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妻、嫁、母? 「私はただ私だ!」

[インタビュー]映画〈ままごと遊び〉のキム・スビン監督

パク・チュンヨプ記者 2016.03.11 10:13

「私は私個人だ!」

21世紀を暮らすある女性が言い争いの中で叫んだ。うむ? どうしろということだろう? 今は当然の話だが、事実この一言は前近代と近代を区分する言葉だった。 20世紀まで、誰かの所有物か創造物でしかなかった人間は、 この一言で一族、種族、宗教という封建的なくびきから「個人」に分離した。

1世紀経った今はいわゆる「女性上位なんだって」という言葉もある。 ほんと? 女性は「個人」であることさえ難しいのではないだろうか。 「ままごと遊び」のキム・スビン監督の叫びを聞くと、また疑問がおこる。 彼女はスクリーンの中で母の役割、妻の役割、嫁の役割を語る夫、ハ・ガンウン氏に向かって 「私はキム・スビン個人だあああ!」と叫ぶ。

▲5日に大邱を訪れたキム・スビン監督と娘のハ・ノア氏[出処:ニュースミン]

2月に封切られた「ままごと遊び」(製作会社シネマダル)は、キム・スビン監督の人生を「一つのショット、一つのテイクで死ぬまで撮った」映画だ。 キム・スビン監督は23歳の時、避妊に失敗して、母+妻+嫁+学生+留学に行った夫の役割までして働く「家長」の役割を「引き受けることに」なった。

キム・スビン監督は6年間、自分の目になったカメラを通じ、 夫、母、姑の立場と態度を収めた。 彼らと争い、彼らを理解する。 この映画は女性に強要される母性愛・家事労働、ままごと遊びのように強要される「役割」を問い、 「均衡点」を探すキム・スビン監督の話だ。 「個人」の話だが、同時に「個人」の普遍的対立は「観客個人」の話でもある。

「ままごと遊び」の魅力は、固くなりがちな主題を愉快に解きほぐしている点だ。 ドキュメンタリー監督でミュージカル通・翻訳家、脚色作家という履歴からにじみ出るユーモアがある。 キム・スビン監督が自分で製作し、映画に配置した「陰部ソング」の部分で観客は尿失禁のような笑いや、手を叩いて大笑いをする。

3月5日に大邱を訪れたキム・スビン監督に ニュースミンが会った。

妊娠テスト器が出てきて夫ハ・ガンウン氏はすぐ自分の母に電話する。この過程は深刻なようだがハ氏の反応はいたずらっぽい。この場面も入れて、映画には演出された部分もあるのか?

[出処:ニュースミン]

百パーセント実話だ。 何かの意図を持って「こうしたメッセージを伝えなくちゃ」と思って作ったのではない。 私が体験した事件が私にどんな意味なのか、好奇心があった。 一人称の私は、事件で当惑と衝撃を感じるが、 私の超自我はこの事件を取材する本能があった。 新郎も開放的で変な人なので撮影に喜んで応じた。

映画に出てくる場面は、妊娠テスト器を3回目に使った時だ。 2回目まで、私は現実を否定していたが、三回目も妊娠と出たので受け入れるしか。 その時始めて新郎を呼んだが、とても嬉しかった。

劇に出てくる人物はすべて矛盾した人物だ。 私たちの姑も開放的で、保守的な人だが、 妊娠の事実を知って初めて言った言葉は 「赤ん坊をおろそう」だった。 姑は慶州の伝統的な文化の中で育った人だ。 私たちがあわてるかと思って沈着に行動したのだった。

深刻な状況でも夫のただいたずらっぽい姿が分別なく感じられたりもする。夫はどんな人なのか?

突拍子もないところが多い。 時には非現実的な部分もあるが、献身的でもある。 私と結婚した時は、貧しくて準備もない人だったが、その地点から出発した。 姑も夫も自分に過度な役割が与えられ、私の役割が何か、私が誰かわからなくなるようなアイデンティティの混乱の時期を体験する。 (分別がない姿も、葛藤を起こす場合も)緊急ならまず自分の身を守らなければならないから、そんな状況から出る反応だ。

それでも夫は「清掃するのに時間がどれくらいかかる。30分も投資できない?」というように話す。役割に対する固定観念があるのではないか。

整理、清掃に対する考えが違う。 私は、ごちゃごちゃしているのが好きで、そのような環境に打撃も受けないが、 私たち(妻の)家族はそうではない。 私はよく時間もないのに私に清掃をしろというので… だが環境が違っていたので、そんな環境でそれぞれの苦しさを持って互いに努力した。 私としても婚家に行けば、もう食べ物の順序も合わせて、使わない家電製品のコードをみんな抜いて回るような変化がある。 時々、天ぷら箸でもご飯を食べる(キム・スビン氏は初めて婚家に行った時、ハ・ガンウン氏が天ぷら箸でご飯を食べるのを見て衝撃を受けた)。

[出処:ニュースミン]

映画の中で出産直後に生まれたハ・ノア氏を見て何も言葉がない。当時どんな気がしたか?

母性愛との関連で言いたい。 韓国社会では母性愛はとても神格化されている。 映画の中で育児をする方式は、私の方式でも、うちの母の方式でも、姑の方式でもない。 だが「お母さん」という存在に強要される役割、ステレオタイプがある。 皆の方式はみんな違うが、それを「お母さん」という一つの方式にしている。 私は妊娠中に、とても変な感じだった。 大変で苦しかった。 過程一つ一つがおぞましかった。 一日中、胃もたれしたようで、夜もきちんと眠れなかった。 私が「崇高な母性愛で内包している」というような思いよりも、私は宿主だという気がした。

私の良いものすべてが一度も顔を見たことがない生物体に吸われているんだな。 私のからだの中から老廃物でない生命体が出てくると思うと、嬉しくて良く変なものだ。 女性の生殖器から3キロが出てくるのだ。 とても変なことではないか? 当然視してはいけない。 あなたの生殖器から赤ん坊が出てくると考えてみなさい。 私の場合には「人のからだから人が出てきた。ウワッ!」こんな感じだった。 その奇怪さとグロテスクさを表現することができなかった。

「ままごと遊び」の創作の動機はキム・スビン監督個人の立場としては「個人」として残るために作った作品のようだ。

結婚した後、何も自分の思い通りになることはなかった。 結婚する前は私は全てキム・スビンとして生きていた。 三放世代だが、することはみんなしたし、自由に暮らしていた。 職業でも、私がすることでも、すべてのことが。 ところで結婚した後には何もできることがなかった。 私は子どものお母さん、家長、嫁、妻になった。 そこで「キム・スビン」と言えることは何もなかった。 それで命を賭けてこれを撮った。 これを撮らなければ、この状況に耐えられそうもなかった。 長く撮っていると、カメラがまるで第3の目にでもなったように、自然になった。

「個人」として生きるということが重要だとしても、実際にそのように生きる、暮らせる人々は多くない。その意味で距離感を感じることもあるのではないか?

多くの人が会社に通って疲れる。 その人々がこう思うかもしれない。 お金は必要ないから、私が振り回されず、私が主人公の生活を送りたい。 そして私のような創作行為ではなくても、趣味活動や、酒を飲んだり遊びに行くことも一つの方法になる。 本質的に見た時、その方法とは人によって違う。 私の場合はその方法が創作だった。 私はキム・スビンだ。 人生自体が自分を探す旅程だが、死ぬまで分かったような分からないような知らずに生きていくが、 私を見つけずに生きていくことにどんな意味があるのか。 もちろん違う環境の他人にこうしろ、ああしろとはいえない。 それは軽率な言葉だ。 そんな立場の差は映画の中にも出てくる。 うちの母と私は違っていて、私たちの姑ではない。

映画を通じて特別なメッセージを伝えたいという感じがしない。監督の人生をまるごと収めた作品で、観客はそれぞれ多様な考えを持つようだ。

そうだ。ただし若い世代が見て、ガイドになれば良いとは思った。 答というよりも、こうした人生を生きた人間がいるけど、お前たちはどう生きたいのか、という質問を投げている。 そして避妊は必ずしろということも言いたい。 関係して、女性が自分のからだについてよく知ってほしい。 女性生殖器、胸、からだの変化などが妊娠や出産以後、とても変わる。 現実的に淡々と受け入れて、過度に恐れたり驚かずに。 女性は出産以後、とても体が崩れる。 それを補完する手術は多様だが、実はそれは個人のためというよりも夫のための手術という側面もある。 私はだから手術もしなかった。 生きることがままごと遊びなら、主体的なままごと遊びをしたいから。

〈ままごと遊び〉全国劇場上映時刻表

[出処:ニュースミン]

付記
パク・チュンヨプ記者はニュースミンの記者です。この記事はニュースミンにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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