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現代車非正規労働者をめぐる世の中の法論理

[インタビュー]チェ・ビョンスン現代車非正規支会組合員

合同取材チーム 2010.11.25 09:31

ますます対立が激化する現代自動車・非正規職問題をめぐる合法と不法の主張が 相互に衝突している。大法院の判決の履行、非正規労働者のストライキ、その 過程で起きた使用者側の救社隊と警備隊の暴力などをめぐり、合法と不法の 議論が複雑な様相でふくらんでいる。

7月22日、チェ・ビョンスン現代車非正規支会組合員を請負ではなく不法に派遣 された労働者とした大法院判決の後、現代車が受け入れるかどうかがその議論 の中心にある。非正規労働者たちが判決の後、大挙して労働組合に加入し、 11月4日には非正規労働者1940人が現代自動車に対して不法派遣労働者集団訴訟 (正規職確認およびそれに相当する賃金差額請求)を提起した。

だが現代車使用者側は大法院判決はあってもまだ破棄差戻審が残っているので、 今回の判決はチェ・ビョンスン氏個人と一部の生産ラインに限った判決という 立場だ。

「大法院は高裁の判決そのものを審理するので、高裁の判決が間違いだという 大法院の破棄差し戻しは、確定判決の地位を持つというのが一般的な事例だ。 その上、高裁では労使が確認した資料を根拠として事実関係を判断したので、 破棄差戻審が開かれても特別に何が新しく出てくる条件と状況でない。

破棄差戻審を行う裁判所も「最高裁判決が帰属力あるように早く判断する」と 明らかにしている。その上、蔚山工場の件が最高裁判決があり、それ以後この 判決による牙山工場関連高裁判決があったため、不法派遣の問題は事実上、1、 2、3審の結果がすべて出てきたといえる。今、現代車使用者側は、この問題を 回避するのではなく、大法院判決の趣旨に合わせて非正規職労働者を正規職と して採用することが望ましい。」

▲第1工場座込場にかけられた「夢九ちゃん!法を守りなさい!」

「大法院判決と現代車牙山の非正規職に関するソウル高裁判決の核心内容は、 自動流れ作業システムの製造業では事実上、請負があってはならないというこ とだ。仕事の完成には初めと終わりが存在するが、自動車は車体をプレスして から最後の品質検査まで、すべてが一つの工程だ。その工程にいる人々は請負 の形でも、法律的には請負として存在することができないということだ。それ だけでなく、法院は下請け業者の労働者が現代車から直接作業指揮を受けたと 見た。このような判決の根拠と趣旨を考慮すれば、これは私個人の問題ではなく すべての不法派遣労働者の問題だ。」

しかしチェ・ビョンスン組合員は、今回の判決も完全ではないと考えている。 彼の主張は、現代車工場内下請けはすべて不法派遣というものだった。現代車 下請け労働者たちは、所属する業者と現代車がどんな形態で契約を結ぼうが、 法人が同じでも違っても、実際の労働現場では暗黙的な勤労関係状態にあると みているためだ。

「ある程度肯定的な部分はあるが、限界がある。今回の判決が適用される限界 は、2年以上の者だけだに適用されるということだ。不法に労働者を使用すれば、 それが2年でも一日でも不法ではないか。それでは期間とは無関係に、元請との 勤労関係を認めて、正規職化しなければならない。そうでなければ中小企業の 非正規職はさらに深刻な雇用不安に苦しむことになる。社内下請けでの2年以上 の勤務は、事実大工場を除けばほとんど存在しない。真性請負でなければ 労働者を1年以内にすべて入れ替える。結局、今回の判決がきちんと適用されても 大工場内の下請け労働者に制限されるしかない。」

▲非正規職労働者がストライキをせずに正当な待遇を受けられるだろうか。

現代車の使用者側は、大法院(蔚山工場)とそれに続く高裁(牙山工場)での不法 派遣の判決で守勢に追い込まれていた。だが、現代車下請企業のドンソン企業 の廃業と勤労契約書を拒否した労働者の解雇に対抗し、非正規支会がストライキに 入ると、使用者側はこのストライキを不法と規定してまた攻勢に転じている。

すでに現代車は第1、第2、第3工場の占拠で労働者64人を大量に告発して、イ・ サンス支会長などストライキ組合員には60億ウォンの損害賠償請求訴訟を出し た。ここに検察と中央労働委員会が『労働者の地位確認要求は、勤労条件に 関する事項ではなく、ストライキの目的にならない』とし、現非正規労働者の ストライキを不法としたことで、議論が拡散した。

だが、労働界は不法派遣の正規職化という大法院とソウル高裁の判決の履行、 それによる賃金の支給を要求することで、ストライキは当然合法ストライキだ と対抗している。非正規職問題が社会的な問題に拡大した状態で、正規職と 非正規職の地位の差が勤労条件と無関係だというのはおかしいという世論も 侮れない。22日、民弁をはじめとする法律家団体、23日には教授労組をはじめ 教授学術3団体が、『非正規労働者たちの要求は正当だ』とし『労働弾圧を中断し 現代車は交渉に出て、非正規労働者を正規職化しろ』と主張した。

さらに、法の問題に議論が広がると、現代車使用者側の救社隊と警備隊の暴力 も問題になった。現代車牙山工場では、2003年に非正規労働者のアキレス腱を 切ったナイフテロが、また8月30日に再現された。社内下請業者管理者が非正規 労働者をビール瓶で暴行し、ナイフで威嚇したのだ。

蔚山工場の場合、22日に現代車非正規支会は「ストライキが始まった去る15日 から今までに約120人の労働者が傷つき、36人が治療中だ。そして過程で約70人 が連行され、そのうち1人が拘束された」明らかにした。

「骨折の他にもシート1部では使用者側救社隊が縁が鋭い鉄のフレームとボルト、 ナットなどを投げて、負傷者が続出した。この過程で口と鼻の間を切った労働 者は手術の後に整形しなければならないほど傷が深かった。そして、負傷者は 使用者側が撒いた水に催涙液が混ざっていたという証言をしている。それなの に、使用者側は公式の立場表明をせず、むしろ労働者が暴力を振るったと悪宣 伝している。しかも非正規支会が公開した救社隊の暴力映像にもあるように、 数的にも物理力でも比較にならないほど救社隊と警備隊は圧倒的に優勢だった。 そうした物理力で、逆に暴行されたと主張するのは常識的にもおかしい。」

▲使用者側の救社隊による暴力映像が入った非正規職支会動画

だが使用者側と警察は、救社隊と警備隊の暴力についてはこれという立場表明 も、きちんとした調査もしていない。

「15日の暴力についてはカン・ホドン副社長をはじめとする使用者側を告訴・ 告発した。17日は現在警察で調査しているが、使用者側が労働者20人程を集団 で暴行し、ワゴン車にのせて蔚山東部署に渡して警察が連行したが、警察の態 度はとても偏向的だ。現行犯は誰でも警察に渡せるが、警察は実際の現行犯な のかどうかを具体的に調査しなければならないのに、引き渡された人の調査は せず、殴られて捕った労働者だけを調査した。これは警察が法の執行を偏向的 にしていることで、さらには職務の遺棄だ。」

「私は使用者側から工場への出入が禁止されている。工場出入禁止仮処分申請 をしたが認められなかった。その理由も納得し難い。『チェ・ビョンスンは、 最高裁判決の後、その地位が尊重されるとしても業務を妨害をする可能性が高 く、不法ストライキを扇動する可能性が高いので会社の要請は妥当だ』という。 法院は証拠と事実関係で法理を適用するべきなのに、実体が確認できない可能 性で判断している。」

▲チェ・ビョンスン組合員も9月に使用者側警備隊に暴行されて工場から引き出された。

労働者の立場からの法に対する問題は、観点によって複雑になりえる。韓国の 社会で、非正規職労働者が社会的弱者に属するとすれば、彼らに法は現代車と いう巨大な資本と社会制度に対抗する時、ぜひ必要な部分だっただろう。使用 者側が法院の判決を履行しないため、11月4日に現代車非正規労働者1940人が 現代自動車に不法派遣労働者集団訴訟を公式に提起したのもそういう脈絡だ。

だが反対に、社会で法が実際に適用され運営される形態は、経済社会的に弱者 である彼らにとって、法が持つ力を借りることも、公正な適用を望むことも、 簡単なことではない。鄭夢九会長の赦免復権がそうであり、ストライキをめぐ る企業と労働者の間の法の適用がそうだ。こうした現実に期待もできないが、 法の前の平等という言葉が面目を失っている現実を見れば、その権威を認める ことも容易ではない。

本紙合同取材チームの報道で「正規職転換の要求は関連の法で処理すれば良い。 ストライキで解決できるものではない」というある雇用部関係者の発言は、多 くの非正規職労働者とストライキ労働者が、現実世界のどんな壁の中に閉じ込 められているのかをうかがわせる。(蔚山=メディア忠清、蔚山労働ニュース、 チャムセサン合同取材チーム)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-11-26 08:51:17 / Last modified on 2010-11-26 08:51:26 Copyright: Default

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