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「サムスンは聞け、私たちは廃棄物ではない」彼らの理由ある連帯

無力な者たちの一番力強い連帯、サムスン被害者と障害者が手を握る

ハ・グムチョル記者 2015.11.09 11:49

「光化門が一番好きです。 そこは本当に高価な土地なんです。 障害者が通りやすいようにエレベーターもあって、 障害者用トイレも一番整っています。 それよりも一番重要な私たちの自負心は、青瓦台と一番近いということです。 本当にいい場所を捉えました」 (パク・キョンソク全国障害者差別撤廃連帯常任代表)

「私たちも本当に自慢は多いんだけど。 そのうえ江南駅8番出口、『駅勢圏』なんです。 こここそ5つ星級ホテルでしょう。 私たちもそんな自尊心があります。 国内で一番高い地価、24時間国内最高の保安チーム『エスワン』が守ってくれて、 毛穴やうぶ毛まで写るサムスンテックウィンの広角カメラと一緒です。」 (ソン・ジヌ パノルリム活動家)

自分がいる土地の方が高くて良いとか、あれこれ自慢をならべるが、 彼らが誇っているのは暖かい家ではない。 過ぎ行く人々の足音と自動車の警笛の音が骨の髄まで染みこんでくるセメントとアスファルトの通り。 都心の摩天楼に囲まれて、みすぼらしくさえ見える所。 まさに座込場だ。

▲サムスン職業病問題の社会的解決のためのリレートーク38日目。パク・キョンソク全国障害者差別撤廃連帯常任代表が連帯した。[出処:ビーマイナー]

11月5日午後7時、何と1173日間も光化門駅の地下歩道で障害等級制・扶養義務制廃止のために戦っている全国障害者差別撤廃連帯(以下、全障連)の活動家らが、 サムスン電子瑞草社屋の前で30日間座り込みを続けているパノルリムの座込場を訪れた。 サムスン職業病問題の社会的解決のためのリレートーク38日目。 光化門と江南、わが国で一番強い集団の青瓦台とサムスンを目前に置く場所で苦しい戦いを続けている、一番無力な者たちが手を取り合う場であった。

#彼らはなぜ江南駅8番出口に「5つ星級ホテル」を作ったのか?

2007年、白血病で死亡した労働者、故ファン・ユミ氏の労災認定のための戦いが始まってから、 サムスン職業病被害者の戦いはすでに8年を超える。 その時から2015年9月現在まで、サムスン半導体のLCD工程で働いて、 ガン、白血病、難治性疾患になったと情報を提供した人だけで217人に達する。 すでに亡くなった人も72人だ。

パノルリムは粘り強く工場の有害環境と安全装備の不備などが疾患の原因だったと主張したが、 勤労福祉公団とサムスンは労災認定を拒否した。 そのうちに昨年始め、「もうひとつの約束」が封切られてこの問題が社会的関心に浮上し、 サムスン電子の権五鉉(クォン・オヒョン)副会長は 「サムスン電子が成長する過程で『苦痛をあじわわれた方々』を粗末に扱った点に謝罪申し上げる」と明らかにし、 被害者との本格交渉に入った。

サムスン側の謝罪で順調に見えた交渉過程はしかし、昨年末から急変する。 一部の被害家族で構成された家族対策委とサムスン側がキム・ジヒョン前大法官を委員長とする『白血病など疾患発病と関連した問題解決のための調停委員会(以下、調停委員会)』の構成を強行したのだ。 調停委員会は、パノルリムと家族対策委、サムスン側がそれぞれ提示した意見に基づいて困難な論議の末に今年の7月に調停勧告案を出した。 サムスンが1000億を寄付して独立した公益法人を設立し、 これを通じて、補償と予防対策を実現するという内容が核心だった。 補償対象もまた白血病、乳ガン、脳腫瘍など、既存の労災承認の経歴がある疾患だけでなく、 各種の難病も含む方案を提示した。

パノルリムなど市民社会では補償対象と補償水準には不十分な点があるが、 これを社会的な議論の出発点だと感じ、調停勧告案を受け入れることにした。 しかしサムスンは結局、調停勧告案さえ拒否し、9月に一方的に補償委員会を設置して自分たちが決めた基準による申請者に限り、被害補償を執行すると明らかにした。

それに続いたのはサムスンの反撃。 企業側寄りの指向を持つマスコミは、サムスンが被害者補償という「度量が大きな決断」をしたと大々的に報道し始め、 サムスンの補償案を拒否するパノルリムには「意地悪」をしていると猛非難を浴びせた。 その一方でサムスンは被害家族に補償を執行しつつ、これから一切の民事・刑事上の異議を提起せず、 合意書に関するすべての事実の秘密維持の「確約」を受けた。 これに反すれば、受領した補償金を返還しなければならないと釘をさした。

謝罪と反省をすべきサムスンは、相変らず権力をふりまわし、 力があるマスコミもすべて背を向けた。 今やパノルリムと被害者家族が立つ場所は通りだけ。 結局彼らは10月7日、江南駅8番出口の前に自分たちだけの「5つ星級ホテル」を作り、座り込みに突入したのだ。

▲サムスン職業病問題の社会的解決のためのパノルリム座込場[出処:ビーマイナー]

#とても似ている彼ら、サムスンと福祉部

何年もサムスンに献身して働いたのに、ある者は名もなく死んでいき、 ある者は一生を抱えていかなければならない病気と障害を得た。 本当の謝罪と責任ある補償、再発防止対策を要求し、 スチロール一枚敷いて冷たい街に出てきたが、 彼らを出迎えたのはサムスンの責任者ではなくサムスン王国を守る監視カメラだけだった。 サムスンの前で彼らは完全な「廃棄物」になった。

彼らの気持ちを一番よくわかるのは、誰がなんと言っても同じ境遇に置かれた人々だろう。 自分はこの社会の「廃棄物」だと言うパク・キョンソク全障連常任代表は、 障害者とサムスン職業病被害者が互いに違わないと強調した。

「私たちが2000年代初期、地下鉄にエレベーターを設置してほしいとソウル市を訪問したら、何と言われたか分かりますか? 検討してみる、ですって。 それで、いつまで検討するかと聞くと『いつまで検討するかも検討してみる』と言うのです。 いつもこんな調子です。 障害者は社会で一緒に暮らす必要はなく、投資する価値がない存在、つまり『廃棄物』と感じていて、施設のようなところに閉じ込めようとするんです。 そうすればとても美しい姿になります。 非障害者が施設に行ってボランティアもして、便も拭いてあげて。 こうしたものをわれわれは『愛』、『奉仕』と呼びます。 そんなところにはまさにサムスンが後援もする。」

「では非障害者の労働問題はどうでしょうか? サムスンで一生懸命働いて障害を受けたのに、結局彼らを廃棄物扱いしています。 そうでなければ正規職から非正規職に、非正規職から日雇いにと落ちて行きます。 このように私たちすべてが彼らによって廃棄物化されるのです。」

パク代表の説明は、自然に1000日以上戦っている障害等級制についての話になる。 障害者はこの社会では廃棄物だから、彼らが望む人生とは何か、 欲求が何なのかなどは重要ではない。 必要なことは彼らの声を聞くことではなく、彼らの表面的な姿を見て分類することだ。 それでできたのがまさに障害等級制だ。 彼らが持つ身体の損傷がどの程度なのかによって1〜6級に分類し、機械的にサービスを配分する。

もちろん福祉部はこの手続きは障害が激しくて多くのサービスを必要とする人にさらに多くのものが回るようにするためだと説明する。 しかしこの制度は障害者の人生を具体的に見るのではなく、機械的にからだの不自由な程度だけを問うだけで、 ただでさえとても不足したサービスの量で、障害者らどうしが互いに取り合いで争わせるとパク代表は強調した。

こうした説明に対して ソン・ジヌ活動家も自然に相槌を打つ。

「話を聞いてみると、私たちが体験していることとあまりにも同じです。 サムスンがわずかな補償をすると発表し、しにかく被害者が電話で申請しろと言います。 補償の額の審査基準は彼らが適当に決めて、この病気はいくら、あの病気はいくら、 そんな調子でくれるということです。」

▲サムスン職業病問題の社会的な解決のための座り込みに障害者活動家が共にしている。[出処:ビーマイナー]

このように、サムスンと福祉部は似た弱点が多い。 彼らは自分を「家族」だ、「友人」だと言う。 サムスンの宣伝文句は「もうひとつの家族」であり、 福祉部は「あなたの一生の友人」である。 誰かの人生を廃棄物として処理することに汲々とする彼らが「家族」であり、「友人」だって? パク代表は、こうした偽善的なサムスンと福祉部に向かって唾を飛ばす実践をしようと声を高めた。

「サムスンが騒いでいることの一つが児童、老人、貧困階層にそれなりに福祉事業をしているそうです。 それは彼らの富と較べればとても少ないが、それも受け取る人には大きいでしょう。 しかしそれを与えて、サムスンが叫ぶスローガンがどんなものだか分かりますか? 「小さな分かち合い、大きな愛」ですよ。 いや、しかしなぜ「大きな分かち合い、小さな愛」にしないのでしょう? それと共に昨年は障害者義務雇用率も守らず、莫大な雇用分担金を払いました。 そんな偽善的なサムスンの態度に唾を飛ばすという姿勢で、われわれは障害者義務雇用ぐらいはちゃんと守れと闘争をするのです。」

#「雨乞いをする気持ちで... 必ず勝利する!」

サムスンが欺瞞的な補償案で被害労働者を分断していることについても、 彼らは不自由なからだを率いてサムスン社屋の前に来て自分の声を上げることを止めなかった。

1995年、サムスンLCD工場に入社したハン・ヘギョン(37)氏はソルダークリームとアセトンなどを扱い、6年間ハンダ付けの業務をして生理不順、無月経などの健康異常が生じたため、 2001年退社して2005年に脳腫瘍の判定を受けた。 今はその後遺症で視力、歩行、言語などに障害がある。 彼女は10月17日に座込場を訪れたバスケット・トゥンカット国連人権特別報告官と会い、 被害の状況を説明した。

1997年にサムスンLCD工場に入社したキム・ミソン(36)氏は、アセトン、アルコールなどを使ってLCDパネルを拭くOLB工程と、ハンダ付け作業をするタブ・ソルダー工程で働き、 3年後に指が動かず歩みがおかしくなる症状になった。 診断の結果、10万人に3人程度がかかるという多発性硬化症だった。 退社後も症状が何回か目に発生し、今では1級視覚障害者だ。 彼女は1か月に2回もリレートークに出てきてサムスンの謝罪と補償を要求した。

▲9月21日、サムスン白血病問題の社会的解決のためのリレートーク1日目に被害者キム・ミソン(中央)さんが出てきて証言した。[出処:ビーマイナー]

その他にも多くの被害者がこの一か月間、一番冷たく孤独な「5つ星級ホテル」を訪問し、 今後もサムスンのきちんとした補償と再発防止を要求するために、さらに多い人が訪れる予定だ。 その孤独でつらい時間に耐えなければならない彼らに対し、 パク・キョンソク代表は「座り込みの先輩」として、一番弱い者だからこその一番力強い激励の言葉をかけた。

「なぜ雨乞いをするのか分かりますか? 雨が降れと祈るわけです。 しかし、あるインディアンの雨乞いはいつも成功するそうです。 雨が降るまで雨乞いを続けるからです。 彼らの雨乞いは一度も失敗したことがありません。 そんな気持ちで闘争しましょう。 闘争を始めたら必ず勝利するという気持ちで。 韓国で一番力が強いサムスンと対決する皆さんがとても誇らしいです。」

付記
ハ・グムチョル記者はビーマイナーの記者です。この記事はビーマイナーにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-11-10 01:22:37 / Last modified on 2015-11-10 01:22:38 Copyright: Default

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