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「この惨憺たる現場で言葉を失いました」

[現場記者席]神の名で労働者を追い出す江南聖母病院

パク・ビョンハク/ 2008年09月23日10時44分

2号線瑞草駅におりると夜九時だった。地下鉄に乗っている時はわからなかった が、外に出ると雨つぶが空を濡らし、夜空に白く立ちこめていた。傘をさすと、 頭の上でぽつぽつと水滴の音が聞こえた。

江南聖母病院の非正規職労働者たちが座り込みをしている場所を訪れたのは今 回で二番目だった。何か買って行こうとあたりを見回して店を探したが、やた らと大きな建物が目につくだけで、水1本買えそうな所も見つからなかった。周 辺をしばらく歩きまわり、店を探して私は額を打った。『しまった、ここは金 持ちが住む江南の真中だ!』。大型ディスカウントストアだと思って入ったとこ ろは、ソウルパレスホテルだった。情けなかった。まったく正体が分からない 数十階のビルの間を歩きまわり、やっとコンビニエンスストアーを見つけた。 持っていたお金では、5、6個のカップラーメンしか買えなかった。

結局、十時になって聖母病院についた。記憶を探し、座込み場があった所に行 くと、十余人のレインコートを着た人々が雨を避けて大小座って話をしていた。 私は用心深く近付いて話しかけた。

「あの...... こんにちは。先週にきたのですが......」

「ああ、そうだね! いらっしゃい!」

これからどう戦うかについて議論しているところだったといった。前に会った 人がたくさん見えた。民主労働党と進歩新党、保健医療労組ソウル本部、民主 労総ソウル本部から来た人も一緒にいた。

「最近の状況はどんな感じですか? 私は先週の木曜に来れなくて。」

「あっちを見ればわかるでしょう...... 今日の夜明けに用役チンピラがまた攻 め込んで、テントを全部殴り壊して行きました。」

あちらには無惨に壊れたもはやテントではなくゴミというべきものがごちゃご ちゃと転がっていた。鉄なのか何か分からない金属の棒は、足蹴りされたよう に真っ二つになっていた。壁にはこんな壁新聞が貼られていた。

『たった今(明け方5時30分)用役チンピラ数十人が修羅場にした現場です』

私はこれまでここで起きたことを整理するために、組合員に聞いて先週水曜日 から今日月曜日まで何があったのかを簡単に書いてみた。

水曜日:午後5時頃テント設置。夜11時頃用役チンピラ侵奪。テント撤去。組合 員と体当たり(体当たりはしたが事実女性組合員たちと荒っぽい用役チンピラの 間で体当たりとはとんでもない。実際に用役チンピラがテントをはぎとり、テ ントにしがみついて一緒にずるずる引きずられた組合員もいたという)。

木曜日:テントなしで敷物だけを敷き、座込み場で野宿(この日が私が訪問した 日だった。冷たい初秋の夜を組合員たちはテントもふとんも寝袋も暖炉もなく 粘った)。

金曜日:夜明けに用役チンピラがテントのない座込み場をまた侵奪。横断幕とピ ケを強制的に奪う(この日にきた用役チンピラには女が多かったと言う。猫がネ ズミのことを考えてくれるのか? キャンドル集会にわざわざ婦人警官を送り込 む工作と似ている)。午前にテントをまた設置する。夜に連帯単位の人がたくさ んきてくれて、幸いその日の夜は無事に越したという。

土曜日、日曜日:別に過不足なく過ごす。

月曜日:夜明けに用役チンピラが三回目の侵奪、テントを壊させる。カメラを 真っ先に奪っていったという。

だから今日、9月22日の月曜日は、テント座り込み六日目なる日だ。用役チンピ ラと6日で3回も衝突しなければならなかった組合員はみんな、とんでもないと 笑うだけだった。

「どこがキリスト教信者ですか? 対話するつもりもなく、チンピラだけを送り 続けています。」

江南聖母病院はカトリック中央医療院(CMC)が運営する病院だ。医院長と幹部が いるが、実際には数人の神父と修道女が最も重要な権利を握っているという。 先週木曜日に訪問した時もそうだったが、今日きてみると神父、修道女が病院 の所々を歩き回る姿を簡単に見ることができた。

去る2002年には聖母病院正規職労組が217日間のストライキをしたこともある と言う。

病院の内部事情は、先週きた時に大部分を聞いた。この病院で働く約700人の人 のうち約400人が直接雇用労働者で、あとの約300人が間接雇用労働者だという。 そのうち看護婦非正規職労働者は65人だが、9月末に契約満了になる派遣職労働 者がその65人のうち28人にもなる。

2年以上雇用すれば無条件に正規職に転換しなければならないため、病院側は契 約が満了する労働者に一方的に解雇を通知した。非正規職法というムチャクチャ な悪法のおかげで、どこでも似たような状況が起きているのだ。キリュン電子、 イーランド、KTX、コスコムのような有名な長期闘争事業場は言うまでもなく、 報道機関とネチズンの関心の外にある他の多くの非正規職闘争事業場にも、非 正規職法のおかげで一瞬にして街頭に追い出される労働者がいる。いつぞやは、 労働者の味方だという政権がこの国にあったようだが、人間らしい生活を享受 しようと立ちあがる人に、この時代の政権と資本家はあまりにも狡猾であくら つにふるまった。事情も考慮しない。金にならなければいくらでも人を切って も良かった。すぐ自分の手に利益が残すため、誰か他の人を飢えさせた。狂っ た時期だった。

8月18日に保健医療労組に加入した聖母病院の非正規職組合員は、8月末まで闘 争を準備し続け、9月初めから本格的に病院で宣伝戦をした。そして9月17日に テント座り込みを始め、その日の夜にすぐ用役チンピラに侵奪された。毎晩六 時半に座込み場前でキャンドル文化祭も開くという。座り込みはしているが、 ストライキではないので家に帰り、勤務にも出るという。

やはり先週木曜に聞いた話。

「9月初めにはこんなこともありました。カトリック中央医療院と医院長に面談 を申請し続けたが聞く振りもしなかったんです。それで私たちが人事チーム長 を訪ねて問い詰めました。そうすると人事チーム長が院長と会わせてやるとい いました。どこかに見に行き、今は院長がいないと言いました。それから自分 の口で約束をしました。明日院長に必ず会わせてやると。ところがそのうちに 人事チーム長がまた言葉を変えるのです。自分はそんな話をしたことはないと はっきり言いました。それで私たちが腹を立てて、医院長室の前に行き、しば らく問い詰めていると、派遣業者の幹部が何人か来ました。幹部が二人で、な にかチンピラのような奴も1人きて、後であいつは誰かと聞いても教えてくれま せんでした。多分用役チンピラだったのでしょう。とにかく、派遣業者の幹部 が私たちに、あなたたちはここではなく他に発令すると脅迫しました。もちろ ん、不当転職でしょう。私たちが抗議すると、後ほど謝罪をするにはしました。 結局病院長とは会えませんでした...... さらに笑わせることが何だったか分 かりますか? 聖母病院の横にすぐ新しい病院ができるんですが。そこはほとん ど百パーセントを非正規職にするのです。」

少しずつ雨足が小さくなり始めた。進歩新党の人々が新しいテントを持ってく ることにしたという。私は組合員の間に混じって入ってみた。民主労働党から きたある活動家が組合員の話を熱心に書き取っていた。

「初めてこの聖母病院に来ると、適応が難しいです。仕事がとても多く、コー ヒー一杯飲む時間もなく、トイレに行く時間もありません。それに適応して慣 れなければならない仕事なのに、今の仕事に慣れた頃にやめろというのです。」

「本当に悪いことを考えず、雨が降ろうが雪が降ろうが毎日出勤して働きまし た。そうでなければクビでしょう。非正規職で派遣職なので、嫌われればすぐ クビです。それでわれわれは正規職より何倍も死ぬほど頑張って働きました。 それなのに、病院側はそれを知りません。」

「非正規職なので正規職より人格的に劣っているわけでもなく、仕事が出来な いわけでもありません。その人たち(正規職)は、前はみんな正規職として採用 していたから、その時に入れば正規職で、わたしたちは時代を間違って、非正 規職になったのでしょう。今は丸ごと非正規職を採用する時代でしょう。」

「さっきのキャンドル文化祭の時にも発言しましたが、本当に文字通り『頑張っ て働いた人は出ていけ!』です。」

「窮余の策だ。私達が団結するしかない。」

私はタバコを一本吸い始めた。白いガウンを着た医者たちがペアを組んでどこ かに急いで歩いていっていた。看護師たちも見えた。そしていつも優しく見え る修道女も見えた。神を信じるということは、神のほかは何も信じないという 意味だろうか? 神様のしもべを自任する人々が、なぜ労働者がしている苦しい 戦いに知らないふりができるのか? なぜ見て見ないふりをして皆口を拭い、そ のまま通り過ぎてしまうのだろうか? 『労組は聖書に出てこない』という理由 で労働組合を『サタンの群れ』と烙印を押したイーランドのパク・ソンス会長、 篤い宗教人だという見掛けの良い老人がふと思い出された。

私はタバコを吸いながら、その時始めて周辺を見ることができた。花壇のあち こちには色とりどりのプラカードが置かれていた。

『緊急速報!今日(9/22)明け方5時半、数十人のチンピラがまた非正規職組合員 の座込み場を蹴散らしました。CMCはチンピラ病院ですか? 抗議する女性組合員 の腕を捻りあげ、さらに携帯電話で侵奪場面を撮ろうとした人の携帯電話まで 奪おうとしました! 用役チンピラ暴力侵奪CMCを糾弾します!!』

患者のための人材補充どころか
看護派遣組合員の大量解雇
これが神様の意思ですか?
-民主労働党ソウル市党瑞草区委員会

正当な労組活動に報復性の不当転職とは何ということか?
必要なら一家族だと言い、今度は消耗品扱い
雇い止め撤回!不当転職撤回!
-保健医療労組江南聖母病院非正規職組合員一同

不当転職? 何か思い当たることがあった。私はタバコをもみ消して数人の組合 員としばらく話をしてみることにした。

「健康はどうですか?」

「大変だよ。ちゃんと食べることもできない。寝れないし。本当に不眠症になっ た人もいた。代表は今日夜明けの侵奪の時、頭をぶつけて怪我をしたし......」

「どれくらい怪我をしたんですか?」

「たいしたことはない。だけど休まなければいけないのに、またここに来なけ ればならないでしょう。」

「これからどう戦うのかの計画や方針のようなものはあるんですか?」

「まず明日(9月23日)の『非正規職行動の日』集会に参加します。今この戦いは、 私たちだけの闘争ではなく、全非正規職労働者の問題に拡大させなければなら ないのではないでしょうか。他の事業場との連帯を作ることが今一番急がれる と思います。私たちの問題も知らせて...... そして24日には保健医療労組ソウ ル本部主管で集中キャンドル文化祭があります。その日、医院長と面談がある はずですが、集会はおそらく面談の後になるでしょう。その面談の結果でキャ ンドル文化祭の内容も変わりそうです。しかし率直に言って、面談で状況が大 きく改善されるとは思いません。面談の結果がどうなるかで25日以後の闘争の 計画をたてます。面談が何の成果もなく終われば、どうしても闘争の程度を高 めざるをえないでしょう。」

「先週も聞きましたが、今も勤務は続けているのですか?」

「それが...... 今日は出勤しても仕事をくれなかったんですよ。管理者の看護 師長が、私たちは待機発令者だから仕事をやらないといって......」

「待機発令です?」

「座り込み者のうち5人には、本社への派遣発令が出てしまいました。私たちは 本社では何もできません。待機発令という意味でしょう。明白な不当転職なの で、労働部に告訴告発する予定です。労働委員会には不当労働解雇救済申請も することになるでしょう。今日労務士とも話しました。」

結局、ピケに書かれた『不当転職撤回!』は、派遣業者が突きつけた脅迫が現実 になったことで登場したスローガンだった。いったい宗教という仮面をかぶっ たこの病院の正体は何なのか? 私はまた胸が苦しかった。

「正規職労働者たちはこの闘争を見てどんな反応を見せていますか?」

「本当に熱いです! 私たちが座り込みを始めた時から正規職の人はとても心配 していました。難しいだろう、とても傷つくかもしれない..... それと共に、 前に217日間闘った経験も話してくれて..... 座込み場にたくさん支持訪問に来 て、激励してくれて、食べ物も買ってくれます。今日は病院のロビーで座り込 みをして、ここにきて野宿しているのですが、本当にたくさん来て励ましてく れました。支援金を集めてくれる人もいたそうです。正規職労組とも闘争内容 は共有しています。今日の夜明けにテントが侵奪されたので、正規職労組が院 長室側に抗議訪問に行ったといいます。」

この場に今、正規職労組から来た人がいるかと聞くと、いないという返事だっ た。正規職労組や保健医療労組がこの戦いに現在、どの程度の力を貸してくれ ているかを聞くのは難しいことだった。私が行った闘争事業場はどこも、十の うち九つは上級団体について良く話さなかった。聖母病院非正規職組合員の闘 争は今まさに始まる段階に来ているので、今から正規職組合員と上級団体(聖母 病院組合員の場合は保健医療労組)を悪く言い、わざわざ一緒くたにすることは なさそうだった。しかも正規職組合員の反応はとても熱いと言うではないか! 保健医療労組もいろんな支援をしているという。私はもっと時間がたって、もっ と聖母病院の非正規職組合員と親しくなったとき、もっと深い部分まで聞くこ とにした。

「何か必要な物はありませんか?」

「ウーン...... 何があるか? 連帯単位がたくさん持ってこられますので。」

「食事はどうしているのですか?」

「病院の食堂でも食べて、差し入れの食べ物もあって、ただ食事を抜くことも あります。」

「夜は寒いでしょうが寝袋のようなものありますか?」

「寝袋はあります。ああ、思い出した! CCTVが必要だ!」

すると横にいた他の組合員が笑いながら相槌を打った。

「そのとおりです。CCTVや警報機のようなもの。チンピラが一瞬でみんな持っ ていったので資料一つも残しませんでした。そいつらがみんな殴り壊すのを指 をくわえて見なければならなかったので...... 今日の明け方も一番最初にカメ ラを取っていきました。」

よほどでなければ組合員が監視カメラを持ちたいと思うだろうか。六日の間に 3回の侵奪。恐ろしいことだった。病院を運営する宗教人が見れば、用役チンピ ラは聖戦を遂行する十字軍のようなものか? 病院側の宗教人は座り込みをして いる非正規職組合員をサタンの群れだと思っているのだろうか? 正しい道に導 かなければならない若い羊だと考えているだろうか? わからなかった。宗教と やらが資本の醜悪な顔を隠す立派な仮面になることは、すでにイーランドのケー スがはっきり見せているではないか! 果たして聖母病院はどうなのか?

「この戦いをまだよく知らない人に特別に言いたい言葉がありますか?」

みんな、しばらく考え込んで、

「この惨憺とした現場で...... 言うべき言葉を失いました。」

「直接きてみて下さい。それが最も良さそうです。」

「用役チンピラと3回も会うというのは本当に......」

私はまたタバコをつけて尋ねた。座込み場に連帯に来た数人の知った顔と話を していると、進歩新党の党員たちがテントを持ってきた。本来は座込み場を徹 夜で守る党員が使うために購入したテントだが、組合員がテントを張るとすぐ、 チンピラがメチャクチャにしてしまったので、結局組合員のためにテントを持っ てくることになったという。

できたテントはキャンプのテントのようなものだったが、それでも寒い初秋の 夜を組合員が震えずに過ごせるというだけでも幸いだった。テントには大きな 横断幕が1枚つけられていた。

解約撤回! 非正規職正規職化要求!
江南聖母病院派遣組合員テント座り込み6日目
-全国保健医療産業労働組合江南聖母病院非正規職組合員一同

もう少しで12時だ。一日が過ぎた。先週の水曜から始まった座り込みが、いつ のまにか7日目を迎えたのだ。今は日数を考えたくもないキリュン電子、日数を 考えると息が詰まるKTXとイーランド...... 聖母病院組合員が泣きながら、笑 いながら、闘争100日、200日の文化祭をする姿は見たくなかった。長期闘争事 業場という涙ぐましい名前を付けてやりたくなかった。少なくとも宗教の名で、 医術を施すこの聖母病院だけは。

私は家に帰って文を書かなければならないと言い訳しながらそこを出た。「あ りがとうございます!」 「またいらっしゃい!」組合員たちの明るい声が胸を突 き刺した。すぐ今夜にもチンピラが攻め込んでくるかもしれない。この文を書 いている今、テントはまた壊されているかもしれない。この時代は街頭に追い 出された組合員には、雨を避け、睡眠を求める小さな空間も許してくれない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-09-25 02:33:04 / Last modified on 2008-09-25 02:33:05 Copyright: Default

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