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大運河に死んでいく労働者はどうするのか

[李明博時代展望](4) -つじつまが合わない生涯周期別連携型予防型保健福祉

キム・イン(韓労保連)/ 2007年12月21日14時46分

医療大統領?

今回の大統領選挙で最も苛立たしかったのは、ほとんど毎日医師協から怒涛の ように流れ込む携帯メールメッセージだった。大切な投票権を必ず行使しろと いう携帯メールは、まるで私には投票を拒否する権利さえないかのように感じ させたし、「くるのか? 君たちが最も嫌いな人には絶対投票するな」というと んでもないメールも飛んできた。予想されたとおり、大統領選挙はとてもつま らない結果で終わり、マスコミは連日、李明博の『実用政府』へのさまざまな 評価を垂れ流している。

当選が確定した後、医師協会と病院協会は李明博の当選に祝賀の言葉を送り、 バラ色の未来を描いている。『経済大統領』だけでなく、『医療大統領』になっ てくれと要求して医薬分業を再評価しようといった。これまでは社会主義医療 でとても苦しかったので、自主性に任せてくれと言い、李明博当選者は『医療 関係者の自主性』が重要だと言って『小さい』政府を叫んでいる。

つじつまが合わない保健福祉公約

李明博政府の保健福祉分野の中心的な公約は、『生涯希望プロジェクト』だ。 無住宅新婚夫婦のための住宅供給を増やし、老人たちの3大苦痛である疾病、貧 困、孤独をなくし、ぜい弱階層が大学を受験したり公共機関などに就職する時、 加算点を与えるなど、生涯周期に合わせた保健・福祉の恩恵を与えるという公 約をした。そして、最低限の基本的な医療の恩恵を受けられるように医療安全 網基金を作り、重症患者には医療費を完全に保障する制度を導入して、基礎生 活保障の支援範囲を広げ、死角地帯を解消するという。生涯周期別連携型、予 防型保健福祉サービスを実現するという。

一方、最高の福祉は雇用創出だとし、毎年7%の経済成長率で300万の雇用を作る という。そして保健医療分野を未来戦略産業に育成し、医療産業活性化の障害 になる各種の規制を果敢に撤廃するという。具体的には民間医療保険を活性化 し、健康保険の当用指定制を廃止する一方、病院の営利法の設立を許可すると いう。現在の公共保険システムも全面的に検討し、地域の癌センターを民間の 医療機関に移転する問題についても積極的に検討するという。

ここまでくると、とても理解ができない。なぜこんなに矛盾した公約が堂々と 共存できるのか? 雇用が伸びれば無条件に国民の生活が向上するのではない。 最低賃金水準の雇用は労働貧困(working poor)を増加させるだけで、労働者は 生活の不安定に苦しむことになる。88万ウォン世代という言葉がピキトゥをす る理由をまったく知らないのだろうか?

また保健医療分野は代表的に『市場』のルールが適用されるべきではない分野 だ。医科大学の教科書にも、保健医療は代表的な『市場の失敗』の事例で語ら れる。医療サービスを提供する供給者(病院と医師)の権限が絶対的なので、供 給者自身が需要を創出し(例えば医師が薦める薬や検査を拒否することは容易な ことでない)、消費者のサービス選択の幅は非常に狭いので市場商品には不適だ ということだ。それなのに、李明博政府は医療を『市場』に完全にさし出して やるというのだ。

開け〜金持ちのための医療の世の中?

李明博政府のシナリオによれば、すべての病院が健康保険患者を受け付ける必 要がなくなる。今、私たちが病院に行く時は、必ず医療保険証を持っていくが、 もうそんなことはしなくても良いということだ。もちろん、医療費は高くなる。 だが、民間医療保険があるのでこうした高い医療費も補助され、病院は今やお おっぴらに営利を追求する資格を得たのだから、病院を大きくして、たくさん 金を払える患者だけを受け付ければ良い。面倒な税金を払い、複雑な審査を受 け、健康保険公団から金を受け取るわずらわしさはなくなり、患者から、ある いは保険会社から直接金を受け取れば良い。こうなれば過剰診療だの何だのと 言う論争もなくなり、本当に病院は患者に対して絶対的な権力を振り回せば、 金をかき集める最も重要な産業になるだろう。

金さえあれば、いくらでも設備が良い病院で治療を受けられる。何、今でも 1000万ウォンのCEO総合検診の予約はいっぱいで、受けられない状況だという。 数万ウォンの健康保険公団の成人病検診患者なんか放棄して、金持ちを一人捉 えるほうが、病院としてははるかに利益だ。当然ではないか? だが本当におか しい。福祉公約だと言って生涯周期別連携型予防型保健福祉をして死角地帯を 解消するという公約は、マスコミでもたくさん報じられたが、医療を産業化す るという公約はあまりマスコミに乗らなかった。そして保健政策が専攻ではな い私の不足した知識でも、これは何かつじつまが合わない。

『生涯希望プロジェクト』という李明博政府の福祉公約を実現するには、およ そ11兆ウォンかかるという。ところが、どこにもこの金をどう用意するかとい う公約は全くない。規制を緩和し、企業の税金の負担は減らすと言いながら、 どうやって金を用意するのか? 全国民にたくさんタバコを吸わせ、たくさん酒 を飲ませ、足りない税金を用意するというのか?

また李明博政府は、企業の規制を緩和するといった。だから労働者の健康を担 保する多くの法条項はすべて規制だというレッテルが貼られ、歴史の遺物とし て消えていく。IMF以後、政府は『規制緩和』という名ですでに多くの安全保健 面の法的措置を無力化させた。その後も経済人総連などの使用者団体は『規制 緩和』という名でさらに多くの要求をしてきたし、相当数が貫徹された。彼ら が『左派政府』と批判する盧武鉉政権でさえ、あれだけ活発に形成された『規 制緩和』は『実用政府』という李明博政府では大手を振って闊歩するのは明ら かなようだ。その中で、労働者の健康はどこへ行くのか?

国民にはリップサービス、資本には無限の恩恵

国民のために作ったという保健福祉公約は、予算確保の方案もないまま、ただ 数字を増やせばいいという単純な公約でしかない。全体的な公約とも全く整合 性がない。私には全く現実性がないように思われる。だが、医療を先端産業に 育成するという公約は本当に具体的で、他の経済分野の公約ともぴったり合う。

李明博は明らかだ。国民の票が重要な時、彼は積極的にリップサービスをした。 そして実際の内容は資本を肥やす無限の恩恵を用意した。保健医療の基本概念 も無視し、財源の調達に対する方案も用意しないまま、経済が良くなれば自然 に福祉が良くなると宣伝した。いまや世界11位の経済大国の大韓民国で、あれ ほど罵倒した盧武鉉政権の経済成長率は5%に達し、国民所得はなんとか2万ドル を越えた。ところが、私たちの暮しは何か良くなっただろうか? 経済が良くな れば福祉が良くなるとは、いったいどういう論理なのか。

今日、李明博は2012年までに韓半島(朝鮮半島)大運河を完成するという野心に 充ちた抱負を発表した。経済を生かす悲愴な決意だというが、私には経済が生 き返るなど想像できない。何も経済を知らないからか、私は規制緩和で各種の 建設工事における安全関連の措置が緩和され、大運河を通す数年間に落下し、 滑落し、下敷きになって死んでいく労働者の姿が鮮やかに目に浮かぶ。果たし て何人が死に、怪我をすればその運河ができるのか? そしてその運河ができた 後、またどれほど多くの生態系の生物が死を迎えるのか?

知っていることは保健医療分野の多少の知識しかない私としては、本当に李明 博の公約は十分理解ができない。ほとんどを占める経済公約が本当に『非現実 的』に感じられる。経済の目標は庶民のためだという。だがいくら見ても庶民 どころか、中産層のための公約も見つけられない。いったいなぜこれが調和な のか? 優しい人の目だけに見える公約なのか、私の目にはとても庶民のための 公約とは思えないのだ。リップサービスは適当にしなければリップサービスで はない。過度なリップサービスは詐欺だ。李明博はもう対国民詐欺を止めなけ ればならない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2007-12-27 15:48:30 / Last modified on 2007-12-27 15:48:31 Copyright: Default

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