韓国:龍山惨事裁判で弱点を表わした警察特殊部隊 | |
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龍山惨事裁判で弱点を表わした警察特殊部隊[記者の目]現場の危険状況に対処できず、指揮部は安易
キム・ヨンウク記者
batblue@jinbo.net / 2009年10月16日10時45分
警察特殊部隊による1月20日の竜山撤去民櫓座り込み鎮圧作戦は、失敗した作戦 だった。テロリストでもない平凡な入居者を相手にした作戦だったが、撤去民 5人と特殊部隊員1人が尊い命を失った。 ソウル地方警察庁のキム・スジョン前次長をはじめとする警察指揮部は、特殊 部隊投入の正当性について、機動隊より特殊部隊のほうが迅速で安全に鎮圧が できると裁判で主張した。警察指揮部が主張するように、さらに安全なはずの 特殊部隊投入がなぜこれほど多くの人命被害を出したのだろうか? 9月15日から 本格的にソウル中央地法刑事合議27部(部長判事ハン・ヤンソク)が進めた警察 特殊部隊証人尋問の過程には作戦失敗の原因が相当部分あらわれた。 また裁判が進むほど、警察特殊部隊作戦の弱点も露出した。労働者庶民が生存 権を主張するデモの現場で交渉を仲裁するよりも、警察特殊部隊投入をする方 が適切なのかという点も、韓国社会が新しく検討すべき課題として登場した。
指揮部と隊員の無線交信断絶の中、危険物質放置 特殊部隊作戦の弱点は、指揮部と櫓を指揮する梯隊長の間でさえまったく無線 交信がなかったという指揮部自らの主張にある。パク・サムボク特殊部隊長は、 1次進入の時に櫓内部に火事が起きた事実も知らなかったと証言した。1次進入 の時点、2次進入の時点も知らなかった。特殊部隊の特性上、作戦が始まると干 渉しないためだという。同じように、鎮圧全体を指揮したキム・スジョン次長 も全く知らなかったと主張した。しかし知らなかったで済む問題ではない。作 戦は、入居者と特殊部隊員1人を殺す結果になったからだ。櫓の外で見える危険 千万な状況で、指揮部と特殊部隊が内部の状況をきちんと調べ、迅速な鎮圧を 強調するだけでなければ、結果は違っていただろう。 当時、櫓鎮圧作戦に投入された特殊部隊員の証言には『こうしていれば』とい う作戦遂行の惜しみが多かった。裁判の証人に出てきた特殊部隊1梯隊のある隊 員は、弁護人が『はやく鎮圧するとしておかしな状況なのに2次進入に入ったの ではないのか?』という尋問に「私が指揮官なら、そうした状況では進入を保留 する。しかし指揮官は外にいて、状況を追い立てていたのでそうしたのだろう」 と話した。 特殊部隊員は、1次進入後8-10分程度の時間があったが、櫓内部のセノックスを 確認しようともしなかったと話した。シンナーのようなものが流れたのを見た という隊員の証言はあったが、誰も閉鎖された櫓中で油の蒸気が充満するとは 考えなかった。その上、特殊部隊は櫓内部に発電機がある事実も全く知らなかった。 これはパク・サムボク特殊部隊長が前日の夜11時に確認したセノックス20リッ トル缶60本があるという情報報告を『隊員が寝ている時間で、特に知らせなかっ た』という証言でわかるように、決定的な問題になった。シン・某1梯隊長も 「2次進入過程で油をかけるのを見たが、放水銃と水が流れ続け、床に火がつか なかったのを見て、安全に問題はないと考えた」とセノックス対策は全くたて ていなかったことがわかった。 特殊部隊員は、作戦投入前に二回の特殊部隊教育があったが、セノックスの蒸 気についての教育は受けておらず、基礎常識もなかった。ただ火炎瓶があるの で安全に留意しろということが全てだった。2次櫓進入当時、多くの隊員が危険 と嘔吐、はなはだしくは幻覚増税まで感じるほど、油の蒸気が充満していたが、 隊員は無線でも互いに危険を確認したり警告しなかった。 隊員は『危険だと考えたり無線で報告する気はなかったか』という弁護人の質 問に、一様に「特殊部隊は最大限早い鎮圧が目的で、そんなことは考えなかっ た」と話した。安全に籠城者を解散させるより迅速な鎮圧の方が優先されたと いうことだ。ある隊員は「はやく鎮圧しなければならないが、退けば長期化す るので、砦だと思って最後まで行った。特殊部隊は危険な状況を克服して退く ことはない」と話した。 テロ犯でもないが、迅速鎮圧強迫に駆られていた特殊部隊員
この日の入居者鎮圧が最大限迅速でなければならなかったのかという点も相変 らず議論がある。今回の作戦が、凶器で人質の命を威嚇する凶悪犯や爆弾テロ 犯など、直ちに人命殺傷につながる一触即発の状況で、迅速さを要する作戦な ら危険が感知されても特殊部隊の特性上、退くのは難しい。しかし行けと言わ れれば行く特殊部隊の強靭さが、むしろ今回の作戦では大惨事の原因になった。 入居者が自分の権利を主張する座込み場で行うような作戦なのかは疑問に残る。 すでに1次進入の時に大きな火が起きた後だったが、撤去民以外、警察は誰も危 険を警告しなかった。建物の屋上に直接投入されて作戦を指揮した1梯隊長も、 櫓の内部状況を調べなかった。1梯隊長は「安全で迅速な検挙が主目的で、細か く周辺を調べろとは言われなかった」と証言した。 特殊部隊投入を決めた指揮部の問題はさらに大きい。証人に立った警察指揮部 の証言のとおりなら、指揮部は全国撤去民連合についての誤った情報と先入観 により、特殊部隊の早期投入を決めた。以前、他の地域の撤去闘争現場で、た だ暴力組織としか考えず、長期化すると思ったという。また、櫓が作られたの が漢江路の道路周辺で、通過する車両と通行人が危険だったという。 しかし全撤連の櫓座り込みは、訳もなく戦うためではなく、再開発組合と区庁 を交渉テーブルに引き出す一つの交渉戦術だ。今まで全撤連の櫓で大きな闘い があったのは、交渉ではなく用役業者が物理力で櫓を解体しようとしたためだ。 14日に証人に立った撤去民チョン・ヨンシン氏は「組合は私たちとの交渉より、 用役を動員して追い出そうとした。用役の暴力に苦しんでも、警察は私たちを 保護してくれないので全撤連に加入した」と明らかにした。 10月6日に証人になったイ・ミョンソン カラーTVリポーターは「警察と用役が 刺激しなければ座り込み者たちは火炎瓶を投げなかった」と証言した。通行す る市民への無差別な投擲ではなく、自己防御的な手段として火炎瓶を投げたと いうことだ。 交渉を斡旋しようとしたソウル地方警察庁の情報係刑事も「一度も交渉ができ ず、こんな結果になって残念だ」と話した。 証人に出てきた民主労働党竜山地域委員会のナム・ギムン副委員長は「今回の 悲劇を防ぐ社会的機制は多かったが、合意の努力もなく、それを導き出さなかっ た。合意過程が必ずなければならない」と指摘した。 特殊部隊を労働現場に投入することが適切なのかの社会的議論も必要 今回の裁判過程であらわれた特殊部隊投入現場に対する社会的合意も、新しく 議論する必要が提起されている。パク・サムボク特殊部隊長によれば、特別な テロがない韓国での特殊部隊投入は、人質事件の他はほとんどが労使紛糾現場 だった。特に2007年には櫓座り込みでもないニューコア・イーランド座込み場 の強制解散、2008年キリュンのムニョン足場の座り込み強制鎮圧、コルトコル テック本社占拠座込み場などの現場は機動隊の出動でも十分な労使紛糾現場だっ た。これらの紛糾現場には火炎瓶や石は全くなく、横断幕しかない所だ。 こうした現場にも特殊部隊が投入された理由は、安全な迅速鎮圧だ。問題はこ れらの現場はすべて平和な労使対話を望んでいた所だ。ほとんどの座り込み者 は激しい抵抗をしなかった所だ。問題はここでも発生した。こうした座込み場 に投入された経験だけで、特殊部隊員は今回の龍山4区域座り込みにも慣性的に 対応したということだ。パク・サムボク特殊部隊長は「普通、他の現場では、 特殊部隊の公務執行の指示に従っていた。ここも事実上従うべきだが激しかっ た」と主張した。以前の状況と大きく違う方式の抵抗があっても、作戦の間に 交渉など他の方式の解散努力は全くしないのは、特殊部隊投入の致命的な欠陥 が持たらした結果だ。
一線の警官は苦しさを吐露、陳述翻意、指揮部は思い出せないが無条件正当 9月24日に証人に出てきた特殊部隊2梯隊のあるチーム長は、2次櫓進入の時に死 亡した故キム・ナムン警士と最後に対話をした。2次進入当時、セノックス蒸気 による心臓異常で呼吸困難を感じた彼が櫓の外に出た時に通りかかった故キム・ ナムン警士は、「チーム長さんもきたんですね」という言葉を彼に残した。 彼は昨年11月中旬まで故キム・ナムン警士と同じ梯隊で教育を受け共に生活し た仲だった。そのため声を聞くだけで分かる間柄だった。このチーム長は惨事 以後食事も取れず、眠ることもできず、裁判も苦しそうだった。心的苦痛のせ いで憂鬱症の傾向も見せた。彼はこうした苦しさの中でも櫓中で聞いた『皆死 ぬぞ』という声に対する陳述を変えた。初めには『みんな殺すぞ』という意味 に聞いたと述べたが『みんな(死ぬから)逃げろ』という意味だったという。彼 が初め撤去民に不利に述べたのは『撤去民への敵がい心のため』だったと明ら かにした。 1梯隊長も初め火炎瓶を見たように述べたが、やはり『火炎瓶と推定した』と陳 述を変えた。彼も「同じ職員の告別式などがあってそうした」として迂回的に 撤去民に不利な陳述をしたことを認めた。 入居者と組合との交渉を斡旋したソウル警察庁情報課所属職員は、今回の惨事 に対する自責感で惨事発生後、自ら志願してソウル警察庁を離れ、一線警察署 に行った。 だが、・スジョン次長、パク・サムボク特殊部隊長などは、証人席で主に思い 出せないという回答を続けた。また特異事項を無線で報告されず、何も知らな かったとし、事実上、惨事の責任を現場に投入された特殊部隊員と梯隊長に押 し付けた。彼らは『もし今のようにセノックスと発電機などがあるという事実 を知っていても、特殊部隊早期投入が正当だったと思うか』という弁護人の質 問には「特殊部隊投入は正当だった」と口をそろえて強調した。 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2009-10-19 06:17:43 / Last modified on 2009-10-19 06:17:47 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ |