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食を断った彼女たちに『釜』を贈った理由

[コラム]キリュン電子分会とKTX乗務支部座込み場を訪問したキッチンアート

イ・ソンオク(小さな本客員記者)/ 2008年09月12日15時21分

9月11日、ストライキ闘争1115日、分会長断食93日をむかえたキリュン電子分会 の座込み場には、意味深いプレゼントの伝達式があった。厨房用品セットを トラックにのせてキッチンアート経営陣が訪問したのだ。

『切れた指だけで一袋』という話を聞くほど労働者を酷使した労災代表企業の 『キッチンアート(旧京東産業)』。しかし京東産業の労働者は不渡りを出した 経営陣を追い出して、闘争と犠牲で2000年に新しく労働者自主管理企業『キッ チンアート』を発足させた。ストライキ闘争で解雇、拘束された労働者たちは 今、『代表理事』、『専務理事』というなじみのない名刺を持っている。自分 でもまだ慣れないのか、11日午前、キリュン電子の座込み場に来てプレゼント を渡しに来た彼らの姿は、着飾って来た洋服のようにぎこちなかった。

ラーメンボックスなどを寄付して、子供たちを前に出して写真を撮り、引き潮 のように帰っていく資本家式の広報は全く知らない労働者企業。だから一つに はさらに残念でもあった。社長、専務の声一つ自然に呼べず、座込み場を見る と昔の自分を思い出して残念さが先に立つ彼らが、この厳しい資本主義市場で 生き残れるだろうか。

▲厨房用品セットをトラックにのせてキッチンアート経営陣が訪問した。

キャンドル後の困難な状況のため、今日の伝達式がマスコミに載ることを心配 した82Cookの会員は、あまり広報ができなかったことについて「キッチンアー トの社報には出るでしょう。社報程度は大丈夫です」と安心したというが、社 報どころか朝食も食べられずに仁川からプレゼントを積んで駆け付けた彼らが 手に持っていたのは、使い捨てカメラ一個だった。車の事故の時、非常用に使 うような使い捨てカメラで恩着せがましいと悪口を言われかると、こわごわ自 分たちだけで写真を撮る姿を見て、笑うべきか、泣くべきか。互いにマイクを 握るまいと後に引いて、進行者に呼ばれて出てきたキッチンアートのチョン・ チャンヒョプ代表理事は、キリュン電子組合員にこう連帯の心を伝えた。

「今日、皆さんの座込み場を見て新鮮だ。昔、私も同じ時期があった。仁川で 一番労災で有名な会社がキッチンアートだった。企業家は放漫な経営で不渡り を出して逃げ、10年、20年、30年間会社を自分のもののように思って働いてき た組合員だけが残り、新しく労働者企業を作った。今頃皆さんが苦労している 所にきて申し訳ない。プレゼントは持ってきたが恥ずかしい。頑張って必ず勝 ち、頑張って秋夕には家族と共に話の花を咲かせてほしい。私たちも透明で清 潔に営業し、労働者のためにもっと社会貢献する企業にする。」

▲連帯発言をするチョン・チャンヒョプ キッチンアート代表理事

労働者企業、キッチンアートの社訓は「共同所有、共同分配、共同責任」だ。 労働者の座込み場を訪ね、透明経営を約束する労働者社長。この不慣れでぎこ ちない社長の暖かい連帯発言に、何人かの組合員は涙を拭った。キリュン電子 の組合員を代表して感謝を伝えにきたオ・ソクスン組合員はマイクをとるとす ぐまた喉がつまる。

「孤独で寂しく千日間闘争したが、こんなに大きな関心と愛に涙が出る。最近 はマイクを持つだけで涙が出る…。分会長断食93日、どうすればいいのかわか らない。本当に間違いでもあったら…。分会長が死んでその命の値段で正規職 なることに何の意味があるか…。豊かに暮らしたくて戦ったのではなく、ただ 『生きたい』と始めた戦いだ。断食60日の時に、今年の秋夕だけは家族と重湯 でも食べられたら…と思った。重湯一匙食べる希望が、本当に1115日を戦って 死ぬほど断食をしなければならない程大きな欲なのか.....」

分会長の命の値段。私は分かる。その命の値段がいかに残忍か。ゴリアテのク レーンで一人で首を吊った韓進重工業のキム・ジュイク委員長の葬式の時に、 委員長の命の代わりに勝ち取った全てのために苦しんだ組合員の姿を見るのは、 それ自体が苦痛だった。キム・ジュイクはクレーンの上で一人で死に、キム・ ソヨンはコンテナボックスの中でガリガリに痩せた木の葉のような姿で毎日死 んでいく。彼女の感謝の挨拶はしばしばとぎれた。涙の機械になってしまった のだろうか。一言話せば涙が流れ、しばらく背を向けて涙を拭いた後、やっと 次の言葉を続けることができた。

「はるかに遠く大変な時に来てくれて胸が詰まる。キリュンに来た時は非正規 職、派遣職だったので、名節に正規職がプレゼントをもらう時、プレゼントも もらえなかった。ところが今年はプレゼントの福が爆発した。ありがとう。」

▲キリュン電子分会組合員たちとキッチンアート経営陣が団体写真を撮った。

千日間、孤独で佗びしく闘争したが、この頃は人々の関心と愛に涙が出るとい う言葉。3年を越えてやっと3度、私もやはり人が一人死んでいかなければ来な い無関心な人だった。彼女の感謝はそんな刃物になって私にささる。キッチン アートのパク・ソンテ専務とともに獄中生活をした縁でこの伝達式の橋をかけ ることになったイ・ガビョン民主労総前委員長は、「財閥はみんな赦免してや り、労働者だけを殺すのが李明博政権だ。資本家も絶対に譲歩しないだろう。 力のいる戦いだが、気勢を失わずに連帯しよう。恥ずかしくて申し訳ない」と 話し、キャンドル集会とイ・キルジュン二等兵良心宣言、キリュン座込み場同 調ハンストまで、キャンドルの精神を全身で示す82Cook会員に感謝を示そうと この場を提案した聖公会大のハン・ホング教授は、「キャンドルは最も陰の暗 いところを照らす。私たちの社会の最も陰で暗い非正規職問題、その象徴的な 戦いをしているキリュンを支援する82Cook会員に感謝し、今後もキャンドルの 精神を続けてるよう努力する」という言葉で連帯の心を伝えた。

沸きかえったカメラも、騒々しい拍手部隊もなかったが、飢える彼女たちに 『御飯釜』を与えたこの逆説の現場は、だからさらにつらく、感動的だった。 ぜひ勝って、早く断食を終わらせて、この御飯釜で暖かいご飯を炊けというキッ チンアート労働者の切実な気持が、多分彼女たちにも伝わっただろう。表面だ け残った姿で93日間、断食を続けるキム・ソヨン分会長は、座込み場で4回目 になる秋夕について、この頑強な戦いについて淡々と話した。

「知らせを聞いて、こんな企業もあるんだなと驚いた。こんな企業がたくさん あれば良い。労働者企業でも昔の記憶を忘れず、こうすることも容易なことで はないが…。ありがとう。個人がするにはあまりにも労力のいる戦いだという ことはよく分かる。この戦い必ず勝って正常な生活、闘争をしない生活に戻る。 その時、ぜひキッチンアートを訪ねてごあいさつする。」

▲KTX乗務支部にも連帯の品を渡した。

93日絶食している人に話しかけるのも罪人ようで、キッチンアートの代表理事 は急いでハンスト場を出た。座込み場で4回目の秋夕、あるいは座込み場で迎え るかも知れない次の正月。彼らの前で三日前から抱えている私の名節症候群な どはどれほど豪華なことなのか。

風さえ吹けば揺れる鉄塔の上で高空籠城をしているKTX女性乗務員もそうだった。 「困難な時にきてくれてありがとうございます。力になります」。1000日間、 困難ではない瞬間がただ一瞬でもあったのだろうか。キッチンアートが贈り物 が豊かでなくて申し訳ないという言葉を伝えた時、KTX対策委の誰かは手に何も 持ってこなくても、来てくれることだけでも有難いといった。一緒にいること だけで力になる、それがまさに労働者の連帯なのだが、私一人で何の助けにな るかとすぐ連帯しなかった気持ちが恥ずかしい。

キリュンの座込み場を出る頃、ある女性組合員がイ・ガビョン委員長に尋ねた。 「97年度に整理解雇法に印鑑を押しておいて、どうして私たちをこんなにした のですか」。笑う顔でいたずらっぽく言った話だったが、彼女たちが持つ願い はそっくり伝えられた。私は捺印しませんでしが、申し訳ありませんと、やは り冗談っぽく受けたが、李委員長は穴でもあれば入りたいといった。96年に 整理解雇法がかっぱらいで通過し、年末にゼネストをしたが結局、97年の労使 政合意で整理解雇を認めた民主労総指導部。2006年の非正規職法が与党野党の 合意で通過した時も、きちんと戦えなかった労働者議員たち。10年後にそれら の法が労働者にどんな刃物になって飛んでくるのか理解せず、愚かに戦うこと も出来ないわれわれはすべて彼女たちにとって罪人だ。それらの法がキリュン を作り、KTXを作り、イーランドを作り、コスコムを作った。

われわれはなぜこんなに愚かなのか。なぜこんなに純粋なのか。

キリュンもKTXも、座込み場はみんな寂しかった。キリュン電子のまわりは彼女 たちのテントを通り過ぎる無関心なトラックで忙しく、私たちの伝達式は座込 み場を通る車でたびたび中断した。60日以上の絶食で肺に水がたまり、断食を 中断したもうひとりの彼女、ユ・フンヒ組合員は、言葉なく座込み場のまわり をぐるぐると回った。まだまっすぐにたつことも大変そうなか細い体でぞうき んを洗い、周辺を片付け、分会長が絶食している部屋をふいていた。絶食をし ていない人がしてもいいのに、断食を終えた罪人になり、分会長のそばを守る 彼女を見ると、また心が痛い。彼女たちは何でこんなに私たち皆の罰を代わり に受けているのか。

93日絶食を続けている分会長のふとんには、ホ・ヨンマンの漫画『居候』がず らっと並んでいた。ハンスト場の『御飯釜』ほどに逆説的な光景。断食が終わっ て、思う存分食べられる時、居候に出てきたおいしいスープ屋にぜひ彼女と一 緒に行こうと思う。キッチンアートの労働者のように昔話をしながら暮せる日 があることを、苦しくても早くこの瞬間を振り返り、追憶できる日が来ること を、キッチンアートの労働者たちが一番高価なブランドだと言って渡してくれ た『ブランド』圧力釜に、みんな丸くなって座り、暖かいご飯を炊くその現場 に一緒にいられる日が来ることを、切実に、切実に望むだけだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-09-17 05:24:43 / Last modified on 2008-09-17 05:24:44 Copyright: Default

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