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江南聖母病院、その不安な一夜

[現場]ついに解雇された組合員たち、「もしかしたら私たちにそうなるんですか?」

パク・ビョンハク/ 2008年10月01日16時35分

10月1日朝六時半に江南聖母病院を出た。富川の家に帰り、シャワーを浴びてコ ンピュータの前に座った今は8時、一つ文章を書いて少しの間目を閉じた後、塾 に出勤すると、とてもギリギリだ。顔の内側で誰かが二つの目玉を取り込んで いるようだ。全身はたっぷり殴られたようにしびれて重い。だが私はこの文を 書かざるをえない。

▲ロビーには組合員が集まって座り、大きな紙に何か熱心に書いていた。

まず推理小説の話をしよう。私はかなり推理小説が好きな方で、酒飲みが酒を 探し、土地屋が蛇を探すように、今まで推理小説を意地汚く読んできた。多く の人はシャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロを思い出し、推理小説 とは果たして誰が犯人なのかを明らかにする過程だけだと考えるが、探偵が犯 人を探してトリックを暴くことだけが推理小説の全てではない。『誰が殺した のか?』という問いだけでなく、『なぜ殺したのか?』『どのようにして殺した のか?』『いつ殺したのか?』『どこで殺したのか?』、はなはだしくは『誰が探 偵か?』のような多様な問いを投げかける推理小説が世の中にはとても多い。は るか以前に人気を呼んだ海外ドラマの『刑事コロンボ』などは、初めから犯人 が誰かを視聴者に知らせてしまう。犯人が全く身動きできず、自白するように 証拠を見つけ出すことがコロンボ掲示の役割だ。南米の作家、ガルシア・マル ケスはソフォクレスのオイディプス王こそ真に奇抜な推理小説だと話したこと もある。調査者が殺人者だったからだ。

だが9月の最後の日に江南聖母病院でずっと徹夜しながら、私は今まで一度も体 験したことのない問いにぶつからなければならなかった。

『果たして用役チンピラどもはいつ攻め込むのか?』

昨夜ほど、私自身が名探偵になりたかったことはなかった。聖母病院に到着す ると夕方六時半だった。テント座込み場の周辺ではキャンドル文化祭の準備の 最中だった。連帯に来たイーランド一般労組組合員に挨拶をし終え病院ロビー に渡っていった。聖母病院非正規職組合員がロビーを占拠したまま座り込みを しているという知らせは早く聞いて知っていた。

ロビーには組合員が集まって座り、大きな紙に何かを熱心に書いていた。周辺 にカメラを持ち、写真を撮る記者が三四人いた。ノートパソコンを持ってイン ターネット生中継をする人もいた。組合員に挨拶をして状況を聞いてみた。

「今日午前10時40分頃、プラカードを持って病院内を歩き回り始めました。そ のうち、11時半ぐらいにロビーにきて席に落ち着きました。午前の時間には病 院のロビーはとても混雑します。ロビーでスローガンを叫びプラカードを振っ て... 通る医者、看護師、患者、保護者に何度も頼み、ほとんど泣くようにし ましたよ(笑い)。人が多かったからか、一時間以上、私たちをそのまま放って おきました。そのうちに結局人事チームの企画部長が出てきて撤収しろと脅し ました。職員たちはカメラを持ち出して私たちの写真を取ろうとして。それで 写真が撮れないように体当たりをしたりもしまし。外で記者会見していた記者 がその渦中にどっと入ってきたのですが、みんなおし出しました。警察もきま したね。情報何とかという警察がきて『10分以内に自主的に解散しろ。さもな くば神父様が全部引き出せといった』と怖がらせました。それからそのまま行っ たのですが、外では3時から集会をして、私たちは中で占拠を続けていましたよ。 警察がいつでもくることができたのに、私たちが自主的に調べてみると警察側 に申告はなかったというのです。今夜12時を過ぎると私たちはもうここの職員 ではなくなります(9月30日が契約満了日)。その時に用役チンピラが攻め込んで くるかも知れないという言葉が回っています。」

組合員が何かを熱心に書いている大きな紙は、病院の中のあちこちに付ける壁 新聞だった。ロビーに一緒にいた進歩新党の人々も、マジックを持って紙にいっ ぱい何かを書き始めた。私もその隙に挟まって壁新聞を書いた。

後ろで監視カメラのように目を光らせている保安職員が気に障ったが、私はカ メラを取り出して占拠座込み場周辺のあちこちを撮った。葡萄糖なのか何かを つけて歩いきまわる患者がピケの前に立ち、夢中になって内容を読んでいた。 保護者たちもたくさん書いて貼った壁新聞を見過ごして通ることができず、一 回ぐらい足を止めて読み、彼らどうしコソコソ言いながら過ぎ去った。

ここに用役チンピラがいつ攻め込むかわからないということだった。何の話も なく、まるで重機のように全てをすっかりさらって踏みつぶしてしまう図体が どうしても来るということだった。私は唾をごくっと飲み込んだ。すでに3度も チンピラを送った神父様と修道女様だった。座込み場の人の誰もが3度起きたこ とは4度起きると考えていた。

7時になり、組合員のうち二三人がキャンドル文化祭に参加するために席を立っ た。私も他の人と共にロビーを出て、テント座込み場側に行った。出てきてみ るとテント座込み場に向かい合う病院の入口側が騒々しかった。人々がわいわ いと集まり、やたらと大声を出していた。取材陣を入れないようにしているの かとそちらに行くと、保安職員が数人、入口をふさぎ、人々ともめていた。

「扉を閉めて何をするのだ?」
「皆さんが大声出すと患者の方に大きな被害になります。」
「いや、扉を閉めるのは被害ではないのか? なぜ病院を利用する人々にまで 避けるのか?」
「病院の職員ならまず患者のことを考えなければならないのではないのですか?」
保安の職員が入口を閉めようとしたようだ。体当たりが行われた。ロビーで組 合員たちが座り込みをしている状況なのに、テント側に通じる一番近い入口を がちがちに封鎖するのは、何かの胸算用だろうか? これまで用役チンピラが突 然来るたびに、今日のように病院側がしっかり閉じたという、まさにその扉だっ た。もしかしたらこれは露骨な警告なのかもしれなかった。

『今夜中に君たちを粉砕する人々が訪ねて行くだろう。君たちは誰にも助けを 受けることができないだろう。』

キャンドル文化祭に参加しに来た人々が一人二人と入口側によってきた。
「何をする?閉めるな!」
「ネチズンの皆さん!私たちが病院の中に入ってしまいましょう!」
「文化祭を中でやりましょう!」
「いっそ横になって寝ろ!」
保安職員は人々が度々押し寄せて、どうしようもないという表情で同じ言葉だ けをブツブツとまくしたてた。「こうしてはいけません。なぜ乱暴な言葉を使 うのですか?」

結局、職員は止む得ないと判断したように入口をパッと開いて退いてしまった。 人々はぶつぶつ言いながら、またテント座込み場の前に行った。7時20分頃に、 キャンドル文化祭が始まった。百人をはるかに越える人々が集まった。座って いる場所の前に置かれたキャンドルが一つ一つ赤い光でゆれた。

さまざまな人々が出てきて発言をした。一つ一つ、大切ではない発言はないが、 この文を書いている今、思い出す発言は一つだけだ。

「私はこの聖母病院で働いてきた労働者です。今日私たちの契約が満了になり ます。最後の日だと、やっと制服を出して着飾って、これまで一緒に働いてき た医師と看護師たちに本当に涙で呼び掛けました。その方たちすべてが私たち に心の底から熱い連帯を送っている方々です。申し訳なさすぎて、私たちと目 もまともに合わせることができない方々です。私たちがこの服を着て熱心に働 くべきなのに、今日はこのユニフォームが囚人服のように感じられます。あま りに荷が重く、身と心が全て疲れました。子供が苦しくて泣いていればどうす るでしょう? 子供がとても苦しくて死にそうだと毎日うめいてもがけば、両親 はどのするでしょうか? はい、涙を拭いてやらなければなりません。私たち看 護婦派遣職65人は、看護婦所属です。看護婦課長さん、部長さんはすべて修道 女様です。しかし私たちが、何日もこうして戦っているのに修道女様は私たち に、どこがそんなに苦しいのかと一度も尋ねて下さいませんでした!(しくしく 泣く)カトリック病院は、ほかの病院より暖かいところだと信じて私たちはここ を志願してきました。私たちは病院を信じました。しかし神父様はそんな私た ちに一刀のもとにおっしゃいました。『希望はやれないからここから出て行 け』。本当にそのようにおっしゃいました.....」

マイクを両手で強く握りしめて、その組合員はとめどなく涙を流した。「どう してそんなことが私たちにできるのですか!」涙混じりの叫びが上に上がってい くばかりの寂しい病院の建物を回るとき、私の胸は誰かがガラス片を当てて下 にすっと引いて切られるように痛かった。何の言葉も出なかった。その渦中に も修道女様三四人が文化祭の舞台の後ろにあわただしく過ぎ去った。

▲7時20分頃にキャンドル文化祭が始まった。座っている前に置かれたキャンドルが一つ一つ赤く揺れた。

▲「私たちが何日もこうして戦っているのに修道女様は私たちにどこがそんなに苦しいのかと一度も尋ねて下さいませんでした」

これは宗教の問題ではなかった。カトリックだから労働者たちを踏みにじった のでもなく、神父様、修道女様だから非正規職に頭がおかしくなったわけでも なかった。労働者たちを人間でなく働く機械としか思わない人々に宗教を言い、 自卑心だの愛だのを望むことがむしろ愚かだった。病院は商店であり、患者は 顧客であり、労働者は臨時に雇った店員に過ぎなかった。宗教とは彼ら病院の 経営者がしばらく心を積み重ねて置いて暇そうに休む単なる逃避先でしかなく、 それで彼らが人間の生を悩み、自分の霊魂を十分に省みるのでもなかった。あ あ、もちろんこれは聖母病院の宗教人たちの無関心と非正規職大量解雇事態と いう結果だけをめぐって私が勝手に考えるだけのことかもしれない。だがそう 考えず、いったい何をどうできるのか! 行く所を失い、あっという間に暮らし が揺らぐ労働者の姿があっという間に私の胸の中に突進してきた。私は息がつ まった。

歌の公演とダンス公演が続き、文化祭が終わった。人々はあちこちに散り、コー ヒーを飲んだりタバコを吸った。どこかからかのりまきが運ばれてきた。一日 中、何も食べられなかった私はあたふたとのりまきを受け取り、ぺろりと平ら げた。

昨晩、イーランドのホームエバー上岩店のテント座込み場で夜を明かしたため なのか、体がしきりに下に崩れようとしていた。腹がとてもすいていたが、の りまきはいつのまにみななくなってしまった。さきほどから目が閉じそうだ。 二日間そのままの靴下は運動靴の中でじっとりとしていた。シャワーも浴びら れず、全身がいくらか湿っぽかった。家に帰りたかったが、私は見たかった。 角材と鉄パイプを持って梅雨時の暗雲の群れのように集まる用役チンピラを私 の二つの目で確認したかった。心は不安だったが不思議にその不安には中毒性 があった。胸がドキドキした。果たしてやつらはいつ頃来るのか? ミステリー が解けなければ、私も安心して家に帰って休めなかった。

しばらくテント座込み場のそばで人々と話を交わしていると、また病院入口側 が騒々しくなった。知らない間に職員がさっきその入口を閉めてしまったのだっ た。ガラスドアを間にはさんで職員と人々が声を高めて激しく争っていた。あ んな外注業者の職員と言い争いをしても何の効果もないということを知っては いたが、すぐ目に入った人たちが服をだらしなく着て、職員のように振る舞う 者だから、思わず職員たちに刺々しい気持を抱いた。悪いやつら! 権力の下手 人はみんな君たちのように卑怯なのか! こっそり扉を閉めて! いくら金を受け 取ってするでも、君たちは恥ずかしくもないのか! 本当に良心に一点のやまし いこともないのか!

だが何の効果もなかった。扉を閉めた職員たちは自分がするべきこと終わらせ たかのようにゆうゆうと病院の中に行ってしまった。「病院の入口を全て封鎖 したのではないでしょうか?」誰かの話を聞いて私は入口を一つ一つ確認する ために病院周辺をひと回り回った。たった一か所を除き、すべての入口が閉まっ ていた。緊張しないわけにはいかなかった。このまま時間さえ過ぎれば10月1日 だった。非正規職労働者たちが解雇労働者の身分になるには、こんなにあきれ るほどに簡単だった。どうせ職員でもないから関係ないという理由で、病院側 はあるいは警察も動員し、労働者を引き出すかもしれなかった。警察が労働者 の味方になってくれたことは、果たして警察制度ができてから一度でもあった だろうか? 国民を安全に保護するという名目で、法と秩序を守るという口実で、 いつのまにか警官は自分たちが行う多くの暴力と不法までを遵法と合法という 枠の中に押込むぺテン屋になっていた。

開いている入口には保安職員がぼんやりと立ち、病院の内外を行き来する人々 に漫然と目を通していた。正常な扉を遠まわりして出入りしなければならない 人たちが唇を震わせて文句を言った。自分がするべきことさえすれば金を受け 取れる保安職員は、表情一つ変えずにあちこちをす速い動きで歩きまわり、チ ラッチラッと私たちの方を見た。

また病院のロビーに入った。組合員と人が集まって座り、話をしていた。さっ き書いた壁新聞が壁に貼られているのが見えた。深夜だからか、ロビーは閑散 としていた。記者の腕章をした数人が歩き回り、カメラをパシャッとした。

むこうで何かもめているのか大きな声が聞こえた。さっき職員がこっそり閉め ていった入口の方だった。廊下にはいつのまにか集まった人々でいっぱいだっ た。何のために争いになったのかはよく分からなかった。閉められた扉のため に言い争いをして、話題が他の所に変に飛んだようだった。互いに肩を押し退 けるほど雰囲気が険悪になると、まず職員が尻尾を巻いてこそこそと後ずさっ た。

だがさらに大きな争いは、しばらく後であった。廊下を通りすぎて、またロビー 側に行くと、病院の総務チーム事務室の前でさっきよりもっと大きな声が聞こえた。 「なぜ扉を締める? 開かないのか?」
「どこから来たのですか? 病院の職員ですか? なぜ大声を上げるのですか?」
「患者の不便は何も考えないのですか? 何が恥ずかしくて扉を閉めるのです?」
「このクソガキ! これで病院を運営するのか? 人が人に見えないのか?」
「乱暴な言葉を使わないで下さい! ののしらないで下さい! そこのおじさん! 写真を取らないで下さい!」

とても短い半袖の上衣にスーツのズボンを履いた図体の大きな人がさっと目に 入ってきた。大きな体で前腕が木の根ほどに太かった。短く削った頭に眼鏡を かけ、首には金の鎖を巻いていた。顔に書いてあった。『私はチンピラです』。 病院側がどこからか連れて来た脅迫用の筋肉屋であるのは明らかだった。

集会のたびにいつも出会う公共労組の人が強引に総務チームの事務室の中に入 ろうとすると、その筋肉屋が図体で防いだ。険悪そうな顔に似合わず声が細かっ たし、何がそんなに気分が良いのか、しょっちゅう笑っていた。

「これは困ります。私たちは今、勤務に立っている人々なんです。」
「上から言われるまま、何でもするのか? 君たちには良心もないのか?」
「こうして患者を何とも思わない病院すぐつぶれますね!」
「クソガキ! これが病院か?」
「扉を閉めたのはいったいどういうつもりだ? そのうちに警察と入ってきて、 みんな持ち出すということじゃないのか?」
「乱暴な言葉を使わないで下さい! 皆さんがこうしていると患者の方々に被害 が及びます!」
「では門も開いておかなければならないんじゃないですか! 病院の中で起きている 事をそんなに隠したいのですか?」

互いに空回りするばかりの口論がしばらく続いた。私はチッチッと舌を打つほ かはなかった。突然登場したチンピラ筋肉屋もひどかったが、自分の雇用一つ 守りたくて、あんなに忠犬の役割をしている保安職員も本当にかわいそうだっ た。どうせ彼らも非正規職なのに。神父様と修道女様はあえて自分の手を汚し たくなかったのだろう。職員たちは操り人形のように、おもちゃの兵丁のよう に、私たちと最善を尽くして戦っていた。残念なことだった。

「どうせ私たちが被害を受けることでもない。患者だけが死ぬほど苦労して、 結局この病院はどうしようもないといううわさにでもなれば、ここが損害を受 けるだけでしょうに。あいつらどうし、乞食になれ、そしてわれわれは行きま しょう! 争う必要はない!」

結局、争いはあいまいに終わってしまった。私はチッチッとまた舌を打った。 保安職員が本当に哀れだった。他の空間では明らかに大切な子供で、優しいお 父さんだろうに。恋人と恋もして、友人と友情も分かちあうだろうに。なぜ、 わざわざここでは病院の手先をしているのか。その全てが金の力のためだろう か? わからなかった。

その後にも大小のもめごとは、病院の中のあちこちで起きた。じっとしている 人々に職員が近寄ってきてケンカを売って行くことが多かった。人々が声をあ げて抗議すると、さっきそのチンピラ筋肉屋がいきなり現れて、体で人々の前 を防いで立った。「何かご用ですか?」そして最後まで尊敬語を使った。薄い唇 をぴくぴくさせて笑うのは、本当に気味が悪かった。外は寒くて死にそうなの に、なぜ大きな前腕は白く出しているのかまったく分からなかった。

▲果たしてやつらはいつ頃に攻め込むのだろうか?

夜12時になり、ロビーもいつのまにか静かになった時、知りあいの進歩新党江 南区党員がA4用紙5、6枚をあわせて作った張り紙を持ってきた。職員が閉じた 扉に付けるという。『正門を利用して下さい』『職員が強制的に閉めました』 などと書かれた張り紙を持って、私はその人と共にさっき職員がこっそり閉じ て逃げた入口の方に行った。廊下に立っていた保安職員が防いだが、われわれ は気にせず見過ごして入口のガラスドアの前に立って、テープで張り紙を付けた。

靴を履いた足の声が聞こえ、後ろを振り返ると、いつのまにチンピラ筋肉屋が こつこつと歩いてきていた。ため息が出た。
「こんなものをここに付けてはいけません。すべての掲示物は掲示板をご使用 になってください。」
「ではここに誰かが出てきて案内でもしなさい。誰もいないからみんなが不便 するでしょう。」
「今案内しています。とにかくはやくはがして下さい。」

乱暴そうな手が上がりそうになったので、透明テープをはがし始めた。
「分かりました。私たちがはがします。」
すると外で見ていた人たちが一人二人とガラスドアの前に集まった。
「なんだ? なぜはがす?」
「病院施設にみだりにこういうものを貼ってはいけません。掲示板に貼らなけ ればなりません。」
「ではなぜ扉を閉める? ドアをあけておけばいいのに?」
「はやく開けよ? 何を隠したくて扉を閉める?」
「乱暴な言葉はやめて下さい! どこから来ましたか? 病院の職員ですか?」
「職員でなければどうなんですか? あなたは職員ですか? 身分証を見せてくだ さいよ!」
「私はここの職員ですよ? なぜ私があなたがたに証明書を見せるのですか?」

自分の口からおおらかにおおらかに病院の職員だと言う筋肉屋がいっそ悲しく 見えた。あんた。その良い図体でどこか華やかなところに行ってスーツを着飾っ て働いたらどうだっただろう? 私服を着て歩き回らなくてもいいような所で堂々 と働かず、いったいここで何をしているのか? 今、口からここの職員だという 声が聞こえるけれど? そんなに筋肉だけで何をするのか? あなたの暮しもあな たの筋肉のように無駄に膨らんでいるのがはっきり見えるけれど。

結局、われわれははがされた張り紙を持ってまたロビーに戻らなければならな かった。いつのまにか午前1時を過ぎていた。組合員たちは長い椅子に横になり 睡眠を求めていた。果たしてやつらはいつ頃攻め込んでくるのだろうか?

だが夜が過ぎ、朝になるまでチンピラは攻め込んでこなかった。4時頃、いっぱ い人が乗ったバス一台が現れたという情報提供が入ってきたので、人々が息を 切らせてロビーに駆け込んできたが、バスは病院の外にゆうゆうと消えて行っ たという。本当にチンピラが乗った車が状況を見に来たのだろうか? そうでな ければ、神経が過敏になった誰かが見間違えたのだろうか? 確実なことは、私 たちは慢性病のように徹夜で不安な気持でいなければならなかったということ で、目に見えるすべてのバスを疑わなくてはいけなかったということだ。胸の 中がかさかさに乾いていた。いったいやつらはいつ頃攻め込むのだろう? 終わ らない、終わるとは思わない推理小説でも読んでいる気持ちだった。

隣の人と絶えず話をしながらタバコを吸ってコーヒーを飲んだ。誰かは先が見 えない片思いに、誰かは人間関係に、誰かは文を書くことに、誰かは進歩運動 に心の畑を食いながら、一日一日を耐え抜いていた。いくら頭をそらして夜空 を見上げても墨汁を流したように星はよく見えなかった。数えきれない程輝く 星の群れをちょっと見れば慰められるだろうか。汚い格好、卑怯な人間、神を 売り飛ばす宗教人、金の虫、暴力警官... そんなことをすべて忘れてしまって、 また新しい朝を始められるだろうか。星のない夜空の下で、ただ気がかりだっ た。私はしきりにタバコを吸い始めた。

六時半まで粘って結局組合員たちに挨拶をして外に出てきた。何かがあればす ぐ連絡をくれと言った。この文章を書いている今も、率直に不安でしかたがな い。私が病院を出た後、突然攻め込んできたかもしれない。ぜひ何事もないこ とを望む。一日一日が危険だ。やつらは果たしていつ攻め込むのだろうか? ミ ステリーはまだ解けなかった。いったいいつまでその問いに耐えられないほど 苦しまなければならないのだろうか?

これから解雇労働者という身分でテント座込み場を守り、占拠したロビーを死 守しなければならない江南聖母病院非正規職組合員に、心の底から熱い応援を 送る。10月1日水曜日。テント座り込み15日目。そして出勤闘争1日目。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-10-07 17:44:10 / Last modified on 2008-10-07 17:44:12 Copyright: Default

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