頼むから彼女と彼の声に…

［寄稿］「不法派遣の判決を受けた被害者が手配されるのが正常社会か?」

瞬間、鋭く焼き直してといだ刃が彼女の心臓に食い込んだ。「ここだ」。 彼女は直感的に感じることができた。

9歳の娘が送った手紙を読みながら佗びしく泣き、また泣いた彼を思い出した。 一文字一文字を丹念に書いた娘の手紙には「一緒に運動会と学芸会に行こう」 とだだをこねた。彼は手紙文を読みながら、娘と結んだ約束を思い出したのだ ろう。当時流行していた輪がついた「ホイールリース」運動靴を買うという、 その約束を。

「お父さん、私が仕事を助けるからその仕事をやめて」。お父さんと会いたい 気持ちを一度に込めた不平に充ちた文句が彼を揺さぶった。彼が担うべき重荷。 三人の子供の父。そして、650人の整理解雇通知を受けた労働組合の代表者。

断絶した空間。そこで彼は叫び、怒ったが、厳しい波の音で掻き消されるだけ で、世の中は彼に耳を傾けなかった。泣いて、疲れて、彼が選択した手段。私 の命を捧げるから、私たちの絶叫を無視するな。彼は高さ35mの85号クレーンで 自ら首を吊った。

8年たったが、彼女の心臓の響きは、その場所を確認させた。まさにそこだった。 韓進重工業労組代表者、キム・ジュイク烈士が2003年に129日間、単独で座り込 みをして首を吊った場所。そこで彼女は「息をするのも苦しい」と言いながら も、すでに48日間、一人で座り込みを続けている。彼女の風は彼の風と違わな い。ヒトリガのようにクレーンに這い上がった彼女は、彼が望んだ「整理解雇 撤回!」のために〈塩の花〉を吸っている。52歳の彼女はキム・ジンスクの絶叫だ。

「人が死んで結んだ雇用安定協約がなぜ紙切れになるのか? 一体、さらにどれ ほどの労働者が蝿の命のようにクレーンに上がるヒトリガになれば韓進重工業 は整理解雇を中断するのか? 雇用安定協約を遵守するのか」

彼は今、手配中だ。さらに、彼女は現在、執行猶予期間中だ。昨年懲役10月に 執行猶予1年6月判決を宣告された。保身を図り、気をつけなければならない彼 は喜んで労組副代表の荷物を担った。

彼は社内下請労働者だ。だが、法院は彼が「正規職労働者」と確認した。法院 は、彼が提起した訴訟に「不法派遣であり、2年以上雇用したので現代自動車の 直接雇用の対象」と判決した。だが、彼はまだ解雇者の身分だ。現場で正規職 として働くべき彼は、現代自動車に出入できない。現代自動車が法院に申請し た立入禁止仮処分が認められたからだ。判決履行を要求したストライキで手配 令も下った。

今回検挙され、三回目の「特別」を付けても「同じ工場、同じ工程で働く労働 者すべてに」、自分の判決が適用されるように願い、現代自動車と対抗している。

手配中だった7日、現代車非正規職支会主席副支会長に選出された35歳のチェ・ ビョンスン氏が吐き出した鬱憤。

「不法派遣判決を受けた被害者が手配されるのが正常社会か? 本当に悲しい。 法院が不法と判定した自分の誤りを、なぜ現代自動車は反省しないのか?」

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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