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俳優パン・ミンジョンの7年、「被害者の人生が壊れてはいけない」

[3・8女性デー特別企画インタビュー(5)]日常を回復するための『2次加害』との戦い

ユン・ジヨン記者 2021.03.08 07:55

「もう少し固くなるつもりです。 被害者の人生が加害者のために壊れてはいけないでしょう。」

俳優のパン・ミンジョン氏が話した。 突然崩れ落ちた日常の中で心をぐっと引き締めて、そのうちに絶望して、 また勇気を出して、そのようにして歩いてきた時間が7年になって行く。 事件の発端だった性暴力事件、それから派生した2次加害事件と名誉毀損事件など、 数え切れない訴訟で完璧に勝利したが、偽りの誹謗と歪曲、フェイク・ニュースが 彼女の日常をまた引き下ろした。 もう終わりだと思ったが、いつのまにかまた出発点に立つその絶望感はどのようだろうか。

1月15日、別名「チョ・ドクジェ性暴力事件」の加害者、 チョ・ドクジェ氏が名誉毀損と侮辱などの容疑で懲役1年を宣告されて法廷拘束された。 2018年に大法院が性暴力事件に有罪判決を出したが、被害者のパン氏を誹謗し続け、 虚偽事実を流布し続けてきたためだ。 元の性暴力事件ほどにバン氏を困らせてきたのは、 加害者とその側近、そしてマスコミの2次加害だった。 チョ氏が拘束された後、パン・ミンジョン氏は自分のSNSに 「もう過去から進んで現在を踏んで、未来に向かって進みたい」と明らかにした。

映画撮影の現場で性的自己決定権を認めなければならないという最初の判決と、 報道機関と加害者および側近の2次加害も厳罰に処されるという判例を残した彼女の戦いは、 全て記録されるだろうか。 今はスクリーンとブラウン管、そして舞台の上で観客と会うことになる 「俳優パン・ミンジョン」と会った。

▲俳優パン・ミンジョン[出処:パン・ミンジョン インスタ]

「被害者に対する2次加害が日常に戻るのを防ぎました。」

「私はただ被害を認められて日常を完全に回復したかっただけなんです。 ところが法的に被害を認められたのに、 初めは判決文がまるで白紙の切れはしのような気がしました。 加害者の動きがとても典型的だったからです。 加害行為を否定するだけでなく、人々を動員して被害者に歪んだイメージをおおいかぶせ、 フェイク・ニュースを広めて被害者をえぐり取る方式ですね。 そのために多くの女性が被害の訴えに迷います。 私もまた加害者から同じ被害をこうむりましたし。」

事件が発生したのは今から7年前の2015年4月だった。 映画の撮影場でチョ氏から性暴力被害を受けたが、チョ氏は謝罪を翻意した。 撮影期間中、製作会社代表と所属会社の代表、映画関係者は事件を揉み消そうとし続けた。 結局、その年の5月、パン氏は単独で警察署を訪れて被害事実を申告した。 だがチョ氏はむしろパン氏を名誉毀損と誣告容疑で告訴した。 パン氏に対して5千万ウォンの損害賠償を請求する民事訴訟も提起した。 翌年12月、検察はチョ氏に懲役5年を求刑したが、 1審裁判所はチョ氏に無罪判決を下した。 当時の行動が「業務上の行為」なので性暴力は成立しないという最悪の誤った判断だった。

だが事件発生から2年後の2017年10月、控訴審で判決がひっくり返った。 1審と違い、事件の映像を審理したことが決定的な影響を与えた。 裁判所はチョ氏の行為が「正当な撮影で行われた行為とは見られない」とし、有罪を認めた。 チョ氏には懲役1年と執行猶予2年、40時間の性暴力治療プログラム履修を命令した。 2019年9月、大法院もチョ氏の上告を棄却して2審確定判決をした。 その年の5月の民事訴訟裁判でもチョ氏が提起した5千万ウォンの損害賠償請求を棄却し、 パン氏に3千万ウォンを賠償しろという判決が出された。 何と4年もの法的な争いでパン氏は完全に勝訴した。 こうしていわゆる「チョ・ドクジェ性暴力事件」は終わるべきだった。

だが性暴力事件で派生した無数の2次加害でパン氏は困難に陥った。 チョ氏の側近は報道機関に就職してパン氏に恐喝、カプチル(パワハラ)、詐欺、蛮行などのイメージをおおいかぶせるフェイク・ニュースを作った。 チョ氏はインターネットに虚偽事実を流布してパン氏が虚偽陳述をしたと追い込んだ。 マスコミはこれらすべての加害行為を書き写して世論裁判を主導した。 インターネットのコメント欄にはパン氏に対する侮辱と人身攻撃があふれた。 「変われますか?」パン氏が尋ねる。

▲俳優パン・ミンジョン[出処:ミニョンヨン作家]

「2審裁判終わって加害者がまるで被害者であるかのようにマスコミの記者会見をした時、 私は性犯罪被害者で身辺保護を受けている状態でした。 心理的に不安で、直接出ることもできませんでした。 その時、マスコミから加害者側の主張を伝える記事があふれました。 世論は糊塗され、事実関係を知らない人から途方もない誹謗中傷で苦しみました。 とても苦痛でした。数年間、本当に多くの誹謗中傷に苦しみました。 誹謗中傷を見るたびに、まるで槌で頭を殴られるような苦痛に苦しみました。 これよりも激しい誹謗中傷はないだろう、だから私は強くなったのだろう、と考えながら、 振り返ってみるとその水準をはるかに超える別の悪性コメントが私を攻撃しました。
言論は変われますか? 事件が起きる前、マスコミは事実関係が証明された内容だけを報道すると考えていました。 深く検証された記事だと考えていました。 それでマスコミで報道された全てを信じていました。 しかしフェイク・ニュースの被害者になって、もうマスコミを信頼することが難しくなったんです。 その上、一部のマスコミは性犯罪被害事件に対しても誤報を出しました。 事件が深刻化して、言論人権センターで言論被害公益訴訟を進めようといいました。 訴訟のために慎重になったか、数年経って関心が下がったからかよくわかりませんが、 以前ほどに刺激的な報道は減りました。 それでも私は報道機関と大衆が変わるだろうと信じたいです。 相変らず問題意識を感じて、深く取材する報道機関があるからです。」

「職場で生存します。相変らず自分の場所にいることを見せます。」

パン氏は加害者とその側近、マスコミ、アクプラー(低劣なコメントをつける人)など、 多くの2次加害に対する被害も認められた。 2018年には加害者の側近で虚偽の記事を流布してきたイ・ジェポと、その運転手出身のキム某記者が拘束された。 事件を歪曲報道した報道機関は記事を削除して謝罪文を掲示した。 2020年11月には裁判所が記事に虚偽事実を指摘した5つの報道機関を相手に名誉毀損の責任を問うた。 その年の6月には大法院の判決後にもパン氏を誹謗し続けてきたチョ氏に 「2次加害掲示物を書き込むな」という裁判所の判決も出てきた。 だがその後もチョ氏はYouTube等を通じてパン氏に対する誹謗と虚偽事実を流布し、 結局1月15日に法廷拘束された。

パン氏は多くの2次加害の被害者だった。 7年の歳月の間、2次加害に対抗してきたのは、 それが日常を回復する唯一の道だったためだ。 あらゆる虚偽事実と誹謗は「俳優パン・ミンジョン」というイメージを傷つけた。 十年以上積み重ねてきた俳優としての履歴に懐疑感が積もった。 被害を申告した代価はあまり大きかった。 業界で孤立させられ、仕事は少なくなった。 俳優を諦めようと思いIT会社に就職もした。 だがいくらも経たないうちに彼女はまた元の場所に戻った。 悪いのは自分ではないから。 自分の人生が加害者のために壊れるのを見ていることはできないから。

▲俳優パン・ミンジョン[出処:ミニョンヨン作家]

「私はやっと話す勇気ができました。 しかし私が事実関係を話せば『もう聞きたくない』と言います。 勇気を出して話そうとすれば『君は裁判で勝ったではないか』といいます。 しかし加害者の刺激的な話はおもしろがります。 そうして加害者の嘘が私への先入観と否定的なイメージを作りました。 日常に戻れませんでした。 仕事がなかったですから。 ミーティングもする前にだめです。 『なぜだめなのですか?』と聞くと『別に』ですね。
こんな話も聞きました。 『チョ・ドクジェも生きていかなければならない』という。 それでは私は? 被害者は死ななければならないのですか? 被害者に『君は死んだまま暮らせ』と言えるですか? 加害者が生き残る方法は、被害者を誹謗することしかないのでしょうか? 犯罪を起こした人がみんなそうして暮らすわけではないでしょう。 私は加害者の攻撃に対応しただけなのです。 加害者のために人生が壊れたまま暮らすことはできませんから。 これまでの人生らが、壊れた日常がとても惜しいです。 もう加害者から抜け出して、日常を回復して自分の生活を送りたいです。」

小さいときから内省的で静かな性格だった。 演技を通して別の生活を送ってみたかった。 作品では主に個性があって強いイメージのキャラクターを引き受けた。 自分と違う人物の人生を表現するのはとても楽しく魅力的なことだった。 大学の時期を入れて20年間、休まず演技をした。 また大学で学生に演技指導をして、もうひとつのわずかな幸福を感じた。 そのうちに性暴力事件を体験した。 最初は「生きたい」と思い、次に学生を思い出した。 被害に沈黙すればこれから彼らに何を話せるだろうか。 被害を受けた時に我慢しろと、そして沈黙しろと話せるだろうか。

事件の後、映画の現場に性犯罪や性教育に関する教育マニュアルが備えられたという話を聞いた。 誰かがパン氏に話した。 あなたのために撮影前にリハーサルや教育のようなものをしなければならない、と。 彼女はこうした過程が面倒なものかのように皮肉に話したが、 パン氏は「とても幸いですね。うまくいきました」とうれしく答えた。 その時間が無駄にならなかったという安堵感を感じた。 そしてそれは長い戦いを耐え忍ぶ力になった。 もうパン氏はもっと堂々とした姿で変わった現場に戻りたい。 数年間、失っていた彼女の日常が全て回復することを。 そしてしばらく忘れられた「俳優パン・ミンジョン」という名を スクリーンとブラウン管と舞台でもっとしばしば出会えるようになることを。

「昨年まで『私はなぜこのようにみじめな生活を送っているだろうか』と考えました。 新年にはずいぶん泣いたりもしましたし。 しかし今は肯定的なマインドで生きようとしています。 長い時間でもありましたが、真実は明らかになったし、 また私を応援する人々がいるからです。 時々女性の人たちからメッセージがきます。 被害女性は私によって勇気を出すといいます。 またある人は『生きていてくれてありがとう』と言います。 男性の方々からもさらに多くの応援のメッセージがきます。 ありがたい人々が多いです。
大法院判決後、俳優のイ・ジェヨン先輩が 『より良い映画現場のために映画界の変化が必要だ:撮影過程で発生する性暴力事件を中心に』記者会見に直接参加して、 映画界の現場について発言をしてくれました。 その時は、この性犯罪事件に対する偏向的な記事と世論が多かった時なので、 容易ではなかったはずなのに。先輩俳優として、 また男性俳優として問題意識を感じて勇気ある発言をしてくれて本当にありがとうございました。
貴重な人々と私の時間を失いたくありません。 私の人生が加害者によって壊れたり、自殺するようにしてはいけないと考えます。 加害者のおかげで被害者が職場から追い出されてもいけません。 私は自分の職場で生存する人になります。 自分の場所にそのままいるということを見せるでしょう。 まだ加害者と2次加害関連事件の訴訟が残っていて、 積極的に仕事を探せる状態ではありませんが、 少しずつ、一歩ずつ進む姿をお見せします。」

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2021-03-13 14:41:12 / Last modified on 2021-03-13 14:41:12 Copyright: Default

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