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韓国:雇用許可制導入1年
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〈特集〉雇用許可制導入1年

「外国労働者政策まだ行く道遠い」

移住労働者権利侵害・送出不正は相変わらず… 未登録移住労働者50%を超える

合法的に移住労働者が働くことができ、労働三権が保証される外国人雇用許可制が 17日に施行1周年をむかえた。

雇用許可制は、未登録(不法滞在)移住労働者と産業研修生(91年)で外国労働者 を運用する体制から脱し、『合法的労働』を公式に認めるなど、外国人労働者 の政策的側面で大きな意味を持つ制度だ。

だが、外国労働者の50%以上を占める未登録移住労働者の処理という問題と、 事実上の労働をしていても労働法の死角地帯に置かれている産業研修生の併行 実施、移住労働者事業場の移動制限など、雇用許可制の一部の内容は相変らず 深刻な問題だと批判されている。

これと共に、1年を過ぎて増加した外国人求人申請で、人材の配置までに必要 な期間(導入期間)の遅れにより発生した企業の人材空白、送出国家のシステム の不安定、雇用許可制下でも変わらない移住労働者の人権侵害事例などはぜひ 解決すべき課題と指定されている。

雇用許可制度では権利の侵害を防げない

移住労働者就職現況

計 349,063
登録(合法)滞留者 152,485
-雇用許可制入国者14,835
-雇用特例者(外国国籍放棄) 18,931
-専門技術人材 22,135
-産業研修生および研修就業者 80,170
-海外投資企業研修生 7,056
-合法化措置者 9,358
未登録(不法)移住労働者 196,578
(7月末現在、単位:人)、資料=労働部

14日、労働部によれば、外国人雇用許可制施行後、7月末現在までに計3万4千 人ほど(雇用特例中国同胞1万9千名を含む)の移住労働者がこの制度で入国して いる〈表参照〉。出身国別には、ベトナム、インドネシア、フィリピン、タイ、 モンゴル、スリランカの順で多く、主に製造業と建設業をはじめ、サービス業、 農畜産業、近海漁業などに従事している。

このようにして雇用許可制で入ってきた移住労働者は、『合法的労働者』とし て自分の権利を正しく守れているだろうか。人権団体は、移住労働者の権利と 人権の侵害は、相変らず深刻だと警告する。

全国の移住労働者に関する12団体が連帯して集まる移住労働者人権連帯は、去 る10日に発表した実態報告(雇用許可制で入国した移住労働者134人への質問、 44人への深層調査)を根拠として、次のように明らかにした。人権連帯は雇用 許可制の下でも△勤労契約に対する一方的な無視と変更の強要△長期間の賃金 未払い△最低賃金支給義務違反△法定労働時間と法定休日遵守義務に違反する 超長時間の労働の強要△夜勤・特別勤務および残業手当て未支給△身分証不法 差し押さえ△暴行・脅迫・人格冒とくなどの事業主による不法行為が所々に現 れていると指摘した。

現行の外国人勤労者の雇用などに関する法律によれば、事業体の休廃業と事業 者の勤労契約解約などの場合を除き、移住労働者は事業場を移動できない。た だし、法律第19条と第25条、施行令第25条には、使用者が入国する前に契約し た賃金以外の勤労条件に違反した場合、使用者の賃金未払い、労働関係法の違 反などで勤労契約の維持が困難であると認められれば、事業場に対する雇用許可 を取り消し、被害を受けた移住労働者には職権で事業場の移動ができるように 規定されている。

だが、現場ではこの条項に実効性がないことがわかった。人権連帯の関係者は、 「実態調査で確認した結果、事業主の不法行為で被害を受けた移住労働者が、 自分の権利を主張すると、ほとんどの事業主は強制出国を武器として脅迫して いる」とし、「労働部が事業主の違法の事実を認めたとしても、移住労働者に 立証責任を賦課したり内部的な処理指針にあわないという理由で適切な制裁は 期待できない状況」と吐露した。

このような理由により、人権連帯は事業主の不法行為による移住労働者の権利 が侵害された時、移住労働者本人の意志による事業場の移動が保障がなされな ければならないと主張する。人権連帯の関係者は「人権と権利の侵害を最小化 するためには、国内の移住労働者支援システムの構築と作業場移動制限の緩和 が至急に必要だ」と話した。

実際、人権連帯の実態調査を見ると、回答者の69%が別の会社に職場を移動し たいと答えた。このうち43.9%は、長時間および過度な労働を理由に選んだ。 また、雇い主と韓国人労働者の暴言、身体的暴力も9.6%で現れた。

未登録(不法)移住労働者問題『足踏み状態』

『合法的労働』の道が開かれたとはいえ、1年が過ぎても未登録(不法)移住労 働者の問題には何の解答もない状態だ。

法務部によれば、昨年1月に13万6913人だった未登録移住労働者は、6月末現在 19万6578人で、1年半で43.6%も増加した。6月末基準で国内に滞在する移住労 働者35万5千人のうち、登録(合法)労働者は44.5%に留まっている実情だ〈グラ フ参照〉。法務部は、雇用許可制の定着のために今年末までに未登録移住労働者 を16万6千人程度に削減するという目標をたてている。

だが、この1年の経験を考えると、その可能性は薄い。特に、国内に滞在して いる約20か国の移住労働者のうち、了解覚書(MOU)未締結国の中国、ネパール などの労働者は、出国するといつまた戻れるかが約束できず、帰国を敬遠して いる。また、MOUを締結したインドネシア出身の労働者も、自国内の問題によ り労働者の送出が遅れていて送出不正が発生し、6月から入国が中断しており、 出国に負担を感じている状態だ。

人権連帯のヤン・へウ代表は「摘発と追放中心の未登録労働者政策には、全く 実効性がない」とし、「さらに前向きに既存の韓国就業者に対し、雇用許可制 による就職の優先権をあたえる合法化措置を取ることが最も望ましい」と主張 した。ヤン代表は「現在、未登録移住労働者をある時点を基準にして全面的に 陽性化して雇用許可制に転換し、足りない人材についてのみ、新規人材を導入 するようにすべき」とし、「彼らの問題が解決しないうちに新規人材を導入す ることは未登録移住労働者の数を急速に増やす結果を持たらすだけだ」と指摘 した。

*(c)毎日労働ニュース*

送出国家問題、放置し続けるのか

雇用許可制の導入で送出不正問題が解決されると期待されていたが、相変らず 雑音は絶えることなく続いている。雇用許可制そのものの問題というよりは、 送出国の事情が『送出不正』となってあらわれているため、さらに状況は深刻だ。

インドネシアに行った安山外国人労働者センターのパクチョヌン牧師は「韓国 を選ぶ多くのインドネシア人は、送出費用を用意するために高利で金を借りる」 とし「送出ブローカーは、韓国でも防止できないマフィア」と指摘した。朴牧 師は、「インドネシアのブローカーと、一部の政府関係者は、雇用許可制が何 かもよく知らないまま韓国の入り口が変わっただけだと考えている水準」とし、 「送出費用を回収する方法が違うだけで、現実は変わらない」と強調した。

韓国政府は、インドネシアの現地の不正を摘発し、6月から『送出中断』措置 をとっている。これは、単にインドネシアだけの問題でなく、タイやベトナム なども似た送出不正が発生していると労働部は判断している。

これに関して、韓国労働研究院のイギュヨン専門委員は「送出国の外国労働者 選抜および送出過程が円滑に行われているのか、持続的なモニターシステム (労務官の派遣、韓国産業人材公団などの専門担当者の派遣など)を構築して、 評価の結果をMOU更新と連係させることが必要だ」と提案した。

ヤン・へウ人権連帯代表も「まず、募集の過程で効果的に不法ブローカーの介 入や不正介入の可能性を遮断するために、雇用許可制の情報公開と手続きの透 明性が確保されなければならない」とし、「各国別に適切な人員(最小1〜2人 程度の担当官)を派遣し、積極的に雇用許可制の実行過程で生じる問題を調節 して管理する役割をしなければならない」と指摘した。

このほか、移住労働者を雇用しようとする中小企業の立場では、雇用申請から 人材の到着まで非常に時間がかかることが最も大きな不満だと明らかになるな ど、人材供給が円滑でないことも問題点と指摘されている。

労働部によると、企業の申請が増加し、人材導入にかかる時間は昨年10月の平 均43日から今年1月には58日、3月には67日、6月には77日と増え続けている。 労働部は、「業務量が増えて、出入国管理事務所の査証発給手続きが遅れ、送 出国家の人材供給システムがきちんと稼働していない」と明らかにした。 労働部はこれを改善するために、△内国人の求人努力期間を1ヶ月から3〜7日 に減らすなど、雇用許可の手続きの簡素化△電子査証発給制度の施行△送出国 に人材送出支援チーム派遣などにより、人材導入期間を短縮する方針だ。

すでに、韓国人が忌避する産業と業種に外国人が導入され、高学歴・高齢化 社会に突入している韓国としては、一定規模以上の外国人が恒常的に必要な 状況だ。

『合法的労働』が可能になって、今やっと1年が過ぎた。人権侵害、送出不正、 未登録移住労働者問題、人材供給システムなど、解決すべき課題が山積してお り、外国労働者政策の確立にはまだ道は遠いのように見られる。

とにかく、雇用許可制という新しい制度を確立させるべきいま、「韓国政府が 移住労働者を単に必要な時に働かせて、その後は送りかえせばそれまでだとい う、『管理と統制』の観点から外国労働者政策を見るのではなく、彼らの持続 的な雇用が避けられない状況で、『統合性と柔軟性』を含む政策への転換が必 要だ」という移住労働者関連団体の指摘は注目すべき部分だ。

キム・ソヨン記者dandy@labortoday.co.kr

2005-08-17午前11:10:07入力/ 2005-08-17午前11:50:29修正(1次) (c)毎日労働ニュース 原文

翻訳/文責:安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2005-08-20 09:04:38 / Last modified on 2005-09-05 05:18:42 Copyright: Default

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