本文の先頭へ
韓国:現代車に吹く嵐、非正規職の声を聞く
Home 検索

現代車に吹く嵐、非正規職の声を聞く

3か月修習転換、大量懲戒、監視など...工場内外は『悪夢』

ユン・ジヨン記者 2011.04.02 00:03

[編集者注]現代自動車非正規職労働者たちに血の色の刃が突きつけられている。現在まで、現代車蔚山工場で解雇、停職・減俸などで懲戒された労働者は539人。牙山工場の場合269人が懲戒の対象者に含まれた。だが、まだ懲戒の終わりは見えない。会社は2次懲戒を準備しており、これにより懲戒される労働者の数はさらに増える展望だ。

大量懲戒で組合員を探しに入った現代車は、工場の中での徹底した監視と統制の手綱も放さない。工場の中に残った組合員は会社の監視の下で活動を封鎖される。組合員どうしの雑談も許されない現代自動車の工場は、それこそ21世紀収容所の姿だ。その上に工場内外の労働者は労組脱退と覚書強要、3か月修習転換、発言権制約などの弾圧で今日も切迫した声を高めている。

工場占拠ストライキが終わって3か月余り。今、巨大な現代車工場の中ではどんなことが行われているのだろうか?

[出処:チャムセサン資料写真]

3月31日、民主化のための弁護士の会、民主主義法学研究会、労働人権実現のた めの労務士の会、人権団体連席会議などの市民、法律、人権団体は蔚山と牙山 行きの電車に乗った。大量懲戒が続く現代車蔚山工場と牙山工場の不法懲戒、 人権弾圧の事例を調査するためだった。

真相調査団を構成した人々は、それぞれの地域で多くの組合員への懲戒と弾圧 の事例を記録し始めた。解雇と停職・減俸を受けた労働者から、基本権も遮ら れて作業をしている労働者、労組脱退を強要される労働者など、多くの声がこ こで記録された。調査団と面談するために訪ねてきた組合員は今、現代自動車 の工場では『有り得ないこと』が起きていると口をそろえた。

3か月修習転換、脱退書強要、大量懲戒...現代車に吹く嵐

現代車非正規職労働者のキム・ミョンソク(仮名)氏は、現在『深刻なこと』が 発生していると、切迫した言葉を続けた。理由はつまり、非正規職労働者が 3か月の修習に転落する危機に置かれているという。

3月31日、蔚山現代車第2工場下請業者のウンチャン企業が廃業したことで、 新規の業者がそれに代わった。そして新規の業者はそれまでのウンチャン企業に 所属していた労働者を3か月の修習で雇用すると言った。該当業者に所属する 労働者の中には10年目の熟練労働者も含まれている状況だった。

[出処:チャムセサン資料写真]
キム・ミョンソク氏は「最高裁の判決によれば、10年目の熟練労働者は正規職 でなければいけないのに、会社は彼を突然3か月修習の下請労働者にしようとし ている」とし「これは、会社が不法派遣正規職化闘争を完全に封鎖するための 策略」と声を高めた。特に新しい業者が『3か月修習転換』という先例を残すこ とで、今後、各業者での『修習』制度導入はさらに広がるという憂慮もある。 キム・ミョンソク氏は「該当業者の修習制度の導入で現代自動車工場に『修習』 職はますます増え、会社は労働者に『修習レッテル』を付けることで解雇など の弾圧がさらに簡単にできるようになる」と展望した。

特に雇用不安に苦しむ非正規職労働者には、解雇などの懲戒は露骨に行われる。 1派工場占拠ストライキと2派ストライキの後、彼らに加えられる懲戒は『労組 瓦解』をねらう。会社側が強要する『労組脱退書』や『覚書』は、彼らの懲戒 の程度を決めるからだ。会社の弾圧と懐柔で脱退書や覚書に署名した人も少な くない。普段から雇用不安を感じている人に『解雇』や『停職』という懲戒は 恐れに感じられるからだ。

覚書に署名したハン・サンボク(仮名)氏は「妻子があるので、とにかく解雇は 免れようと辞表に署名した」と述べた。覚書を書けば懲戒の水位を下げてやる と業者に言われて書いた覚書であった。覚書には『今後支会のストライキ指針 には従わない』という内容が含まれていた。

覚書を書いた後、ハン・サンボク氏は停職1週間の懲戒を受けた。彼は「私がい たA組の組合員のほとんどが覚書に署名して懲戒程度が下がり、減給措置が取ら れた。私の場合、扇動などの理由が含まれていたので、1週間の停職を受けたの だろう」とし「会社では脱退書を書けと脅迫し続けたのに、それはとても出来 なかった」と明らかにした。

覚書と脱退書どちらにも署名しなかったパク・チフン(仮名)氏には解雇という 重懲戒が加えられた。争対委員の職責を担当してきたので、懲戒の程度も高かっ た。だが解雇後も会社は相変らず彼に労組脱退を強要している。パク氏は「今 も業者は労組を脱退すれば助けてやると話しており、会社は解雇者には誰でも 労組を脱退するといえば復職をさせている」と説明した。

またパク氏は「代議員活動をして解雇されたある組合員には、業者が労組を脱 退すれば生活費を払うと話した」と明らかにした。

『悪夢』のような工場の中の風景、踏みにじられる労働者

懲戒期間を終えたり懲戒を免がれた労働者は工場に戻ったが、彼らにとって、 工場は悪夢のような空間に変わっていた。会社と業者の監視と弾圧は、彼らの 自由な行動を防いでおり、負債感に苦しむ労働者たちは互いの距離感を実感し なければならないためだ。

一か月の懲戒を終えて工場に復帰したイ・サミョル(仮名)氏は「労組が工場で 団結していた以前と比べ、会社の雰囲気は完全にむちゃくちゃになった」と吐 露した。工場の中では労働者のわずかな基本権さえ守られないでいるためだ。

[出処:チャムセサン資料写真]

イ氏は3月24日、体調を崩して早退を申請した。だが班長は業者の社長と面談し なければと伝え、イ氏は「とても熱が出てつらいので、とにかく病院に行かな ければならない」と面談を断った。すると社長に会ってきた班長はイ氏に一つ の封筒を渡し、封筒の中には『警告状』が入っていた。イ氏は「苦しいから面 談を拒絶したら、警告状を出すというのは納得できず、社長室に行ったら社長 が『この人間を引き出せ』と大声を出した」とし「自分の面談を拒否したから 話をしないということだ」と明らかにした。

続いてイ氏は「病院に行った後、所見書を提出しろとも言った。社長が何の病 気なのか知りたいという」と不満を表わした。

また、労働者たちはトイレに行く時、業者の社長に直接通話しなければならな いという指示を受けていたりもする。イ・サミョル氏は「今は班長を排除して、 トイレに行く時も社長に直接電話をしろという」とし「ストライキの前と後では 工場の雰囲気は完全に変わった」と伝えた。

工場出入の過程での監視と統制も深刻だ。オ・イルゴン(仮名)氏は「警備員が 労働者の写真が入っているアルバムをひろげて解雇者と停職者、そして出入が 可能な労働者の顔を選び出している」とし「工場の中では労働者どうしコーヒー を飲みながら話していても管理者がきて、集まっているのではないかと監視し ている」と説明した。

何よりも労働者を苦めるのは、組合員と非組合員、懲戒者と脱退した組合員が 感じる距離感だ。チェ・ミンギ(仮名)氏は、「会社の労働者弾圧は、明らかに 労働者自身のことだが、これにおじけづいて顔色を見る態度が嫌で、非組合員 とは話さない」とし「現在、工場の中では組合員と非組合員間の対立が高まっ ており、互いに挨拶はしても話をするのは敬遠されるので、他の組合員も非 組合員とほとんど話をしない」と伝えた。

発注元と下請が直接、組合員と非組合員間の対立をあおることもある。組合員 が会食するとき、会社は非組合員を集めて別に会食をする。パク・チフン氏は、 「組合員の会食の日に、現代車協力支援チームは金を補助して非組合員に会食 させる」とし「業者別に全体会食をしても、翌日非組合員だけまた集めて会食 をしたりもする」と伝えた。また彼は「非組合員の会食がある日は、班長がリ ストを持っていて、非組合員だけ別に会食に参加しろと話す」と付け加えた。

[出処:チャムセサン資料写真]

懲戒の程度によって組合員の間に隙間ができることもある。懲戒程度が低い労 働者の中には、覚書や脱退書を作成した組合員が多いからだ。解雇者のパク・ チフン氏は「覚書を書いて程度の低い懲戒を受けたり脱退書を書いた組合員は、 工場の外で私たちを見ることもできない」とし「私たちが出勤闘争をすると、 他の入口から入ったり逃げたりして、申し訳なくて電話もできないという組合 員も多い」と説明した。

だから工場の中の空気はいつよりも重く沈んでいる。特に指導部と幹部の解雇 などの強い懲戒が行われ、現場には一般組合員と非組合員だけが入り乱れ、混 乱している。結局、弾圧と対立が続く工場の中で、一般組合員と非組合員だけ が残り、その重さに耐えられなければならない境遇に置かれている。

『収容所』になった工場、その裏には『現代自動車』が隠れている

組合員への懲戒は、下請業者で行われる。労働者の人事などの労務管理の責任 は、全的に下請業者の権限だからだ。だがすでに最高裁判決でわかった現代自 動車の『不法派遣』の実態は、まだ現場で露骨に見られる。実質的な労働者の 管理が『名ばかり社長』と呼ばれる下請業者ではなく、発注元の『現代自動車』 の徹底した計画で行われているという情況が捉えられているためだ。

解雇者のパク・チフン氏は「業者では、占拠ストライキ参加の程度で懲戒を変 えている」とし「だが下請業者の懲戒の理由は業者に与えた損害で決定される はずだが、なぜ協力業者が発注元の工場占拠の程度で懲戒を決めるのか理解が 出来ない」と説明した。

[出処:チャムセサン資料写真]

また彼は労務管理をはじめとする労働者監視などの行為はすべて発注元の指示 によると主張した。パク氏は「上京闘争をすれば所長が一緒に来るが、その横 には現代自動車の協力職員チームがついている」とし「出勤闘争の時も反対側 にいた所長の車の後座席に誰かが乗っていて、私たちが行くと逃げた。所長に 誰かと聞くと、発注元の協力支援チーム課長だと言った」と述べた。

パク氏が所長に対し、監視などの行為を抗議すると、所長は「私が来たくて来 たのではない。そうしなければ私がクビになる」と話した。

停職2か月の懲戒を受けたホン・キフン(仮名)氏は下請から「お前が生き延びた ければ労組を脱退して、協力支援チームの課長と生産次長のところに行ってひ ざをついて謝れ。私には権限がなく、彼らがOKしなければならない」という話 を聞いた。

チョン・ミョンソク(仮名)氏もが出入証を発行しないので抗議の電話をすると、 業者は「上から出すなと言われた」という話を伝えられた。チョン氏は「この 内容を録音している」とし「協力業者は独立した会社なので、現代自動車が業 者の『上』にあるということは、直接、現代車が発注元だという事実を認める もの」と声を高めた。

このように、大法院の不法派遣判決の後も、現代自動車は労働者への徹底した 管理監督を続けている。その上、労組を瓦解させるための懲戒と弾圧もやはり 行われている。だが、工場の内外で行う労組と組合員失脚は誰にも制裁されな い。非正規職労働者の声だけがたまに言論を通じて出てくるだけだ。25日間の 工場占拠闘争を終えた彼らは、相変らず苦痛と空腹、そして恐れで埋め尽くさ れた工場の中で暮している。

[出処:チャムセサン資料写真]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-04-04 00:59:30 / Last modified on 2011-04-04 00:59:38 Copyright: Default


世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について