ったとし、 使用者側が今のような労組破壊工作をしなければ今年は年60億〜100億程度の黒字が予想される状況だったとし残念がる。 彼は会社が会社の正常化に対する意志があるのなら、今からでもすぐに労組破壊と職場閉鎖をやめて労組と誠実に対話しろと話した。

▲正門を守る組合員

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-08-31 20:40:19 / Last modified on 2016-08-31 20:40:19 Copyright: Default

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