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韓国:二大労総の連帯ゼネスト切迫
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「2004年は1997年のゼネスト政局と類似」

退路を遮断された労働界、 二大労総の連帯ゼネスト切迫

パククォニル記者 kipark@digitalmal.com

「労組幹部五人を切りましたか。 代議員をしていた私もそのついでに切るのでしょう。」

全南大病院の社内下請け支部代議員イミスン氏の言葉だ。 彼女と62人の組合員は今日未明、光州からソウルに 非正規職労働者大会に参加するために上京してきた。 ところが「切られた」と? イミスン氏は笑って「切られたとは解雇を意味すること」だと説明する。 彼の説明を聞いて周囲を見ると、 イミスン氏と同年輩と見えるおばさんたちが多い。 このおばさんは、病院内の清掃を担当している労働者だが、 他の病院と同じように用役業者に雇用された非正規職労働者だ。 イミスン氏は病院非正規職労働者の孤単な生を吐露する。

「死ぬほど働いても一か月で65万ウォンしか稼げない。 休む日も一か月に一度があるかないかだ。 正規職が白人なら、われわれは黒人奴隷ではないかと 最近よく考える」

それでも幸いなことは、病院の正規職労組が社内下請け労組を 比較的よく支援してくれて連帯しているという点。 イミスン氏は「私はあまり勉強しなかったのでよくわからないが、 非正規職保護法案というのが今より悪いということを聞いた。 今でも奴隷のように暮しているのに、 これよりもっと悪くなるとはひどい」と首を横に振った。

10月10日、全国非正規労働者大会は 韓国労総と民主労総、この二大労総が一つの席に集まって政府が出した 非正規職法案を正面突破することを闡明した席だった。 びっしりと立ち並ぶ旗の洪水だった。 少なくともこの席だけは、正規職と非正規職の区別はなかった。 しかし、なにぶん非正規職労働者が正規職労組より熱心なのは事実だった。 非正規職労働者がおよそ6千人参加したと推定される反面、 正規職労働者はその半分程度がこの日の集会に参加したようだ。 各労組がそれぞれ抱える懸案のために懸命に闘争する中でも、 非正規職大会が開かれる大学路のマロニエ公園に続々と押し寄せてきた。 9日、建国大で「公務員労働三権争奪」などを要求して徹夜の籠城を行った 全国公務員労組もこの日の午前、全幹部決意大会を開いたのに続き、 労働者大会に合流した。 9月16日にヨルリンウリ党奇襲占拠籠城をして 労働界内部の大きな反響を呼び起こした 非正規労働者代表連帯会議所属労働者の姿も見えた。

「盧武鉉政府が詐欺を働いている」

韓国労総と民主労総がせっかく連帯集会を開く席だからなのか、 二大労総委員長の雰囲気は悲壮この上ない。

民主労総のイスホ委員長は壇上に上がり、 「昨年この時期に亡くなった非正規職労働者イヨンソク烈士を記憶する」 と話し始めた。 彼は「非正規職労働者が戦うのに私達がじっとしていていいのか。 この巨大な闘いの前で、韓国労総も民主労総も正規職も非正規職も別にない」 と今回の集会が非正規職だけでなく、 正規職を網羅した労働者全体の問題であることを強調した。 イスホ委員長は、盧武鉉が「詐欺を働いている」と憤怒した。

「労働者庶民が腹がへってなんの希望もないのに、 名目成長率に何の意味があるのか。 非正規職保護法案だと言って出したものを一度見ろ。 これが保護法案なのか。 こういう詐欺を働く盧武鉉政府が労働者をどんづまりに追いやっている」

韓国労総のイヨンドゥク委員長は大会の辞で、 「最近、一連の政府政策は持てる者には利潤を、 労働者には雇用不安と非正規職を強要する労働弾圧で一貫している」とし、 「もし政府と資本が労働者の正当な要求を無視して労働悪法を押し通すなら、 労働者民衆の強力な抵抗と闘争に直面するだろう」と警告した。

この日の集会にはチョンヨンセ民主労働党院内代表、 チョングァンフン民衆連帯代表などの社会団体の人々も参加した。 彼らは一様に 「非正規問題が社会的不平等を深刻化させる社会的問題、人権の問題」 であることを強調して 「非正規労働法改悪案撤回と権利保障立法争奪が、 非正規職の問題ではなく全民衆の生を規定する問題」だと語った。

女性連合のチョンヒョンベク代表は 「今、女性労働者の73%が非正規職だ。 政府は今、非正規保護法案という名で女性労働者の95%以上の 非正規職化に乗り出している」と指摘した。 チョン代表は「この嘆かわしく、あきれた状況の前で、 当然政府が出した悪法、非正規保護法案を総力阻止して 非正規権利保障立法を勝ち取らなければならない」と話した。 チョンヒョンベク代表は加えて 「今は労働者が願う代案社会を言えるように、 労働運動が一層成熟しなければならない」と注文することもした。

民主労働党のチョンヨンセ院内代表は 「10年以内に正規職の種が尽きるだろうと言う不吉な話、 非正規問題を解決しなければ労働運動の代案がないという、 当然のような話が私たちの周辺にあふれている」と話し、 「結局、この問題の解決法は団結闘争という基本しかなく、 民主労働党もまた院内議会政治活動だけでなく、 労働運動の団結闘争に忠実に臨む」と連帯闘争の意志を闡明した。

非正規連帯会議が闘争の中心に

続いて闘争の挨拶にたった韓国労総非正規連帯会議のイサンウォン議長は 「昨年10月26日の非正規労働者大会で イヨンソク烈士が何故焚身されたのかご存じだろう」とし 「差別のない世の中で人間らしく生きたいという烈士の気持を忘れず、 非正規撤廃、権利保障立法を勝ち取ろう」と決意した。

民主労総非正規連帯会議のパクテギュ議長は 「労働界を完全に無視して非正規改悪案を強行する意思を公然と示す この政府に対抗して、非正規改悪案阻止闘争を展開すべきだという 共感が形成されている」と話した。パクテギュ議長はしかし 「この闘争が改悪阻止に終われば、 非正規職は非正規職として生き続けなければならない。 非正規職撤廃闘争にこの闘いを進むことができるように、 二大労総、民主労働党が意志を駆り立てるように」と要求した。

民主労総非正規連帯会議のオミンギュ事務局長の顔は上気していた。 「さまざまな迂余曲折があったが、 このように正規職と非正規職が1か所に集まったこと自体、胸がいっぱいだ。 これまで正規職労組が非正規職問題に冷たいという批判を受けたのは事実だ。 しかし今度は違う。イスホ委員長の意志がいつもと違って 強硬だということを皮膚で感じている。 非正規連帯会議はこれから闘争本部体系に入り、 ゼネスト闘争はこれから本格的に始まると見なければならない。 今日は前哨戦でしかない。」

実際、非正規連帯会議のヨルリンウリ党占拠籠城は、 多くの非正規正規労働者たちの心揺さぶった。この日の集会場で会った 非正規労働者のチョギョンホ氏(33)は、 「連帯会議の同志たちがヨルリンウリ党の党舎で占拠籠城を行っている間、 終始胸がどきどきした。いつ警察力が投入され、 犬のように引っ張り出されるのかわからない状況だったからだ」と語り、 「それでも政府与党の心臓部に駆け込み、主体の成果を上げたという点で、 とても誇らしかったし、今後は非正規連帯会議を中心に 力強く闘争しなければならないと思った」と話した。

民主労働党ヒラ党員たちの爆発的な参加

今回の非正規職大会で断然目につくのは、民主労働党党員の隊伍だった。 普段、各種の集会で見る数字とはずいぶん違っていた。 しかもソウル地域地区党だけでなく、京畿、江原、釜山等の地区党からも 大挙上京し、この日参加した党員の数は千人に達していた。 労組組合員も非正規職でもない民主労働党のヒラ党員の高い参加率には 党関係者たちも驚いているようだった。 民主労働党の関係者は党員の参加率が高いことについて、 「党で参加を督励したが、これほど多くの党員が来るとは思わなかった。 党員は非正規職問題の深刻性をよく理解しているためではないか」と説明した。

釜山海雲台地区党の常勤、孫ウンスク氏は 「今日未明の3時まで業務をして5時にソウルに出発した。 全国から多くの同志が私のように集会に参加するためにやってきたのだろう。 非正規職問題に対する党員の熱望を党はきちんと受け止めるべきだ」と強調した。

党員だと言う大学生のイミョンヒョン氏は 「ヨルリンウリ党は口さえひらけば非正規職労働者云々と言って 正規職を攻撃するが、こういう重要な行事にはなぜ誰も来ないのか、 非常に気になる」と皮肉ることもした。 午後4時20分、大学路の隊伍は行進を始めた。 宗廟公園までの4.3キロを歩いた。多くの旗とプラカードを持ち、 隊伍の先頭で歩くなじみの顔、 イスホ委員長と段炳浩議員などの姿を見て周囲にいた市民たちがささやいた。

「また民主労総の集会?」 「そうみたいだね。あの人はよく見る顔だけど?」 「韓国労総もいて、ちょっと異常だ。二つは仇敵じゃないか。」 「いや。言うことを聞くと、非正規職デモみたいだ。」 「非正規職問題が深刻だね。本当に大事だ。」

鍾路2街の近くで会った市民チョンオクペ氏(43歳)は 「民主労総、韓国労総は利己的なので好きではない」と顔をしかめたが、 非正規職問題を政府が解決出来ずにいるという点も批判した。 彼は「私の妻の弟が学習誌教師をしているが、 とても生活がつらい。それが四大保険も入れず 働いて病気になって倒れても、会社はなんの責任も負わないという言う。 政府がこういうことを解決するべきだ。」

2004年はもうひとつの1997年

労働界では、今年は1997年のゼネスト政局と驚く程雰囲気がにていると伝える。 1996年末、整理解雇法案が国会でかっぱらい通過し、 全国の労働者の胸に火を付けた。 憤怒はまもなくゼネストに続いた。 今回ももまた非正規法案を政府が出し、あらゆる労働者がそわそわしている。 既にゼネストの決議が出た状況だ。 2法案とも、労働柔軟化と労働者を担保にして 企業の生存を目的としているという点で同じだ。

しかしもちろん違いもある。 不安定労働撤廃連帯のユンエリム事務局長は 「1997年当時の闘争は、法案がかっぱらい通過し、 あらかじめ労働界が準備をする余裕がなかったが、瞬間的に火がついたと言える」 と話す。当時の整理解雇法案自体が正規職労働者にとって 直接の問題だったという点も大きい。 しかし今回の非正規職法案の場合はちょっと違う。 ユン局長は「正規職たちは何となく対岸の火事を見ているような側面がある」 と指摘した。正規職にとって、中長期的には致命的だというのは事実だが、 すぐに自分が解雇されたりはしないということだ。 実際、現在までの正規職労組の決議はあまりにも不十分な水準で、 ゼネストが成功する可能性はゼロに近い。 しかしユン局長は「ゼネストはイベントではなく一つの過程であり、 ゼネストが成功しようが失敗しようが、 準備過程から労働運動の躍動性によって労働者の力量は高揚する。 これからが始まりだ」と説明した。 彼は、今が韓国労働運動史で最も重要な局面のひとつだと断言する。

「30年後に韓国労働運動で最も重要な瞬間を2つ選べと言われれば、 私は1997年と2004年を選ぶでしょう。」

盧武鉉政府は退路を遮断して、労働運動陣営は決死抗戦を決意した。 2004年秋、既に火薬庫に火はついた。 からだが震える緊張感が労働運動陣営を取り巻いている。

2004年11月16日

原文

翻訳/文責:安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2004-11-21 15:42:43 / Last modified on 2005-09-05 08:16:20 Copyright: Default

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