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重大災害法、「労災予防効果的」 vs 「安全改善効果なし」

国会法司委、公聴会を開いて専門家4人から意見聴取

パク・タソル記者 2020.12.02 15:28

23年間、OECD国家の中で労災死亡1位を記録する大韓民国では、 毎日6人の労働者が産業現場で死ぬ。 危険を外注化したために死亡者は、ほとんどが下請労働者だ。 昨年、産業安全保健法が改正されたが、労災はなかなか減らない。 このような労災は、労働者の生命だけでなく、 市民の健康と生命まで威嚇しており、 労働組合や市民社会団体は口をそろえて重大災害企業処罰法の導入を要求している。

現在国会に発議されている関連法案は総3本。 民主党の朴柱民(パク・チュミン)・李誕熙(イ・タニ)議員と 正義党の姜恩美(カン・ウンミ)議員がそれぞれ制定案を発議した。 故キム・ヨンギュン労働者の母でキム・ヨンギュン財団理事長のキム・ミスク氏は、 国民同意請願を利用して重大災害企業処罰法制定を行い、 10万人以上の同意を得て該当法案が国会に回付された。

国会法制司法委員会は12月2日「重大災害法制定に関する公聴会」を開いた。 法司委委員らは労災を含む重大な災害が発生した時、 事業主の責任を強く問う重大災害企業処罰法の導入について専門家の意見を聴取した。 この日の公聴会は、尹昊重(ユン・ホジュン)法制司法委員長の謝罪を要求して、 法司委ボイコットを宣言した国民の力の議員はいないままで進められた。

重大災害企業処罰法の導入が必要だと主張する専門家は、 これまで労災で企業主が処罰されず、平均500万ウォン以下の少額の罰金しか払わないため、 企業主と企業の責任と処罰水位を上げれば労災を減らすのに効果的だろうと強調した。 反対に重大災害企業処罰法導入に反対する専門家は、 該当法案が刑法の明確性の原則、責任主義原則を違反する素地が大きく、 安全問題の改善にもあまり役に立たないと主張した。

危険の外注化が改善できる VS 安全改善効果はない

[出処:国会放送キャプチャー]

公聴会に参加した建国大のキム・ジェユン教授は 「危険を作る主体が誰であれ、その危険の責任を負わなければならないという基本原則が実行されなければならない」とし 「重大災害企業処罰法をぜひ通過させなければならない」と明らかにした。 キム教授は「重大災害は労働者個人の単純な過失ではなく、 予防管理ができない企業の犯罪」だとし、 「多数の人を死傷に至らせた場合、 企業それ自体に刑事責任を問う特別法制定が必要だ」と明らかにした。

キム教授はまた英国の企業過失致死法のように、 重大災害企業処罰法が危険の外注化問題を解決するための助けになると見通した。 彼は「英国では企業過失致死法と保健安全法により、 元請・下請とは無関係に危険を作った主体を処罰している。 危険の外注化問題を解決するために企業過失致死法が相当な役割を果たしている」とし、 「重大災害処罰法でも請負および委託関係で安全措置および保健措置義務の帰属規定があるのに、 元請・下請無関係に危険を作る主体は誰でもその危険についての責任を負わなければならないという原則を貫徹させる 肯定的な役割になる」と期待した。

しかしソウル科学技術大学安全工学科のチョン・ジヌ教授は 「重大災害企業処罰法は刑法の明確性の原則、責任主義原則を違反する余地が多く、 実効性の面でも労災の減少に役に立たないだろう」と反論した。 チョン教授は「不明確でまともな行動基準を提示できない安全関連法規が多い。 その状態で厳罰にすれば、いわれのない人々、 特に中小企業が処罰される可能性が非常に高い」と憂慮した。 続いて現行の産業安全法を精巧に整える『正常化』作業を先行させろと主張した。

チョン教授はまた 「キム・ヨンギュン法だと言って2018年末に労災による処罰を大幅強化する側に産業安全法が改正され、 多くの労災問題が解決されると予想したが、 今年9月までを見れば政府が一番気を遣っていた建設業で死亡災害が20%増加した」とし 「こうした事実を基礎として見ると、 (処罰強化が災害減少につながらない部分が)ある程度実証されたものと見られる」とも話した。

企業主は故意犯? 過失犯?

放送通信大学法学科のチェ・ジョンハク教授は、 産業安全法の限界により特別法の制定が必要だと主張した。 チェ教授は「産業安全法の場合、伝統的な刑事法的な法理が適用されるので、 犯罪の結果に対して直接原因を提供した現場行為者の処罰だけに焦点が合わされている。 せいぜい現場の管理責任者が処罰されるのがすべてだ。 だが現代の企業は規模が大きく、意志決定が構造化され分散化されているので、 実質的な責任がある企業経営者、企業自体に犯罪結果の関与行為、 関与行為がその結果に与えた因果関係を立証することは事実上不可能だ」と話した。 続いて「企業と企業経営者の産安法違反の犯罪を企業犯罪としての安全犯罪として見る視角の転換が必要だ」とし 「単純な刑量強化ではなく、 安全犯罪に対して構造的な責任を認めることをいうことで、 構造的な責任は企業と企業経営者が持つ」と強調した。

チェ教授は労災統計資料を発表して 「刑事処罰を強化する必要がある」とも指摘した。 労災統計を調べると、実刑が宣告されるのは2.93%、 平均罰金額は個人が420万ウォン、法人が447万ウォンで軽微な水準だった。 彼は自然人としての経営者を処罰することが労災を防ぐためにとても効果的だと指摘した。 彼は「経営者の処罰は企業犯罪を予防するためにとても重要な核心的な役割になる。 企業をいくら処罰しても、罰金でしか処罰できず、 罰金額も高くないので結局誰も責任を取らない状況が生まれる。 韓国の状況がこれをよく見せる」と経営者の処罰強化が必要な理由を説明した。

しかし韓国経営者総協会のイム・ウテク安全保健本部長は 「産業安全法関連の犯罪は過失犯の形態だと考える」とし 「過失犯に下限刑の有期懲役と罰金を賦課することと、 偶然に相当部分が起因する被害者の数で加重される競合犯特例は過剰禁止の原則に反すると考える」と話した。

イム本部長はまた、中小企業が最大の被害を受けるとも憂慮した。 彼は「安全管理を徹底している大企業さえ、この法案を適用すれば時処罰から自由になれない。 昨年、ほとんどの死亡事故が300人未満の事業場で94.4%、 50人未満の事業場で77.2%が発生している。 中小企業の場合、財政力、人手不足で苛酷な処罰になり、企業の存立自体が危うくなると見られる」と話した。

「企業主、企業に対する処罰、過度な刑罰ではない」

金才允教授は 処罰が過度だという主張に対して 「こうした意見は事業主と経営責任者などに賦課された責任を 一般的な過失犯の責任として誤認するところから始まった」とし 「事業主は安全保健措置義務に違反し、 これを通じて重い結果で人を死傷に至らせた結果的な過重犯」と指摘した。

キム教授は「法人、経営責任者などに3年以上の懲役、 5千万ウォン以上10億ウォン以下の罰金を賦課することが 全体的な刑事法体系で法適用を比較すれば過度ではないと考える」とし 「法人に賦課される1億ウォン以上20億ウォン以下の罰金も実際に見れば、 2013年から2017年までに法人に賦課された罰金額は448万ウォンに過ぎなかった」 とも指摘した。

キム教授はまた責任原則に違反するのではないかという主張に対しても反論した。 キム教授は「企業に対する罰金が1億ウォンから、 昨年の産業安全法改正で10億ウォン以下で大幅に引き上げられた。 しかし企業と事業主が持っている資金力、資本を考えると、 10億ウォン以下の罰金刑規定は一般予防効果が殆どない」とし 「現行の両罰規定は直接行為者だけを処罰しており、 経営に実質的な安全責任がある代表理事、理事などが責任の主体義務の主体ではなく 処罰されないという処罰の空白がある。 この空白を埋め、高位経営者に義務の主体であることを明確にすることが 責任の原則に違反するとは考えない」と明らかにした。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-12-07 22:17:33 / Last modified on 2020-12-07 22:17:33 Copyright: Default

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