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ドンヒオートで民主労組を作れなかったなら

[寄稿]全泰壹が話す、全泰壹を語る

キム・ジュウォン(ドンヒオート支会教宣部長) 2010.11.03 18:07

「先輩、私は熱心に働きさえ刷れば、金持ちなれると思っていました。」

速まった作業で脂汗を流しながら、80万台目の『モーニング』を作っていた若 い同僚がへへっと笑いながら私に話しかけた。1か月150万ウォン。このうち 100万ウォン以上を貯金する彼は、ジュース一本も買わないとんでもないケチだっ た。一週間で60時間働いても怠けていると思ったのか、日曜の清掃特別勤務も 欠かさなかった。宗教無し、趣味無し、娯楽無し、恋愛無しという彼が、唯一 明るい顔になる日は月給が入る毎月15日であった。あたふたと退勤して狭い現 金自動支払機で記帳される残高を見る日が、彼が生きる方式の最大の喜びの日 だった。

若い友人が言い換えた。

「今まで死ぬほど働いてきたのが、くやしくて死にそうです。今日だけは酒を 飲みます。私がおごりますよ。」

何がそんなにくやしいのだろうか? 正規職より、給与や労働条件が悪いことが くやしいのだろうか? あるいは働きもせず、遊んで暮す名ばかり社長の姿を見 たくなくてくやしいのだろうか? 死ぬほど働いて、月給を取られたわけでもな いのに。酒を酌み交わしながら、まとまらない不満を聞いた。

「モーニングは本当によく売れるのに、なんだかおかしいですよ。それでも目 をしっかり閉じて、いくら特別勤務しても思ったよりお金にならないです。3年 間、私が何を思って暮してきたのかわかりません。」

モーニングを作るドンヒオート社内下請労働者の生き方はこうだ。どうせお金 もならないから、ぱっと使ってぱっと遊ぼうという式と、何とかまともに暮ら したいとさ迷って、消費を減らして労働を増やす方式。ところが二番目の方式 は、常に現在進行形だということが苦々しい。骨が砕けるほど働いて、金を貯 めても職業を変える程の余裕ができない。家一戸を買いたくとも、いつのまに か妻をめとる年齢になり、家庭を持てば金のかかる所はさらに増える。それで やはり残業と特別勤務にあくせくせざるを得ず、むしろ年を取って解雇される のではないかと会社の顔色を見ながらさらに頑張って働くしかない。非正規職 は豊かな人は少なく、豊かになろうと努力する人々だけが並んでいる。

[出処:チャムセサン資料写真]

私もあくせくしたくなくて民主労組活動を始めた。不当な待遇を書いたチラシ を配って会社の同僚を組織し始めた。入社して6か月もたたなかったが、それで も思ったより多くの人が同調した。絶版になった全泰壹評伝4冊をやっと入手し て現場の同僚に与えた。反応は、私が感じていた感情と同じだった。出てきて 同じことを言いながら私と同じように考えた。結局、会社の管理者たちがひそ かに本を回収して行ったが、多くの同僚が回し読みしたことに満足した。

どういうわけか、数ヵ月で私が働いていた業者の雰囲気は、反名ばかり社長、 反御用委員長に流れた。熱い雰囲気で、誰がやらせたというわけではないのに 私が働いていた塗装班の業者は現場の宣伝ビラで溢れ、組長や班長も現場の力 に押されて何もできなかった。そして団交の職権調印に抗議して、御用委員長 に辞任しろと殴りあいまで起きた。結局、御用委員長は純粋に現場労働者の圧 力で会社をやめ、業者の社長は現場を統制できなかった責任で、一日5回、元請 の事務室に呼びつけられて向こう脛を蹴飛ばされたという。

現場の怒りと勢いが真っ盛の時、会社は非正規職の最大の弱点である業者廃業 と解約を武器に持ち出し、労組の弾圧が上手いドンヒオートに対抗するには、 同僚の経験と勇気は不足していた。現場は凍りつき始め、その暇を狙って救社 隊が暴れ始めた。結局、私自身も解約を防げず、良才洞現代起亜本社前で解雇 者闘争を続けた。

今思えば、その時に現場の同僚が会社に対し、何を信じてあれほど派手にやっ たのかと思う。長ければ5年働いた同僚にとって会社の不当な扱いは一日や二日 のことでもないのに、どうして現場での闘争ができたのか、あまり考えたこと はなかった。だがそれでも明らかなのは、民主労組運動の基本である1)考える こと、2)行動することの条件を、当時のドンヒオート解雇者は充たしてくれた。 メディアと宣伝物、宣撫放送で、ドンヒオートの労働者がどう判断すべきかを 伝え、昼食集会闘争、現場進入闘争で、どう行動すればいいのかを見せた。

[出処:チャムセサン資料写真]

今年、全泰壹烈士40周年だという。40周年を記念するが、私だけでなく他の仲 間たちも、今の労働の現実について申し訳ない気持が先に立つだろう。あの時 は勤労基準法を守らない事業場が問題だったとすれば、今、資本家と政権は、 法により労働条件を後退させる方法に没頭している。非正規職、専従者賃金支 給禁止、団体協約解止、派遣法拡大が代表的な例だ。またドンヒオートのよう に100%非正規職を便法的に運用する事業場も一つ二つと増えているのが現実だ。

今、全泰壹はいない。だが全泰壹烈士が私たちにどうしろと言いたいのか、十 分察することはできる。非正規職を撤廃しようというスローガンを何千回も叫 んだが、まだ非正規職は減らず、むしろ拡大している。では非正規職撤廃の夢 は夢だけに残るのか。私たちの未来は分からないが、一つ確実なことは今や非 正規職は国民の絶対多数になってしまったということだ。これは40年前の平和 市場のシタ工員が、今は産業の全般で非正規職という名札を付けてミシンを踏 んでいるようなものだ。はがゆい現実だが、失望してはいられない。なぜなら 平和市場が生まれたように、第2の第3の全泰壹が出てくるのではないだろうか?

前に、若い友人がくやしいというのは、自分が実現できない(豊かに暮らす)夢 は、今の境遇ではかなえられないということを、一歩遅く知ったということだ。 今この友人はドンヒオートで民主労組を作れなくても、労働者としての意識が 成長して、周辺の人々に全泰壹を知らせていくだろう。

今、われわれは済州島からソウルまで、平和市場の多くの全泰壹を捜し出しさ えすれば、非正規職撤廃はもちろん、貪欲の資本を終わらせる総資本対総労働 の大闘争に勝利できると堅く信じている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-11-04 02:44:32 / Last modified on 2010-11-04 02:44:48 Copyright: Default

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