本文の先頭へ
韓国:『溶鉱炉青年』は『企業殺人』..だが加害者はどこに?
Home 検索

『溶鉱炉青年』は『企業殺人』..だが加害者はどこに?

「企業主には軽い処罰、企業殺人法を制定しろ」

ユン・ジヨン記者 2010.09.15 15:50

9月7日、忠南、唐津郡にあるファニョン鉄鋼で労働者の金某氏(29)が溶鉱炉に 転落して死亡した事件を契機に、労災死亡対策作りの声が高まっている。

特にネチズンの間で追悼詩をはじめとする追慕銅像建立署名などの動きが起き ており、労災死の議論は当分続きそうだ。民主労総、保健医療団体連合、労働 健康連帯など11の労働、市民社会団体も9月15日午前、清渓川のソラ広場で記者 会見を行い、政府の再発防止対策を要求した。

大韓民国は労災共和国?

世論は『溶鉱炉青年』事件に対して『単純事故』を越えた『労災事故』と見て いる。これは金氏の勤労環境には深夜労働、交代勤務、労働災害などの社会問 題が集約的に現れているためだ。特に、これまで隠されてきた労働者の労災事 故が浮き彫りになったことで労災に対する政府と使用者の粗末な対処が問題視 されている。

現在、大韓民国はOECD国家の中で労災死亡率1位を誇る。2009年一年間に労災で 死亡した労働者は2181人にのぼる。つまり一日に6人が労災で死亡している。溶 鉱炉青年のような30歳未満の労働者の死亡も2009年には、132人を記録した。

特にファニョン鉄鋼などが属する『金属材料品製造業』分野の状況はさらに深 刻だ。この業種での災害率と死亡万人率は平均より2〜3倍高いためだ。2009年 の雇用労働部の労災統計によれば、『金属材料品製造業』労災率は1.53、死亡 万人率は3.27だった。全事業場の平均災害率が0.72%、死亡万人率が1.92%であ るのと較べると、この業種に従事する労働者は一般労働者より2倍以上負傷した り死亡しているのだ。

進歩新党のノ・フェチャン代表は「韓国では平日だけで一日10人以上の労災事 故死亡者が発生するが、いくら戦争をしても一日に10人以上死ぬのは難しい」 とし「恥辱の記録を持つ大韓民国は、この構造化された現実をどう変えればい いのか考えない」と批判した。

『労災は殺人』..だが加害者はどこに?

高い労災死亡率にも政府は相変らず対策作りに消極的で、該当事業主への処罰 も軽い。特にファニョン鉄鋼は事故の2週間前に地方労働庁の点検を受けたとい う事実が知らされ、労働庁の不良安全点検が問題になっている。当時の点検は ガス配管設備などが対象で、溶鉱炉周辺施設は点検対象に含まれなかった。

また雇用労働部天安支庁は6月7日から799の事業場に産業安全実態点検を行った が、ファニョン鉄鋼は点検対象から除かれていた。そのため労働環境健康研究 所のイム・サンヒョク所長は「労働部の産業安全実態などの調査がめちゃくちゃ であることを知りつつ、また調査を要求する現実がとてもみじめだ」と吐露した。

それだけでなく、事業主の処罰が軽く、事故の一次的原因を提供した会社が刑 事処罰を受けるかどうかもわからない。2009年1月から2010年6月まで製鋼、製 鉄事業場で労災で死亡した事件は8件だが、起訴は5件に終わった。そのうち実 質的な責任者の処罰で一段落したケースはやっと1〜2件に過ぎない。責任者に 刑事処罰が適用されても、関連者は下位職の安全管理者などで終わるケースも 多い。

保健医療団体連合のウ・ソッキュン政策室長は、「純利益だけで年間470億ウォ ンにのぼるファニョン鉄鋼で、10万ウォンのフェンスがなく、青年労働者が死 亡した」とし「これがなぜ犯罪ではないのか」と声を高めた。続いて「今回の 事件のような重大災害や未必の故意の災害に対して高位役員の責任を問わなけ れば労災事故1位国家という汚名は続く」と忠告した。

民主労働党のホン・ヒドク議員も企業主の処罰を強化せよと主張した。彼は 「他の先進国のように企業殺人法を制定し、死亡事故に限り高位責任当事者を 刑事処罰する法がなければ恥辱の現実を変えられない」と主張した。

また記者会見団は、「相次いで発生する労災死亡事故にもかかわらず、現実が 改善されない理由は、雇用労働部のことなかれ政策と行政がその原因」とし、 △労働部はファニョン鉄鋼全面調査を実施して企業主を処罰すること、△企業 殺人法を制定して労災死亡企業主を処罰すること、△労災問題の根本的な解決 対策をたてることを要求した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-09-16 20:38:02 / Last modified on 2010-09-16 20:38:03 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について