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安全保健情報は秘密にできない

[企画連載]サムスン作業環境測定結果報告書非公開裁決批判(3)

コンユ・ジョンオク(職業環境医学科医師) 2018.10.09 10:11

[編集者の言葉] 去る8月23日、中央行政審判委員会がサムスン電子など3つの系列社が提起した 「作業環境測定結果報告書情報公開決定取り消し請求」行政審判事件のうち、 主要争点事案をすべて非公開と決定したことでまた問題になっています。 しかし法律専門家、産業保健専門家、パノルリムの活動家らはこうした行政審判の結果は不当であり、 営業秘密よりも生命健康権の情報への知る権利が優先されるべきだと要求します。 そのためチャムセサンはなぜサムスンの安全情報が公開されなければならないのか、彼らの声を4回にわたり連載します。 今回の企画連載はOhmyNews、プレシアン、民衆の声にも共同掲載されます。

[連載順序]

  1. サムスンの私益より知る権利…「知る権利は生きる権利だ」 |イ・サンス(パノルリム常任活動家)
  2. 労働者の生命を放棄した中央行政審判委員会|シム・ジェソプ弁護士(民主弁護士会労働委員会)
  3. 安全保健情報は秘密にできない|コンユ・ジョンオク(職業環境医学科医師)
  4. サムスン作業環境測定報告書が核心技術と言えない理由|ユン・チュンシク(ソウル大学校保健大学院)

▲去る4日市民社会団体が作測報告書非公開裁決の取り消しのために行政訴訟を提起して記者会見を開いた。筆者も記者会見に参加した。(一番右)[出処:パノルリム]

情報公開法による知る権利

雇用労働部が保管しているサムスンの作業環境測定結果報告書は、 公共機関の情報公開に関する法(以下情報公開法)によって誰もが要請して受け取ることができる情報だ。 この法は、政府などの公共機関が作ったり保有する情報を社会構成員に公開することを基本原則とする。

この原則には例外もある。 国家安保に関連していたり、営業秘密や個人情報など保護する価値がある場合には公開要請に応じなくても良い。 しかしこのうち、営業秘密の場合はまた「例外の例外」が決められている。 安全と健康に関する情報なら、いくら営業秘密であっても公開要請を拒否できないように。

では作業環境測定結果報告書はどんな情報なのか。 労働者健康保護と職業病予防のために作業環境をモニターした結果を含む報告書だ。 雇用労働部に報告する書式も産業安全保健法により決まっている。 文字通り安全と健康に関連する情報だ。 作業環境測定結果報告書への知る権利が保障されるべき理由として、さらにどんな言葉が必要だろうか。

知る権利を保障すれば国がほろびるとは

サムスンの立場は正反対だ。 情報公開法に反しても作業環境測定結果報告書は隠さなければならない。 なぜか。営業秘密があるためだ。 専門家や裁判所が見るには営業秘密がないとしても、「業界の人」ならこの資料から営業秘密を知ることができる。 特に外国の競争企業はこれらの情報を組み合わせてサムスンの核心技術を解明する。 そうなれば韓国の国家経済全体が脅かされる。 一行に要約すれば 「情報公開法により作業環境測定結果報告書を人々に提供すれば国がほろびる」というのがサムスンの論理だ。

では知る権利を要求した市民は国家経済を風前の灯にする売国奴なのか。 情報要請が正当だと判決した判事、裁判所の判決により知る権利を保障すると約束した雇用労働部は国益を威嚇する者だということか。 一企業の作業環境測定結果報告書を公開して国家経済が危険になるのなら、 それはどんな国家でそれがどんな経済なのか。

もしサムスンの言葉が事実なら

百歩譲って、サムスンの主張が事実だとしよう。 作業環境測定結果報告書に営業秘密や核心技術に該当する内容が含まれていて、 人々が作業環境測定結果報告書からサムスンの核心技術を見ることができ、 これらの情報が外国の競争企業に流出できるとしよう。

このように仮定すれば始めて作業環境測定結果報告書公開議論の「本質」が明らかになる。 ここで質問はもう少し鋭くなる。 「企業の利益に支障が生じる蓋然性がかなり高いとすれば、 社会構成員の情報接近権を制限してもいいのか?」 つまり、この情報への接近権を保障した時と制限した時に、 各々誰がどんな得をして、誰にどんな問題が発生するのかを天秤にかけなければならないという価値判断の質問が残る。

安全保健情報は決して秘密にできない

去る9月、スイスのジュネーブで開かれた第39次国連人権理事会に 有害物質露出と労働者人権に大韓報告書(A/HRC/39/48)が提出された。 この報告書では 「知る権利こそ健康権の基礎」だとし、 その重要性を国際人権基準を使って説明している。

たとえば事業主は使用化学物質の名前とその健康影響を事前に知らせずに働かせるが、 これは「事前同意を受けずに行う人体実験」と違わない。 その上、労働者に作業の危険をまったく知らせなかったので、 危険作業を回避したり拒否する権利も二重に侵害されたわけだ。 また事業主が労働者にきちんと情報を伝えなければ 法的な「詐欺」あるいは「欺瞞」と見ることができ、 各種の国際協約が禁じている「強制労働」とも見なされる。

この報告書は企業の営業秘密の主張が労働者の知る権利の実現にとって「持続的な障害」であり、 作業場の安全保健改善、被害の補償、製品や工程の改善などを先送りし続ける伝家の宝刀として使われたと批判する。 そして15項目の労働者人権保護原則の一つとして 「毒性物質に対する安全保健情報は決して機密にされてはならない」と宣言している。

作業環境測定報告書は公開されなければならない

国際人権基準の視点で見ると、 作業環境測定結果報告書に営業秘密や国家核心技術が入っているかどうかは全く重要ではない。 そのため本当にだから作業環境測定結果報告書に営業秘密が入っているかどうかを調べるために 難しい判定基準や手続きを用意する必要はない。 もし企業の利益に支障が生じる蓋然性がかなり高いとしても、 こうした資料は絶対に機密にしてはならないという明確な立場が必要なだけだ。

再度強調するが、この立場は 「社会構成員の情報接近権を保障するには問題が発生するかもしれない」と認める。 たとえば企業に損失を与えるかもしれず、 該当業界の核心技術が流出するかもしれないということは否定しないが、 それを理由に安全保健情報に対する知る権利を制限することはないという立場をいう。

「国家核心技術」ではなく「国家核心価値」を問う試験台

国家次元でこうした国際人権基準に沿った立場をたてるには、 その社会の核心価値が生命と安全、人権にしっかり根をおいていなければならない。 言い替えれば、サムスン作業環境測定結果報告書に対する知る権利の問題は それぞれの主導者が今の韓国社会の核心価値をどこに置いているのか計る試験台とも言える。

産業通商資源部、中央行政審判委員会、そしてサムスンは この報告書に「国家核心技術」が含まれているので社会構成員の知る権利を制限しても サムスンの輸出実績や市場占有率など、 彼らが考える「国家核心価値」を保護するという立場だ。

労働者、市民社会はサムスンの営業利益に若干の支障を招いても、 健康権と生命権の基礎となる知る権利を保障することが 現在要求される「国家核心価値」に近いという立場だ。

ではあなたはどちらか。 あなたにとって現在の韓国社会の核心価値とは何か。

〈10月4日の記者会見映像[出処:メディア・ポック]〉

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-10-11 08:58:27 / Last modified on 2018-10-11 23:31:15 Copyright: Default

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