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韓国:基礎生活保障制度10年を無にする勤労能力判定制度
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なぜ勤労能力判定を?

[寄稿]基礎生活保障制度10年を無にする勤労能力判定制度

イ・ヘギョン(貧困社会連帯)/ 2010年02月18日18時35分

意見収斂手続きもなく強行された勤労能力判定制

「勤労能力評価の基準などに関する規定」は、昨年12月21日に立法予告案が告 示されて23日まで意見を収斂、今年1月1日からせわしく施行された。そして施 行1か月で保健福祉家族部は、『基礎生活受給者、診断書を発給する意思および 活動能力評価を担当する公務員から提起された問題を改善・補完しようとする』 として勤労能力判定改正案を発表した。

事実、勤労能力判定制は、12月21日に告示された時から活動能力評価基準の粗 悪さと、何よりも人権侵害的な要素により、多くの社会団体から問題が提起さ れてきた。社会団体は12月末、基礎保障管理団長との懇談会の席で数か月間で も施行を保留し、その間に専門家と社会団体などとの議論で問題を解決し、受 給権者の権利が保障される方向で案を用意しようと提案をした。だが管理団長 はそれまで数人の受給者を対象に模擬評価を行ったが何の問題もなく、またす でに一線の社会福祉士の教育が終わっており医師協会にもすでに伝えられた状 態だとし、団体の提案を拒否していた。

そのような保健福祉家族部が2月10日、国家人権委の改正勧告決定に対して2月 12日に勤労能力評価の基準などに関する告示改正案を発表した。保健福祉家族 部は、遅くはあるが改正の意志を示したのは幸いだと思う。だが今回の改正案 は最も問題になった活動能力評価基準のいくつかの表現だけを変えたものに過 ぎず、むしろ欺瞞的な案といえる。

問題の本質を解決できない改正立法予告案

まず医学的評価基準はむしろより改悪された。11に分れた疾患で勤労能力完全 喪失疾患項目がすべて削除され、基準を具体化したのではなく進入障壁を高め る方向で強化した。現在、障害認定で障害等級を低くしている状況を考慮すれ ば問題はさらに深刻だ。

そして施行1ケ月間、町役場では受給(権)者への十分な説明もなく病院で診断書 の代わりに勤労能力評価用診断書を作成するようにした。しかし基礎保障管理 団の大言壮語と違い、きちんと伝えられていない医者がこれを診断書と認めず、 拒否する事例が発生しており、受給(権)者だけが中間で右往左往して需給の権利 を保証されず生計が威嚇されている。

活動能力評価基準は、貧困層を社会的烙印化する人権侵害要素の表現を変えた だけの水準なので、怒りを禁じえない。客観的な指標にするという活動能力評 価基準は『悪い、良い、やや低い、やや高い、普通、やや〜』など、さらに曖 昧な表現も並んでいる。国家人権委の改正勧告案も指摘するように、医学専門 家でもなく、心理相談専門家でもない、何でもない社会福祉担当者が多くの受 給者をこの基準で勤労能力の評価をするのは、社会福祉担当者の労働強度をさ らに高め、むしろ客観性を下げるだろう。

そして施行の過程での問題もまた予想通りだった。まず需給権利の当事者であ る受給(権)者に、勤労能力判定制への十分な共有が形成されなかった。昨年始 め、一般受給者の大量強制転換当時もこの部分は大きな問題になった。しかし 今回も十分な説明や意見収斂の手続きなく施行された勤労能力判定制が、文書 一枚で受給(権)者には何も分からない。

医学的評価をすべき医者にも勤労能力判定制がきちんと共有されず、受給(権) 者は勤労能力評価用診断書を白紙状態にされるほかはなかった。問題はこれに より需給の権利を保証されず、生計を威嚇される状況だということだ。

▲国家人権委の前で勤労能力判定基準糾弾記者会見を行っている貧民団体たち(2010.1.13) [出処:貧困社会連帯]

勤労能力の有無を他人が判断すること自体が問題

今回の改正案はかぼちゃに筋を入れてスイカだというような行為としか言えな い。不正受給者を防ぐために勤労能力を判定するという今回の発想自体はすで に貧困層を労働を望まないモラルハザード者という前提で、だから労働が生活 の希望ではなく懲罰的手段として機能しているのだ。このような前提で作られ た勤労能力判定制は表現を変えて解決するものではなく、廃止すべきだ。

すでに基礎生活保障権利探し行動をはじめとするさまざまな団体が指摘するよ うに、勤労能力有無を受給(権)者自身ではない他人が判断すること自体が間違っ た発想だ。勤労能力の有無を『勤労意欲、集中力、就職の可能性』等、個人だ けに問うてはならず、働ける社会的条件と環境が用意されたのかも同時に問わ れなければならない。似たような身体的条件を持つ個人でも、どんな労働かに より勤労能力有無が違うこともあり、身体的条件が不十分でも労働したければ 労働能力がある。すなわち勤労能力有無は受給(権)者自身が判断して選択する べきだ。そして政府と社会は受給(権)者が平等に勤労能力を判断して選択でき るように条件と環境を用意しなければならない。

真に受給権者の自活を支援して人間らしい人生を保障するために基礎生活保障 法が存在し、勤労能力判定制を実施するのなら、勤労奨励税制など自活を促進 して支援する方式で考えられなければならない。自活奨励金を削減するなどの 受給権者の労働を認めず、最低生計費にも満たない現金給与は自活の意志を助 けるどころか失なわせるだけだ。

また保健福祉家族部は不正受給者の索出に血眼になるのでなく、400万人に達す る基礎法死角地帯にある貧困層に需給の権利が保障される方案も共に悩まなけ ればならない。このような保健福祉家族部の事業方向は李明博政権が執権初期 から見せた金持ちだけの政策意志としか見られない。親庶民、民生安定などの スローガンが乱発されるだけで貧困層の生が良くなるどころか死を強要してい るのが現政権の政策であり、今回の勤労能力判定制の導入もまたそういう背景 から始まったと見られる。

勤労能力判定制は即刻撤回されなければならない

今回の国家人権委改正勧告決定と保健福祉家族部の改正意志に歓迎の意を伝え つつ、繰り返し保健福祉家族部に要求する。施行一か月で多くの問題が随所で 発生している勤労能力判定制は、直ちに撤回されなければならない。さらには これが多くの受給(権)者に影響を及ぼす問題だけに、さらに合理的な受給権選 定方案を作らなければならない。

基礎生活保障制度施行10年をむかえ、基礎生活保障制度を評価する作業も社会 的になされなければならない。受給(権)者、社会団体、社会福祉担当者、医学 など各分野専門家の十分な意見収斂と議論により共に評価し、これに基づいて 基礎法死角地帯を順次解消していくと同時に、合理的な受給権選定方案を共に 模索していかなければならない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-02-20 04:31:02 / Last modified on 2010-02-20 04:31:05 Copyright: Default

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