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FaceBookで『革命』? 監視されるな!

[寄稿]アラブ革命とFaceBook『反』革命

チョ・ドンウォン(メディア運動研究) 2011.03.02 12:09

北アフリカと西アジア全域に広がったアラブの社会変革運動は、まずチュニジアから、さらにエジプトに広がりそうに思われた時、支配言論はこれを 「ジャスミン革命」だけでなく「FaceBook革命」、「ツイッター革命」、 「ウィキリークス革命」と呼んだ。もちろん、社会運動組織と活動家が独裁統治下の 抑圧的なメディア環境から相対的に自由な海外のFaceBookやツイッターなどを 効果的に利用し、デモの組織化と大衆動員を実現したのは事実だ( jadaliyya )。だが、「FaceBook革命」の裏にはFaceBookの『反』革命がある。FaceBookをはじめとするいわゆる『ソーシャルメディア』(social media)は、 社会運動に役立つ以上に、支配権力が蜂起と革命が起きないよう人民を監視するために使われる道具だ。 ソーシャルメディアがいかに政権の監視事業に利用されているのか、いくつかの事例を見てみよう。

FaceBookの実名制

ソーシャルメディアの登場、特にFaceBookでは、全世界にわたり数億の人々が 何が好きか、親しい人は誰かをインターネットで自発的に公開し共有する ネットワーク文化の形成は、監視技術の次元から見ると、画期的と言わざるを得ない。 すべての個人情報とその人脈をすぐ追跡できるように、自発性と自動性が 自然に形成されているからだ。それも実名で、である。FaceBookはオンライン 詐欺のようなサイバー犯罪が起きないようにするために、利用者の保護を期するという理由で利用者に実名の使用を強制している( nytimes )。韓国のように住民番号という便利な統制装置があるわけでもないので、会員 加入時にこれを強制することができないが、誰かが仮名を使っていることが 発覚すれば、サービス約款( facebook )によってアカウントが削除される。 実際、そのようなことがあった( jilliancyork )し、最近のアラブの社会運動の過程でもこれらが問題になった。

アラブ全域にわたる革命の火ぶたを切ったチュニジアで、一番最初に蜂起が起 きた都市であるシディブジッド(Sidi Bouzid)の名前を取った「エスビーズィー・ニュース」(SBZ News) という名のFaceBookページを運営した活動家は、アリ(Ali)という仮名を使ってきた。 チュニジアの悪名高いサイバー警察のオンライン監視を避けるためだった。だがFaceBookは仮名であることを理由に数回、そのページの 接続遮断措置を取り、アリはそれに異議を提起するEメールを送ったが、3週後 に受け取った回答は、彼の旅券をスキャンして送れというものだった( thedailybeast )。

エジプトの民衆蜂起を組織する過程でも、このようなことは起きた。FaceBook に開設された「私たち皆がカレド・サイードだ」( We are all Khaled Said )のページは、エジプトの 民主化デモを革命的状況に分けた1月25日「怒りの日」を組織するために重要な 役割を果たしたものの一つだった。サイード(Khaled Said)は、腐敗した二人の 警官のビデオをブログに上げたため、2010年6月6日に警察の報復性暴力で殺害され、 この話はアルジャジーラの衛星放送でも別の媒体でもなく、まさにこの FaceBookのページを通じて広がった。当時ここに40万以上の『ファン』が加入し、 エジプトのうんざりする独裁政治、腐敗、暴力、貧困を糾弾し、まさにこの オンライン公論の場で1月25日を「怒りの日」として民主化デモを組織し始めた( jadaliyya )。

2010年11月、総選挙が近付き、政府がFaceBookのアクセスを遮断するという噂が流れた。 あいにく選挙当日、FaceBookのこのページは管理者が仮名を使用していることを理由に、FaceBookがアクセスを遮断した。当時このページの管理者は、 その後の「FaceBook革命」に加え、その「革命の英雄」としてあがめられた Googleの役員のワエル・ゴニム(Wael Ghonim)だった。彼が12日間監禁されたのも、 当時エジプト警察が1月25日の怒りの日デモを組織するために活用された FaceBookページで彼の役割を把握したためだった( nytimes )。最大限匿名によるオンライン活動ができなければ、活動家は身辺の安全を維持するのが困難な状況だったが、 FaceBookはサービス約款に違反しているとして実名を要求した。 しかたなく、アメリカに住むエジプト移住民活動家 (Nadine Wahab)が新管理者になり、自発的に実名を使用した後、そのページが復活した( thedailybeast )。実名を提供して管理をすることになったワハブ(Wahab)は、FaceBookの 社会的な責任を要求した:「FaceBookが私たちの個人情報をサイトに書けと言うのなら、 それが政府の手に入らないようにすることが彼らの責任ではないのか?」

このようなことは、エジプトの与党指導者のモハメド・エルバラダイ(Mohamed ElBaradei)を支持する集団のFaceBookページでもあり、チュニジア、シリア、 モロッコ、香港などでもあった( businessweek )。FaceBookは長い間、独自ブランドで「現実の人々のための現実のネットワーク」 (real network for real people)を標榜してきた( jilliancyork )が、そう考えれば、これはつまりインターネット実名制(real name system)の 別の表現だったのだ。チュニジアのアリ(Ali)はこのように話している( thedailybeast ):「FaceBookの管理者はわれわれを助けるべきではないか? …彼らは革命を 支援するより、私たちの個人情報のほうに関心を持っているのか?」 その通り。 つまり、6億の世界の利用者の個人情報による商売で蓄積したFaceBookの市場価値は 何と500億ドル(約56兆ウォン)だというのだから、その通りなのだ。

ユーチューブでの市民(監視)メディア

フリッカーやユーチューブと共に、インターネットで写真や動画を簡単に共有 できるウェブ2.0サービスもまた、社会運動活動家や積極的な市民が広く愛用する オンライン・メディア・プラットホームで、今回の北アフリカと西アジアの 社会変革運動でもこれは例外ではなかった。だが、写真や動画に露出することによる 人権侵害の問題もますます深刻になっている。事実、市民メディアや ユーザー提供コンテンツ(UCC)の拡散は、視覚的再現における人権 - 『視覚的 プライバシー』の問題を抱いている。例えば、2007年秋、ビルマで20年以上 続く軍事独裁政権に対する民衆蜂起があり、情報機関は市民が撮影したデモ現場の 写真と映像を持って行って調査し、デモ者を探し出したことがあった( witness )。

また2009年、イランで不正選挙以後に広がった反政府デモが数週間続いた後に 静まると、警察は本格的にデモ主導者を検挙し始めた。ソーシャルメディアの おかげで、街頭に出たデモ者の顔写真とビデオが活用された。例えばラジァ (Raja)のウェブサイトでは、160人の顔に赤い円が描かれた85の写真がアップロードされたが、 これはほとんどが市民が撮影し、ユーチューブなどにアップロードしたビデオと写真だった( witness )。さらに警察は、デモの現場写真に写った顔を見て、誰が誰なのかを知る 仕事の手伝いをするよう利用者に要請した。警察は『集団知性』の助けで少なくとも 40人を識別し、逮捕することができた( leader-values )。

出処: flickr.com

政治的表現のために自らを撮影した動画が問題になったこともあった。 エジプトの女性活動家、アスマー・マフーズ(Asmaa Mahfouz)が民主化デモに賛同するよう訴えて 自分のブログにアップロードしたビデオは、ユーチューブを通じて広がり、 1月25日「怒りの日」デモが爆発的な変革運動になる触媒になった例と して言及される。だがまさにそのビデオを作った活動家は、その影響力が大き かっただけに、ムバラク体制の擁護者から威嚇された。彼女は当時、執権与党 の国民民主党(NDP)の党員から家から外に出れば家族と共に殺すという殺害威嚇 を受けたのだ( gulfnews )。

こうした事例を見ると、警察がデモ現場で直接採集する不法行為はもちろん、 政治的表現と行動をさらに多くの人々の、さらに多く多様な表現と行動につな げる写真や映像の行動主義メディアも、人権侵害の可能性を抱いているとすれ ば、このように市民メディアが市民監視メディアとして活用される状況につい ての把握と対処が必要だ。

国家のハッキング、ソーシャル(メディア)監視

政府がインターネット利用者の個人情報や対話の内容をみだりに追跡して接近 する事例も頻繁にある。われわれは、「公安と治安を合わせる李明博政権の 『警察国家化』」( hr-oreum ) や、「市民査察」( jinbo )を通じ、 これらの問題を十分体験しているが、アラブ革命の過程も例外ではなかった。 まずチュニジアで高まった反体制デモで切迫した政権は、デモの組織化に活用 されてきた主なサイトを偽装して利用者のアカウントを奪うことさえした。警 察がFaceBook、GoogleのGmail、ヤフーメールのニセのログイン画面を使い、利 用者のアカウント情報を抜き取るフィッシング(phishing)を敢行したのだ( darknet )。前述のように、FaceBookの実名ポリシーにより、人権活動家が危険に直面す ることは頻繁だったが、より多くの人々と対話できるメディアは、それでも FaceBookのようなものだったため、活動家たちはFaceBookを使うことになるが、 この時、秘密警察を避けて、できるだけ身元が露出しないように使ってきた( nytimes )。チュニジア警察は直ちにこのような反体制運動関連のページを運営する活動 家を追跡するために、FaceBookのユーザーアカウントをハッキングするに至っ たのだ。前のアリ(Ali)の場合、仮名を使っていたので避けられたが、他のオン ライン活動家たちは警察に逮捕された( thedailybeast )。FaceBook(実名制)と抑圧的政権が出会った結果は、社会運動活動家や批判的 な声をあげた市民の逮捕と監禁と拷問だった。

警察のフィッシングが政権が没落する状況で行われた反面、日常的にアラブの 独裁政権は主に米国から輸入した先進的な情報技術(IT)により、洗練された方式で インターネットの動向を監視してきた。こうした激変が起きるまで、チュニジアでは インターネット検閲のために『保安コンピュータ』(Secure Computing)というマカーフィー(McAfee)が買収した(今はインテルが買収)米国 企業が提供した『安保』あるいは『保安』技術を使ってきた( businessweek )。また、かつてはイスラエル企業で、今は米国のボーイング社が所有するナラス(Narus)社は、 エジプト・テレコムにパケット盗聴装備を売り、エジプト政府 の監視活動を助けた企業であり( savetheinternetdemocracynow )、大韓民国で2010年初めに問題になった『深層パケット査察』(Deep Packet Inspection、DPI)装備をケイティ(KT)に売ったところでもある( narus;jinbo )。パケット盗聴は、インターネットに流れる内容をフィルターする (content-filtering)技術で、ネットワーク管理者はインターネットと携帯電話 の利用者による特定の内容がルータを通過する時に検査し、追跡できる( techliberation )。

そればかりかナラスはソーシャルメディアの利用者を追跡する技術も開発してきた。 『魂』(Hone)というものだが、これを使って人々の性別、国籍、年齢、 位置、自宅住所、職場住所など、数百万のプロファイルを検索して、統計的に 近い目標対象を捜し出せる。魂(Hone)はまた、ノートブックや携帯電話のような モバイル機器を使う人の位置も追跡することができる( itworld )。これは大韓民国で政府と大企業が4万2千余りのインターネット掲示板を リアルタイムで監視しているという、そのモニタリング システムを連想させる。

2009年、イランの反体制デモの時もフィンランドとドイツの合弁ベンチャー・ キャピタルのノキア・シーメンス(Nokia Siemens)が、イランの情報通信部に オンライン活動家を追跡して投獄する時に使える技術を売ったことがある( democracynow )。このように、社会運動と民衆蜂起を弾圧し、抑圧するための情報(監視)技術の 開発と販売は、米国政府と軍産複合体が各国政府と協力してきたという 大きな脈絡の中で形成された。エジプトでデモ隊に発砲された催涙弾と警察および 軍隊が使用した各種のデモ鎮圧武器は、ほとんどが米国の軍需産業体( Combined Systems International )が製造、輸出したものだ( commondreams )。

「Made in U.S.A.」 (出処:News Pictures/MCP / Rex Features @ telegraph.co.uk )

米国製の催涙弾と、FaceBookの実名制やその利用者を監視するモニタ・ システムは、政治的脈絡では大きく違わない。

テロリストだった革命家、監視ツールとしての革命的メディア

したがって、アラブの変革運動過程と(ソーシャル)メディア行動主義での 驚くべき事実とは、それがFaceBookやツイッターによって可能だったということではなく、 そうしたソーシャル・メディアによる政権と企業の監視と統制と弾圧 にもかかわらず、結局、民衆蜂起と社会変革に至ったという点だ。実際に国家 権力のあらゆる弾圧と抑圧を突破し、それと共に殴打、監禁、拷問、虐殺の 途方もない犠牲と苦痛をあじわいながら、結局体制を押し倒し、革命を止めなかった 人民の闘争は、あらためて偉大だ。

わずか数週前までは、米国政府とエジプトのムバラク政権は、同盟国であることを 疑わなかった( aljazeera )。そうした同盟関係の中で、ナラスのような企業が販売した監視技術商品を利用し、 米国とアラブの独裁者たちは「テロリストと犯罪者」( techliberation )がインターネットと携帯電話を利用して体制を転覆する試みを防ぐための安保 活動をしてきた。民衆蜂起と体制変革につながる運動にならなかったとすれば、 テロリストや犯罪者だった人々( aljazeera )だ。彼らが現在、米国の支配メディアの報道でさえ、民主主義の革命家として 描写されているのは、なんとも逆説的だ。同じように、この社会変革運動を 組織するために適切に活用されたとしても、それ以上に、民主主義と人権と社会 正義を監視し、統制するために、活動家と市民を捕まえる技術として活用された FaceBookを、「FaceBook革命」と呼び、この運動を命名するのも本当に逆説的だ。 それは、何よりも数年から数十年間、この革命が組織される過程で犠牲 になった多くの人々の前に恥ずかしいことである。(提携=人権オルム)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-03-02 20:37:40 / Last modified on 2011-03-03 13:23:24 Copyright: Default

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