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韓国:サムスン労働者投身自殺から37日、菊の花が枯れた
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サムスン労働者投身自殺から37日、菊の花が枯れた

労働部と警察、一か月結論出せず

チョン・ジェウン記者 2011.02.17 09:28

サムスン電子LCD天安工場で故キム・ジュヒョン(26歳)氏が業務ストレスによる 憂鬱症を病み、結局、寄宿舎で投身自殺してから2月16日で37日になる。

遺族は順天郷大学校の天安病院葬儀場で少しずつ変わって行くジュヒョン氏の 遺体と向き合っている。とても変わってしまった息子とは会えないというジュ ヒョン氏の父親キム・ミョンボク(57歳)氏は、枯れていく菊の花の横で涙を流す。

投身自殺の真相究明、なぜ長びくのか?

遺族は生業もたたみ、葬儀も行えないまま飛び回っている。サムスンがジュヒョ ン氏の死について責任を認め、謝罪しろと天安工場とソウルのサムスン電子前 での1人デモはもちろん、市民社会団体、忠南地域労働界と連帯して、記者会見、 面談、集会もした。

しかし、雇用労働部天安支庁と牙山警察署は、遺族が嘆願書と陳情書を出して から1か月が過ぎても何の結論も出せずにいる。労働部と警察の調査と捜査は、 ジュヒョン氏の死の真相究明をするための最も基礎的な資料だ。

こうした状況により、遺族と市民社会団体、忠南地域労働界は2月16日午後2時 30分、労働部天安支庁前で集会を開き、労働部がサムスンの労働法違反内容を 迅速かつ徹底的に捜査し、サムスンを処罰しろと要求した。

パノルリムのイ・ジョンナン労務士は「労働部は、サムスン側からの資料さえ 確保できなかった。遺族が葬儀も行えず苦しい戦いをしているのに、労働部は 手をこまねいている。労働部が事態の深刻性を理解すべきだ」と指摘した。

サムスン白血病忠南対策委のソン・チュンジャ執行委員長は「すべての官公所 がサムスンの手中にあるようだ」とし「遺族の要求はとても基本的だ。サムス ンの謝罪と再発防止対策、労働部と警察の徹底した捜査だ」と声を高めた。

[出処:厳ミョンファン現場記者]

社会党忠南道党のキム・ヨンギ委員長は「サムスンと警察は、事件の根本的な 原因を探さず、ジュヒョン氏の死を個人的な自殺に追い込んでいる。サムスン が存在する限り、韓国の人権と民主主義は実現されない」と話した。

ジュヒョン氏の父親キム・ミョンボク氏は、「世の中で最も悲劇的なのは子供 が父母より先に冥土へ行く事だ」と鬱憤を放ち、自ら書いた文を朗読した。

サムスン、「各種の法に違反」

遺族と市民社会団体は、サムスンが勤労基準法と産業安全保健法に違反してい ると提起した。

勤労契約書では、ジュヒョン氏は1日8時間、週5日勤務をすることになっている が、実際には1日12時間、長ければ14時間の長時間労働に苦しんでいた。食事も 抜いて働くほどで、休憩時間もまともに享受できず、休日もきちんと休めなかっ たと家族と同僚は一貫して陳述している。

また、遺族はジュヒョン氏が気圧が高いLCD工場内のクリーンルーム設備エンジ ニアで、整備作業の過程で使われる有機溶剤と設備内に残留する感光剤、洗浄 剤、オゾンなどのさまざまな化学物質に露出し、皮膚病が悪化したと主張した。 これによりジュヒョン氏は昨年9月、非ライン部署に転職した。

したがって、週40時間働いていたのでもなく、産業安全保健法の第46条(および 産安法施行令第32条の8)の有害危険事業場の労働者に適用される週34時間、1日 6時間の限度で働いていたのでもない。勤労基準法だけでなく、産業安全保健法 にも違反しているという主張が可能になることだ。

また遺族は、業務上のストレスで今後3か月間の薬品治療が必要という神経精神 科の主治医の所見と、もっと休むべきだという社内の医師などの医学的所見が あったのに、サムスン側はジュヒョン氏を無理に復職させたとし、産業安全保 健法、第45条、疾病者の勤労禁止条項に違反したと指摘した。

寄宿舎の使用についても「寄宿舎まで会社側の徹底した統制と管理を受けた』 とし、勤労基準法違反を提起した。勤労基準法の寄宿舎関連規定によれば、 『使用者は事業または事業場の付属寄宿舎に寄宿する勤労者の私生活の自由を 侵害することはできず、寄宿舎の規則も作成』しなければならない。

労働部、現場調査もせずサムスンの言葉だけ?

故人が37日間、葬儀場から出られず、各種の法違反が提起されているのに、 労働部の真相調査は遅々として進まない。

16日の集会の後、労働部との面談で遺族と市民社会団体は、労働部は事案の重 大さを認識し、早く事件を調査し、形式的な調査ではいけないと再度強調した。

しかし面談で確認した結果、労働部はまだ現場の調査もしておらず、サムスン 側の回答だけに依存しているようだった。例えば遺族は、勤務時間を証明する ために『社員証出入記録電算資料』と『CCTV映像資料』を確保することを要請 したが、労働部の担当勤労監督官は、「サムスン側が社員証による出入記録に は時間が記録されず、出入資格の要件しかチェックしていないと話した」と答 えた。遺族が現場調査をしたかと抗議すると、勤労監督官は「まだ事業場に入 れない」と話すだけだった。

キム・ミノ労務士は「社員証出入記録の電算資料で時間が確認できないという のはサムスンの苦しい弁明だ」とし「サムスンは会社の正門からすべての建物 の出入口、その上、建物内部のすべての部処の出入口にさえ社員証をコンピュー タ端末で認識させなければ出入できず、あちこちにCCTVが設置されている」と 指摘した。

また、遺族が提起した化学物質に関する資料、寄宿舎関連の資料なども不十分 だった。

これに関連して、労働部の勤労改善課長は「まず、陳情人と会社側を調査した。 サムスン側に書類を補完して今日まで提出しろといったが、明日までに提出す るといった。検討して判断する」とし「できるだけ早く処理しようと努力して いる」と話した。(記事提携=メディア忠清)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


サムスンで投身自殺した故キム・ジュヒョンの父の手紙

「世の中で一番悲劇的なことは子供が先に冥土に行くこと」

キム・ミョンボク 2011.02.17 09:33

[編集者注]サムスン電子LCD天安工場の故キム・ジュヒョン(26歳)氏が業務のストレスで憂鬱症を病み、ついに寄宿舎から投身自殺して16日で37日になる。父親のキム・ミョンボク(46歳)氏は自分で書いた文を泣きながら朗読した。この日、遺族と市民社会団体、忠南地域労働界は集会を開き、労働部がサムスンの労働法違反の内容を迅速に徹底的に調査しろと主張した。キム・ミョンボク氏の全文をのせる。

常に労働者の仲間のために尽す皆さんの前に、こうして悲痛さを抱いてここに 立ちました。私は、皆さんもご存知のように、1月11日にサムスン電子天安LCD 事業場で設備エンジニアとして働き、湯井寄宿舎から投身自殺した今年27歳に なるキム・ジュヒョンの父です。

世の中で一番悲劇的なことは子供が父母より先に冥土に行く事です。人生にお いて、これよりも悲劇的で悲痛なことが果たしてあるでしょうか。

しかし私はこの悲劇的で悲痛なことを経験した父です。ここにいる、いや世の 中すべての両親は、絶対に私のような悲痛で、悲劇的な、このようなことがお きなくなることを懇々と祈っています。

今回のことでさらに悲痛なことは、ここに来て、前にもサムスンではこのよう なことがしばしばあったということです。しかしほとんどは私のように子供を 持つ人たちは、全く知らずに世の中を生きてきました。

本当にここが大韓民国なのでしょうか! 皆さんに聞きたいです。ただサムスン で働けば、出世したかのように自慢した私自身が罪人です。

ここにきている民主労総の関係者の皆さん!
サムスンの労働者がどのように 働いているのか深く考えてみましたか。これではいけません。大学を卒業した 息子のジュヒョンが長時間の労働と化学物質を取り扱う作業場と劣悪な寄宿舎 の施設で生活してきたことを、私は本当に想像できませんでした。

本当にこうしたことがサムスンが言う超一流企業でしょうか。さらには今回の 事件で、私はサムスン、労働部、警察、とてもよく結ばれた協力者たちだとい うことを、はっきりと知りました。

民主労総の関係者の皆さん。今からでもジュヒョンのように、若者たちがこん な劣悪な環境と化学物質が入り乱れたサムスンの電子現場で、何も言わずに働 いています。そんな若者たちを私たちが救い出さなければなりません。私は、 はっきり見て、感じました。労働部は絶対にこうした若者のことを考えて保護 してくれません。皆さん、サムスンにもてあそばれる国家機関を私たちが信じ られますか。今この時間にも、労働者のために職務を遂行すべき労働部の公務員 は、今もサムスンの顔色をうかがっています。

まさにそんなところが皆さんと私が暮す大韓民国です。今からでも、大韓民国 でジュヒョンのような多くの若い労働者たちがひっそりと死んでいっています。 皆さん、私たちが彼らを救い出さなければなりません。

労働部で働く公職者の皆さん。あなた方も家庭があり、子供がいます。いつ あなた方の子供にも起きるかわからないということを胸に深く銘じなければな りません。天安労働支庁よ、サムスンの一部署にならず、労働者のことを考え なければなりません。

警察には、もうこれ以上言及したくありません。警察はサムスンより先に立っ て遺族を欺瞞しています。

最後にまたサムスンに要求します。ジュヒョンの死について公開で謝罪して、 遺族に真心から頭を下げ、謝罪するように願います。

ジュヒョンを守ってもやれなかった罪深い父より。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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