本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:イーランド秋夕集中闘争4日目
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1221096119184St...
Status: published
View


「非正規職を正規職にしてやればいいのに」

[現場記者席]イーランド秋夕集中闘争4日目- 2008年9月5日

パク・ビョンハク/ 2008年09月06日19時38分

週末に宣伝戦をしながら配るチラシを書くために、少し家を遅く出た。ホーム エバー始興店の前に到着するともう4時になっていた。イーランド組合員60人ほ どが集まり、集会を開いていた。キム・ソンマン氏の素朴な公演の真っ最中だっ た。私はとても深いキム・ソンマン氏の声を聞きながら、しばらく息をついた。 戦闘警察のバス。戦闘警察。用役。そして初日の闘争から用役がいる所なら、 どこでも現れるその図体大きな人。旗とスピーカー。店舗周辺のあちこちに置 かれたピケ。街路樹にかけられた横断幕。イーランド集会のたびに会う労働者 たちの闘争映像を専門的に製作するという人に聞いてみると、集会が始まって から三十分程になるらしい。

全解闘の人が出てきて、特有のはきはきした声で力強い発言をした。続いて、 ホームエバー木洞分会の組合員が出てきて発言をした。

「......外で戦っている人もうまくやらなければなりませんが、中で働く労働 者も本当に劣悪です。パク・ソンスはぜひ退出させなければなりません。口で はイーランドがキリスト教倫理を強化すると言いながら、労働者が休む休憩室 はなくし、祈祷室しかありません。祈祷室も疲れた労働者が自由に入って休め る所ではなく、名簿に名前を書き、別に申請をしなければ、労働者たちは入る こともできません。会社なら、労働者がリフレッシュできる職場を作らなけれ ばならないのではありませんか? そうすれば私たちが誠実な労働者になれるで しょう.... ホームエバーは近い将来、看板を下ろします。ホームプラスに変わ るでしょう。ところが私の上の店の壁にある看板を見て下さい。『ホームエ バー-現代カードV市場に発表』と書いてありますね? 何日かでホームエバーと いう名前が消えるのに、まだあんな広告をしています。これは市民も愚弄する ものです..... われわれは勝利するという虹の光のような希望があります。最 後まで連帯してください。シュプレヒコールを叫びます。最後まで連帯して、 職場に帰ろう!」

4時20分ぐらいに集会が終わった。安養2001アウトレットに移動して、宣伝戦と 闘争文化祭を開くらしい。組合員たちはバスに乗るために道を渡った。イ・ギョ ンオク副委員長が私に来いと言って、インバータをどこかから持ってこなけれ ばならないので自分の車に乗って一緒に行こうといった。インバータが何かは 知らなかったが、背が高い私をつかまえたのだからかなり重い物らしかった。 乗用車の助手席に座ると後の席に組合員三人がさらに乗った。

車が出発した。車外を見ると黒いスーツに赤いネクタイを締めた用役のひとり と目があった。短くかった頭、皮膚は玄武岩のように黒く、図体は熊のようだっ た。あんな用役にかかれば、ひとたまりもないと思いながら、イ・ギョンオク 副委員長と組合員の間には話が行き来していた。

「あいつらおかしいんだ。上岩店ではジーンズにTシャツ着て来るのに、ここ は本社だからかスーツを着て来てる。用役たちも人差別するのか?」
「そういうことだ。ホホウ。」
「この前に店の前にステッカーを貼っていたら、誰かがきて私が貼ったものを みんな剥がしてしまうの。それで頭にきて一言いったんだよ。オイ、お前が何 でこれを剥がすんだ? おばさん、ここでこんなものを貼ってはいけません、 というから、私は、あんた何者だ? 警察なの?というと、警察ではないって。 それで言うのは、ここには貼らないで下さい、この言葉だけ繰り返すの。それ で私もこう言ったんだ。警察でもないのになぜ剥がすようなことをするんだ!」
「ああ、私たちもお小言おばさんになったんだなあ。大変なことになった。」
「ところで最近は警察を捕屋と言ってはいけないんだって?」
「なんで? 捕屋と言ったら捕まるのか? 捕まるか捕まらないか、一度警察の前 で言ってみようか?」
「名誉毀損だとか? そんなことらしい。」
「おかしな野郎たち、いろいろ言うね。自分たちがすることはみんな合法。」
「この頃腰を悪くした人がとても多くて心配だ。」
「なぜ、腰を悪くするの?」
「組合員の中で腰が痛くない人がいるか。」
「長い間、立って働いていた人が突然座って集会をするから腰に病気が出ない わけがない?」
「ちょっと病院に行かなければいけないのにみんな時間がないから。」
「そんな人こそ病院に行くべきなのに、行けないからまた病気になるんだね。」

車は『第一産業開発』という所に入った。トラックと生コンがあちこちに見え る。ストライキ中なのか、あちこちに横断幕がかかっていて、止まっているト ラックにはスローガンが書かれたピケがいっぱいかかっていた。

「ニューコアの闘争が終わったから、インバータを返さなければいけないのに、 まだ返してないんだ。それがここにあると言うので探しにきたのです。もっと たいへんかと思ったけど意外とすぐ見つかった。」

車から降りて、トラックにかけられた横断幕をよく見た。

『20年アスファルトコンクリート運送このまま止めることができない。 最後まで闘争して勝ち取ろう』 『労働者を欺く一番アスファルトコンクリート使用者、○○は目を覚ませ』

文句の下には『全国建設産業連盟全国建設労働組合第一アスファルトコンクリー ト分会』と書かれていた。アスファルトコンクリートが何だろうと思っている と、むこうから『民主労総ソウル本部』のTシャツを着た女の人が近寄ってきた。 こうして支持訪問に来たついでに労働者に少し挨拶して行ったらどうかと尋ね てきた。われわれは映像教育をしているという所に向かった。

部屋に入ると建設労組のチョッキを着た、歳を取って落ち着いた感じの組合員 が私たちに拍手をしてくれた。われわれは簡単に挨拶をして外に出て、椅子に 座りコーヒー一杯ずつもらった。

さっきその女の人にアスファルトコンクリートが何かと聞くと、道路のアスファ ルトを考えればいいと言う。アスファルトコンクリートとアスファルトは似た ようなものだそうだ。今日がストライキ3日目という第一アスファルトコンクリー トの労働者たちは、400日を遥かに越えて闘ったイ・ギョンオク副委員長と組合 員に、闘争の先輩が来たと礼儀正しく敬礼をした。みんな笑った。われわれは、 しばらく間座って互いの闘争現況をやりとりしながら話に夢中になった。

別れる前に私は第一産業開発という会社のどこが具体的に悪いのかを聞いた。 チラシのようなものがあれば一枚ほしいと言ったところ、今ストライキ3日目な ので、まだチラシはできていないという。会社が運搬費交渉に誠意を持って応 じず、労組を弾圧するだけだと言う。私はきっとここに取材にくるという、守 れるか、守れないかもしれない約束をしてそこを出た。

トラックを運転する運送労働者たちは、特殊雇用労働者だ。契約職や派遣職の ように非正規職であるのは同じだが、私が最も悪質な雇用方式だと思うのがま さに運送をはじめとする特殊雇用職だ。簡単に言えば、労組を無力化し、あら ゆる税金と公課金などの車両維持費を運送労働者に押し付けるだけの雇用方式 だからだ。どう景気が変動しても、全責任は運送労働者に転嫁される。

「こうして見えない所で闘っている労働者はとても多いのです。私たちは連帯 してくれる人が多いから良いことは良いんだけど.... 本当に残念です。」

インバータをまとめて第一産業開発を出た。安養駅に向かった。2001アウトレッ トに到着すると、先に到着した組合員たちが宣伝戦をしていた。アウトレット の建物の花壇に所々ささっている黄色い風船が見えた。横断幕は両側の並木に 縛られて、道路に向かって広げられていた。歩道のブロックの上にはピケが一 列に並んでいた。

『悪い企業イーランド不買で審判しよう』
『非正規職悲しみの土地イーランドに行くのをやめよう』
『イーランド事態責任をとりパク・ソンスを拘束しろ』
『悪質資本イーランド不買で審判しよう』

安養2001アウトレットはどっしりした7階の建物だった。組織暴力団のように黒 いスーツを着た用役が入口ごとに立っていた。ホームエバー始興店からきたの か、見覚えのある用役も見えた。

宣伝戦をしていた組合員がのりまきを食べるために集まった。私も混じって座 り、のりまきを食べながらまたアウトレットの建物をながめると、服を売るだ けでなくファミレスもあって、一番上の階には24時間サウナまで入っていた。 私はイ・ギョンオク副委員長に尋ねてみた。

「ここの建物はイーランド所有でしょうか?」
「違うでしょう? イーランド資本はホームエバーのときにあれこれみんな売っ て、多分残っているものは殆どないでしょう。江南ニューコア以外はないので はないかな? 多分ここもイーランドの所有ではなく、単に賃貸で入っているの でしょう。あいつらも今は金がないでしょう。」

六時になった。組合員たちはまた宣伝戦を始めるために風船とチラシを持って 散った。私もチラシを一束持って路上に出た。退勤時間なのでバスがくるたび に人々が群れになって集まった。

五メートル程度の間隔をあけて私の前後に組合員たちが立ち、チラシを配った。 私は彼らが逃がした人を引き受け、そっと近付いてチラシを握らせた。ほとん どは急いで歩きながら、携帯電話で通話をしながらも、チラシを受け取ってく れたが、ハエを追うように手まねであっちに行けという人々もいた。

私はこれまで道路で何気なく通りかかったチラシ配りのおばさんたちを考えた。 今考えてみれば、思い出せないようなつまらないビラだったが、多分そのおば さんたちにはメシの種になるとても重要な労働であっただろう。だが私はおば さんたちが配るチラシには全く関心がなかったし、どうせゴミになる紙を受け 取ることが煩わしく、わざわざおばさんたちから遠く離れて通り過ぎていた。 イーランドの横暴がそのまま書かれたこのチラシは、もちろんカルビ店のオー プンや、宣伝ビラよりはるかに大切なことかもしれないが、イーランドや非正 規職には何も関心がない人々には、私がおばさんたちから逃げたように、手を ふって拒否したい紙クズに過ぎないはずであった。私はその心情を少しは理解 することができた。

だが納得はできなかった。私もこれまで路上のチラシ配りのおばさんたちを本 当に孤独だったんだなあ、と考えた。そんなものいらないと手をふって押し退 けて行く人々を見て、チラシ配りのおばさんたちやイーランドの組合員たちが どんなに孤独だったのだろうか? 公課金を心配して毎日毎日の飯を心配する世 の中があることを知らずに暮す人がどんなに遠く見えたのだろうか?

あるおじさんがチラシを受けると「こんな悪いやつらはどうしてこんなことが できるんだ?」と息をはずませながら私に近寄ってきた。私はその『悪いやつら』 が果たして誰を示すのか気になって、おじさんが話すまま黙って聞いてばかり いた。

「これじゃだめだ。いくらこんなことしても、上にいるやつらはびくともしな いぞ。法と制度が間違っているんじゃないか? 法のおかげで非正規職が増える んだろう。私も昔会社に通っていた時、私たちの会社に労組があったよ。私は 労組活動はしなかったが、労組の人たちとはたくさん会った。その時は労組の 力が本当に強かった。それなのに今はみんな弱くなった。法が問題だ。こうし て街に出てきてもだめだ。」
「だから国会では民主労働党や進歩新党のような政党が非正規職法撤廃のため にまた戦っています。国会の中では、そうして彼らなりに戦っている人がいた、 実際に現場で働く労働者はこうして街に出て戦うんです。じっとしていること はできませんから。」
「それは私も分かるが、我慢できないんだ。こうしてデモをしたら会社がおじ けづくか? 労組の話を聞いてくれるか? いや。私はそうは思わない。こんな苦 労をしないで、いっそ法と制度を変えようと努力するほうがさらに早道ではな いか? イーランドもかなり長くなっただろう? でも今まで何の成果もないだろ う。」
「法を改正しようとする努力も今しているのですが、まだできません。国会で いくら努力しているといっても、実際に現場で働く労働者が出てこなければ、 会社は少しも変わろうとしません。今までイーランドの労働者たちが熱心に戦っ て、イーランド資本が窮地に追い込まれたでしょう。あまり商売がうまくいか ないので、ホームエバーをホームプラスに売り渡しました。」
「ああ、そう? それも成果だね。大きな成果だよ。はやく解決しなければなら ないでしょうに。不況なのに何をしてるんだって。非正規職を正規職にしてや ればいいだけなのに。」
「そうなのです。」
「とにかくがんばって。お疲れさん。」
「はい、ありがとうございます。」

私はペコッと頭を下げた。おじさんは周辺に置かれたピケをつくづくと見てあっ ちに行ってしまった。私は、まるで私が組合員にでもなったように話したよう で少し恥ずかしかった。

六時半に宣伝戦が終わった。イ・ギョンオク副委員長に日程を尋ねると、ここ で七時半まで文化祭をして安養市庁に行き、市民団体と合流すると言う。市民 団体? 安養地域の市民団体が市庁で非正規職文化祭を開くという。

組合員たちが2001アウトレット正門前に集まって座り、キャンドルを灯した。 薄暗くなっていた。雨が降るのか、タバコの煙のようにぼやけた雲で空が覆わ れた。チ・ミンジュ氏の公演で闘争文化祭が始まった。

公演が終わり、司会者が発言しているとき、なにげなく空を見上げると、空に とても大きな虹を発見し、しばらく見とれていた。雲一つない晴れ渡った空に かかったのではなく、夕焼け雲の間にかかっていて、雲に入り込んだ夕焼けを 背景に、虹は本当に夢でも見ているようなファンタスティックな色を表わして いた。しばらく集会が止まり、組合員たちは各々携帯電話を取り出して虹の写 真を撮った。

「いい予感がします。私たちが勝利する啓示のようです」。司会者の希望に満 ちた言葉に続き、社労連から来た人が力強い連帯発言をした。

前から黒い服を着た若者たちが近づいてきた。私はすぐダンスチームかと思っ た。ソウル大ダンスチーム『ゴルペ』という若者たちだった。後で聞くと、ゴ ルペは『前進する芸術家』という意味を持つ純韓国語だそうだ。

ゴルペの公演と共に文化祭も終わった。7時20分だ。すぐ安養市庁に移動しなけ ればならなかった。私はまたイ・ギョンオク副委員長の乗用車に乗った。家に 帰った組合員もいたので、みんな車4台に別乗できた。

助手席に私が乗り、後の席に安養組合員たちが乗った。イ・ギョンオク副委員 長と話が始まった。そばで静かに聞きながら、いくつか尋ねたりもして、だい たい次のような話だった。

2001アウトレットで昨年の秋夕と今年の正月に、会社がストライキをしている 労働者を脅迫した。今職場に復帰すれば善処するとも言った。それでその時か ら今まで、現場に復帰した組合員が少しいる。最後までがんばった人の中には、 復帰しても職場で労組のチョッキを着て働く組合員もいる。どうせ出勤しない で別のところでアルバイトをするのなら、いっそ復帰して金を稼ぎながら闘お うという話も聞きた。戦いが長くなり、皆苦しい状況だった。先に復帰した人 と、後で復帰した人の間で会社は差別しないが、中渓店では先に戻った人の仮 差押さえを解いたという。労組のチョッキ着て働くとお客さんが尋ねる。「ま だ終わっていないのですか?」というと「はい、まだ解決していません」と話 すほかはない。

八時になり、安養市庁に到着した。私は市庁の前でキャンドルを持った人々が 熱烈に集会を開いていたはずだが市庁の講堂で開かれる文化祭に参加するため に来たのだった。われわれは2階に上がった。

講堂に入ってみるとギターを持って来た歌手が歌うところで、客席は何箇所か の空席を除いてぎっしり埋まっていた。組合員たちは後方に残っている空席に 行って座った。私は階段に腰掛けて、静かに歌を聞いた。

講堂の入口で受け取った小冊子を見ると『非正規職と差別がない世の中のため の文化祭幸福』という文句が記されていた。安養地域労働組合と市民団体が共 に準備した文化祭らしかった。僧侶が出てきて笛を吹いたり、非正規職労働者 の闘争動画を見せたり、イーランド労組ダンスチームと安養地域青年が共に公 演をしたり、風物グループが登場してとても楽しい韓国の音調を聞かせてくれ ることもした。

九時半に文化祭が終わった。最後に司会者が出てくると、この席に一緒にいる 非正規職労働者たちをそれぞれ呼んで、客席にある人々に紹介してくれた。イー ランド、キリュン電子、KTX、コスコム労働者たちが見えた。

イーランド組合員たちとあいさつして家に帰る地下鉄に乗った。疲れた。足の 力が抜けて何度も倒れそうになった。空席に座り、すっかりねむった。非正規 職問題を自分の問題と思わず、ただ劇場で他人の話を見るように観覧していて は、千人万人が集まっても何の効果もないという思いを寝つく前に少ししてい たようだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-09-11 10:21:59 / Last modified on 2008-09-11 10:22:00 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について