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非正規職の賃金、申し訳なくて聞けない

[インタビュー]現代車、ラインに残った正規職労働者

合同取材チーム 2010.11.23 14:07

非正規職労働者のストライキで、現代自動車蔚山第1工場の艤装1部では正規職の 労働者が残って作業している。遅い時間、そのうち数人の労働者が一か所に 座った。しばらく前まで同じラインで一緒に働いていた非正規職の同僚1人(A氏) が今、非正規支会の占拠座り込みに参加しており、彼らの表情は心配な気持ちと 申し訳ない思い、そして何もできないという自己恥辱感が複雑にからまっていた。

「以前のAは、集会や闘争に積極的な方ではありませんでした。ある時、非正規 支会で集団訴訟を準備して、下請け企業の勤労契約関係と四大保険などを確認 したことがありました。ところがその過程である業者が『スグン・ヘムルタン』 に事業者登録していたことがわかりました。つまり、自分も知らないうちに 『スグン・ヘムルタン』に所属していた労働者は、これまで現代自動車で働 いていたわけではなくなるのです。その事件が伝えられ、非正規職労働者たち が自分たちの問題にさらに関心を持つようになったのでしょう。Aも初めは 非正規支会への加入をずいぶん悩んでいたようです。とても迷ったでしょう。 でも、一人二人と集まり、加入者が次第に増えたので、勇気を出したようです。 自分が7〜8年、非正規職として体験したことが胸に積もっていたのでしょう。 そして労組への加入を決め、集会にも積極的に参加して、結局今は私の上に まで上がるようになったのでしょう。今日は出勤して電話をしましたが、 かなりの覚悟をしているようです。使用者側が強い弾圧を続ければ、自分も 強硬に対抗すると言っています。」

11月22日、現代車のカン・ホドン副社長が家庭通信文で「現代車社内下請業者の 勤労者4〜5年目の平均年俸は4千万ウォン水準」で、これは「全国勤労者の平均 賃金の1.4倍もの金額」だと書いた。だが非正規職労組はすぐ「12時間・夜昼 二交代、特別勤務を欠かさず働いてやっと8年目の年俸3千万ウォン」だと 使用者側の主張に反論した。互いの主張はまったく違っていたが、同じ場所で 同じ仕事をする社内下請非正規職の賃金や労働条件が悪いことは、もう韓国の 社会では公然の秘密だ。では同じラインの正規職労働者は共に働く非正規職の 同僚の賃金の差異を正確に知っているのだろうか?だがその返事は予想外だった。

「一日に10時間以上一緒に工場で顔を合わせて『兄弟』というが、賃金問題は 事実、聞くのが申し訳なくて話せません。明らかに私たち(正規職)のほうがは るかに多いことを知っていながら、賃金を聞けますか。ただ推察するだけです。」

「作業をしていると普通、1か月に1件程は不良が出るものですが、正規職と違い、 非正規職の同僚なら業者の所長や班長までがきて叱責します。私たちは機械の ように一日10時間働き続けますが、人がすることですから100%不良がないはずが ないでしょう?」

非正規職労働者の闘争については、正規職労働者への批判が少なくない。現代 車の正規職と正規職労組も、その冷たいまなざしから抜け出せずにいる。実際、 工場で働く正規職は今回の非正規労働者のストライキと占拠闘争への反応はど うなのだろうか?

「正規職の間で非正規闘争を悪く言う人はいません。無関心に努めて知らない ふりをする人が半分、心配しながら何かできないかと探す人が半分だと思えば いいでしょう。一日長い間、一緒にラインで顔を見て働いたのに、今、ああし て孤立して苦労しているのですから、残っている正規職の同僚は心苦しい思い をするか、とても心配しています。先日の水曜も、残っている正規職同僚が1万 ウォンずつ集めて食べ物と必要なものを買って送ったのに…今はそれも出来ま せん。」

「今は全くできることがありません。残った正規職労働者が闘っている同僚の ことを考えて、間食を食べずに置いておけば代議員が集めていきますが、今は 使用者側の管理者に阻止されてそれも送れず、代議員室に積まれています。」

▲正規職労働者たちが食べずに集めた間食のパンと飲み物、ラーメンが非正規職同僚に渡せないまま代議員室に積まれている。

使用者側の強い態度が続き、正規職労働者の表情もますます変わっていた。 単なる心配や申し訳ない気持ちを越え、自己恥辱感が彼らの気持ちを困らせて いるようだった。

「残念な気持ちです。どうにか良い方向で解決すればいいです。まともに 食べることもできず、冷たい床で生活していたら、からだを壊すのではないかと 心配です。病気になれば結局負けるでしょう。それでも使用者側の管理者に 止められて、私たちには今、何もできることがないのでとても苦しいです。」

「共に戦わない正規職労働者への批判には、言葉がありません。どうしても 『正規職労働者がこの闘争から手を引けば罵倒される』と思います。自分の 問題には熱心なのに、非正規職同僚の問題に知らないふりをしてはいけません。 事実、正規職がストライキする時と、非正規職がストライキする時、社会的な 雰囲気はずいぶん違うようです。最近は非正規職の闘争に社会的な関心が高まっ ているので幸いに思います。今、正規職労組の代議員が24時間工場に常駐して、 隊伍を形成し、非正規支会闘争を援護していますが、望ましいと思います。」

▲深夜12時過ぎ、座り込みをしている非正規職同僚に送る服や食べ物を正規職労働者が代議員に渡す。

ついこのあいだの先月30日、慶尚北道亀尾の半導体業者、KECの労働者が焼身し た。その後に行われた現代車非正規職労働者のストライキと工場占拠座り込み なので、最初から緊張感が漲っていた。しかし憂慮は現実になって迫った。去 る20日、現代車非正規職支会のファン・イナ(34歳、第4工場ドリーム産業所属) 組合員が焼身を試みたのだ。この二人の労働者の焼身の試みは似ていた。亀尾 KECストライキの時、警察が工場に進入する前に労組員焼身の可能性を予想して いたことを示す資料が公開されて問題になったように、現代車使用者側も同じ だった。

「状況が悪化し、私たちも『焼身する人が出てくるのではないか』という憂慮 をしていました。ところが使用者側もその危険を知っていたようです。焼身の 試みがあった前日、班長がラインのソルベントやシンナーなどの危険物質をみ んな回収して行きました。使用者側はそうした危険があることを知りながらも、 強硬に出てきたものと見るべきです。」

22日に開かれた金属労組定期代議員大会に参加した現代車非正規支会労働者は 金属労組のゼネストを切実に望んでいた。そして実際に現代車非正規職労働者 の闘争に連帯する金属労組ゼネスト決議案が現場発議され、長時間討論された。

▲22日、金属労組代議員大会場を訪ねた現代車非正規支会労働者は金属労組のゼネストを訴えた。

「連帯が正しいです。今400人程度がきていますが、非正規職同僚の力は強いと はいえないでしょう? 今のように正規職代議員が体当たりして粘らなければ、 突破されるのは時間の問題です。こうした状況で、今、現代車支部が自分の 利益のことだけを考えるべきではないでしょう。」

金属労組はこの日の代議員大会で、『第1工場座込場に対する救社隊および公権 力鎮圧時は即刻全面ゼネスト突入、現代車会社が11月30日までに不法派遣交渉 に出てこなければ金属労組は12月初めに1次ゼネスト闘争を展開する』と決めた。 この報せに接した人々は、短いが多くの意味をこめた話で感想を述べた。

「頼むからその決定のとおりにしてほしい」

「現代自動車が正規職を選んでずいぶんたちます。2002年や2003年までは新入 社員に正規職を選び、その40%は現在働いている非正規職を正規職化しました。 私もそうして正規職になったんです。ところが今はそれもありません。そのよ うにして正規職は選ばず、定年退職のような自然減少人員は着実にあるので、 事実、ますます正規職の数が減っています。だから、どうしても労働組合の力 も、それに比例して弱まるでしょう。Aがぜひ気をつけて最後まで頑張って闘争 して、非正規職の同僚が正規職になってほしいです。そして頑張れという言葉 しか話す言葉がありません。」

『重い』という表現がぴったり合いそうだった。共に食べ、共に働いた同僚が、 きちんと食べることも風呂にはいることも寝ることもできないまま頑張ってい る状況を、心で一緒に耐えている彼らの表情と慎重な言葉が『重い』。 (蔚山=合同取材チーム)

▲正規職と非正規職が使用者側管理者の壁を挟んで交わした話。「飯をくれ、腹が減った、パンしか食べてない」、「まだ三階で対峙中」などのメッセージが交わされている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-11-24 05:51:25 / Last modified on 2010-11-24 05:58:42 Copyright: Default

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